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地域住民のモビリティを支える

ドキュメント内 地域住民のモビリティを支える「 (ページ 68-180)

「新しい公共」の構造と可能性

第 1 節

コミュニティバスの運行が生み出す「新しい公共」の構造と可能性

─土浦市「キララちゃんバス」の取り組み─

第 2 節

レンタサイクルシステムの展開にみる「新しい公共」の構造と可能性

─札幌市「ポロクル」の活躍─

第 3 節

「レールライフプロジェクト」にみる「新しい公共」の構造と可能性

─富山市「レールライフプロジェクト」の取り組み─

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第5章 地域住民のモビリティを支える「新しい公共」の構造と可能性

先述したように、「まちづくり」の時代における地域住民のモビリティを確保する仕組みと は、交通サービスの供給者が需要者のモビリティを確保してやるという一方通行の関係にあ った。

しかし近年、全国各地では、行政や交通事業者に代わりあるいは補う形で、NPO 法人は じめ地域住民など「新しい公共」が、需要者でありながらも供給者となり、協働の関係で交 通サービスを生み出し展開している事例がみられる。その先進事例が、第4章で取り上げた 北上市口内町「NPO 法人くちない」の取り組みであり、本研究の重要な柱として掲げるも のである。「NPO法人くちない」という「新しい公共」による交通サービスの展開事例を踏 まえることで、今日まで展開されてきた公共交通や私的交通とは異なる、新たな可能性を持 つ交通のあり方を見出していきたい

そこで、北上市口内町「NPO 法人くちない」に次ぐ3 つの事例に着目し、調査を行うこ ととした。

第一に、土浦市のコミュニティバス「キララちゃんバス」である。全国各地で導入される コミュニティバスは、全てが必ずしも成功しているとは限らず、利用者の増加がみられない まま廃止に至る例もある。しかし土浦市のキララちゃんバスは他の事例とは異なる。地域住 民のモビリティを支えるのみならず、中心市街地の活性化にも図っている。しかも展開にあ たっては、多様な主体が協働の関係にあり、「新しい公共」の活躍がみられる。

第二に、札幌市レンタサイクル「ポロクル」である。「ポロクル」は地域住民のモビリティ を支えるのみならず、多彩なライフスタイルを創出している。サービスの展開にあたっては、

多様な主体が協働の関係にあり、「新しい公共」の活躍がみられる。

第三に、富山市の「レールライフプロジェクト」を取り上げる。富山市では、公共交通政 策を市の政策の中心に掲げ、「お団子と串」の都市構造を築くことによって、「コンパクトな まちづくり」を目指している。しかしコンパクトといっても、富山市の場合は単に公共交通 でつなげるという意味ではなく、中心市街地はじめ地域の拠点を育てる取り組みと連動して いる。ここにも「新しい公共」の活躍がみられる。さらに、先述した「コンパクトシティ」

政策において、なぜ公共交通が鍵を握るのか、本節で明らかにする。

各事例にみられる「新しい公共」の構造を整理すると同時に、地域住民のモビリティをい かにして支えているのか実態を明らかにする。そこから新たな可能性を持つ交通のあり方に ついて追究していく。

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第1節 コミュニティバスの運行が生み出す「新しい公共」の構造と可能性

─土浦市「キララちゃんバス」の取り組み─

1. 我が国におけるコミュニティバスの現状と課題

先述したように、全国各地でコミュニティバスの運行を開始する例がみられている。交通 空白地域・不便地域の解消を図るため、バス運行の維持・確保方策として、バス事業者との 協調による地域住民の要望にあったコミュニティバスの導入が進められているようである。

しかし、交通空白地域を埋めるという役割を持つかに思えるコミュニティバスであるが、

実際には課題を抱えている。松本 17によると、コミュニティバスは行政サービスの一環と して、税金を投入して運行されている。したがって、どちらかといえば対症療法的な発想や、

シビルミニマムとしての位置づけに終始してしまいがちである。しかし本来は、地域でのモ ビリティを確保するだけではなく、他の交通手段との連携によって地域公共交通全体の利便 性向上に結びつけ、さらには、まちづくりや村おこしへと発展させていく可能性を十分に秘 めた施策である。さらに、公共交通に直接かかわる課題になるとは限らず、中心市街地の活 性化などといった、交通の面からだけでは解決できないが、その解決に貢献できるような課 題も含まれる。

政府はこれまで全国各地のコミュニティバスについて調査しており、2008年には国土交通 省総合政策局が「地域公共交通の活性化・再生への事例集」を発表した(前出 : 表4─3・4

─4・4─5)。この事例集からも分かるように、全国各地ではさまざまな形態のコミュニティ バスが導入されている。行政が交通事業者に委託する形で運行する事例が目立つが、他方で NPO法人はじめ地域住民が中心となる事例もみられる。

そこで本研究で着目するのが、土浦市「キララちゃんバス」である。キララちゃんバスと は、中心市街地活性化を目的に土浦市内で運行されているコミュニティバスである。なんと いっても注目は、事業実施者がNPO 法人であるという点である。以下の日程で調査を行う こととした。

調査日時 第一回目 : 平成24年11月13日(火) ヒアリング調査 11月14日(水) 乗降調査

ヒアリング対象 NPO法人まちづくり活性化土浦 事務局長 小林 まゆみ氏

土浦市産業部商工観光課 課長補佐 兼 商工労政係長 北島康雄氏 土浦商工会議所 商工振興課主幹 経営指導員 菅原 伸司氏

- 68 - 2. コミュニティバスによるまちなか活性化の可能性

(1)中心市街地の衰退がもたらす現状と課題

土浦市は、東部に霞ヶ浦、西武に筑波山を構え、茨城県南部の中核都市として発展してき た。「桜橋」や「川口」など商店街の名に、かつての堀や水路の名残が残っている25

平成18年2月には新治村との合併によって、霞ヶ浦の面積9.17k㎡を含む122.99k㎡の 総面積となった。東京から60km圏内にあり、筑波研究学園都市に隣接している。JR常磐 線の土浦駅、荒川沖駅、神立駅3駅や、常磐自動車道の土浦北インターチェンジが立地する など交通幹線網も整っており、つくばエクスプレスの開通、首都圏中央連絡自動車道などの 広域交通幹線網の整備が進展している26

表5─1 土浦市の概要

総面積 122.99㎢

人口 142,878人(平成22年度国勢調査)

総世帯 56,680世帯

出典 : http://www.pref.ibaraki.jp/tokei/betu/jinko/getsu/H22sokuho/jinkou1012.html

かつては中核都市として栄えた土浦市であるが、近年は中心市街地の衰退が激しい。中心 商店街には空き店舗が目立ち、日中にもかかわらず人通りが少ない状況にある(写真5─1)。

土浦市中心部に位置する「MALL505」は、一つの典型である(写真5─2)。3階建て、全 長約505mという大きく長いショッピングモールは、中心商店街の核として営業されていた が、現在はほとんどが空き店舗と化しており、かつては賑わっていた姿など想像し難い。

こうした中心市街地の衰退に加えて、モータリゼーションの発展に伴う自家用車の大幅な 普及により、路線バスが廃止・減便されるなど、公共交通の衰退が深刻な課題となっている。

高齢者や学生など、自家用車を運転しない世代の移動手段を確保しなければならない。また、

環境負荷の小さい交通体系を構築していくことも求められている27

このように、中心市街地の衰退、公共交通の衰退が、土浦市の大きな課題となっている。

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写真5─1 土浦市の中心商店街

写真5─2 MALL505

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(2)「キララちゃんバス」が運ぶもの

①まちなか活性化バス「キララちゃんバス」の役割

そうした現状を踏まえて導入されたのが、まちなか活性化バス「キララちゃんバス」であ る(写真5─3)。

キララちゃんバスは、地域公共交通総合連携計画でも位置付けられている。この計画では、

地域住民、企業、交通事業者、行政が連携し、鉄道、路線バス、キララちゃんなどを軸とし た土浦市の公共交通の一体的な連携、活性化策を検討し、利用しやすい魅力ある公共交通体 系を構築することを目的として掲げられている。

さらに、「第 6 次土浦市総合計画」、「土浦市都市計画マスタープラン」、「土浦市中心市街 地活性化基本計画」において、「バス交通の充実」が位置づけられており、その第一段階とし て、中心市街地循環型の計画となっている28

写真5─3 キララちゃんバス

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写真5─4 キララちゃんバス停留所(桜橋)

写真5─5 キララちゃんバス内の様子

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本来、土浦市では、鉄道、バスなど一般的な公共交通機関が運行されている(表 5─2)。 バス路線は、主に関東鉄道が運行しており、土浦駅を起点として、さまざまなバス路線が市 内を横断している(図5─1)。

そうした既存のバス路線に加えて、キララちゃんバスというコミュニティバスが補助的交 通という位置付けで運行されている。あくまで中心市街地活性化という目的をもった運行で あるため、他のバス路線と混在した形である。

表5─2 土浦市の公共交通の体系

種別 公共交通機関

基幹的交通 ①JR常磐線

②路線バス

補助的交通 ③まちづくり活性化バスキララちゃん

④のりあいタクシー土浦

その他

⑤高速バス(県庁、免許センター、成田空港等)

⑥障害者へのタクシー利用補助

⑦福祉施設バス(ふれあいセンターながみね等)

⑧スクールバス(都和小学校)

出典 : http://www.city.tsuchiura.lg.jp/data/doc/1274404031_doc_34.pdf

ドキュメント内 地域住民のモビリティを支える「 (ページ 68-180)

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