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3 − 1 南西部の農村女性をとりまく問題点

南西部の農村地域の住民は、農業生産活動を行ううえでの悪条件、近年の農業セクターの不振 に起因する農村経済の停滞、雇用・経済機会の少なさ、政策や法の施行の遅さに起因する農村経 済インフラ、生産資源・クレジットへのアクセスの低さなど生産活動全般にわたる悪条件に加え、

自然災害の打撃とそれに対する脆弱性、教育や保健などの公共サービスの不足など、いわば貧困 の悪循環に直面している。この社会・経済環境は、コミュニティ活動、家庭内の再生産活動、家 計を補足するためあるいは家計を支えるための所得創出活動など、多くの役割と責任を負う立場 にある農村女性の生活状況に深刻な影響を与えている。

女性の地位向上のための法令・政策がどれだけコミュニティのレベルで浸透し、結果として主 要指標に表れるには時間を要する。教育レベル、男女間の分業意識や女性の家庭内、コミュニティ における寄与に対する評価、平等意識などに顕著な改善がみられた一方、女性のフォーマル・セ クターへの経済活動参加は極めて限られた状態であり、またコミュニティ、家庭内、生産活動に おける役割・責任が増大するにつれ、結果的に女性に超過的な負担を生み出しているのも事実で ある。女性が妊娠する子供の数、10 代の妊娠の多さ、性犯罪を含む女性への暴力の多さ、乳幼児 死亡率・妊産婦死亡率の高さ、女性世帯主世帯の増加傾向など、意識の変化が個人の行動とその 結果に結びついていない状況が観察され、依然として女性の地位改善に対する政策介入が必要な 状況となっている。

3 − 2 ジェンダー・ニーズから見た課題

3 − 2 − 1 実践的ニーズ(Practical Gender Needs)

女性の経済的エンパワメントに焦点をあて、各種統計・報告書データと現地調査に基づく分 析の結果、農村女性の実践的なニーズ37は大まかに分けて 2 種類のものがとらえられる。一つ は、個人・グループによる小規模事業を起業するにあたり必要な手段として、投入資材(クレ ジット・物資など)、技術支援、マネージメント訓練などを組み合わせた支援である。これらは 農村に居住空間をもつ家庭の「主婦」とされる女性達が保持するニーズであり、多くのものは生

37 ジェンダー・ニーズとは、男女がそれぞれの社会的役割を遂行して生活を営んでいくうえで必要なニーズを意 味する。一般にジェンダー・ニーズを把握する時には、実践的ニーズ(practical  gender  needs)と戦略後ニーズ

(strategial gender needs)に分けて把握される。実践的ニーズとは、対象社会の男女が自分の役割や責任を遂行す るために必要なニーズを示す。例えば、生活環境が整わないことが多い途上国では、水、電気、教育など具体 的に男女双方にとって不便・不利な状況を緩和するものが実践的ニーズとしてあげられる。これに対し、戦略 的ニーズは、不平等な男女の関係性を変えていくためのニーズを示し、それらは女性をとりまく政治・経済・社 会・文化的な環境によって様々である。(http://www.jica.go.jp/global/globalwid/globalwiddevelop/globalwiddevelop-h82.html より)

産・商業活動を行う空間を居住空間のなか又は近くに求める傾向がある。調査対象地域での女 性組織からの聞き取りで、今後希望する研修事項として優先度が高かったのはケーキ菓子作り、

美容、縫製、コンピューター研修、手工芸であった。

もう一つは、フォーマル・セクターもしくは生産性の高い職業分野における雇用を求めるた めの専門的な教育や職業訓練である。この種の雇用機会の多くは農村の外部(地方都市や首都)

に存在し、特に農村という居住空間外に雇用を求める若い世代・女性世帯主が保持するニーズ である。職業訓練に関するアクセスがない38ために、賃金基準の低い職業・性産業への従事や 雇用者による搾取(セクシャル・ハラスメント含む)の問題につながるため、職業・技術訓練サー ビスへのアクセスに欠く地域(特に遠隔農村地域)の女性のニーズとして強いものである。ま た、フリー・ゾーンにおける雇用などの需要も観察されるが、対象地域において継続的に需要 が高く見込まれる技術などは、上記の小規模事業の種類とも併せ市場調査のもと確認する必要 がある。

また、女性の経済的エンパワメントに対する支援の際に見逃してならないのは、実践的ニー ズを満たす際に阻害要因となり得る要素を牽制するための方策である。本調査の結果、南西部 の農村女性が負う複合的役割とその超過的傾向とともに経済活動・生産活動に従事する余剰時 間と空間の確保が重要である。

地域やコミュニティごとに違いがあるものの、生産資源と商業活動「空間」の確保・提供(生 産性のある土地・クレジット・投入材、住居改善、自然環境改善、舗装道路)に加え、生産活動 を支える適正な訓練(市場分析・適正技術など情報提供、技術訓練、職業訓練)、これらの基礎 となる教育(識字教育39、会計・経理、組織管理・運営)、余剰時間を生み出す公共のサポート

(飲料水の確保、家族計画サービス40、保健・衛生部門の予防 IEC 活動、保育所)などが必要で ある。また、特に女性の得た収入分に関して、女性によるもしくは、平等な立場に立ったカッ プルの話し合いによる家計支出の決裁方式を維持・確保することも重要である。時間の確保の 難しさから、職業訓練やクレジット提供と抱き合わせた技術訓練の分野を選択する際に、生産 性の高い(短時間で付加価値の大きい商品製造や、時間給換算で賃金基準の高い職業訓練など)

分野に着目する観点も必要である。

38 例えば、バラオナ市には民間・公共の職業訓練施設があり、政府の奨学金プログラムなども存在するが、学費・

交通費等の問題でアクセスに差が出ている。参考までに、インディペンデンシア県の国境近くからバラオナ市 までバス(乗り継ぎ 2 回)で行き来した場合かかる交通費(往復)は 180 ペソほどである。

39 1991 年の統計では、男性より女性の非識字率(農村部 31.4%)が高く、1996 年の年齢層別統計では 30 〜 34 歳層 から 20%を超え 40 〜 44 歳層では 30%を超えた値となっており、年齢によっては識字への配慮が必要であるこ とを示唆している。

40 南西部の合計特殊出産率は、10 代の妊娠率、高齢出産と並んで顕著に高くなっており、女性に時間的・経済的 に圧迫を与えている。

3 − 2 − 2 戦略的ニーズ(Strategic Gender Needs)

農村女性の生活状況は、彼らをとりまく様々な要素(自然・社会経済環境、社会組織・構造体 系、世帯内の力関係など)に影響を受け定義されている。前項で述べた農村女性の実践的ニーズ を満たす支援の成果が、公平で持続可能な開発のプロセスをなすためには、地域レベルでのエ ンパワメント事業がより大きな視点からみた社会・経済の構造、体系の改善に結びつく必要41 がある。

例えば、地域レベルで実施された農村女性のマイクロ・クレジット活動や職業訓練なども、そ の活動の成果とその持続可能性を考えれば、マクロ的な環境の改善すなわち政府による適正な 政策策定とその効果的実施が必要となる。停滞している地域経済の活性化や、農村基礎インフ ラ・基本的社会サービスの確保など、政府の投資政策が農村地域、貧困層への配慮をもつこと、

また、労働市場における雇用機会、雇用条件、賃金水準(インフォーマル・セクターへの対応も 含めて)に関する男女間における平等の確保、生産活動のための資源や有用で適正な情報への公 正で継続的なアクセスの確保など、地域レベルの介入可能な域を越えた戦略的な観点からの介 入が必要となる。

協力を実施する際に、対象農村部のコミュニティから発信される様々な情報を関連政策への 提言に変換して政策策定・施行者に伝えていく姿勢をもつこと、その結びつきの手段として、コ ミュニティの組織、地域事業実施者(NGO など)、政策策定者、研究機関の間にある既存の情報 共有、協力関係のネットワークを利用することが有用である。

事業もしくは事業で得られた結果の継続性・展開性という観点から、無理な押し付けではな く、事業実施過程において、受益者の参画を意図的に促進するプロセスを通じ、女性がエンパ ワメントの行動主体となるような環境づくりを創出することも重要である。

41 例えば、生産活動に従事する農村女性に対し、(時空に限られた)適正情報の提供だけでなく、適正情報の入手 法や利用法、その情報サービスの継続性を確保するシステム構築(又はそのためのロビー活動)に資する活動構 成を組むことなど。

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