前項においては、大学等においてキャリア・コンサルタントが活躍するために必要 な知識・スキルについて活動領域ごとに整理したが、これまでキャリア・コンサルタ
ントに必要な能力要件、知識・スキルをまとめたものとしては、まず、(ⅰ)キャリア・
コンサルタントとして活躍するためのベースとなる知識・スキルである「キャリア・
コンサルティング実施のために必要な能力体系」がある。
さらに、若年者のキャリア・コンサルティングに関しては、(ⅱ)若年者全体を対象 とした「若年者向けキャリア・コンサルティング実施に必要な能力要件」、(ⅲ)「ニー ト支援及びアウトリーチを行う人材に係る能力要件」、(ⅳ)「中学校・高等学校のキャ リア教育推進に当たってキャリア・コンサルタント等の専門人材が求められる能力」
がある。
これらとの関係であるが、共通部分(ⅰ)、若年者全体部分(ⅱ)に上乗せする部分であ り、ニート支援部分(ⅲ)、中学・高校キャリア教育部分(ⅳ)と並び、大学等という固有 の場(フィールド)に必要とされる知識・スキル(ⅴ)と位置づけられる。
図表 13 大学等で活躍するキャリア・コンサルタントの能力要件と 求められる知識・スキルの位置づけ
ニート支援 (ⅲ) H20.3 H21.3
中学・高校 キャリア教育
(ⅳ) H22.3
大学等キャリ ア教育(ⅴ) H24.3(本調査)
若年者向け能力要件(ⅱ) H20.3
共通して必要とされる能力要件(ⅰ)(能力体系:140時間)
H23.3
(ⅰ)「キャリア・コンサルティング研究会報告書 ~標準レベルのキャリア・コン サルタントに求められる能力要件やこれに対応した養成講座、試験のあり方等(平 成23年3月)」による
(ⅱ)「平成19年度若年者向けキャリア・コンサルティング研究会報告書 若年者
向けキャリア・コンサルティング実施に必要な能力要件の見直し(平成20年3月)」 による
(ⅲ)「平成19年度若年者向けキャリア・コンサルティング研究会報告書 ニート
支援及びアウトリーチを行う人材の養成に係る能力要件等」及び「平成20年度若 年者向けキャリア・コンサルティング研究会報告書 若者自立支援機関において 活用が期待される自立支援メニュー・手法と、これに関わりキャリア・コンサル タントが果たすべき役割等に係る調査研究」による
(ⅳ)「平成 21 年度キャリア・コンサルティング研究会報告書~中学校・高等学校 のキャリア教育推進に当たり、キャリア・コンサルタント等の専門人材が果たす 役割、求められる能力要件等」による
3 求められる能力を向上させるための方策
(1) キャリア・コンサルタントに対する向上プログラムの実施
キャリア・コンサルタントが、Ⅴの1や、Ⅵの1の「大学等で活躍するキャリア・
コンサルタントに求められる能力」(図表 12)を身に付け、さらに向上させていくた めには、最新の情報を収集し、常にこれをフォローし続けるとともに、各種講習会等 に参加し、スキルを磨くことが必要である。しかしながら、大学等で活躍するキャリ ア・コンサルタントには、個別相談をはじめとする大学等で行うべき業務があり、こ れに多くの時間が費やされることから、キャリア・コンサルタントが、自分の力のみ でこれを行うことには非常な困難が伴うと考えられる。
このため、以下のような「向上プログラム」を行い、大学等で活動しているキャリ ア・コンサルタントが、容易に必要な能力を身につけ、向上させることができるよう にすることが求められる。
①向上プログラムの対象者
大学等で活動しているキャリア・コンサルタントを対象とする。
キャリア・コンサルティング技能士(1 級・2 級)及び標準レベルのキャリア・コ ンサルタントを主な対象者とするが、大学等キャリア教育18を担う人材のレベルアッ プを図るという観点から、資格を有しない者であっても、大学等で実際にキャリア教 育を行っている者については排除しないこととする。
また、キャリア・コンサルタントが大学等で力を発揮していくためには、教学組織、
大学事務組織の理解も必要であり、平成23年1月に出された中央教育審議会の答申に おいても、教職員のカウンセリング知識・スキルの習得の必要性が指摘されているこ とから、一部のプログラムについては、教職員も受講できるものとする。
②向上プログラムの内容等
標準レベルのキャリア・コンサルタントに必要とされている能力に加えて、大学等 という固有の場(フィールド)において必要とされる能力を付与するためのプログラ
ムを中心とし、あわせて、教職員等がキャリア・コンサルティングについて理解をす る上で役に立つプログラムについても用意する。
具体的には、Ⅵの1の「大学等で活躍するキャリア・コンサルタントに求められる 能力」の図表 12 に掲げているスキル・知識を向上させるための講座を実施するが、
実施に当たっては、全ての知識・スキルが盛り込まれたプログラムとするのでなく、
モジュール化されたものとし、対象者の種類、キャリア・コンサルタントのレベル、
大学等の類型(幅広い活躍を求められているのか、それとも限られた範囲での活躍を 求められているのか等)等により、それぞれのキャリア・コンサルタントが、必要な プログラムを選び、必要なものをいくつか組み合わせて受講できるようにすることが のぞましい。
③プログラム実施にあたって留意すべきこと a.受講支援策
ヒアリング調査を行う中で、複数のキャリア・コンサルタントから、「大学等の正規 職員でないために、研修等の対象となりにくい」という問題が指摘された。
このため、(ⅰ)非正規職員であっても、参加することができるよう、キャリアセン ターや教育現場で実際にキャリア教育に携わっている者が対象である旨明示すること が求められる。
また、(ⅱ)業務の一環として認められるよう、文部科学省を通じて通知を出したり、
受講によって期待される効果を明記したりする等、通知の仕方を工夫すること、(ⅲ) 忙しいために参加できないようなことがないよう、大学等キャリアセンター業務が比 較的忙しくない時期を選ぶことのほか、(ⅳ)ある程度開催地域、開催回数を増やすこと 等も必要であろう。
さらに、(ⅴ)厚生労働省キャリア形成促進助成金(訓練等支援給付金)対象のキャ リア・コンサルタント能力評価試験に合格して資格を得たキャリア・コンサルタント のほとんどは、その資格を維持するためには、継続的に学習し、学習ポイントを獲得 することが必須とされているが、これらの者の受講インセンティブが増すよう、向上 プログラムの受講を学習ポイントとして認めるよう試験実施団体に働きかけを行うこ とも有効であろう。
b.継続性
大学生等の就職をめぐっては、年によって就職に係るルールが変わることもあり、
これによって企業の募集採用活動や学生の就職活動状況が変わることがあるほか、
ルールの根拠等について正確なところが把握されていないことも見受けられる。
また、ある年から、新たな就職支援施策が講じられることもあるほか、労働法制度 も改正されることがあるものであり、職業や業界をめぐる状況についても、経済情勢 等によって逐次変化するものであることから、知識面について言えば、最新の役に立 つ情報をフォローしていくためには、継続的にプログラムを提供していくことが必要
である。
また、スキルについても、一度身につければ、それでよいというものではなく、不 断にブラッシュアップする必要があるものである。
c.教材等
向上プログラム実施にあたっては、適切な教材を作成し、使用することが必要であ るが、特に、職業情報・業界情報、労働法制度、就職に係るルール等については、テ キストに正確でかつ最新の状況を盛り込むとともに、使いやすいものとする等、工夫 をすることがのぞまれる。
(2)向上プログラム以外の支援策
①好事例の提供
向上プログラム以外でも、キャリア・コンサルタントが大学等に有効な働きかけを 行った例や、必要な情報を的確に提供した例、その他個別に有効な指導を行った例等、
好事例を収集し、大学等で活動しているキャリア・コンサルタント等に広く提供して いくことが必要である。
②情報交換の場等の提供
また、向上プログラム実施時に併せて、情報交換の場を提供し、大学等で活動して いるキャリア・コンサルタント間で、各大学等の取組状況や課題等について、最新の 情報を交換し合う機会を設けることがのぞましい。
さらに、個別相談スキルをはじめ、さまざまなスキルに関して、ふりかえりを行い、
不断に改善を図っていくことが求められることから、事例相談会等の機会についても 提供していくことが求められる。
③キャリア・コンサルタント情報提供サイト
平成24年度予算案には、「キャリア・コンサルタント情報提供サイト」が盛り込ま れ、キャリア・コンサルタントについての情報を具体的にわかりやすく提供すること とされているところである。そのサイトにおいて、(ⅰ)キャリア・コンサルタントとい うものが、どのような学習をし、どう活用できる者であるのか、わかりやすく示すと
ともに、(ⅱ)キャリア・コンサルタントの個人情報の取扱いに配慮しつつ、その得意分
野や実績についての個別具体的な情報を提供していくことがのぞまれる。さらに、そ のサイトにおいて、(ⅲ)キャリア・コンサルタントとなることを希望する者に対して学 習のしかたを示すとともに、(ⅳ)既にキャリア・コンサルタントとして活動している者 に対しても、継続的に学習していくうえで役に立つプログラムや講座の情報を提供し ていくことが求められる。今回実施を提言している「向上プログラム」が実施された 暁には、掲載対象とすべきである。