第3章 流動性・金利モデル
3.4 大銀行エージェント
モデルにおける大銀行エージェントの行動は以下の4つである(図3.10).
1.大銀行エージェント同士で支払請求を出す・受け取る(図3.10,赤色の行
動).
2.自身の流動性ポジションによって,他の大銀行エージェントあるいは小銀
行エージェントから受け取った支払請求を実行する・延期する(図 3.10,緑色 の行動).
3.他の大銀行エージェントに緊急支払請求を出す・受け取る,中央銀行エー
ジェントに緊急支払請求を出す(図3.10,オレンジ色の行動). 4.オファー・レートを決定する(図3.10,紫色の行動).
0"""""1"""""2"""""3"""""4"""""5"""""6"""""7"""""8"""""9 0"""""1"""""2"""""3"""""4"""""5"""""6"""""7"""""8"""""9
図 3.10 大銀行エージェントの行動
3.4.1 支払請求を出す・受け取る
各ラウンドで,大銀行エージェントはオファー・レートの低い他の大銀行エ ージェント8行の内1行をランダムに選んで,確率P_bigで支払請求を出す(図
3.10,赤色の行動).支払請求の金額は平均 A_big,標準偏差 SD_big の正規分
布に従う.また,大銀行エージェントは 1 ラウンドで最大一回の支払請求を出 せる.その後,この支払請求の情報[発送銀行(本大銀行エージェント),目標
銀行(他の大銀行エージェント),締め切り(1〜4ラウンド),金額(平均A_big,
標準偏差SD_big)]を「出した支払請求リスト」に保存する.
各ラウンドで,他の大・小銀行エージェントからの支払請求を受け取る(図 3.10,赤色の行動).支払請求の情報[発送銀行(大・小銀行エージェント),
目標銀行(本大銀行エージェント),締め切り(1〜4ラウンド),金額(平均A_big,
標準偏差 SD_big あるいは平均 A_small,標準偏差 SD_small)]を「受け取っ
た支払請求リスト」に保存する.
3.4.2 受け取った支払請求を決済・延期する
各ラウンドで,大銀行エージェントは受け取った支払請求の決済を実行する かどうかを自身の流動性状況による決定する.受け取った支払請求が締め切り になったら,その支払請求の金額を流動性と比較して,流動性が十分の場合に,
支払請求の決済を実行する(図3.10,緑色の行動).その後,この支払請求を「受 け取った支払請求リスト」から削除する.
流動性が足りない場合に,他の大銀行エージェントに緊急支払請求を出す.
緊急支払請求が受け取られたら,もらった流動性で受け取った支払請求の決済 を実行する.緊急支払請求を拒否されば,受け取った支払請求の決済を延期す る(図3.10,緑色の行動).
3.4.3 緊急支払請求を出す・受け取る
大銀行エージェントは受け取った支払請求の決済を実行する際,流動性が足 りない場合に,他の大銀行エージェントに金額が U_big である緊急支払請求を 出す(図 3.10,オレンジ色の行動).もしこの緊急支払請求が受け取られたら,
もらった流動性で受け取った支払請求の決済を実行する.そして,緊急支払請 求の拒否された回数を 0 に更新する.もし緊急支払請求が拒否されたら,受け 取った支払請求の決済を延期する.そして,緊急支払請求の拒否された回数を 1プラスする.拒否回数が5回よりも多ければ,中央銀行に金額が U_big であ る緊急支払請求を出す(中央銀行は必ず緊急支払請求を受け取る).それから,
緊急支払請求の拒否された回数を0に更新する.
緊急支払請求が届いたら,自身の流動性が請求金額より大きい場合,緊急支
払請求を受け取る(図3.10,オレンジ色の行動).逆に,拒否する.
3.4.4 オファー・レートを決定する
大銀行エージェントは支払請求の出し入れにより,流動性が将来的にどの程 度必要かを予期しオファー・レートを決める(図3.10,紫色の行動).将来的に 受け取る流動性が多ければ流動性予期が高くなり,オファー・レートを下げる.
一方,他の大銀行エージェントに支払をすることが多い場合は流動性予期がマ イナスになっており,オファー・レートが高くなる.
さらに,オファー・レート(offeredRate)を決めるには前日のSHIBORを参照 する仕組みがある.具体的にいうと,大銀行エージェントがround!の最後に二 つの支払請求リストにより流動性予期(expectedLiquidity)を計算する.それか ら,本研究のモデルにおいて,流動性予期(expectedLiquidity)による算出した レートとround!!!のSHIBORにそれぞれ0.5の重みを付けて,二つのレートを 合わせて,round!のオファー・レート(offeredRate)ができた(式(3)).
offeredRate round!
= − a × expectedLiquidity round! + b × 0.5
+ SHIBOR round!!! × 0.5 (3.3)
ここで,aとbは流動性予期をオファー・レートのスケールに合わせるための線 形変換のパラメータである.このパラメータを変えることで異なるオファー・
レートの決め方を表すことができる.しかし,本研究では,簡単のため一つの 組み合わせに固定している.実際のSHIBORの計算方法と同じように,各ラウ ンドで16個の大銀行が申告したオファー・レートの最大値と最小値を各2個省 き,残りの12個の平均値をSHIBORとした.
図3.11でモデルにおけるSHIBORの振る舞いは時系列を表している.
図 3.11 モデルにおけるSHIBORの変動