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第2章 空き家分布を把握する手法の検討

第2節 大都市部の自治体における適用可能性の検証

第1項 対象自治体の選定

第1節においては、鹿児島市・朝倉市の情報を活用して、建物単位で空き家分布を把握 する手法を検討した。

これにより、鹿児島市・朝倉市といった地方部の自治体における空き家分布把握手法に ついては一定の精度が検証されたが、大都市部の自治体における適用可能性は未検証であ る。

本項目では、全国の地方自治体への手法の展開を考慮し、建物単位で空き家分布を把握 する手法について大都市部の自治体における適用可能性を検証するため、三大都市圏(東 京圏、大阪圏、名古屋圏)に所在する自治体を対象自治体として選定する。

また、本項目で選定する自治体は、都市内全域の空き家分布状況が判明している自治体 が望ましいため、自治体による独自調査により直近の空き家分布を把握していることを条 件として選定する。

上記の条件を満たす自治体のうち、本調査研究への協力を得ることができた大阪府枚方 市を対象自治体として選定した。

なお、本調査研究における対象自治体に関する各種指標を整理すると以下のとおりであ り、枚方市は鹿児島市・朝倉市と比較して「1人当たり所得」が高く、「空き家率」が低い という特性を有している。

【図表 2- 50 各種指標の比較(全国‐鹿児島市‐朝倉市-枚方市)】

指標 全国平均 鹿児島市 朝倉市 枚方市

人口 599,814 人 52,444 人 404,152 人

面積 547 ㎢ 246 ㎢ 65 ㎢

建物数 251,104 棟 38,871 棟 123,588 棟

高齢化率 26.3% 24.2% 31.7% 26.1%

1 世帯当たり人口

(総人口/総世帯数) 2.38 人 2.22 人 2.75 人 2.41 人 1 人当たり所得

(課税対象所得/納税者 数)

3,287 千円 2,977 千円 2,603 千円 3,343 千円

空き家率 13.5% 13.9% 13.0% 11.6%

全国平均との乖離が±20%以上の指標は下線にて記載

出典: 人口、面積、高齢化率、1 世帯当たり人口は『平成 27 年国勢調査』(総務省統計局)

空き家率は『平成 25 年住宅土地統計調査』(総務省統計局)

1 人当たり所得は『都道府県・市区町村のすがた』(総務省統計局、2015 年度の値を抜粋)

建物数は Zmap TOWNⅡ2016[鹿児島市・朝倉市]・2017[枚方市](株式会社 ゼンリン)

63 第2項 自治体保有情報

枚方市の水道普及率はほぼ 100%であるため、1.における鹿児島市と同様の自治体保 有情報を使用することとした。

また、枚方市は平成28年12月から平成29年6月にかけて独自の“空家等実態調査”

を実施しており、同調査の結果についても自治体保有情報として使用することとする。

なお、枚方市が独自に実施した“空家等実態調査”において把握した空き家棟数は3,721 棟であったが、このうち、公道からの外観目視が可能であり、本調査研究において対象と する建物(属性種別コード 1363,1364,1365,2090,2091,2092 のいずれかに該当するもの)

の空き家棟数は3,625棟であった(空き家率:2.9%[ = 空き家数3,625棟/建物数123,588 棟])。

【図表 2- 51 枚方市「空家等実態調査」結果】

調査時期 2017年2月~6月 対象建物 枚方市内全域

空き家等と思われる建築物5,418棟 調査手法 ① 空き家等と思われる建築物の選定

水道閉栓・停止情報、市への通報記録を基に空き家等と思われる 建築物を選定

② 空き家等と疑われる建築物の外観目視調査

公道より外観目視調査を実施し、現地調査票を基に当該建物の空 き家・非空き家判定やその他建物現況等を調査

調査結果 空き家棟数:3,721棟

うち公道棟から外観目視可能な棟数:3,649棟

うち本調査研究において対象とする建物の棟数:3,625棟

【図表 2- 52 枚方市「空家等実態調査」 空き家プロット図】

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【図表 2- 53 枚方市「空家等実態調査」属性種別コード別 空き家数・空き家率】

第3項 各種情報のGISデータベース化

第1節と同様の方法により、自治体保有情報、民間事業者の保有情報、地理的要因、空 家等実態調査結果をGISデータベース化した。

なお、建物のうち、自治体保有情報が紐付いた割合は、住民基本台帳情報、水道情報、

建物登記情報とも概ね7割程度であった。

【図表 2- 54 枚方市 住民基本台帳情報 GIS データベース概要】

※手順:①枚方市より提供された住基情報を世帯単位に集約。②ジオコーダを用い、住基情報の「所在地」

を「経緯度」に変換。③GISを用い、住宅地図データベース(TOWN2)の建物ポリゴンと「経緯 度」を紐付け。

属性種別

コード 建築物の概要 空き家数 空き家率 1363 ビル・アパート等 38 0.75%

1364 戸建住宅 1,327 1.56%

1365 事業用建物 137 1.59%

2090~

2092 表札・看板等のない建物 2,123 8.50%

404,832人分 278,660世帯分 266,078件

住基情報の 95.5に建物情報吸着 住基情報

(元データ) 住基情報

(世帯単位)

ジオコーダ

住基情報

(建物情報付)

TOWN2

延べ266,078件

住基あり 住基なし 住基あり

住基あり建物数89,207棟

建物123,588棟の 72.2% に住基吸着 建物を主体に見て

住基が吸着した建物数を算出

■ 参考:(建物を主体に見たとき)建物1棟に対し、複数住基が存在する場合がある ※集合住宅など

住基 住基

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【図表 2- 55 枚方市 水道情報 GIS データベース概要】

※手順:①枚方市より提供された水道情報のうち、重複していると思われるデータを削除。②ジオコーダを 用い、水道情報の「所在地」を「経緯度」に変換。③GISを用い、住宅地図データベース

(TOWN2)の建物ポリゴンと「経緯度」を紐付け。

【図表 2- 56 枚方市 建物登記情報 GIS データベース概要】

※手順:①枚方市より提供された登記情報のうち、重複していると思われるデータを削除。②GISを用い、

枚方市より借り受けた地番図(土地の筆をポリゴン化したGISデータ)と登記情報を、「所在地 番」をキーとして紐付け、位置情報を付与。③GISを用い、住宅地図データベース(TOWN2)の 建物ポリゴンと登記情報を紐付け。

131,070件 131,069件 124,189件

水道情報の94.8%に建物情報吸着 水道情報

(元データ) 水道情報

(重複削除)

ジオコーダ

水道情報

(建物情報付)

TOWN2

延べ124,189件

水道あり 水道なし 水道あり

水道あり建物数89,587棟

建物の72.5% に水道吸着 建物を主体に見て

登記が吸着した建物数を算出

■ 参考:(建物を主体に見たとき)建物1棟に対し、複数水道が存在する場合がある ※集合住宅など

水道 水道

255,696件 153,927件 147,530件 134,346件

登記情報の87.3%に建物情報吸着

※主たる建物・附属建物は 分けて集計 登記情報

(元データ) 登記情報

(重複削除) 登記情報

(位置情報付)

地番図

登記情報

(建物情報付)

TOWN2

延べ134,346件

登記あり 登記なし 登記あり

登記あり建物数90,290棟

建物の73.1% に登記吸着 建物を主体に見て

登記が吸着した建物数を算出

■ 参考:(建物を主体に見たとき)建物1棟に対し、複数登記が存在する場合がある ※区建など

登記 登記

66 第4項 空き家確率算定式の検証

第3項において整備したGISデータベースを元に作成した枚方市建物の説明変数に、第 1節において導出した空き家確率算定式を適用し、空き家コンテンツの有無に応じた分布 状況を把握して、大都市部における空き家確率算定式の妥当性を検証する。

1)空き家コンテンツなしのケース

空き家コンテンツを除く全ての変数を用いて空き家確率を算定した結果は以下のとおり であり、鹿児島・朝倉と同様に空き家確率50%以上となった建物はない。

なお、空き家確率 5%未満と推計された建物の比率は、鹿児島よりさらに高い(※)結 果となった。これは、枚方の空き家率が鹿児島の現地調査地区より低い(鹿児島:5.0%、

枚方:2.9%)ためと考えられる。また、これにより、本手法が、「空き家率が低い自治体 においては、空き家確率が低く推計される建物の割合を増加させる」ことが検証された。

【図表 2- 57 空き家確率算定式適用結果(枚方・空き家コンテンツなし)】

※空き家確率5%未満の建物割合

鹿児島:(3,329/7,288:45.7%)、枚方(72,931/123,588:59.0%)

2)空き家コンテンツありのケース

空き家コンテンツを含む全ての変数を用いて空き家確率を算定した結果は以下のとおり であり、朝倉・鹿児島と同様に、空き家確率が40%以上と推計された建物の実際の空き家

率は50%以上となっている。

以上 未満

0% 20707 111 0.5%

0% 5% 52224 306 0.6%

5% 10% 12442 322 2.6%

10% 15% 27099 870 3.2%

15% 20% 6403 424 6.6%

20% 25% 1331 190 14.3%

25% 30% 1268 334 26.3%

30% 35% 883 461 52.2%

35% 40% 573 252 44.0%

40% 45% 655 354 54.0%

45% 50% 3 1 33.3%

50% 0 0

空き家確率

建物数 空き家数 空き家率

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【図表 2- 58 空き家確率算定式適用結果(枚方・空き家コンテンツあり)】

以上の結果から、上記算定式を用いた空き家確率の推計については、枚方においても朝 倉・鹿児島と概ね同様の結果となり、大都市部においても、推計式について一定の精度が 確かめられた。

第5項 空き家総数推計手法の検証

第4項において算出した空き家確率を元に、第1節において検討した空き家総数推計手 法を適用し、空き家コンテンツの有無に応じた分布状況を把握して、大都市部における空 き家総数推計手法の妥当性を検証する。

1)空き家コンテンツなしのケース

第1節において検討した空き家総数推計手法をそのまま適用した結果は以下のとおりで あり、推計空き家率が過大に求められた。

【図表 2- 59 枚方市の空き家総数推計結果(空き家コンテンツなし)】

建物数 総数推計率 推計空き家数 推計空き家率 空き家確率:低 72,931 1% 729.3

空き家確率:中 47,275 6% 2,836.5 空き家確率:高 3,382 40% 1,352.8

合計 123,588 4,919 4.0%

以上 未満

0% 38432 237 0.6%

0% 5% 35282 156 0.4%

5% 10% 31288 525 1.7%

10% 15% 7485 164 2.2%

15% 20% 4878 234 4.8%

20% 25% 1196 152 12.7%

25% 30% 784 195 24.9%

30% 35% 635 228 35.9%

35% 40% 837 333 39.8%

40% 45% 6 4 66.7%

45% 50% 0 0

50% 2765 1397 50.5%

空き家確率

建物数 空き家数 空き家率

68 2)空き家コンテンツありのケース

第1節において検討した空き家総数推計手法をそのまま適用した結果は以下のとおりで あり、推計空き家率が過大に求められた。

【図表 2- 60 枚方市の空き家総数推計結果(空き家コンテンツあり)】

建物数 総数推計率 推計空き家数 推計空き家率 空き家確率:低 73,714 1% 729.3

空き家確率:中 47,103 4.5% 2,119.6 空き家確率:高 2,771 70% 1,939.7

合計 123,588 4,789 3.9%

3)検討

朝倉・鹿児島において把握した空き家総数推計手法を枚方市データにそのまま適用した ところ、空き家コンテンツの有無にかかわらず、推計値が過大に求められた。よって、大 都市部では、空き家総数推計手法に関して、地方部と全く同様の手法を適用することは困 難であると考えられる。

そこで、枚方市における、「空き家確率:低」、「空き家確率:中」、「空き家確率:高」

ごとの実際の空き家率を見ると、以下のとおりであった。

①空き家コンテンツなしのケース

【図表 2- 61 枚方市の空き家確率判定結果別空き家数等(空き家コンテンツなし)】 建物数 空き家数 空き家率

空き家確率:低 72,931 417 0.6%

空き家確率:中 47,275 1,806 3.8%

空き家確率:高 3,382 1,402 41.5%

合計 123,588 3,625 2.9%

②空き家コンテンツありのケース

【図表 2- 62 枚方市の空き家確率判定結果別空き家数等(空き家コンテンツあり)】

建物数 空き家数 空き家率 空き家確率:低 73,714 393 0.5%

空き家確率:中 47,103 1,831 3.9%

空き家確率:高 2,771 1,401 50.6%

合計 123,588 3,625 2.9%

上記の状況に基づき、“空き家コンテンツなし”の場合には、「空き家確率:低」の建物

の0.5%、「空き家確率:中」の建物の 4%、「空き家確率:高」の建物の 40%を合計する

ことにより、対象自治体の空き家総数推計値とする。

また、“空き家コンテンツあり”の場合には、「空き家確率:低」の建物の0.5%、「空き 家確率:中」の建物の4%、「空き家確率:高」の建物の50%を合計することにより、対象 自治体の空き家総数推計値とする。

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