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固有値と固有ベクトルの意味

ドキュメント内 example2_time.eps (ページ 40-43)

ここまでの議論から, ページランキングに関する連立一次方程式

Ax =x (2.1)

の解を求める問題(ページランキングを求める問題)は, 次の問題に帰着できたこ とがわかる.

Problem 3.6.14. ウェブデータ全体のリンク構造をあらわすグラフから作った行

列 Aに関して,

1. A は固有値 1を持つか?

2. もし,Aが固有値1を持った場合の固有ベクトルxをどうやって求めるか?

3. その固有ベクトルの成分は正の値を持つようにできるか?

これまでに計算した例をみればわかる通り, 行列A は, 一般には固有値 1を持 つわけではない. 従って,「グラフから作った行列」という特殊な状況を反映させ る必要がある. また,固有値がわかれば,固有ベクトルは「原理的には計算可能」で あるが, ウェブページのリンクを表すグラフから作った行列は,非常に巨大なサイ ズを持つと想像できるので,固有ベクトルを単純に計算可能かどうかは定かではな い. さらに,ページランキングは, 何らかの「確率」を表すものであったので, ペー ジランキングと思われる固有ベクトルの成分がすべて正であることは最低必要で ある. しかしながら, 一般にはそのようなことが成り立つとは到底考えられない.

これも,「グラフから作った行列」という特殊な状況を反映させる必要があると思 われる.

次の章では,「ウェブデータ全体のリンクあらわすグラフから使った行列」を再 度きちんと定義して, その特殊な状況に関しての考察を行う.

が成り立つことを使って, An を計算させる問題である.

試しに,A の固有値と固有ベクトルを計算してみると, λ1 = 1 x1 = −1

2

! ,

λ2 = 2 x2 = 1

−1

!

となり, B の対角成分には固有値が並び, T =

x1 x2

= −1 1 2 −1

!

と固有ベ クトルが並んでいることがわかる.

実際, 固有値・固有ベクトルが「うれしい状況」をみたすときには,次の定理が 成り立つ.

Theorem 3.7.2 (行列の対角化). 複素係数N×N 行列Aの各固有値に対する固 有ベクトルで, 一次独立なものが重複度と同じだけ存在するとき, 正則行列 T と して, すべての固有ベクトルを並べたものとおくと,

T−1AT =

 λ1

. ..

λN

が成り立つ.

この定理の仮定が少々分かりにくいのだが,もっとも簡単な場合を考えると次の ように書くことができる.

Corollary 3.7.3. 実数係数 N ×N 行列Aのすべての固有値が実数であり,それ らの固有値が相異なると仮定する. また,固有値 λi に対する固有ベクトルを xi と おく. このとき,

T =

x1· · ·xN

とおくと,

T−1AT =

 λ1

. ..

λN

が成り立つ.

このような操作は「行列の対角化」と呼ばれるのだが,いつでも対角化が可能な わけではない. 例えば,A= 3 2

−2 −1

!

は対角化できない.

行列のN 乗を求めることは, それ自身重要なことであるが,「行列の対角化」は, より深い意味を持っている.

簡単のため 2×2 で考え, 対角行列L= λ1 0 0 λ2

!

があらわす線形写像(一次 変換)を考えてみる(ただしλ1 6=λ2 と仮定する)と,標準基底e1, e2 を考えたと き, e1 方向(x 方向)を λ1 倍し, e2 方向(y 方向)を λ2 倍する変換に他ならな い. したがって,

Ae11e1, Ae22e2, が成り立つ.

一方, 2×2行列 Aが固有値 λ12 をもち,λ1 に関する固有ベクトルを a1, λ2

に関する固有ベクトルを a2 とおくと,

Aa11a1,

Aa22a2, (3.5)

が成り立つ. そこで, T = a b

とおけば (3.5)は AT =T L と書くことができる. この式は, 対角化の式

T−1AT =L に他ならない.

一方, (3.5) は, 「固有値 λi の固有ベクトル方向は λi 倍する」ことを意味して いるので, R2 の基底として, 固有ベクトルからなる基底 {a1,a2} を取れば, A が きめる線形写像は「基底の方向には固有値倍する線形写像」であることがわかる.

a1

a2

3a1

2a2

★ ★ ★

固有値が相異なる実数の時には,ここで見たような描像で問題ないのだが,次の ような例はどうなるだろうか?

Example 3.7.4. Example 3.4.8 でみた「原点を中心とする角度 θ の回転」をあ らわす線形写像A= cosθ −sinθ

sinθ cosθ

!

の固有値を計算すると, その固有多項式は (t−cosθ)2 + sin2θ =t2 −2tcosθ+ 1

となり,固有値は cosθ±isinθ =e±iθ となる. つまり, 2×2行列で固有値 e±iθ と なる場合は,原点を中心とする角度 θ の回転となることがわかる. これを言い換え れば,「固有値として e±iθ が出てくるときには,原点を中心として『クルクル』と 回転している」線形写像となる.

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