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大学院教育における IR 活動のポイント

社会と大学をつなぐ高度専門職の養成や新しい制度の導入などに力を入れて おり、その意味で、キャリアを意識したセンター活動が今後の大学院教育に おいても 1 つの指針になるのではないかと考えています。

【図表 4】北海道大学の高度専門職養成教育の特色

ピーク時の半数程度に落ち込んでいます。2004 年度から博士前期課程入学 者の受入れがあったことを考慮しても、後期入学者の漸減傾向は続いていま す(博士課程前期入学者数は数自体が少ないので、傾向に大きな変化はあり ません)。

【図表 6】本学の博士課程後期入学者数の推移

ただし全国的な傾向を参照しますと、本学の入学者数が減少に転じた 2004 年度以降、修士課程入学者が増加し、博士課程入学者が減少しているという 傾向があります(【図表 7】参照)。それゆえ、本学の入学者数の減少理由が、

本学の博士課程教育における魅力の減少によるものか、全国的な博士課程教 育離れによるものかは、今後本格的に調査をしてみたいと考えています。

【図表 7】修士課程・博士課程入学者の全国的な傾向

このようなかたちでデータを分析することによって、全国平均と本学との 類似点、非類似点を探ることができるため、現在、少しずつデータを分析し ています。ただし、本学のように博士課程の研究室教育が中心の大学院大学 では、量的なデータ数が限られます。今後、博士課程の大学院教育について 考える際には、まず質的データをもとに量的データとして収集できるアンケー トの項目などを設定していく必要があると思っています。

また、2002 年以降、外国人留学生は倍増し、その中でもアジアからの留 学生が圧倒的に多いことから、5 年一貫制教育はアジアが中心であることも 分かってきました。したがって、アジア人学生に対して、どのような 5 年一 貫制教育を実施するのかという点も課題になっています。

最後に、博士課程終了後の就職状況についてですが、平成 23 年度の「学校 基本調査」によれば「就職者」(就職し、かつ進学した者を除く)は 10,150 人(修 了者の 63.9%)ですが、本学の就職率は 68.3%で、全国平均よりはやや高 くなっています。しかし、そのうちの 48.2%は任期付研究職であり、5 年後、

10 年後の追跡調査が必要と考えられます。まだ本学ではそのような追跡シス テムが整っていないため、出口戦略に関わるデータも入念にチェックするこ とによって、今後の本格的な IR 活動につなげていきたいと思っています。

【図表 8】本学の修了生の就職動向

【質疑応答】

――   大学院教育には 3 つの課題があるという指摘がありましたが、そ のうち、学位基準が不明確という意味がよく分からないのですが。

奥本   ドクターをどういう基準で卒業させるかについて、専攻や研究科に よってばらつきがあるということだと思います。それは当然のことだ と言えますが、中教審の答申では、この部分についての明確な基準が 求められています。もしくは、どの範囲で基準を策定するかについて

大学院で検討すべきという意味だと理解しています。

――   各専門によって基準が異なるのは当たり前なので、審査過程が明確 になれば基準が明確になっていると考えていいのではないでしょうか。

奥本   審査過程が明確になれば学位基準が明確になるかどうかについて は、本学においても、審査過程の明確化の基準が定まっていません。

たとえば、論文の数と質をどう評価するか、また内部で評価するのか 外部を交えた制度にするか、など全学として統一されているわけでは ありません。

林   入学者数、就職率のデータはありましたが、おそらくアドミッショ ンとキャリア支援の関係で、入口のところでは、法人評価でペナルティ の対象になる定員充足率がよく問題になります。出口のところでは、

多くの大学ではキャリア支援室などがありますが、貴学では、両者は 協働されていらっしゃるのでしょうか。

奥本   本学には、入試戦略室もキャリア支援室もございません。小規模の センターでできることは何か、から取り組んでいかざるをえない現状 です。網羅的な IR はできないので、本学の課題に適合した一つ一つ のデータをどれだけ省エネ的に収集できるかが課題です。

――   IR 活動のポイントとして、入学、教育、就職の 3 つを挙げられて いますが、入学時の成績、履修状況など成績だけでも統合してアクセ スできると思います。省エネ的には、そういう方法も可能なのではな いでしょうか。

奥本   本学では、そういうデータも全学的に共有されていません。出身大 学は調査できますが、入試成績などは各専攻で管理しています。

――   データ数は少ないのですが、関係部署はたくさんあるので、それら をどうハンドリングするかという難しさがあると思いました。しかも、

たくさんの専攻があり、それぞればらつきがある中で、おそらくオー ダーメイド的な教育をされているわけですから、そういう難しさもあ るでしょう。もう 1 つ言えば、外国人留学生がかなり高い割合を占 めており、日本人だけではなく留学生が多いという強みもあると思い ます。その際、5 年一貫制はアジアが中心とされる理由はどこにある のでしょうか。たとえば、国費留学をする場合、5 年一貫制のほうが メリットがあるなどの特殊事情はあるのでしょうか。そういうメリッ

トがあるなら、5 年一貫制教育を実施する意味はあると思いますが。

奥本   本学で把握している範囲では、アジアの大学は修士課程も十分整備 されていない状況にあるため、修士課程から日本で学びたいという希 望があるようです。卒業後すぐ本学に入学する学生が多く、これまで より若くなったという印象があります。それに対して、本学の博士課程 後期では、欧米からの留学生の割合が高くなっていますが、どちらか というと、本学でしか学べない専門性を求めて入学してくるようです。

――   IR 型 FD については新鮮な印象を抱きました。われわれ(北陸先端 科学技術大学院大学)のセンターでも、全学の FD の年度計画を立て るのですが、どの大学も苦労しているのは FD で人が集まらないこと です。IR についていろいろ調査されると思いますが、教職員が教育 のどういうところに関心があるのかを調査することも、IR 型 FD に含 まれるのでしょうか。

奥本   本学では人数も少ないこともあり、大学院教育について、質的調査 も実施しています。たとえば、どういう大学院教育を受けてきたか、

博士課程における指導教員のリーダーシップはどうだったかなどにつ いてのインタビュー調査を実施しており、そこからニーズを深く探る ことができればと考えています。

講演 4

国の研究開発評価システムの課題と大学の生存戦略

田原 敬一郎(未来工学研究所 主任研究員)

吉澤 剛(大阪大学 准教授)       

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