以上の調査、分析により得られたミャンマーの国境通関手続き円滑化に向けた法制 面、運用面の課題等に関し、改善事例等を踏まえ、その解決に向けて必要となる制度改 正、運用改善等に係るミャンマー政府に対する提言を作成する
4.1. 課題の整理
2011年よりMiyawaddy~Mae Sotの国境通関貨物は急拡大してきた。そのため、通
関、検査が混雑しており、国境貿易の円滑化は極めて重要な課題である。
日系荷主及び物流業者の意見では、実額インボイスによる関税賦課の透明化・公平 化・徹底化、事前教示制度品目の拡大、MACCS(ミャンマー自動通関システム)の国 境への早期展開、国境での積替えの負荷を減らすための方策(例えばトラック輸送にお けるシャーシの相互通行)などが課題としてあげられる。
日本政府も、国境通関システムの近代化につとめており、MACCSの国境への展開
(2018年に稼働予定)の他、賦課課税制度(税関が価格を決めていた)から申告納税 化する(納税者がインボイス価格で申告し、納税する)や事前教示制度の推進を図って いる。ティラワSEZでの貨物の検査はOSS(One Stop Service Center、税関、商業 省、入管、警察などで構成される許認可の総合窓口)で実施しており、同様の機能をも つOSSがミヤワディにも存在するが、横の連携によるシングルウィンドウ化(ライセ ンス、通関等の諸手続きを一本化すること)なども検討に値する。
現状、ミャンマー国では自動車運送事業法や車両規制法等が整備されていないため、
LPG等の危険物輸送が適切な管理法令がない状態で輸送されている。車両関連法規制が 無いことから、タイと相互通行の交渉を進めても、タイ側がミャンマー側からのトラッ ク(車両)を受け入れるための安全基準や環境基準の根拠がなく、タイ側は承認するこ とができない状況にある(CBTA批准が遅れている一つの要因)。他方で、ミャンマー 国内も(CBTAの批准に向けて)物流業界の意見がまとまらない等CBTAによる(国 境での積替業務等の)事業権益の消失の可能性に警戒感がある。
なお、ADB/GMSのCBTAを主導しているのは各国運輸大臣であり、ミャンマーで も運輸通信省(道路担当部局)の所管となっている。2016年10月27日・28日に国土 交通省とミャンマー運輸通信省が物流政策対話でCBTAを取り上げている点には留意を 要する。
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4.2. ミャンマー政府に対する政策提言
以上の検討を踏まえ、ミャンマー政府に対して、以下のような政策提言を進めていく ことが重要である。
(1)MOC 貿易管理局・税関による全量検査の緩和
現在、ミャンマー国境では、全量検査に代わってサンプル検査が行われるようになっ てきているが、制度化されたものではない。タイ側からミャンマー側には、工業製品、
部品、消費財等ミャンマーにとって必要不可欠な物品が輸入されており、特に今後ミャ ンマーの工業化にとって重要となる生産設備等の輸入も急拡大しているが、これらの輸 入品に関してはは、全量検査の対象となっていることから、検査に非常に多くの時間が かかる。特にコンベヤベルト、設備、動力等が複合化した中古の生産設備等は、個別ば らばらの製品に分解し、品目別の通関検査を行うなど、国境での滞留が長引く要因にな っている。
なお、タイ側国境では、8割が何ら検査を受けないグリーン、その他の貨物でも書類 の検査のみのイエロー、サンプル現物検査を行うレッドに分けられ、全量検査を受ける 貨物は限定的である。
税関が貨物情報を事前に受取り、特に検査を必要としないもの、書類審査で済ませる もの、サンプル検査すべきもの等に分けるなどを制度化し、全量検査の緩和を検討すべ きである。
(2)正式な保税制度の確立
現在、ティラワSEZに搬入される貨物に関しては、通関手続きをティラワSEZで実 施することができる(ティラワSEZ法による)。しかしながら、現行の関税法のもと ではティラワSEZ以外ではヤンゴン港、ヤンゴン国際空港、国境等で通関手続きを行 う必要がある。したがって、ティラワSEZで通関する貨物のうち、ミヤワディ国境を 通過してくる貨物に関しては、法令の明文の規定に基づかない”実質的な”保税のしく みで運用されており、この場合はティラワSEZと国境ミヤワディの双方の税関で、① インボイス、②パッキングリスト(品目一覧と各取引価格を記載した書類)及び③通関
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申告申請書類のチェックを受ける必要がある。なお、通常の保税輸送であれば、国境税 関では保税申告書のチェックのみで上記の①~③の書類のチェックは受けない。
保税制度に関しては、明文化された制度がないため、上記のティラワSEZ及び国境 税関での二重のチェックの回避を盛り込んだ、法令による制度の確立及び確実な運用が 求められる。なお、この際、MACCS(現在、主要な国際港湾やティラワSEZに配備済 み。2018年にミャワディー国境等にも配備予定。)を活用した保税輸送(OLT)申 請・許可制度の導入が望ましい。
(3)書類の原本主義の改善
現行の国境の貿易手続きでは、タイからティラワSEZ輸入する貨物に関しては、、
事前にティラワSEZ内の税関事務所に申請した輸入通関関係書類一式の仮受付承認書 の原本を携行していないと、ミヤワディで、ミャンマー側の輸出通関手続きを行うこと ができない。もし仮に仮受付承認書の記載に不備がある場合(例えば、搬入機器の型番 や型式年の誤記)は、再度ティラワSEZにおいて輸入通関関係書類一式を提出し直 し、新しい仮受付承認書を再取得し、その原本が国境の輸入通関に届くまで通関手続き を行うことができない。
原本をティラワSEZから国境ミヤワディまで送付(実施的には持参)するには、時 間距離にして8時間~9時間を要する。したがって、これだけで通関が1日遅れてしま う。ティラワSEZの仮受付承認書を電子媒体で国境税関においても確認できるシステ ムを導入すべきである。
(4)積み替えの負荷の低減
現在、タイ・ミャンマー国境では、車両の相互通行が認められていないため、貨物を 積み替える必要がある。特に、日系荷主企業や物流企業からも要請されているが、積替 えは貨物のロスやダメ―ジが発生する可能性を高め、また時間的にもロスであることか ら、トラックの相互通行を強く望んでいる。しかしながら、すべてのトラックの二国間 での往来を可能とするには二国間での合意、制度的な準備が必要である。
したがって、MIFFA(ミャンマー国際フレートフォワーダー協会)も支持している トラック輸送におけるシャーシ及び積み荷の相互通行を可能とするような二国間の取り
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決めの検討を進めるべきである(積み荷の積み替えを行わず、トラック・ヘッドと運転 手のみ交代)。
(5)車両の安全・環境基準の整備
MIFFAや荷主企業(日系自動車メーカー)の指摘によれば、現在、ミャンマーの車
両の安全・環境基準が不十分であり、ミャンマー車両のタイへの乗り入れの障害となっ ているという。ミャンマー側においても、国際基準に則った車両の安全・環境基準の整 備及び確実な運用が必要である。
(6)国境でのワン・ストップ・サービスの展開
ミャワディー国境では、OSSに税関、商業省の輸出入ライセンス管理、入国管理、検 疫の事務所が同一の建物に入っているものの、それぞれの窓口で個別の手続きを行う必 要がある。税関、ライセンス検査、出入国管理、検疫等の申請書は申請者が同じ項目を 何度も記入しなければならない。これら手続きを簡素化するため、ティラワSEZに設 置されているワン・ストップ・サービス(シングルウィンドウ)を国境においても展開 することが望まれる。
(7)改正関税法の適正な運用の徹底
改正関税法(2015年)により、賦課課税制(税関が輸出入価格を決める制度)から 申告課税制度(インボイス価格ベースでの課税)に移行したものの、一部で賦課課税制 による徴税がみられる。また、分類事前教示制度に関しても、改正関税法により、貨物 が税関に到着する前に、税関に貨物情報を提示すれば、HSコード(関税品目分類)や 税金額等を事前に教示してくれる制度が確立している。しかしながら、現在の対象品目 は40品目に限られ、また、現在、運用が徹底されていない。
したがって、インボイス価格による課税や事前教示制度の徹底等法令の確実な運用が必 要である。