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2. IPR 関連規制、実施および紛争における整合性の分析

2.6 営業秘密

営業秘密法(2000年法律第30号)に基づき、営業秘密とは、以下を意味するものとする。

• テクノロジーおよび/またはビジネスの分野において一般市民に知られておらず、か つ、事業活動において有益であるとして経済的な価値のある情報であり、営業秘密の 所有者によってその秘密が保持されている。(第1条1)

• 生産方法、加工方法、販売方法、またはその他テクノロジーおよび/またはビジネス の分野における情報で、経済的価値があり、公知ではないものを含む。(第2条)

営業秘密の情報は、その性質に適した形で扱われ、秘密として取り扱われるものとし、経済 的価値があるため、その秘密性を相応な努力をもって保持しなければならない。情報の秘密 性が保持されるのは、その情報の所有者またはこれを管理する当事者が適当かつ適切な手段 を実行した場合である。

営業秘密の所有者は、それを使用し、またはそれを使用するライセンスを他者に付与し、も しくは商業的利益を対価として第三者に営業秘密を開示する 41権利を有する。営業秘密の所 有権は、相続、寄付、遺言、書面契約、その他法律により認められる理由により移転するこ とが可能である。ただし、その所有権移転を第三者に対して有効とするためには、DGIP へ の登録や営業秘密公報での公告が必要となる42

他者にライセンスを付与する場合と同様に、営業秘密法第8条は、以下のとおり規定する。

(2) DGIP に登録されていないライセンス契約は、第三者に対していかなる法的効力も

有さないものとする。(第8条第2項)

(3) 第 1 項が規定するライセンス契約は、営業秘密公報において公告されるものとす る。(第8条第3項)

第三者に対して何らかの法的権利を行使するためには、DGIP での登録および営業秘密公報 における公告が必要となるが、今日まで営業秘密公報の存在は一般に知られていない43

営業秘密が侵害される状況とは、以下の場合を意味する。

• 故意に、営業秘密を開示したり、書面の有無を問わず、関連する営業秘密の秘密保持 契約または秘密保持義務に違反したりする場合(第13条)

• 現行法規に違反する方法で、営業秘密を取得または保持する場合

営業秘密に関する紛争は、裁判所、仲裁または代替的紛争解決機関を通して損害賠償請求の 訴えを提起することによって解決することができる 44。営業秘密に関する訴訟を受理するに あたって、同訴訟は、それが地方裁判所の管轄になるという点において、特許、意匠、商標 および著作権などのIPRの紛争とは異なっている45

(i) 営業秘密に関する紛争に対する裁判所管轄権は、他のIPR紛争とは異なる。

41

営業秘密法第4条

42

営業機密法第5条

43

営業秘密公報の存在は、事業者に広く普及していない。この点で、DGIPのウェブサイトで閲覧することができる特許公報、

商標公報とは異なる。http://www.dgip.go.id/publikasi-hki

44

営業秘密法第12条

45

営業秘密法第11条第2項

営業秘密の侵害に関する紛争は、IPR侵害に関する紛争と混同されやすい。それは、

営業秘密そのものが、意匠権などの他の IPR を含む可能性のある情報の形態である ためである。そのため、商事裁判所か地方裁判所のどちらの裁判所がその紛争を解決 する義務を負うかという問題が発生する。

■PT Basuki Pratama Engineering 対、日立建機インドネシアおよび同社に移籍 したPT Basuki Pratama Engineeringの元従業員の事件例

事件の内容:PT. Basuki Pratama Engineering は、インドネシアにおいてボイ ラーの機械を製造する会社として訴訟を提起した。すなわち、同社は、ボイラー 機の製造方法および販売方法に関する営業秘密の保有者として、日立建機インド ネシアおよび同社に移籍したPT Basuki Pratama Engineeringの元従業員を、同 社の営業秘密の侵害を理由に提訴した。

その訴えは、2009 年 4 月、ブカシ地方裁判所を通して提出された(番号

280/pdt.g/2008/PN BKS)が、同裁判所は、管轄違いを理由に、その訴えを受理

することができず、本件は、意匠権の紛争に近いため、商事裁判所で訴追される べきであると判断した。かかる判断は、バンドン高等裁判所により支持された

(番号 567/Pdt/2015/PT.BDG)。しかし、上訴されたところ、最高裁判所は、本

件が営業秘密に関連する事件であるため、ブカシ地方裁判所は本件を裁定する権 限を有すると判断した(番号 1713 K/Pdt/2010)。事件を解決する権限に関する 評決において、ブカシ地方裁判所とバンドン高等裁判所の判断が最高裁判所の判 断と異なっていることからも、営業秘密に対する管轄権については依然として境 界線が曖昧と見ることができる。

このような状況は、上記事例と IPR(意匠権等)の事例との間に、重複する内容 があることに起因する。

IPRに関する事件の場合と異なり、損害賠償請求は地方裁判所に提起することになっ ているため、管轄権の判断において誤解が生じている。

(ii) ライセンス契約、および営業秘密の権利の移転(長期にわたり未制定の規則)

特許権、商標、著作権、意匠の規定と同様、営業秘密のライセンス契約は、その登録 手順に関する大統領令が制定されていないため、登録不可能な状況である。

営業秘密のライセンス契約についての規定は、営業秘密法第 9 条第 3 項が以下のと おり規定する。

(3) ライセンス契約の登録に関する規定は、大統領令で定める 現時点までに、かかる大統領令はまだ公布されていない。

営業秘密の権利を移転する場合、権利移転証書を添付しなければならない。営業秘密 の権利移転文書は、DGIPに登録され、その後、営業秘密公報において公告される。

これまでのところ、営業秘密公報はどのような形態のものであるのか、また営業秘密 公報はどこで閲覧できるのかが依然として不明確であり、その結果、関係当事者で あっても、営業秘密公報を入手することができない。営業秘密の権利移転が登録され ていない場合、ライセンシーが営業秘密の権利移転を受けたとしても、他者によるそ の使用を禁じることも、営業秘密の無断使用者や漏洩者を訴えることもできない。

営業秘密公報は公にされるべきである。営業秘密公報は、商標公報、特許公報に類似 しているところ、これらの公報は、DGIP のウェブサイトに掲示されており、関係当 事者がどこからでも最新情報を確認することができる。

2016年2月24日、法務人権大臣は、IPRのライセンス契約の登録の要件および手順 に関する大臣規則を定めた。これによってライセンシーの権利執行に関連する問題が 解決されるようになることが望まれる。

(iii) 従業員が他社に移籍した場合の問題

会社とその元従業員の間で複数の訴訟が提起された。元従業員は、他の会社に移籍 後、(元勤務先から)営業秘密の侵害につき提訴された。

■PT General Food Industries (Ceres) 対その元従業員Rachmat Hendartoおよび Andreas Tan Giok Sanの事件

PT General Food Industries (Ceres) は、インドネシアの西ジャワ州バンドンで チ ョ コレ ート 製造 業を営 む 会社 であ るが 、2007 年 、 元従 業 員の Rachmat HendartoおよびAndreas Tan Giok Sanに対し、同社を退社後に同社の競業企業

のPT Bumi Tangerang Mesindotamaに移籍し,その保有する営業秘密を同社に

漏洩したとして、警察に訴えを届け出た。

訴訟は、バンドン地方裁判所で審理されたところ、判事団は、元従業員2名を有 罪と判断し、実刑判決を下した。元従業員2名はいずれも、高等裁判所に控訴し たが、高等裁判所は地方裁判所の判決を支持した。元従業員が最高裁判所に上訴 したところ、最高裁判所はそれらの下級裁判所の判決を取消す判決を下した(番 号3220/Pan.Pid.Sus/2085 K/Pid.Sus/2008)。

この事件の例から、会社は、他社に移籍した元従業員を、営業秘密の侵害を理由とし て提訴する場合があることが分かる。このことは、元従業員に対する PT General Food Industries (Ceres) の 事 件 や、 日 立 建機イ ン ド ネ シ アに 対 する PT Basuki

Pratama Engineering の事件において明らかである。従業員が元の勤務先で勤務中に

一定の情報を取得し、新しい勤務先の会社でそれを利用することが想定されることを 理由としている。

しかし、適切な生活を送る国民の権利に関連して、人権に関する 1999 年法律第 39 号は、以下のとおりに規定する。

• 何人も、その才能、力量および能力に応じて、職業に就く権利を有する。(第 38条第1項)

• 何人も、自らの選択および雇用条件に基づく権利に従い、職業を選択する権利 を有する。(第38条第2項)

より質の高い生活を求めて他の会社に移籍する従業員は、その法律によって守られな ければならない。この問題を明確化し、かつ、上記のような事件を防止するために、

会社と労働者の双方を守る法規を策定することが望ましい。そうすることで、個々の 当事者は自らに課される制限を理解し、紛争を回避することができる。

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