3.3.1国(中央政府)による財源保障
現在、地方財政計画、地方交付税制度を通じて、地方公共団体の財源不足額へ の財源保障がなされている。特に、地方債については、起債の許可制(2006 年度以 降は協議制)の他、公債費(元利償還費)の地方財政計画歳出への計上、後年度措 置(元利償還費の一部を基準財政需要額に算入)等を通じ、事実上、「暗黙の政府保
証」と同様の状況にある。また、地方債の引受先としても、政府資金(財政融資資金、
簡保資金)及び公庫資金(公営企業金融公庫)が過半を占めており、国(中央政府)
の資金供給にほぼ全面的に依存した構造にある。
3.3.2破綻認定基準
それでは、このように国(中央政府)による手厚い財源保障が与えられている地方 公共団体には財政破綻はあり得ないのだろうか。この問題は、地方公共団体の財政 破綻がもたらす国家財政への波及効果、インパクトの大きさによって決まる。即ち、国
(中央政府)は、地方公共団体の財政破綻によって国(中央政府)が負担すべきコスト が国家財政そのものを脅かす恐れがある場合には、金融行政における護送船団方 式の崩壊の場合と同様、財政破綻に瀕した地方公共団体を「潰すコスト」と「潰さない コスト」とを比較衡量の上、再建型の破綻処理手続に移行すべきかどうか、政策的・
裁量的に判断することとなる。
他方、現行制度上、地方税制(課税徴収権の設定及び執行)を根本から変更し得 るのは国(中央政府及び国会)のみであって、財政破綻に瀕した地方公共団体が自 ら為し得ることは歳出の削減等、非常に限られた範囲でしかない。従って、現行の地 方税制を所与のものとして、これを現状のまま一定であると仮定するならば、国家財 政同様、フロー変数及びストック変数による財政破綻認定基準に基づき、経済的実態 としての財政破綻を認定することが可能となる。
3.3.3財政再建団体制度
財政再建団体制度は、第二次大戦後、公立学校の六三制移行や自治体警察の整 備等による財政需要の拡大の結果、昭和29年度決算が大幅な赤字に陥る地方公共 団体が続出したことから、その対策として、地方財政再建促進特別措置法の制定に よって設けられたものである。また、昭和 30 年度以降に財政赤字に陥った地方公共 団体に対しても、同法に基づく財政再建団体制度を準用することができる(22 条 2 項)。
3.3.3.1財政再建団体の認定基準
財政再建団体への移行は、実質的な財政破綻の回避または再建型破綻処理手続 への移行と評価することが可能である。地方財政再建促進特別措置法は、実質収支
(形式収支−翌年度繰越財源)が赤字に陥ったことを要件として、議会の議決を経た
上で地方公共団体から国に対して申し出ることとしている(2 条)。但し、財政再建団 体制度は、強制的に国が赤字団体を認定し、監督するものではなく、あくまでも「地方 自治の本旨に基づいて」(憲法 92 条)、地方公共団体の任意の意思によって国の管 理下に入ることを想定している。従って、現実的には、実質収支が赤字に陥ったから と言って直ちに財政再建団体の申し出を行う地方公共団体はほぼ皆無であり、むし ろ同法上、一般事業債の発行が制限されることとなる場合(23条、同施行令11条の 2)、即ち、標準財政規模に対する実質収支比率が基準(市町村20%、道府県5%)を 超える赤字決算に陥って初めて財政再建団体の申し出を行うケースが多い。
3.3.3.2再建型破綻処理手続
財政再建団体制度の下においては、財政再建計画が実質的な再建型破綻処理手 続としての性質をもつと言える。財政再建団体は、財政再建計画を国に提出する代 わりに財政再建債の発行が認められ、事実上、赤字を将来に繰延べることができる。
但し、昭和30年度以降の準用財政再建団体の場合は、財政再建債の発行が認めら れない代わりに、財政再建計画の枠内で、上記の一般事業債の発行制限(23 条、同 施行令11条の 2)が緩和される。この他、一時借入金への政府資金融資の斡旋、職 員定数削減等に伴う退職手当債の発行許可、一時借入金の利子や退職手当の一部 の特別地方交付税への算入等、国の財政支援が得られる。
3.3.3.3財政再建団体制度の問題点
まず、財政破綻認定基準が実質収支(形式収支−翌年度繰越財源)の赤字とされ ているが、財政運営上、実質収支は比較的操作が容易なフロー変数であって、極端 な場合、いかに財政赤字が累積しようとも、地方債の発行さえ継続可能であれば、行 政を停滞させることなく財政再建団体への移行を回避できる。従って、財政破綻認定 基準としては、ストック変数と組み合わせる等、より客観的な基準を採用すべきである。
また、現行制度の下では、財政再建団体の申し出は地方公共団体の任意の意思に 委ねられているが、財政運営上の責任を明確化するためにも、少なくとも破綻認定権 は、当該地方公共団体以外の第三者(国または第三者機関等)に与えるべきであろ う。
次に、再建型破綻処理手続として、財政再建計画上、赤字解消は、増税よりも主と して歳出削減によって行うこととされ、歳出削減だけでは不十分な場合にのみ標準税 率超過課税または法定外普通税の新設を認めることとされている。これは、いわばリ ストラ(歳出削減)を主とした再建策と言えるが、財政運営に失敗した以上、最低限そ
の責任を明確化させるためにも増税を義務付けるべきである。それとともに、例えば、
自治体財政再建管財人の設置、近隣自治体による救済合併、国による債務の肩代 わり等、より実効性ある制度設計が考えられる。