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ドキュメント内 移民問題グローバルレポート (ページ 79-94)

裸官とは中国で不正に資産をため込んで、妻子(時には愛人)と資産を米国、カナダなどの 先進国に移し、タイミングを見計らって本人も中国から出国しようとする腐敗官僚・党員のこ とである。

2007 年 1 月に中国人民銀行が発表した「個人外貨管理方法細則」は、個人による外貨の人民 元転換および外貨購入に関して、年間 5 万米ドル相当の総額管理を行うとしている。この厳し い外貨規制を回避するため、海外送金方法は「偽外資」や「偽輸入」を使うことが多いとされ る。中国国内と送金先国にペーパーカンパニーを作り、不正蓄財で得た資金を、直接投資資金 や輸入代金の名目で送金する。当然、実質的な送り主は「裸官」で、受け取り主は裸官の妻子 や愛人である。このほか、①親戚の外貨枠を使用する、②不正蓄財資産を担保に国内銀行の海 外支店や海外銀行から融資を受けて、海外不動産などに投資する、③地下銀行を利用する、と いった違法ルートもある。

これまでの裸官全体の人数や不正蓄財・送金金額について、正式な統計はない。中国社会科 学院が 2011 年に発表した資料では、「裸官」を含む腐敗幹部は累計で 1.8 万人が海外に逃亡し、

8,000 億元(約 13.2 兆円)を持ち出したとした。2014 年 7 月末に広東省党委員会組織部は、「2014 年 2 月以降の調査の結果、省内に 2,190 名もの裸官が存在し、主に広州市、深圳市、珠海市、

仏山市、江門市、東莞市に集中している。このうち 866 名が降格などの処分を受けた」と発表 している。

こうした状況を受け、2010 年 5 月に中国共産党中央弁公庁と国務院弁公庁は、「配偶者と子女 が海外移住した国家公務員の管理強化に関する暫定規定」を発表し、国家公務員は配偶者と子 女の海外移住状況を書面で報告することが義務づけられた。

裸官問題と関連して、2014 年 1 月に、中国共産党中央は「党政指導幹部選抜任用工作条例」

改訂版を発表した。同条例によれば、配偶者などが海外に移住した幹部に対し、重要な部門の 主要ポストや指導的な職務に就くことはできないことなどが規定されている。

移民増加がもたらす、中国にとってのメリットとデメリット

中国が送り出す移民の増加は、後述するように中国にとってのデメリットがより強調される が、当然のことながらメリットも無視できない。具体的には、(1)頭脳還流、(2)移民による 国内送金、(3)華人・華僑による直接投資の増加、などが挙げられる。

42 2008 年 7 月 3 日に、中国民主同盟会メンバーで安徽省蕪湖市政治協商会議委員の周蓬安氏が執筆した、龐家 鈺の腐敗事件を描く「还有多少贪官在裸体做官」(裸の腐敗官僚がどれだけいるのか、

http://blog.sina.com.cn/s/blog_4969c68301009t3z.html)というブログ文章がインターネットで急速に広が り、裸官(裸体做官)という言葉が流行語となった。

(1)頭脳還流

教育部によると、2013 年末時点で海外に滞在している中国人は 161 万 3,800 人で、うち 107 万 5,100 人が海外で学んだり、研究に従事したりしている。1978 年~2013 年累計の海外留学帰 国者数は 144 万 4,800 人である。彼らはいわゆる「海亀族43」で、特に中国のハイテク産業の振 興、ひいては経済構造の高度化に寄与し、中国と各国の経済交流と提携を促進する役割を果た しているとのプラスの評価がある。

(2)移民からの送金

移民からの送金について、2012 年に世界銀行が実施した移民の本国送金額調査によると、本 国への送金が最も多かったのはインド(700 億米ドル)で、以下、中国(660 億米ドル)、フィ リピンとメキシコ(各 240 億米ドル)、ナイジェリア(210 億米ドル)の順であった。中国では、

移民送金は主に耐久消費財の購入や子女の教育費に使われているという。

(3)華人・華僑による直接投資増加

中国は、1978 年に改革・開放政策を導入したが、当時の中国は深刻な外貨不足と低い技術力 に直面し、主要先進国は中国への直接投資を躊躇していた。こうしたなかで、先鞭をつけたの が、香港、台湾、シンガポールなどの華人資本であり、それが、中国が輸出志向型の経済発展 を遂げる端緒となった。香港は、現在に至るまで最大の対中直接投資額を誇るが、もちろん、

これは香港の資本のみならず、第三国・地域からの直接投資が香港を経由して行われることに 由来する。香港がこうした対中ビジネスの窓口的な役割を果たし続けてきたのは、厚みのある 華人・華僑人脈という強みがあったことも主因の一つであろう。

一方、移民増加に伴うデメリットについて、中国は、①優秀な人材の流出(頭脳流出)、②多 額の資金の中国からの持ち出し(資金流出)、③「仇富」(庶民が富裕層に対して不満や恨みを 抱くこと)と呼ばれる社会不安定要素の増大、といった問題を抱えるようになった。

① 頭脳流出

留学生として海外へ赴き、そのまま留学先国等に滞在する未帰国者の増加は、「頭脳流出」と して問題視された。1989 年 6 月 4 日の天安門事件以降、留学先国の永住権を取得する留学生が 急増し、この問題が深刻化した。

頭脳流出問題に対して、中国政府は海外留学経験のある人材を国内に呼び戻し、活躍の場を 与えるべく、さまざまな帰国奨励策・優遇策を講じるようになった。

例えば、1994 年から科学技術部、教育部の主導により、留学帰国者の起業が支援された。「留 学人員創業園」と呼ばれる特区が全国主要都市に設置され、税制、配偶者や子女の戸籍、住宅 購入、教育などの面で優遇策が打ち出されたのである。1996 年に教育部は「春暉計画」を策定 し、海外で博士学位を取得し、専門分野で顕著な業績をあげた留学生を対象に、研究活動など に財政的な支援を開始し、2002 年には留学帰国者科学研究始動基金が設立されている。

43 海外留学帰国者を中国語では「海帰」という。これと同じ発音で「海亀」とも書き、海亀は生まれた同じ場 所に戻ってくることから、海外留学帰国者は海亀と呼ばれることが多い。

このような中国政府の積極的な頭脳還流政策に加えて、順調な経済成長や生活環境の改善な どにより、留学帰国者は増加している。ある年に留学から帰国した中国人の、同年に留学生と して海外に渡った中国人に対する比率を「帰国率」とすると、2002 年の 14.3%をボトムに上昇 し、2013 年は 85.4%を記録した。

図表 8-5 中国人留学生の出国・帰国動向

(単位:人、%)

図表 8-6 中国人留学生帰国率の推移

(単位:%)

(注)帰国率は留学生帰国人数/留学生出国人数(%)

(出所)中国統計年鑑、教育部資料より大和総研作成

(注)帰国率は留学生帰国人数/留学生出国人数(%)

(出所)中国統計年鑑、教育部資料より大和総研作成

② 資金流出

中国からの資金流出について、米ボストン・コンサルティング・グループによると、投資可 能資産が 600 万元を超える中国人富裕層の保有資産は、2011 年末時点で 33 兆元(当時のレート で約 5 兆 2,381 億米ドル)に達し、うち 2.8 兆元(同約 4,444 億米ドル)が海外に移転された という。この金額は 2011 年の中国の GDP の 3%に相当する金額である。

③ 「仇富」と呼ばれる社会不満の増大

「仇富」とは、財産を占有する富裕層に対する一般市民の恨みや不満である。「裸官」のよう に、財産占有の方法が権力を悪用した不正行為によるものであれば、なおさらである。

出国留学生

(人)

帰国留学生

(人)

帰国率

(%)

1985 4,888 1,424 29.1 1986 4,676 1,388 29.7 1987 4,703 1,605 34.1 1988 3,786 3,000 79.2 1989 3,329 1,753 52.7 1990 2,950 1,593 54.0 1991 2,900 2,069 71.3 1992 6,540 3,611 55.2 1993 10,742 5,128 47.7 1994 19,071 4,230 22.2 1995 20,381 5,750 28.2 1996 20,905 6,570 31.4 1997 22,410 7,130 31.8 1998 17,622 7,379 41.9 1999 23,749 7,748 32.6 2000 38,989 9,121 23.4 2001 83,973 12,243 14.6 2002 125,179 17,945 14.3 2003 117,307 20,152 17.2 2004 114,682 24,726 21.6 2005 118,515 34,987 29.5 2006 134,000 42,000 31.3 2007 144,000 44,000 30.6 2008 179,800 69,300 38.5 2009 229,300 108,300 47.2 2010 284,700 134,800 47.3 2011 339,700 186,200 54.8 2012 399,600 272,900 68.3 2013 413,900 353,500 85.4

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90

85 87 89 91 93 95 97 99 01 03 05 07 09 11 13

海外から中国への移民はごく少数

「中国国際移民報告 2014 年版」によると、1978 年~2013 年累計で中国が受け入れた海外から の移民(移入民)は、家族移民を中心に 84.9 万人である。中国から海外への移民(移出民)は 同年末時点で累計 934.2 万人であり、それとの比較でも海外から中国への移民はごく少数にと どまっている。

「移入民」政策で特筆されるのは、投資・技術移民の受け入れを明確化した、永住権制度の導 入である。2004 年 8 月 15 日に中国公安部と外交部が発表した「外国人の中国永住に関する 審査認定管理方法」(即日施行)では、一定の条件を満たした外国人に中国の永住資格を与え、

中国国内での滞在に関して、出入国の際のビザを不要とすることなどが定められている。同方 法により導入された永住権制度は中国版グリーンカード制度と呼ばれている。

同管理方法に基づき、中国の法律を遵守し、身体が健康で、過去に犯罪歴がない外国人は以 下の 7 つの条件のいずれかを満たせば、永住申請を行うことが可能である。

① 中国に直接投資を行い、投資状況が 3 年連続で安定し、かつ納税記録が良好であること。中 国への直接投資額については、(1)「外商投資産業指導目録」における奨励産業に投資する 場合は 50 万米ドル以上、(2)西部地域および貧困扶助地域に投資する場合は 50 万米ドル以 上、(3)中部地域に投資する場合は 100 万米ドル以上、(4)中国での投資額が累計で 200 万 米ドル以上、という条件のいずれかを満たす場合、

② 中国で副総経理(副社長)、副工場長等の職務以上、または准教授、副研究員などの副高級 職以上、もしくは同等の待遇を享受している者であり、在職期間が連続で 4 年に達し、直近 4 年間の国内居留期間が累計 3 年以上で、かつ納税記録が良好であること、

③ 中国に対して重大・特殊な貢献をし、もしくは中国が特に必要としている人材、

④ 上記①~③に該当する者の配偶者および 18 歳未満の未婚子女、

⑤ 中国公民もしくは中国永住居留資格を取得した外国人の配偶者であり、婚姻関係が 5 年以上 継続し、中国に連続して 5 年以上居留し、毎年の国内居留期間が 9 ヵ月を下回らず、かつ安 定した生活条件と住所を有する者、

⑥ 上記⑤の 18 歳未満の未婚子女、

⑦ 国外に直系の親族がなく、国内の直系親族に身を寄せる 60 歳以上の者であり、中国に連続 して 5 年以上居留し、毎年の国内居留期間が 9 ヵ月を下回らず、かつ安定した生活条件と住 所を有する者。

中国公安部によると、2013 年末時点で、中国版グリーンカードを取得した外国人は累計 4,900 人となっている。

ドキュメント内 移民問題グローバルレポート (ページ 79-94)

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