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第 5 部  『源氏物語』第三部についての分析

2.  品詞構成比率

 

  まず、名詞・代名詞・動詞・補助動詞・形容詞・形容動詞・副詞・接続詞・感動詞・連体詞・

助詞・助動詞といった 12 品詞の構成比率について主成分分析を行った。また、『源氏物語』の 第三部における品詞別の延べ語数および構成比率は表 5.1 に示す通りである。 

  図 5.1 は 12 品詞の構成比率に対する主成分分析によって求められた第 1 主成分と第 2 主成分 の散布図である。匂宮三帖の第 42 巻「匂宮」は他の諸巻から外れて付置されるが、「匂宮」を 除く 12 巻は匂宮三帖と宇治十帖の区別なく混在して配置されていると言える。したがって、12 品詞の構成比率から匂宮三帖と宇治十帖との間に量的傾向の相違は認められないと言える。 

                           

図 5.1  12 品詞の構成比率についての主成分分析の結果   

  しかし、構成比率の低い接続詞および感動詞を除き、あらためて主成分分析を行ったところ、

第 1 主成分と第 2 主成分の散布図である図 5.2 に示すように、第 2 主成分において匂宮三帖と 宇治十帖は分離して付置される。図 5.3 は主成分分析によって求められたバイプロットであり、

図 5.3 より匂宮三帖は名詞の構成比率が高く、動詞および助動詞の構成比率が低いという傾向を 有し、宇治十帖は動詞および助動詞の構成比率が高く、名詞の構成比率が低いという傾向を有 すると言える。したがって、品詞構成比率に対する計量分析においては、匂宮三帖と宇治十帖 との間に量的傾向の相違が認められると考えられる。 

  また、第 4 部における『源氏物語』全 54 巻を対象とした分析において、匂宮三帖と宇治十帖

‑3 ‑2 ‑1 0 1 2 3

‑3‑2‑1012

PC1 0.3307

PC2 0.1611

42匂宮

43紅梅

44竹河 45橋姫

46椎本 47総角

48早蕨

49宿木

50東屋

51浮舟 52蜻蛉

53手習

54夢浮橋

との間に量的傾向の相違が推測されたように、図 5.2 において、第 1 主成分の正負に宇治十帖 の前半 5 巻と後半 5 巻が分離して配置されていることから、宇治十帖の前半 5 巻と後半 5 巻に おいて各品詞の構成比率が相違する可能性が推測される。 

                           

図 5.2  10 品詞の構成比率についての主成分分析の結果   

                         

図 5.3  10 品詞の構成比率についての主成分分析のバイプロット 

‑0.6 ‑0.4 ‑0.2 0.0 0.2 0.4

‑0.6‑0.4‑0.20.00.20.4

PC1 0.3622

PC2 0.1901

42匂宮

43紅梅44竹河 45橋姫

46椎本 47総角

48早蕨 49宿木 50東屋

51浮舟52蜻蛉 53手習

54夢浮橋

‑4 ‑2 0 2

‑4‑202

助詞

名詞

動詞 助動詞

補助動詞形容詞 副詞 形容動詞

連体詞 代名詞

‑2 ‑1 0 1 2

‑3‑2‑1012

PC1 0.3622

PC2 0.1901

42匂宮

43紅梅44竹河 45橋姫

46椎本 47総角

48早蕨 49宿木 50東屋

51浮舟52蜻蛉 53手習

54夢浮橋

  次いで、分析対象を宇治十帖の 10 巻に限定し、品詞構成比率について分析を行った。図 5.4 は 12 品詞の構成比率に対する主成分分析によって求められた第 1 主成分と第 2 主成分の散布図 である。図 5.4 に示したように、宇治十帖の前半 5 巻と後半 5 巻は第 1 主成分において分離し て配置される。したがって、品詞構成比率においては前半 5 巻と後半 5 巻との間に顕著な相違 が認められる。図 5.5 は主成分分析によって求められたバイプロットであり、図 5.5 から前半 5 巻には名詞・補助動詞・形容詞・形容動詞が相対的に頻出しており、後半 5 巻においては代名 詞・動詞・連体詞・助動詞が相対的に頻出していると言える。また、品詞構成比率の分析では、

変数の数を 12 品詞から減らしても、常に前半 5 巻と後半 5 巻は分離して位置する。 

  このように、宇治十帖は前半 5 巻と後半 5 巻の間に品詞構成比率の量的傾向が相違すること は明らかである。次いで、図 5.1 と図 5.2 では、第 1 主成分の正負において匂宮三帖および宇 治十帖前半 5 巻のグループと宇治十帖後半 5 巻というように分類されていると考えられること から、第三部の 13 巻における 12 品詞の構成比率の主成分分析の結果において、匂宮三帖およ び宇治十帖前半 5 巻と宇治十帖後半 5 巻というグループに分割し 95%信頼楕円を描いた図が図 5.6 である。図 5.6 に示したように、両グループの 95%信頼楕円は重複するが、それぞれの信頼 楕円の中に他方の分析対象が包含されることはない。したがって、宇治十帖が前半 5 巻と後半 5 巻に分類されるのではなく、『源氏物語』の第三部の中で第 50 巻「東屋」以降の 5 巻が、ひと つのまとまりをもって成立した可能性が考えられる。 

                             

図 5.4  宇治十帖に限定した 12 品詞の構成比率についての主成分分析の結果 

‑2 ‑1 0 1 2 3

‑2 ‑1 0 1

PC1 0.4164

PC2 0.2004

45橋姫 46椎本

47総角

48早蕨 49宿木

50東屋 51浮舟

52蜻蛉 53手習

54夢浮橋

                           

図 5.5  宇治十帖に限定した 12 品詞の構成比率についての主成分分析のバイプロット   

                               

図 5.6  宇治十帖後半 5 巻とその他 8 巻の 12 品詞の構成比率についての主成分分析 

‑3 ‑2 ‑1 0 1 2 3

‑3 ‑2 ‑1 0 1 2

PC1 0.3307

PC2 0.1611

42匂宮

43紅梅

44竹河 45橋姫

46椎本 47総角

48早蕨

49宿木

50東屋

51浮舟 52蜻蛉

53手習

54夢浮橋

‑0.2 0.0 0.2 0.4

‑0.2 0.0 0.2 0.4

PC1 0.4302

PC2 0.2186

45橋姫

46椎本

47総角 48早蕨

49宿木

50東屋 51浮舟

52蜻蛉

53手習 54夢浮橋

‑3 ‑2 ‑1 0 1 2 3 4

‑3 ‑2 ‑1 0 1 2 3 4

助詞

動詞

名詞 助動詞

形容詞 補助動詞

副詞 形容動詞

連体詞

代名詞

接続詞

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