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周波数分析

ドキュメント内 修 士 学 位 論 文 (ページ 31-34)

第 3 章 関節音分析

3.1 周波数分析

健常者と膝OA患者では,膝から発生する関節音の特性に違いがあることが報告されてい る.そこで,関節音に周波数分析を行い.健常者と膝OA患者との相違を調べる.一般的に,

周波数分析にはフーリエ変換が用いられるが,本研究ではウェーブレット変換と呼ばれる 周波数分析法を用いる.まずフーリエ変換とウェーブレット変換の違いについて述べる.

 フーリエ変換(Fourier transform; FT)

信号を正弦波(sin波)の重ね合わせで表現する周波数分析法.対象とする信号がどの周 波数に分布しているかを調べることができる.しかし,正弦波という無限に続く信号の重 ね合わせであるため信号の時間的情報は失われてしまうので,対象とする信号も無限であ ることを仮定している.よって,定常的な信号を解析する際には有用だが,非定常な信号 には適していない.本研究で扱う関節音信号は非定常であるため,フーリエ変換は適して いないといえる.図3.1にフーリエ変換の時間周波数分析のイメージを示す.

図3.1 短時間フーリエ変換の時間周波数分解能

 短時間フーリエ変換(short-time Fourier transform; STFT)

信号の時間的情報が失われてしまうというフーリエ変換の欠点を補うために開発された 周波数分析法.一定の大きさの窓関数と呼ばれる関数を用いて信号を分け,その区間ごと にフーリエ変換を行う事で,時間による変化に対応している.

短時間フーリエ変換の周波数分解能は窓関数の大きさに比例しており,窓関数を大きく することで向上させることができる.しかし周波数分解能と時間分解能はトレードオフの 関係にあるため,両方の精度を高めることはできない.これを不確定性原理と呼ぶ.図3.2 に短時間フーリエ変換の時間・周波数分解能のイメージを示す.

時間

周波数

図3.2 短時間フーリエ変換の時間周波数分解能

 ウェーブレット変換(Wavelet Transform; WT)

短時間フーリエ変換の不確定性原理を解決するために開発された周波数分析法.ウェー ブレットとはさざなみという意味であり,この波を拡大,縮小,平行移動させることで信 号を表現する.周波数に応じて窓関数を変化させることによって合理的な時間周波数解析 を行う事ができる.元となるウェーブレットはマザーウェーブレットと呼ばれる.図3.3に マザーウェーブレットの一例としてモルレーウェーブレットを示す.

図3.3 マザーウェーブレットの例

フーリエ変換は周波数という一つのパラメータをもち,その信号がどのような周波数成 分を持つかを表現している.一方,ウェーブレット変換はスケールパラメータαとシフト パラメータβという 2 つのパラメータをもち,前者が周波数に,後者が時間に対応する.

スケールパラメータαと周波数は反比例の関係にあり,スケールパラメータαを小さくす れば高周波に対応し,大きくすれば低周波に対応する.一方シフトパラメータβは時間に そのまま対応しており,変えることによって時間軸を平行移動する(図3.4).

時間

波数

時間

波数

図3.4 スケールパラメータaとシフトパラメータb

以上のようにウェーブレット変換ではスケールパラメータが周波数に,シフトパラメ ータが時間にそれぞれ対応し同時に解析することができる.

短時間フーリエ変換は窓幅が一定であるため時間分解能も周波数分解能も常に一定であ る.一方,ウェーブレット変換は窓枠がスケールパラメータによって変化するため,分解 能もスケールパラメータ,すなわち周波数によって変化する.時間分解能は高周波で細か くなり,低周波で荒くなる.逆に周波数分解能は低周波で細かくなり,高周波で荒くなる.

上記の理由から,本研究ではウェーブレット変換を用いて周波数分析を行う.図3.5にウェ ーブレット変換の時間周波数分解能のイメージを示す.

図3.5 ウェーブレット変換の時間周波数分解能

本研究では関節音の周波数と関節運動(関節角度)を分析に用いるため,時間情報が必 要である.よって以上の理由より高精度な時間周波数分析のできるウェーブレット変換を 採用した.ウェーブレット変換に用いられるマザーウェーブレットには,「ハールウェーブ レット」,「モルレーウェーブレット」,「メキシカンハットウェーブレット」など様々な種

a 小 a 大

a = 1

b 小 b 大

b = 1

時間

周波数

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