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6-1 地方自治体の歳入歳出構造

2007年度における英国の地方自治体の歳出総額は1,557億ポンドとなっており、国を 含めた全公共支出の3割弱(28.9%)を占める24

地方自治体の会計は、経常会計(Revenue Account)及び資本会計(Capital Account)

に大きく二分される25。このうち経常会計は、一般経常会計( General Fund Revenue Account)、商業会計(Trading Services Revenue Account)、住宅会計(Housing Revenue Account)の3つから構成される。

会計年度は日本と同様、4月1日に始まり、3月31日に終わる。

(1) 経常会計(Revenue Account)

① 一般経常会計(General Fund Revenue Account)

英国の地方自治体の一般経常会計では、主に利用料及び手数料収入は、対応する 歳出と相殺され結果的に歳出から控除した形で計上される。また、英国では一般経常 会計と資本会計という区分が導入されていることから、元本償還費は一般経常会計とし ては計上せず、利払費と減価償却費が資本会計に計上される。

ア 経常支出(Revenue Expenditure / Current Expenditure)

経常支出は職員の人件費や、施設維持費、サービス費などの経常的経費に関する もので、主に地方交付金(Revenue Support Grant)等の政府補助金やノン・ドメスティ ック・レイト、カウンシル税などを財源としている。経常支出はその性質によって、様〄

な定義がある。

・ 経常支出(Current Expenditure) -すべての経常的経費に係る支出。

・ 純経常支出(Net Current Expenditure) - 経常支出から対応する使用料、手 数料、その他の諸収入分を相殺し控除したもの。

・ 経常(歳入)支出(Revenue Expenditure)- 純経常支出から AEF26外特定補助 金を控除し、他会計繰出金を加えたもの。

・ 純経常(歳入)支出(Net Revenue Expenditure)- 経常支出から AEF 内特定 補助金を控除した支出。

2007年度のイングランドにおける純経常支出について見てみると、図表1のとおり教 育分野(37%)、社会福祉分野(17%)、住宅(14%)及び警察(11%)の分野が大きな 割合を占めている。

24 H M Treasury, Public Expenditure Statistical analyses 2008, p51, p 84

25 この他に地方税のカウンシル・タックスの徴税自治体にはその徴収に係る徴収基金会計(Collection Fund Account)や年金基金会計(Pension Funds Account)がある。

26 統合外部財源(Aggregate External Finance)の略称。地方交付金、ノン・ドメスティック・レイト、AEF 内特定 補助金で構成され、地方自治体が自ら所掌する事務に係る財源に充てられる。

【図表6-1 2003年度~2007年度 純経常支出(イングランド)/目的別内訳】27

【単位:百万ポンド】

2003 年度 2004 年度 2005 年度 2006 年度 2007 年度 構成比 教育(Education) 31,293 33,290 36,020 37,972 39,620 37.3 % 社会福祉(Social Sevices) 14,870 16,310 17,359 18,094 18,469 17.4%

住宅(特別会計を除く)

(Housing(excluding Husing Revenue Account))

8,665 13,288 14,066 14,963 15,246 14.3%

警察(Police) 9,076 10,206 10,957 11,651 11,609 10.9%

文化・環境・計画

(Cultural、environment and planning)

7,888 8,519 9,162 9,651 9,902 9.31%

道路・交通

(Highways and transport)

4,434 4,673 4,843 5,313 5,600 5.3%

庁舎管理等(Central services) 2,831 2,953 2,432 3,453 3,350 3.2%

消防・救急(Fire&rescue) 1,738 1,925 2,040 2,193 2,227 2.1%

裁判(Courts) 437 460 58 62 62 0.1%

その他(Others) 120 275 206 159 248 0.2%

合計 81,353 91,902 97,142 103,513 106,333

イ 経常収入

経常収入のうち、地方交付金(Revenue Support Grant)、ノン・ドメスティック・レイト

(Non Domestic Rate=NDR)、警察補助金、その他政府補助金(AEF 内特定補助金 及び GLA 補助金)は中央政府から地方自治体に交付される財源であり、それぞれ図 表6-2のとおり、3%、19%、4%、44%の割合を占めている。一方、地方自治体の 主な自主財源(地方税)であるカウンシル・タックス(Council Tax)は24%にとどまって いる。このように、英国の地方自治体は財源の多くを政府からの補助金等に依存して おり、財政上の自立性はきわめて限られている。

2006年度から義務教育関係経費の特定財源化が行われ、それに相当する額が地 方交付金から削減された。英国の地方自治体の歳出に占める義務教育関係経費の比重 は非常に高く40%弱を占めていたため、この制度改正により地方交付金の総額は、

2005年度の約267億ポンドから2006年度は約34億ポンドへと約87%減 となった。

なお、使用料・手数料等の諸収入は歳出と相殺し控除されているため、計上されて いない。

27 DCLG, Local Government Financial Statistics England No18 2008, Table3,2a, P60 2007年度については予算額

【図表6-2 2003年度~2007年度における経常収入の財源内訳(イングランド)】28

(単位:百万ポンド) 2003 年度 2004 年度 2005 年度 2006 年度 2007 年度 構成比 地方交付金

(Revenue Support Grant) 24,215 26,964 26,663 3,378 3,105

3.2%

ノン・ドメスティック・レイト

(Redistributed business rates) 15,611 15,004 18,004 17,506 18,506

19.0%

警察補助金(Police Grant) 4,079 4,168 4,353 3,936 4,028 4.1%

AEF 内特定補助金

(Specific grants inside AEF) 13,447 14,090 14,785 41,771 43,035

44.2%

GLA補助金

(General GreaterLondon Authority Grant) 36 36 37 38 38

0.1%

カウンシル・タックス(Council Tax) 18,946 20,299 21,315 22,453 23,608 24.3 %

その他 2,597 3,234 3,847 5,290 4,992 5.1%

合計 78,931 83,795 89,004 94,372 97,312

② 商業会計(Trading Services Revenue Account)

地方自治体は、様々な商業的なサービスを提供しており、これらは、基本的に はサービスの受け手の支払いによって成り立つ性質を有するものである。

商業会計では、手数料や使用料収入及び売却収入を伴う当該地方自治体を含め た地方自治体向け及びそれ以外の一般に対する行政サービスを対象とする。具体 的には、地方自治体向けサービスとしては、建物の清掃や法務、廃棄物処理等が あり、地方自治体以外の一般向けサービスとしては空港や劇場、公営市場の運営 に関するものがある。

2006年度のイングランドにおける商業会計の歳出は約53億ポンド、歳入 は約56億ポンドであった。29

③ 住宅会計(Housing Revenue Account)

住宅会計は、地方自治体が所有する住宅に関する会計であり、地方自治体の納 税者に直接賃貸され、賃貸料と中央政府からの補助金でまかなわれる。住宅会計 の大きな特徴は、地方自治体がその裁量で一般経常会計との間で資金の移動を行 えないことである。すなわち、住宅会計の収入は住宅以外の他の用途に用いるこ とはできず、また、住宅会計内の住宅関連の収入以外は住宅会計の支出として原 則認められない。

イングランドにおける2006年度の歳出は約82億ポンドで、歳入は約81 億ポンドであった。30

28DCLG, Local Government Financial Statistics England No18 2008, Table3,2a, P60 2007年度については予算額

29 DCLG, Local Government Financial Statistics England No18 2008, P79, TableC1gP171

30 DCLG, Local Government Financial Statistics England No18 2008, P80

(2) 資本会計(Capital Account)

① 資本支出

資本支出とは、土地の取得、道路及び建物、その他の構造物の取得、建設等に係る 支出を指し、2007年の歳出規模はイングランド全体で約188億ポンドとなっており、目 的別では住宅(24%)、教育(22%)、交通(22%)が大きな割合を占めている(図表6-

3)。

【図表6-3 2003年度~2007年度資本支出(イングランド)目的別内訳】31

(単位:百万ポンド) 2003 年度 2004 年度 2005 年度 2006 年度 2007 年度 構成比 住宅(Housing) 3,485 3,987 4,534 4,507 4,468 23.8%

教育(Education) 2,780 3,087 3,492 3,442 4,187 22.3%

交通(Transport) 2,552 2,905 3,461 3,480 4,034 21.5%

図書館、文化、遺産

(Libraries, culture & heritage) 196 227 329 296 355 1.9%

スポーツ、レクリエーション

(Sport & recreation) 263 306 424 415 704 3.8%

警察(Police) 513 561 606 531 654 3.5%

社会福祉(Social services) 260 284 387 364 442 2.3%

消防、救急(Fire & rescue) 68 82 96 126 151 0.8%

農業・漁業(Agriculture & fisheries) 72 66 93 96 115 0.6%

裁判(Magistrates courts) 37 46 1 0 0 0.0%

その他(Other) 2,056 2,725 3,218 3,052 3,664 19.5%

合計 12,282 14,276 16,641 16,307 18,776

② 資本収入

資本収入の内訳は図表6-4のとおりで、2006年度において借入金が全体の34%を 占めている。32資本補助金は、インフラ整備、地域再生など特定の目的のために中央政 府等から交付されるもので、資本収入総額の25%を占めている。なお、経常収入を資 本収入に繰入れることは可能だが、資本収入を経常収入に繰入れることはできない。

PFI など民間資本を活用した社会資本の整備・改良により、地方自治体もこうしたスキ ームを活用することによって初期投資の負担を軽減するとともに、効率的に社会資本の 整備を行っている(8-4参照)。

31 DCLG, Local Government Financial Statistics England No18 2008, Table4,1c, P88 2007年度については予算額

32 BCA/SCE( R) Single Capital Pot ,SCA/SCE( R) Separate Programme Element,Other Borrowing and credit arrangements not supported by central governmentの3つの合計として計算している。

【図表6-4 2003年度~2006年度 資本収入(イングランド)内訳】33

単位:百万ポンド)財源の内訳 2003 年度 2004 年度 2005 年度 2006 年度 構成比 資本補助金(Central government grants) 2,642 3,196 3,909 4,083 24.8%

資本売却収入(Use of usable capital receipts) 1,988 2,647 2,812 2,628 16.0%

経常収入繰入金

(Revenue financing of capital expenditure) 2,655 2,757 2,568 2,763 16.8%

借入金 3,910 4,724 6,130 5,655 34.3%

その他 1,131 1,080 1,378 1,343 8.2%

合計 12,326 14,404 16,797 16,472

6-2 地方税制度

(1) 地方税の歴史

1990年まで存続したレイト(Rates)は、「1966年レイト法(Rates Act 1966)」によって 居住用資産と事業用資産が区分され、それぞれドメスティック・レイト(Domestic Rate)、ノ ン・ドメスティック・レイト(Non Domestic Rate)として扱われていた。

その後、ドメスティック・レイトは1990年にサッチャー保守党政権によって廃止され、コミ ュニティ・チャージ(通称人頭税(Poll Tax))が導入されるとともに、ノン・ドメスティック・レイト は国税化され、税が一旦国庫に納められた後、各地方自治体の成人人口数に応じて配 分されることとなった (6-3参照)。

コミュニティ・チャージの導入に対しては各地で抗議活動が相次ぎ、1990年の下院補欠 選挙及び地方選挙で保守党が大敗したのを受けて、サッチャー政権は退陣することとなっ た。そして、同年11月に誕生したメージャー政権の下で1993年にコミュニティ・チャージ は廃止され、新たにカウンシル・タックスが導入された。

(2) カウンシル・タックス

① 基本的性格

同税は、資産税の側面と、人頭税(住民税)の側面を併せ持っている。税額は1つの居 住用資産に成人2人の居住を基本として算出される。これにより、成人1人のみが居住 する場合は課税額が25%減免される一方、居住する成人が3人以上であっても税額は 変わらない仕組みとなっている。

② 資産評価

居住用資産の評価は、イングランド及びウェールズにおいては内国歳入庁評価事務所 (Inland Revenue’s Valuation Office Agency)により行われる。各資産はA~Hまでの8つ の価格帯(Bands)に区分され、価格帯間の税額の比率は「1992年地方財政法(Local Government Finance Act 1992)」により決められている。

なお、イングランドについては現在も1991年4月時点での評価額が課税基準とされて いる。「2003年地方自治法(Local Government Act 2003)」によって10年に1回評価 替えを行うよう定められたものの、資産の再評価作業については、再評価により高価格 帯へ価格帯が変更されてしまう恐れのある住民等の反発やその他政治的な理由により

33 DCLG, Local Government Financial Statistics England No18 2008, Table4,2a, P95 2007年度については予算額

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