片 瀬 一 男
4. 地域移動の帰結
IC型に該当する者は158名いるが,出身地(15歳居住地)は北海道(18人),茨城(8人),
福島・栃木(各10人)など,北関東から北海道が多い。学歴は中学卒が21.5%,高校卒が
59.5%を占め,また初職も男性は生産現場職,女性は事務職が多いが,いずれも勤務先は
53人(「不明」をのぞくと60%)が従業員300人未満の中小企業である。加瀬(1997)など も指摘するように,高度経済成長期の集団就職は,都市部の中卒・高卒者が大企業に優先的 に採用され,人手不足になった中小・零細企業に対して,近代的な労使慣行(労働契約の締 結など)の定着を企図した労働行政によって計画的に実施されてきた。したがって,集団就 職で首都圏に流入した者の初職勤務先は比較的,小規模に偏ることになる4。
表4 男女別・コーホート別・移動類型別にみた高等教育経験率
コーホート 移動類型 高等教育経験
男性 女性
1 A首都圏流入 88.6 81.5 B首都圏非移動 56.4 36.4 C非首都圏非移動 16.7 22.0
全体 52.5 35.6
II A首都圏流入 95.0 96.2 B首都圏非移動 58.3 59.5 C非首都圏非移動 35.0 44.1
全体 60.8 61.2
III A首都圏流入 100.0 93.1 B首都圏非移動 63.2 57.9 C非首都圏非移動 62.2 61.8
全体 67.7 62.7
IV A首都圏流入 100.0 100.0 B首都圏非移動 79.6 72.1 C非首都圏非移動 59.1 50.0
全体 78.9 74.5
表5 高等教育経験の規定因
独立変数 従属変数: 高等教育経験
B B
男性ダミー 0.574*** 0.564***
父親学歴(教育年数) 0.250*** 0.248***
中学3年次成績 0.780*** 0.789***
首都圏流入ダミー 2.556*** 2.664***
首都圏非移動ダミー −0.007 0.399 非首都圏非移動ダミー (基準カテゴリー)
コーホートIダミー (基準カテゴリー)
コーホートIIダミー 0.491** 0.652*
コーホートIIIダミー 0.614*** 1.498***
コーホートIVダミー 1.155*** 1.160**
コーホートII×首都圏流入 −0.007 コーホートIII×首都圏流入 −0.835 コーホートIV×首都圏流入 17.146 コーホートII×首都圏非移動 −0.292 コーホートIII×首都圏非移動 −1.266***
コーホートIV×首都圏非移動 −0.081 定数 −5.739*** −5.987***
−2対数尤度 1,771.455 1,754.917
Cox-Snell R2 0.304 0.31
Nagelkerke R2 0.423 0.431
この時期(第二の教育拡大期に当たる1989年から2000年にかけて),相対的に高等教育進 学率が低下していたことになる。
次に,地域移動が初職達成にもたらす影響をみてみよう。まず表6では性別・コーホート を分けたうえで地域移動類型ごとに初職における専門職入職率をみた。この表によれば,ど のコーホートでも,専門職入職率もまた首都圏流入層が最も高い。とくに第IIIコーホート の男女,第IVコーホートの男子では初職での専門職入職率が6割を示している。これもこ の層における高等教育経験率の反映と言える。
他方,表7では,初職における大企業入社を地位達成の指標として,同様に性別・コーホー トを分けたうえで地域移動類型ごとに初職における大企業入社率をみた。大企業入社という 点でも,首都圏流入層がおおむね優位に立っている。とくにもっとも若い第IVコーホート では,男性の40%,女性の44%が大企業入社をしており,4つの移動類型で最も高い。そ の一方で女性の第Iコーホートは,移動類型に関わらず高い大企業入社率を示す。これにつ いてはこの当時の女性の入社経路にも着目した分析が必要であろう。
最後に初職での専門職入職と大企業入社を従属変数とした二項ロジスティック回帰分析を 行った。その結果は表8に示した。この表によれば,専門職入職にも大企業入社にも高等教 育経験が有意な正の効果をもったが,移動類型はいずれにも影響していなかった。ただ,表
表6 男女別・コーホート別・移動類型別にみた初職専門職率
コーホート 移動類型 初職専門職
男性 女性
I A首都圏流入 34.8 59.1 B首都圏非移動 16.7 35.7 C非首都圏非移動 10.3 34.3
全体 17.8 39.0
II A首都圏流入 45.0 42.1 B首都圏非移動 24.7 42.6 C非首都圏非移動 17.6 60.0
全体 27.2 45.1
III A首都圏流入 60.0 64.3 B首都圏非移動 27.1 37.2 C非首都圏非移動 14.3 38.1
全体 28.8 40.5
IV A首都圏流入 60.0 20.0 B首都圏非移動 20.7 37.0 C非首都圏非移動 9.1 25.0
全体 22.2 32.5
5で見たように移動類型が高等教育経験に効果をもち,首都圏移動はコーホートにかかわり なく高等教育経験率を高めていることも勘案するならば,首都圏移動は高等教育経験を媒介 に専門職入職や大企業入職に対して間接的な効果をもっていることも推測される。
表7 男女別・コーホート別・移動類型別にみた大企業入社率
コーホート 移動類型 初職大企業
男性 女性
I A首都圏流入 21.7 57.9 B首都圏非移動 12.3 44.2 C非首都圏非移動 8.5 43.4
全体 12.1 45.5
II A首都圏流入 38.1 27.8 B首都圏非移動 21.6 42.5 C非首都圏非移動 20.8 28.6
全体 23.2 39.2
III A首都圏流入 29.6 38.1 B首都圏非移動 19.0 42.5 C非首都圏非移動 32.1 44.0
全体 22.4 42.1
IV A首都圏流入 40.0 44.4 B首都圏非移動 22.4 41.5 C非首都圏非移動 20.0 37.5
全体 24.4 41.4
表8 初職(専門職・大企業入職)の規定因
独立変数 従 属 変 数
専門職入職 大企業入社
B B
男性ダミー 0.098 0.028
高等教育ダミー 1.445*** 0.577***
首都圏流入ダミー 0.083 −0.134 首都圏非移動ダミー −0.180 −0.161 非首都圏非移動ダミー (基準カテゴリー)
コーホートIダミー (基準カテゴリー)
コーホートIIダミー 0.242 −0.173*
コーホートIIIダミー 0.261 −0.307*
コーホートIVダミー 0.299 −0.501*
定数 −2.353*** −0.389***
−2対数尤度 1,363.67 1,647.377
Cox-Snell R2 0.081 0.022
Nagelkerke R2 0.124 0.03
また,コーホートは大企業入社に対してのみ負の効果をもち,若いコーホートほど大企業 に入りにくくなっている。さらにこの移動類型と性別・コーホートの交互作用項も入れたが
(図表は略),いずれも有意にならなかった。この点で,地域移動は初職達成を直接,是正す る働きに性差やコーホートによる違いはないとみてよい。