• 検索結果がありません。

基本評価

ドキュメント内 研究 (ページ 57-69)

3.5 評価

3.5.1 基本評価

3 章 入出力スループットの向上方式 47

表 3.1 計算機の能力

プロセッサ 2.5GHz 4core (AHCI v1.31) メモリ 8GB

外部記憶装置 5400rpm SATA/600 HDD 表 3.2 測定パタン

調整対象プロセス数 2, 3, 4, 5

入出力サイズ[KB] 0.5, 4, 8, 16, 32

3 章 入出力スループットの向上方式 48

により,調整対象プロセスの数による調整能力の変化と入出力サイズによる影響を明らかに する.

最後に,測定データの扱いについて述べる.HDDは,入出力要求を受け取ってない時間 が続くと,省電力化のためにディスクの回転速度を低下または回転を停止する.このため,

プロセスの起動直後は,実I/O時間が安定しない.また,プロセッサスケジューラによって,

プロセスの終了時刻にばらつきが発生する.このため,一部のプロセスが終了すると,入出 力要求の発行数が少なくなってしまい,入出力スループットが低下し得る.そこで,これら の影響を除くために,測定データとして,プロセス起動後の60秒間とプロセス終了前の60 秒間を除いた期間の平均値を用いた.なお,プロセスの実行時間は,要求入出力性能によっ て変化するものの,236秒〜647秒であった.

3.5.2 入出力スループット

各方式の入出力スループットを図3.2に示す.どの方式においても,調整対象プロセスの 数が多くなるほど,入出力スループットが低下する傾向がある.この傾向は入出力サイズに よらない.そこで,以降は入出力サイズ8KBについて述べる.各方式の入出力スループッ トを図3.3に示す.また,この場合の平均の許容値を図3.4に示す.図3.3と図3.4より以下 がわかる.

(1)提案方式は,基本方式に比べて入出力スループットを向上できる.さらに,調整対象 プロセスが多い場合にも入出力スループットを維持できる.具体的には,調整対象プロセス 数が2における入出力スループットは,基本方式では186IOPSに対し,入出力順序保証方式

では230IOPS,待ち状態プロセス除外方式では237IOPSと高い.また,調整対象プロセス

数が2から4になると,基本方式での入出力スループットは0.61倍に低下する.一方で,入 出力順序保証方式では0.93倍,待ち状態プロセス除外方式では0.96倍程度である.さらに,

このとき,待ち状態プロセス除外方式の入出力スループットは基本方式の2.0倍になる.

(2)提案方式は,基本方式に比べて許容値を大きくできる.さらに,調整対象プロセスが 多くなった場合に許容値の減少を抑えることができる.具体的には,調整対象プロセス数が 2における許容値は,基本方式では4.0に対し,入出力順序保証方式では8.0,待ち状態プロ セス除外方式では9.2と大きい.また,調整対象プロセス数が2から4になると,基本方式

3 章 入出力スループットの向上方式 49

(A)基本方式

(B)入出力順序保証方式

3 章 入出力スループットの向上方式 50

(C)待ち状態プロセス除外方式

図 3.2 平均の入出力スループット

の許容値の減少量は3.0である.一方で,入出力順序保証方式での減少量は2.0,待ち状態プ ロセス除外方式での減少量は1.0と小さく抑えることができる.

また,許容値と入出力スループットの関係を図3.5に示す.図3.5より次のことがわかる.

(3)許容値が5以上のとき,高い入出力スループットを維持できる.また,許容値が2以下 のとき,入出力スループットが急激に低下する.具体的には,許容値5.0のときの入出力ス ループットは200IOPSであり,許容値9.2まで大きくなった場合においても237IOPS(1.18 倍)程度である.一方で,許容値2.0のとき,147IOPS(0.73倍)となり,許容値1.0のとき,

114IOPS(0.57倍)と大きく低下してしまう.したがって,入出力順序保証方式と待ち状態

プロセス除外方式は,既存方式よりも許容値を大きくすることができ,入出力スループット を2倍程度に向上できる.

3 章 入出力スループットの向上方式 51

0 100 200 300

2 3 4 5

T h ro u g h p u t [I O P S ]

Number of regulation processes Basic method

I/O order guarantee method

Waiting process exclusion method

図 3.3 平均の入出力スループット (入出力サイズ8KB)

0 5 10

2 3 4 5

T o le ra n ce

Number of regulation processes Basic method

I/O order guarantee method

Waiting process exclusion method

図 3.4 平均の許容値 (入出力サイズ8KB)

3 章 入出力スループットの向上方式 52

0 50 100 150 200 250

0 2 4 6 8 10

T h ro u g h p u t [I O P S ]

Tolerance Basic method

I/O order guarantee method

Waiting process exclusion method

図 3.5 許容値と入出力スループット (入出力サイズ8KB)

3.5.3 入出力性能の調整精度

各方式の調整精度を図3.6に示す.図3.6より,次のことがわかる.

(1)提案方式は,基本方式に比べて調整精度が低いものの,その程度は10%以下である.

また,調整対象プロセスが多くなるほど調整精度が改善する.具体的には,調整対象プロセ ス数2における基本方式の調整精度は1.02である.一方で,入出力順序保証方式と待ち状態 プロセス除外方式はどちらも1.09である.また,調整対象プロセスが5のとき,入出力順序 保証方式の調整精度は1.04,待ち状態プロセス除外方式では1.08に改善する.

また,許容値と調整精度の関係を図3.7に示す.図3.7より次のことがわかる.

(2)許容値を大きくすると調整精度が低下する.具体的には,許容値が2を超えると,許 容値に比例して調整精度が低下する.これは次の理由による.外部記憶装置がHDDである ため,回転待ち時間やシーク時間によって実I/O時間にばらつきが生じる.調整対象プロセ スの実I/O時間が短い場合,本調整法の遅延処理によって理想の入出力時間まで待たされ る.つまり調整精度は1に近い値になる.一方で,実I/O時間が長い場合,理想の入出力時 間を超過すると調整精度が1より大きくなってしまう.したがって,実I/O時間の長時間化

3 章 入出力スループットの向上方式 53

0.5 1.0 1.5

2 3 4 5

R eg u la ti o n ra ti o

Number of regulation processes Basic method

I/O order guarantee method

Waiting process exclusion method

図 3.6 平均の調整精度(入出力サイズ8KB)

0.9 1.0 1.1

0 2 4 6 8 10

R ag u la ti o n r at io

Tolerance Basic method

I/O order guarantee method

Waiting process exclusion method Goal

図 3.7 許容値と調整精度 (入出力サイズ8KB)

3 章 入出力スループットの向上方式 54

0.9 1.0 1.1

0 50 100 150 200 250

R ag u la ti o n r at io

Throughput [IOPS]

Basic method

I/O order guarantee method

Waiting process exclusion method Goal

図 3.8 入出力スループットと調整精度 (入出力サイズ8KB)

によって理想の入出力時間を超過する頻度が高いほど調整精度が低下する.ここで,許容値 が大きいほど,他プロセスの入出力要求による待ち時間が長い.つまり,調整対象プロセス の実I/O処理開始時における理想の入出力時間までの残り時間が少ない.この結果,実I/O 時間のばらつきによって理想の入出力時間を超過しやすくなる.このように,許容値が大き いほど調整精度が低下しやすい.

したがって,許容値を大きくする提案方式は,基本方式に比べて,外部記憶装置の処理能 力の変動による影響を受けやすく,調整精度が低下しやすい.

3.5.4 入出力スループットと調整精度の関係

入出力スループットと調整精度の関係を図3.8に示す.図3.8より,提案方式では,基本 方式に比べて入出力スループットが向上する.例えば,調整対象プロセスが4のとき,待ち 状態プロセス除外方式における入出力スループットは229IOPSであり,基本方式における

114IOPSの約2.0倍になる.一方,基本方式の調整精度は1.00であるものの,待ち状態プロ

セス除外方式では1.08になってしまう.ただし,調整精度の低下は10%以下と少ない.

3 章 入出力スループットの向上方式 55

表 3.3 処理時間

ソフトウェア 方式 処理時間

ClamAV tar 実I/O時間

tar 基本方式 N/A 22分47秒 6.1ミリ秒

Mplayer & ClamAV 基本方式 22分25秒 18分26秒 4.8ミリ秒

& tar (0.81) (0.78)

入出力順序保証方式 20分53秒 15分26秒 3.9ミリ秒 ( )はtarの処理時間 (0.68) (0.63) を1とした場合の比 待ち状態プロセス除外方式 20分49秒 15分16秒 3.8ミリ秒

(0.67) (0.63)

3.5.5 有効な適用事例

提案方式は,基本方式に比べて入出力スループットを向上できる.これにより,プロセス の処理時間を短縮できる.この効果を明らかにするため,次のサービスを同時に走行させ,

処理時間を比較する.

(A)動画再生ソフトウェアMplayer:MP4の動画を再生.

(B)アーカイブ作成コマンドtar:カーネルのソースファイルをgzip形式で圧縮してアー カイブ作成.

(C)ウィルス対策ソフトウェアClamAV:/var以下のファイルに対するウィルススキャン.

ここで,Mplayerとtarコマンドは,利用者が直接操作すると想定し,動作速度を安定さ せるために,要求入出力性能20%を設定した.

ClamAVとtarコマンドの処理時間および実I/O時間を表3.3に示す.表3.3より,次のこ とがわかる.

(1)いずれの提案方式も,基本方式に比べ,入出力性能の調整対象でないClamAVの処 理時間を短縮できる.具体的には,入出力順序保証方式では20分53秒,待ち状態プロセス 除外方式では20分49秒であり,基本方式における22分25秒よりも短い.これは入出力ス ループットを向上できたためである.

(2)いずれの提案方式も,基本方式に比べ,調整対象であるtarコマンドの処理時間を短

3 章 入出力スループットの向上方式 56

縮できる.具体的には,入出力順序保証方式では15分26秒,待ち状態プロセス除外方式で は15分16秒であり,基本方式における18分26秒よりも短い.なお,tarコマンドのみの場 合は,22分47秒であり最も長い.これは次の理由による.tarコマンドのみを走行させた場 合,実I/O時間は6.1ミリ秒である.この場合,外部記憶装置はtarコマンドが発行する入 出力要求のみを受け取って処理する.このため,実I/O時間は式2.4の(T3−T2)となり長 い.一方,同時に複数サービスを走行させた場合,基本方式の実I/O時間は4.8ミリ秒と短 い.この場合,外部記憶装置は各サービスが発行する入出力要求を複数受け取る.このため,

受け取る入出力要求数はtarコマンドのみを走行させた場合(1個)より多い.つまり,入 出力要求を連続して処理できるようになり,実I/O時間は式2.4の(T3の間隔)となり短縮さ れる.さらに,入出力性能の調整法は,いずれの方式も実I/O時間を基準に入出力時間を調 整する.このため,実I/O時間が短くなると調整後の入出力時間も短くなり,その結果tar コマンドの処理時間も短くなる.具体的には,複数サービスを走行させた場合の基本方式で は,実I/O時間がtarコマンドのみ走行させた場合に比べ0.78倍,処理時間が0.81倍に短く なる.さらに,提案方式では許容値が基本方式よりも大きいため,実I/O時間やtarコマン ドの処理時間がさらに短くなる.具体的には,入出力順序保証方式ではtarコマンドのみを 走行させた場合に比べて実I/O時間0.63倍,処理時間0.68倍と短くなる.待ち状態プロセ ス除外方式も同様である.

(3)いずれのサービスも,I/Oバウンドの処理内容である.また,いずれの方式も,tarコ マンドのみを走行させた場合に対し,実I/O時間の短縮率とtarコマンドの処理時間の短縮 率は同様である.このため,いずれの方式も,調整対象サービスの入出力性能の調整精度は 同様である.

また,調整対象でないプロセス数の増加が調整精度に与える影響を評価するために,Mplayer とtarコマンドおよびClamAVを同時に走行させた上で,Mplayerの走行数を変化させた.

表3.3と同様にMplayerのプロセスのうち一つとtarには要求入出力性能20%を設定した.

走行数と調整精度の関係を表3.4に示す.表3.4より,調整対象でないプロセス数が増えて も,どちらの提案方式においても,調整精度の変化は非常に小さい.したがって,提案方式 は調整対象サービスの入出力時間を一定に保つことができるといえる.

さらに,提案方式が他プロセスの多少に関わらず,入出力時間を一定に保つことができる ことを評価するために,Linux(Ubuntu 18.04.3)のデッドラインスケジューラと比較する.

ドキュメント内 研究 (ページ 57-69)

関連したドキュメント