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回転的流れにおける NS 方程式と連続方程式の対応

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高  橋  光  一

2.  回転的流れにおける NS 方程式と連続方程式の対応

2·1 渦度の方程式

 回転的流れでは,ある3次元ベクトル場Aを用いて,速度場が

(2·1·1)

で与えられる。ここでは2次元流体を考えるので,簡単のためAとして

(2·1·2)

というかたちを仮定する。最初がCartesian座標系,2番目が円筒座標系での表記である。

すなわち

(2·1·3a)

(2·1·3b)

およびU$A=0である。このときU$v=0であることに注意せよ。このようなAzは流れ関 数と呼ばれる。(2·1·2),(2·1·3)は,流れがxy面内で生じていることを示している。

 もとのベクトル方程式の両辺の回転(curl)をとると,保存力の場合x,y,z成分はそれ ぞれ

(2·1·4a)

(2·1·4b)

となる。ここでg~/U#v=^0 0, ,gh(渦度と呼ばれる)のz成分

(2·1·5)

である。(2·1·4a)は,ベクトルUtUPは共にxy面内にあることを意味する。

 圧力項は密度の勾配が0でない場合のみ効果を残すので,(1·3)の圧縮項のみが寄与する ことを考慮すると

(2·1·6)

と書けるであろう。(2·1·4b)と(2·1·6)で,oとlは密度と温度を通して座標依存性を持ち うるので,それらの空間微分は一般に0でないことを考慮しているのである。しかし,本論 文ではこれらは座標依存性のない定数と見なし,(2·1·4b)右辺の圧力勾配項は落とすことに する。

v=U#A

A=^0 0, ,A x yz^ , hh または A=^0 0, ,A rz^ ,ihh 

,

v Ay v Ax

x z

y z

2 2

2

= =-2

,

v 1r A v Ar

r z z

2 2

2 2

= i i

=-0

P x P y

1 1

# = # =

U ^t-U h; U ^t-U h;

v $ # 1 P z

+U =U U U U ; go ^g h ^o gh- ^t- h

v z 2Az

= # = g U ; -U

P

2U U# + 2U U#

t t t l t

- - c

- ~とvが非ゼロで~#v=0なる流れをBeltrami流という。これに対し,文献でしばしば 取り上げられる一般化されたBeltrami流は

を満たすものをいう。われわれが取り扱う問題では,流れは2次元で渦度はz成分のみを有 するので,これは

に帰着する。流れがgの勾配方向と直交する方向に向いているということで,特殊な外力 が作用するときに実現する。われわれは,その具体例を次節以降で見ることになるであろう。

 上記のNS方程式(2·1·4)と連続の式(1·2)を連立させて解を求めるのであるが,その 一般的な処方箋は確立していない。はっきりした対称性のない非線形の偏微分方程式である ことがその要因である。しかし,Navier (1827), Poisson (1831), Saint-Venant (1843), Stokes

(1845)によって方程式が見いだされ研究されて以来200年にわたる努力により,特殊な境 界条件の下での厳密解,および数値解を求めやすい常微分方程式のかたちは見つかっている。

とくに,回転的な平面内定常流としては,Kampe de Feriet (1930, 1932), Tsien (1943)らに よりさまざまな厳密解が見いだされている。それらについてはWang (1991) を参照されたい。

厳密解を求めるときは,特殊な状況での対称性やスケーリング性を考慮して始めに速度場に ついてもっともらしい関数形を仮定し,NS方程式と連続の式をともに満たすように関数を 決めるという方法が多くとられる。こうして,ときに,解くべき問題が自由度を1にまで減 らした常微分方程式のCauchy問題に帰着することもある。以下では,保存量についてのよ く知られている連続の式をもとに,NS方程式を解くTakahashi(2013)の方法について説明 する。

2·2 保存流の連続の式との対応  ここで,一般的な連続の式

(2·2·1)

を考える。この式を満たすtcjcの組は任意にいくらでも作ることができる。例えば,任 意のベクトルjc^ ht,r から c t,r t dt jc t,r

0 0t $

= U

t^ h t-# ^ hによってtcを決めればよい。t0t0 定数である。

 *物理的に‘良い’振る舞いをする解析的なtcのかたちを利用する方法もある。量子力学 を例にとって説明する。(場の理論でもかまわない。) 量子力学におけるSchrödinger方程式

v 0

# # = U ^~ h

v =v$ =0

g g

U^ h U

0 j

c+ $c=

to U

は次のような方程式である:

(2·2·2)

aは定数(粒子の質量をmとして1/2mで与えられる。これ以降,自然単位系'=1を用い る),Uは実数のスカラー関数(ポテンシャルエネルギー)で,解}は複素数(規格化可能 な場合,とくに波動関数と呼ばれる)である。量子力学の基礎については例えばSchiff (1968)

を参考にされたい。

 ここで密度関数

(2·2·3)

を定義する。(量子力学では,ある時刻にある場所に粒子が存在する‘確率密度’を表す。)こ の}から構成される‘流れ’

(2·2·4)

d}の位相)は連続の式 (2·2·1)を自動的に満たすことは(2·2·2)を用いて容易に確か めることができる。これは,U(1)対称性の帰結であり,‘存在確率の保存’を表すと解釈さ れる1。Schrödinger方程式が線形であることもあり,そのような}を求める処方箋はすでに 確立している。したがって,(2·2·2) をいろいろな条件下で解くことによって,(2·2·1)を満 たすさまざまなtcjcを得ることができる。それらは,ポテンシャルと境界条件が滑らか なときは時空についてやはり滑らかな関数である。

 ここで,NS方程式に現れる流体の速度場 v を使い,連続の式(2·2·1)を次のように書 き換える:

(2·2·5)

そして,この式の左辺と方程式(2·1·4b)の左辺との類似性−gtcの対応−に着目する:

(2·2·5)は(2·1·4b)とよく似ている! ここで,渦度gが連続の式を満たすtcという関数 を通してのみ座標依存性を持つようにできると仮定しよう。すなわち,t,rを時間,空間座 標として

(2·2·6)

このときgo=g tloc,Ug=g tlUcg gl m, 等はgの直接の変数tcに関する微分を表す)である

1 Schrödinger方程式は‘作用’ dtdr *it 2 2/2m Ur +

2 '

}_ U - ^ hi}

# }の任意の変分について停留値を取る という要請から導かれる。変分を局所U(1)変換 eif に限ると,保存則(2·2·4)が得られる。

2 r

i'}o=_-'aU2+U^ hi}

c *

t=} }

jc=ia_^U} }*h -} }*U i=2at dcU

v v j

c+ $ c = $ c c

to U^t h U^t - h

, tr g=g t^ c^ hh

から,gの方程式(2·1·4b)は

(2·2·7)

となる。これと連続の式(2·2·5)から時間微分の項を消去して

(2·2·8)

を得る。当然,これがgに関する方程式として意味があるのはUtc!0の領域においてであ る。

 (2·2·8)の右辺に含まれるvは(2·1·5)によってgと直接関係づけられるので,その空間 変化もまたtcを通して現れるとするのが自然である。すると,流れ関数の式と弱い非圧縮 性の条件

(2·2·9a)

(2·2·9b)

vlx 等はvx等のtcについての微分を表す)と併せて,g, ,v vx yの3つの未知関数を求めるの に十分な式が揃ったことになる。ただし,実際の流体密度tは,このようにして求められ たvがもとのNS方程式(1·1·1)と連続の式(1·1·2)を満たすように決めなければいけない。

後に見るように,これはそれほど難しいことではない。なお,(2·2·6)は単なる数学的な関 係であって,今の段階ではそこに物理的な意味を与えることはできない。

2·3 Ul=0の場合

 (2·2·8)で,lに座標依存性がないときはその右辺の最後の項が0なのでさらに議論を進 めることができる。まずgl!0,Utc!0の場合に話を限り

(2·3·1)

すなわち,位置ベクトルrの任意の関数aと微分可能な関数{を使い

(2·3·2)

でベクトルYを定義する。もちろん,(2·3·2)の積分が意味をもつ領域での定義である。こ れを用いて(2·2·8)を

v 2

c+U$ c =U U$ c + Uc 2 U#U;z

to ^t gl o t gl o t gm-tc- l t

^ hh ^ h ^ h

c 2 = $ cv jc $ c + 2 # z

U U U U U U;

o^ th gm 6 ^t - -h ^o th@gl tc- l t

v z x c yv y c xv

# ;=2t 2t =g U l- l

v x c xv y cvy 0

$ =2t +2t =

U l l

Y c 2

$ /og g t

U U

l m^ h

Y dx

Y dy

Y

1 0

x c

x

y

y y

c x

z

2

2

= +

=

2 U 2 aog

g t {

a og

g t {

U

-

-=

l m

l m

^

^ ^

h

h h

#

#

(2·3·3)

と書きなおす。これを積分して速度v

(2·3·4)

と表される。X=^X X Xx, y, zhはこの段階では任意のベクトルである。他方,vがAの回転 で与えられることから,回転部分を対応させた

(2·3·5)

(右辺にzの1次関数の発散項があってもよいが,以下の議論では本質的でないので落とし ている)に加えて右辺の非回転部分が0,すなわち

(2·3·6)

であることを意味する。この両辺にtcを掛けて発散をとると

(2·3·7)

これがわれわれが探していたもので(流体力学とは直接関係のない)任意の保存流 (tc,jc) を古典流体の渦度に変異させる,いわば変異方程式である。Xztcのみの関数であるときは,

(2·3·7)の右辺かぎ括弧内の最後の項─Xz項─は0である。それ以外のときは,gが一般に はXzの汎関数として決定されることを意味する。なお,(2·3·7)を複数の独立な流れがある 多自由度の場合に形式的に拡張するのは直ちにできて, 動粘性係数oが定数なら

(2·3·8)

となる。ここで,2lg/2g t^ c1^t, ,rh tc2^t, ,rh g 2h/ tcl^t, ,rh l=1 2, , gである。以下では,

議論を1種類の保存流のみがある1自由度の場合に限ることとする。

 一般の場合に(2·3·7)を解析的に解くのは極めて難しいし,必ずしも解があるというわけ でもない。解がある場合に,これを数値的に解くには次のようにする。一組のtcjc,お よびXzの関数形,さらに,前空間におけるgglの値─初期条件─を選び,xy平面内のあ る曲線に沿ってt dc, ,Xzとそれらの微分値をもとにgmと各項の値を求め,またtcの変化か らglとgを計算する。

 同時に,(2·3·5)と渦度の式(2·1·5)から得られる(Xr/t-c1X

(2·3·8)

Y v j

c c c

$ = $ +

U^t - h U^o tU h

v j Y X

j ln Y X X

1

c c c

c

c c

c c1 c1

#

# #

= + + +

= + + +

U U

U U U

t o t

t o t t - t- t

-^

^ h

h

A=t-c1X

j ln Y X 0

c

c c

c c1#

+ U + U = t o t t - t

-ln j X ln

c 2 = Uc$U = U$ c+ Uc+U z#U c z;

o^Uth gm ^o t g gl lh 6- ^ o th t @gl

X

, cl cm l m j

l m cl cl z cl z

l l

$U 22 = U$ + U +U #U ; 2 o!Ut t g !6- ^ o t h t @ g

Xz

2 =

Ur -g

を用いてXzを決めることができる。このとき,Xztcを通してのみ時空依存性が現れるな ら

(2·3·9)

となる。さらに,(2·3·7)の右辺の最後の項は0となる。(2·3·7)と(2·3·9)はgXrzの常 微分方程式であり,与えられたtcjc(またはd)のもとでこれらを連立させて数値的に 解くのは難しいことではない。1自由度の簡単な例はTakahashi (2013) で示されている。時 間依存性のあるなしにかかわらず,採用するtcjcに応じて直ちに解が求まるので,大変 便利である。(解の精度は数値計算法の精度のみによる。)そのような数値解の一般的な探索 は別の機会に譲り,本論文では,厳密解の導出に注意を向けることにする。

【解の正則性について】

 変異方程式(2·3·7)はどのような解を許すだろうか。微分方程式の解の大域的性質が初期 条件に依存することはよく知られている(たとえばHirsch他 2004)。空間3次元において,

NS方程式が与えられた初期条件の下で正則な解をもつかどうかは,物理学のみならず数学 でも関心が持たれている未解決の問題である(小薗 2010)。第3節で述べるように,変異方 程式が1自由度─一組の保存流(tc,jc)のみが存在─の場合は,保存流依存性は現れない。

自由度が2以上で保存流依存性が消去できないときは,2次元流に対する(2·3·8)から次の ことが予想される: tclとして,有限の初期値 tcl^t=0hを持ち,あるtd^0,T@でglを有限 とし要素がUtcl$Utcmで与えられる行列Mの行列式detMが0となるものをとれば(保存

流の式は tcl"tcl+al^ hrjcl"jclal^ hは時間に依存しない任意の関数,のもとで不変であr

り,かつgglの初期値は任意なので,これはいつでも可能である),そのt において gの 微分方程式は特異的となり,gmは発散するであろう。時間の考えている全領域で正則な解 を得るためには,一般にその領域で常にdetM!0となるtclを用いることが必要である。

なお,微分方程式の解の正則性は初期値の取り方に依存するということも知られている(た

とえばLiu and Tadmor 2002)。力学系の言葉を用いれば,吸引体(attractor)や反発体

(repeller)はそれぞれ固有の吸引域や反発域を持つ,ということになる。

2·4 Xz項の性質

 厳密解の導出をする前に,Xz項について考えておく。Xz項が0でないとして,その大域 的な性質を見るために,2次元平面上の面積分を考えよう:

I X^ hz =#UXrz#Utc;zdv

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