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大規模工業用地を持つ都市の課題と展望 5-1. 本章の目的と調査概要

5-1-1. 本章の目的

 本章の目的は大規模工業用地を持つ都市が工業立地に際してどのような方針を持ち、対応を行ったのか、ま たそれに伴い現在ではどのような課題を抱え、対応を行っているのか等の実態を把握することである。

 具体的には、以下の 3 点を明らかにすることを試みる。まずは、工業都市3分類別に分析を行い、本論文の 着目点である 1960 年代以降の工業団地立地により発展した都市の傾向を把握する。2 つ目に工業用地の種類 に関わらず、工業用地を一定規模以上持つ都市が工業用地に関してどのような課題を抱えているかを把握する。

特にコンパクトシティを検討する上で工業用地がどのように位置付けられているかに着目する。3 つ目に、個 別の自治体の実態を分析し、①工業立地にあたっての方針と対策、②工業用地に関連した課題と対策、③コン パクトシティの検討状況がどのように関連して考えられているか、いくつかの傾向を明らかにする。

5-1-2. 調査の概要

実施期間:2016 年 11 月 30 日(水)〜 12 月 14 日(水)

対象: ①人口 5-30 万人の三大都市圏を除く自治体のうち、②合計 100Ha 以上の工業団地用地もしくは 10Ha 以上の単独工場をもち、③ S40・H22 の両時点で市域に DID 地区をもつ 134 市

方法:調査票を郵送し、郵送または FAX、メールにて回答を得た。

有効回収:回答のあった自治体は 92 市で回収率は 69% であった。

内容:質問内容の主軸は 1)工業用地が市内にできるにあたり、どのような対応をとっていたか。2)その後、

工業用地に関してどのような課題を抱え、対応しているか。3)コンパクトシティ政策において工業用地をど のように位置付けているかの 3 点である。各軸に沿って(表 5-1)のような質問項目を作成した。質問内容の 詳細は(参考資料 5-1)にある通りである。回答の形式は選択解答、一部自由記述とした。

 工業都市3分類別の回答自治体数内訳は(図5- 1)の通りである。

表 5-1. アンケート調査の質問項目

図 5-1. 回答自治体数の内訳

うち単独 43

うち⼯業団地 18

うち両⽅ 31

合計(N=) 92

68

5. 工業用地を持つ都市の課題と展望

5-2.  工業団地都市の傾向

5-2-1. 分析結果

(1) 人口動態

人口のピーク時期を区分に分けて集計した。時期の区分は第 2 章で分析した時代区分を参考にし、昭和 45 年以降は昭和末期(昭和 63 年)までと平成大合併のピーク時期(平成 17 年)まで、現在までの 5 区分に分 けて集計した。第 2 章における第Ⅰ期にあたる大正 7 年以前は近代化前であること、対象の人口ピークが当時 期である自治体がなかったことから除外した。

 分類によるピーク時期の偏りはなく、平成元年から平成 17 年に人口のピーク時期があった自治体が多い。

これは平成の大合併で市町村合併をした自治体が多いことが理由であると考えられる。(図 5-2・5-3・5-4)

図 5-2-1. 人口のピーク時期(工業団地) 図 5-2-2. 人口のピーク時期(単独)

図 5-2-3. 人口のピーク時期(両方)

5. 工業用地を持つ都市の課題と展望

(2) 工業立地にあたっての対応

 工業団地や工場の立地にあたり、自治体はどのような対応をしていたのか。第一回答の割合を工業都市 3 分 類別に示したものが(図 5-5)である。

 分類による対応の偏りはなく、どの分類においてもゾーニングや地区計画等で緩やかにコントロールが図ら れたことが分かる。

 より具体的な対応として、特定の工業団地や単独工場の立地にあたって住宅団地等の整備が行われたかどう かについて調査した。工業団地都市に比べ、単独工場都市において立地企業の住宅団地等整備の割合が高い。

また、両方を持つ都市において市施行の区画整理事業が実施された割合が比較的高い。しかし、どの分類にお いても住宅団地等の整備が行われているのは最大 20%前後の自治体であり、傾向として読み取ることはでき ないといえる。(図 5-6)

図 5 − 5. 工業立地への対応

図 5 − 6. 住宅団地等の整備

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5. 工業用地を持つ都市の課題と展望

(3) 工業用地に関する課題と対応

 工業用地に関する課題について特徴的なのは、工業団地都市において【用途混在(現行用途・跡地含む)】

を課題と考える自治体がいなかったことである。一方で工業団地を持つ自治体(工業団地都市と両方を持つ都 市)の半数は【工業用地が埋まらない】課題を抱えている。単独工場都市ではこの課題を抱えている自治体が 37%であったことから、工業団地都市においてより顕在化している課題であるといえる。(図 5-7)

 課題に対する対応方針や施策についてはどの分類においても【新しく工業用地を作る】と回答した自治体が 多く、特に傾向はみられなかった。(図 5-8)【その他】において、両方を持つ都市では「工場跡地について、

民間企業による工業団地の造成・販売に協力している。」と回答した自治体があり、単独工場用地の工業団地 への転換が図られている現象が確認された。

図 5 − 7. 工業用地に関する課題

図 5 − 8. 課題に対する対応

5. 工業用地を持つ都市の課題と展望

(4) コンパクトシティと工業用地の位置付け

① コンパクトシティの検討状況

 コンパクトシティの検討状況についてはほとんどの自治体において庁内検討や計画策定を行っており、分類 による傾向はみられなかった。(図 5-9)

② コンパクトシティを進める上での都市課題

 コンパクトシティを検討している自治体に、どのような都市課題を把握してコンパクトシティを検討するに 至ったかを伺った。多くの項目で半数以上の自治体が課題として認識していたが、分類による傾向はみられな かった。(図 5 − 10)

図 5 − 9. コンパクトシティの検討状況

図 5 − 10. 都市課題

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5. 工業用地を持つ都市の課題と展望

5-2-2. 小括

1) 本論文では 1960 年代以降の工業団地によって発展した都市では企業立地に際して「行政が総合的に 計画、整備することで都市化が進展していったのではないか」と仮説立てていた。しかしアンケート調査の結 果では総合的に計画や整備をした自治体よりもゾーニングや地区計画などで緩やかに誘導しようとした自治体 が多かった。そしてこれは工業用地都市のみならず、全体に共通した傾向であった。

2) 本論文では「工業団地によって発展した都市では、従来の工業化の過程で発生していた諸問題が生じ なかったのではないか」と仮説立てていたが、従来まで多くの工業都市が抱えていたような公害や騒音、日影 問題をはじめとする近隣トラブルや立地に際しての市民の反対などを課題と考える自治体は少なかった。しか しこれも、工業団地都市に際立った傾向ではなく、全体に共通した傾向であった。

3) 工業立地に際して、ゾーニングや地区計画などで適切な土地利用を誘導した自治体が全体的に多いが、

現在では用途混在に関連した課題も多く散見され、適切な用途の誘導が難しいことが分かった。しかし、工業 団地都市においては用途混在を課題とあげる自治体が存在しなかった。これは工業団地都市の特徴であるとい える。

4) アンケート調査の分析では、工業団地都市の際立った特徴を明らかにすることはできなかった。第 3 章の分析においても、工業都市の実態はより個別化していること、工業都市の文脈が複層化している可能性が 示唆されたが、本節の分析においても同じ事がいえる。従って次節以降では、工業用地の種類を限定せずに全 体の傾向を分析していくこととする。

5. 工業用地を持つ都市の課題と展望

5-3.  対象都市全体の傾向

5-3-1. 分析結果 (1) 人口動態

 対象自治体における概ね 10 年後の推計の割合を示したものが(図 5-11)である。対象自治体の 95% は約 10 年後の推計で人口減少を見込んでいる。また、人口のピーク時期を区分に分けて集計した。時期の区分は 第 2 章で分析した時代区分を参考にし、昭和 45 年以降は昭和末期(昭和 63 年)までと平成大合併のピーク 時期(平成 17 年)まで、現在までの 5 区分に分けて集計した。第 2 章における第Ⅰ期にあたる大正 7 年以前 は近代化前であること、対象の人口ピークが当時期である自治体がなかったことから除外した。人口のピーク 時期は平成元年から平成 17 年の自治体が 42% と最も多かった。これは平成の大合併で市町村合併をした自治 体が多いことが理由であると考えられる。その他は戦後から高度経済成長期にかけて(昭和 20 年から昭和 45 年まで)、高度経済成長期からバブル経済にかけて(昭和 46 年から昭和 63 年まで)、平成の大合併のピーク 後から現在にかけて(平成 18 年以降)の 3 区分がそれぞれ約 2 割ずつとなっている。(図 5-12)

図 5 − 11. 約 10 年後の人口推計

図 5 − 12. 人口のピーク時期

図 5 − 13. 工業立地時の対応(第一回答)

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