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x Se x の合成 及び実験結果

第 2 章 実験方法

LaOBiS 2- x Se x の合成 及び実験結果

47 4-1 LaOBiS2-xSex

第4章では、LaOBiS2のSにSe置換を試みることで熱電性能の向上を目指す。これは、

第3章においてLaOBiS2が最も高い熱電性能を示したこと、また、キャリア量の増加によ る熱電性能の向上が見込めなかったことから、伝導層であるBiS2層のSを、同族でイオン 半径の大きいなるSeに置換することで伝導層における軌道の重なりを広げ、キャリアの移 動度を上げることで電気抵抗率の低下、及び熱電性能の向上を目指した。

図4-1 伝導層におけるBi-S(上)とBi-Se(下)の混成軌道のイメージ

48 4-4-1 試料作製

LaOBiS2のSにSeを置換したLaOBiS2-xSexは、合成された先行研究が無い新物質であ ったため、まず始めに合成方法について記述する。前章までの試料同様、LaOBiS2-xSexは 固相反応法により合成し、仮焼と本焼を行うことで多結晶体試料を作製した。しかし、Se を置換することで焼結温度に変化が生じると思われるため、 と でそれぞれ焼成 した2パターンの試料を作製した。

図4-2 LaOBiS2-xSexの焼成温度シーケンス

次に、表4-1にLaOBiS2-xSexの作製に使用した原料を示す。

表4-1 作製に使用した原料

原料(純度)および混合比率

x 組成式 La2O3(99.9%) Bi2S3 Bi2Se3 La2S3(99.9%) LaSe2 Bi(99.999%) 0.2 LaOBiS1.8Se0.2 0.2497 0.5122 0.1003 0.1433

0.6 LaOBiS1.4Se0.6 0.2386 0.3388 0.2877 0.1369 0.8 LaOBiS1.2Se0.8 0.2336 0.2579 0.3755 0.1341 1.0 LaOBiSSe 0.2291 0.1808 0.4605 0.1315

1.5 LaOBiS0.5Se1.5 0.2306 0.1819 0.3862 0.1542 0.0493

2.0 LaOBiSe2 0.2194 0.5879 0.1467 0.0469

ここで、前章までの試料同様、原料は全て株式会社高純度化学研究所の製品を使用し、LaSe2

は株式会社高純度化学研究所製のLa(99.9%)とSe(99.99%)から自作した。

49 4-4-2 構造解析

図4-3に、 と で焼成したLaOBiS2-xSexとLaOBiS2の粉末X線回折結果の比 較を示す。 で焼成した試料は、LaOBiS2と同じReO1-xFxBiS2(正方晶、P4/nmm空 間群)の結晶構造であることを示すミラー指数が求められた。しかし、 で焼成した試 料は不純物が多く、同相の結晶構造は検出されなかった。よって、この系は で焼成す ることが適していると示された。

図4-3 LaOBiSSe( )とLaOBiS2の粉末X線回折結果の比較

10 20 30 40 50 60

強度( a rb . unit )

2  (deg.)

LaOBiS

2

LaOBiSSe-700 ℃

LaOBiSSe-800 ℃

50 次に、図4-4にLaOBiS2-xSex ( x = 0 ~ 1.0 ) の粉末X線回折結果の比較を示す。全ての 試料を で焼成した。また の試料は合成することが出来なかった。全ての観測 パターンにおいてReO1-xFxBiS2(正方晶、P4/nmm空間群)の結晶構造であることを示す ミラー指数が求められた。x = 1.0のピーク上に示した数字がミラー指数である。図中に*

で示した 付近のピークは、酸化物La2O2Sに由来するピークであった。

図4-4 LaOBiS2-xSex ( x = 0 ~ 1.0 )の粉末X線回折結果

10 20 30 40 50 60

強 度( arb . uni t )

2 



(deg.)

x = 0 x = 0.2 x = 0.6 x = 0.8 x = 1.0

002 003 102 004 102* 104 113 105 114 200 106 007 203 212 204

51 次に、得られたX線回折結果から、格子定数を決定する。格子定数 と は、それぞれ(200) と(004)のピークから求めた。図4-5にLaOBiS2-xSex ( x = 0 ~ 1.0 )の格子定数のSe置換量 依存性を示す。

図4-5 LaOBiS2-xSex ( x = 0 ~ 1.0 )の格子定数 、 のSe置換量依存性

図4-5より、 軸及び 軸もSe置換量の増加と共に増加する傾向が見られ、ReO1-xFxBiS2

に対するF置換量依存性とは異なった結果が得られた。また、 軸長の増加率の方が 軸長 の増加率より大きいことが示された。

52 4-4-3 物性測定

次に、ZEMを用いてLaOBiS2-xSexの電気抵抗率、ゼーベック係数及び出力因子(Power

Factor PF)を測定した。ZEMにおける測定は、すべて室温( )から750Kまで行

った。図4-6にLaOBiS2-xSexの電気抵抗率の温度依存性を示す。すべての試料において、

温度上昇に伴い電気抵抗率が増加する傾向を示したが、x = 0.2において でやや電 気抵抗率が減少傾向を示している。また、Se置換量の増加に伴いLaOBiS2-xSexの抵抗率が 系統的に減少していくことから、Se置換によりこの物質はより金属化していくのではない かと考えられる。

図4-7にLaOBiS2-xSexのゼーベック係数の温度依存性を示す。すべての試料において、

ゼーベック係数の符号が負になっていることから、LaOBiS2-xSexもn型の性質を示してい ることがわかる。また、すべての試料において温度上昇に伴いゼーベック係数は増加傾向 にあるということがわかった。

図4-8に電気抵抗率とゼーベック係数から得られたLaOBiS2-xSexの出力因子(Power Factor PF)の温度依存性を示す。 の試料において、PFは500K以上でほぼ一 定かやや減少傾向であることがわかった。 の試料では、PFは温度上昇に伴い増加 する傾向を示した。最も高いPFの値を示したのは、750Kにおける 試料の であり、この値は前章で最も高いPFを示したLaOBiS2の約2倍以上の値で あり、Se置換により熱電性能が大幅に向上することが示された。

図4-6 LaOBiS2-xSex ( x = 0.2 ~ 1.0 )の電気抵抗率の温度依存性

53 図4-7 LaOBiS2-xSex ( x = 0.2 ~ 1.0 )のゼーベック係数の温度依存性

図4-8 LaOBiS2-xSex ( x = 0.2 ~ 1.0 )のPower Factorの温度依存性

54 最後に を算出するために、定常法を用いて熱伝導率を測定した。測定器の問題から、

測定は室温~670K付近まで行った。図4-9にLaOBiS2及びLaOBiSSeの熱伝導率の温度 依存性を示す。両試料とも、熱伝導率は温度依存性を示さず、SとSeの比率にも大きく依 存しないことが示された。

固体中の熱伝導率 は、フォノンの寄与 とキャリアからの寄与 の和、

(4-1)

となる。今回の結果からSより重元素であるSeを部分置換させることで格子熱伝導率は低 下したと考えられるが、その分キャリアの熱伝導率は上がり相殺したことで部分置換によ る熱伝導率の変化は見られなかったと考えられる。よって室温付近での平均値2Wm-1 K-1 をLaOBiS2-xSex ( x = 0 ~ 1.0 )における室温以上の熱伝導率の値とし、 を算出する。

図4-10にLaOBiS2-xSexの無次元性能指数ZTを示す。全ての試料において、温度上昇に 伴い は増加する傾向を示した。最も高い値を示したのは、750Kにおける であ った。

図4-9 LaOBiS2及びLaOBiSSeの熱伝導率の温度依存性

55 図4-10 LaOBiS2-xSex ( x = 0 ~ 1.0 )の無次元性能指数 の温度依存性

56 以上の結果から、Se置換により熱電性能の大幅な向上が示され、 という比較的 大きな無次元性能指数を得ることができた。図4-5における格子定数 のSe置換量依存性 と図4-8におけるPFの温度依存性の比較からは、この系においても 軸長が大きくなる方 が熱電性能は大きくなるといえる。しかし、図4-6よりSe置換量の増加に伴い電気抵抗率 は低下していることから、結晶構造における 軸の長さは大きくなりながらも、図4-1で示 したような伝導層におけるBiとSeの軌道の重なりがBiとSの軌道の重なりより大きくな っていることが予想される。ただ、第3章では 軸長が小さくなるブロック層の選択では熱 電性能が低下する傾向が示されたことから、軸長の大小だけではBiS2系層状化合物におけ る電子状態、及び熱電性能を直接は評価できないことが示された。

57

第 5 章

結論と今後の研究指針

58 5-1 本研究のまとめ

本 研 究 で は 、BiS2 系 層 状 化 合 物 に お け る 新 規 熱 電 変 換 物 質 の 探 索 を 目 標 と し 、 ReO1-xFxBiS2 ( Re = La, Ce, Nd ) 及びLaOBiS2-xSexを、元素置換やキャリアドーピングに よって電子状態を制御することで高い熱電性能の発現を目指した。以下に結果をまとめる。

5-1-1 ReO1-xFxBiS2

(1) LaO1-xFxBiS2はF置換によりキャリアをドープすると、電気抵抗率は減少するものの、

ゼーベック係数も減少してしまうため全体としてPFの値は減少した。最も高いPFの 値は、x = 0試料の750Kにおける であった。

(2) CeO1-xFxBiS2においては、F置換によるキャリアドープによって熱電性能の大きな変化 は見られなかった。最も高いPFの値は、x = 0.25試料の750Kにおける で あった。

(3) NdO1-xFxBiS2においては、ノンド-プであるx = 0の試料を作製することが出来なかっ た。F置換量増加に伴い、電気抵抗が増加するがゼーベック係数は変化しないことから、

熱電性能は低下した。最も高いPFの値は、x = 0.25試料の750Kにおける で、これはCeO1-xFxBiS2における最大値とほぼ同じ値だった。

(4) ReO1-xFxBiS2で最も高い熱電性能を示したのはノンドープ試料である LaOBiS2であっ たことから、この系はRe = Laが最適であること、またF置換によるキャリアドープは 適さないと結論付けた。

5-1-2 LaOBiS2-xSex

(1) LaOBiS2にSeを置換したLaOBiS2-xSexは、ReO1-xFxBiS2より高い熱電性能を示した。

最も高い PF の値は、750K における 試料の であり、この値は

LaOBiS2 の 約 2 倍以上の値であった。また、室温付近での平均 値 2Wm-1K-1

LaOBiS2-xSex に お け る 室 温 以 上 の 熱 伝 導 率 の 値 と し 、LaOBiS1.2Se0.8 に お い て

という比較的高い値が得られたことから、BiS2系層状化合物における熱電変

換材料の可能性を示すことができた。

59 5-2 今後のBiS2系熱電変換物質設計の研究指針

第3章の結果から、 軸長が大きくなるReを選択することでReO1-xFxBiS2 (Re = La, Ce, Nd)は半導体化し熱電性能が向上したことから、より 軸長が大きくなるブロック層を有す るSrFBiS2及びSrFBiS2-xSexの合成、及び熱電性能の評価を試みる。しかし、第4章の結 果から、軸長の大小だけでは熱電性能を直接考察することは難しいことがわかる。よって、

今後はホール効果測定等によりSe置換によってどのパラメータが熱電性能の向上に寄与し ているかを解明することが求められる。

また、Wiedemann Franz則によると、電気伝導率 と熱伝導率の電子寄与 の間に、

(5-1)

の関係がある。よって、無次元性能指数ZTは、

(5-2)

と表される。電気伝導率 は、

(5-3)

であるから、これを式(5-2)に代入すると、

(5-4)

が得られ、物質固有の物性をまとめたパラメータBと温度の関数 として書き換えるこ とができる。また、キャリア濃度 と有効質量 は

(5-5)

の関係があるため、

(5-6)

とあらわすことができる。このパラメータBはB因子と呼ばれ、この因子に対して無次元 性能指数ZTが増加関数であることから多きいB因子の値を持つ物質の設計が求められる。

また、式(5-6)の右辺に比例する、

(5-6) は重みつきキャリア移動度 と呼ばれ、半導体物質群で比較した場合、陽性原子と陰性原子

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