第 3 章 場と持続力の関係 23
3.5 場の評価項目
本節では、図3.1[49]に示すように、知識システムの3つのサブ階層システム概念に基づく3つの“場の
評価(研究室評価)”と、“システム性能の評価”についての具体的な評価項目を検討する。また“学生の成長”
について評価尺度と評価項目を提案する。
前節で導入した「Intelligence」、「Involvement」、「Imagination」に対応して「集成場」、「交流場」、「想像 場」という概念を導入する。以下では、知識創造システムでデザインされた「場の評価」、その場から生み 出された創発成果としての「システム性能評価」について、これまでのシステム概念に基づいた評価観点 を示すとともに評価項目を示す。Intelligenceには客観、論理、経験、知能に関わった「原理・事象の領域」
を対応させ集成場という名で呼び、評価基準は集成能力として、「研究室の知識収集・管理能力」を評価す るための評価観点を以下のように定義する。
• インフラ=図書館、ネットワーク
• アクター=教員、学生
3.5. 場の評価項目 27
• 知識情報=科学的な知識・情報
Involvementには興味、感情、信頼、共感などに関わった「社会・関係の領域」を対応させ交流場という名
で呼び、評価基準は交流能力として、「研究室の知識伝達・伝承能力」を評価するための評価観点を以下の ように定義する。
• インフラ=講義室、ゼミ室、実験室
• アクター=教員、学生
• 知識情報=経験に基づく知識・情報
Imaginationには主観、直感、知恵、記憶に関わった「認識・心理の領域」を対応させ想像場という名でよ
び、評価基準は想像能力として「研究室の知識獲得・創造能力」を評価するための評価観点を以下のように 定義する。
• インフラ=ブース、寮、喫茶室
• アクター=教員、学生
• 知識情報=洞察に基づく知識・情報
そして以上の場の評価概念と野中らによる「よい場」の条件とを以下のように対応させている。
• 集成場
– インフラ :境界は開かれているか
– アクター :意図、目的、方向性、使命等を持っているか – 情 報 :内部からと外部からの2つの視点を持っているか
• 交流場
– インフラ :異種混合が行なわれるか
– アクター :メンバーのコミットメントが存在するか – 情 報 :物事の本質に関する対話が行なわれるか
• 想像場
– インフラ :メンバーが直接経験をすることができるか
– アクター :形式知を実践を通じて自己に体化することができるか – 情 報 :即興的な相互作用が可能か
また、弓野[50]による「生きる力の育成を目指すための学習設計」の16項目のうち9項目がアクターの能 力に対応している。
1. 深い理解と多角的な思考力(集成場のアクター)
2. 創造力(想像場のアクター)
3. リーダーシップとフォロワーシップ(交流場のアクター)
4. 表現力(交流場のアクター)
5. 自己と個性
6. 学習に対する責任感(集成場のアクター)
7. 共感力と支援力(交流場のアクター)
8. 好奇心(集成場のアクター)
9. 勇気 10. 自己効力感
11. 集中力(想像場のアクター)
12. 自主的態度(想像場のアクター)
13. 競争的態度と共同的態度 14. 環境と調和を実践する態度
15. 国際理解教育で伸ばす知識・能力・態度
16. 地域特性及び問題の理解とそれを解決する能力・態度
以上を基にした評価項目を以下に示す。集成場のコンセプトは、「研究室の知識収集・管理能力に関する調 査」とし、以下の評価項目を作成した。
• インフラ
1. 研究に必要な図書・雑誌・文献、実験装置は整備されているか、あるいは、すぐに入手できるか。
2. 教員・先輩の研究論文、ゼミ・実験の記録等は整備されているか。
3. 外部情報の収集システム、ネットワークシステムは完備されているか。
• アクター
1. メンバーは科学や社会に強い関心を持っているか。
2. メンバーは研究室のミッションを理解し、必要な情報収集・管理に努めているか。
3. メンバーは多様な情報を用いて研究開発を実施しているか。
• 情 報
1. 科学技術の現状、研究の動向、学会の傾向、重点領域に関する情報を収集整備しているか。
2. 政策、規制、社会、経済、環境等、研究の発展・制限に関する情報を収集整備しているか。
3. 研究計画・開発マネジメント、知財マネジメントに関する情報を収集整備しているか。
交流場のコンセプトは、「研究室の知識伝達・伝承能力に関する調査」とし、以下の評価項目を作成した。
• インフラ
1. 意見交換の場所(ゼミ室、コラボ、リフレッシュルーム等)は整備されているか。
2. 教育プログラム(研究指導、外部研究者との交流等)は確立されているか。
3. 意見交換システム、グループウェア等は整備されているか。
• アクター
1. リーダーシップは発揮されているか。
3.6. システム性能の評価項目 29