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各被験者のアンケート結果

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3.2 各被験者のアンケート結果

3.2.1 平均値と分析結果

実験の前後に行ったアンケートについて各被験者の回答をについての結果をまとめたもの を図3.4,図3.5,図3.9に示す.また,アンケートの結果について各被験者の平均値を算出 し,それぞれの項目を事前・事後について対応なしのt検定を行った結果を図3.6,図3.7, 図3.8に示す.

歩きスマホの危険度についてどの程度に危険だと思うかという危険認識度を5段階で評価 させた結果,事前に比べて事後では平均値が高くなっていたが事前・事後の間で有意な差は 認められなかった(p=.171).次に,周辺認識のメタ認知について,歩行時に比べ歩きスマ ホ時では平均値が有意に低く,周辺認識ができていないと認識していることが明らかとなっ

た(p < .001).歩行時のメタ認知については事前・事後の間で有意な差が認められなかっ

た(p=.341).しかし,歩きスマホ時のメタ認知については事前・事後の間に有意な差が認

められ,事前に比べ事後では被験者が歩きスマホ時の周辺認識ができていないと認識したこ とが示された(p =.004).これは,実験を通して,歩きスマホ時に周辺認識ができないと いう認識をさせられることが示唆された.また,認知課題成績の自信について,5段階で評 価させた結果,Near条件とFar条件の間に有意な差が認められ,Near条件ではFar条件に 比べて認知課題成績の自信が小さかった(p =.010).つまり,被験者はより近い位置で認 知課題を行う方が,より遠い位置で認知課題を行うよりも記憶できないという認識になるこ とが示唆された.しかし,実際に認知課題の成績を正答数/回答数で正答率として,Near条 件とFar条件の認知課題の成績について対応なしの検定を行った結果、Near条件とFar条 件において有意な差は認められなかった(p=.152)

また,実験条件についてより遠くで止められたと思うものを反応しやすかった順として並 び替えをさせた結果,反応しやすかった順にFB,NB,FW,NWであった(図3.9).これ は,各条件での目標刺激検出時の距離が大きかった順,つまりより検出が早かった順と一致

している(表3.1.2).このことから,被験者に対して距離のフィードバックを行っていない

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にも関わらず,自身の検出課題の結果を正しく認識できていることが示唆された.

3.4 スマホ使用歴

3.5 歩きスマホは危険性(N=20)

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3.6 歩きスマホの危険度

3.7 周辺認識に対するメタ認知

3.2 各被験者のアンケート結果

3.8 認知課題成績と自信

3.9 反応しやすかった条件

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考察

本実験の結果から,直線条件,曲がり角条件共通で,視線を向ける対象の奥行き位置が近 い位置でも遠い位置でもWM条件ではBlank条件と比べて目標物により近い位置でボタン を押したことから,目標刺激の出現位置や注意を向ける対象の奥行き位置に関わらず,認知 負荷が高いと周辺物体の検出が阻害されたことが明らかになった.これは,WM条件では,

認知課題にも注意資源を使用する必要があるため,Blank条件に比べて目標刺激検出課題に 使用する注意資源が少なくなったためであると考えられる.また,本実験の結果より,直線 条件での検出時の目標刺激との距離はWM条件が145.07cm,Blank条件が164.95cmで

あり,WM条件とBlank条件の差は 19.89cmであった.曲がり角条件では,WM条件が

76.86cm,Blank条件が83.82cmであり,条件間の差は6.96cmであった.歩きスマホ時の 歩行速度を2.8km/hとして計算すると,直線条件の距離の差は 250ms,曲がり角条件の距

離の差は100msで進む距離に相当するため,認知負荷がない場合は認知負荷がある場合に

比べ危険の回避に余裕があると考えられる.

直線条件において,認知課題の有無に関わらずNear条件ではFar条件と比べて目標物に より近い位置でボタンを押したことから,認知課題の有無に関わらず,視対象が近くにある だけで周辺物体への注意が阻害されることが示唆された.Near条件とFar条件において視 野角を同程度に統制しているにも関わらず,より近い距離に視対象がある場合は周辺物体の 検出が遅れたことから,視角自体は同程度であっても注意を向ける対象の位置により,周辺 物体に注意を向ける際の認知負荷が異なることが示唆された.つまり,視対象が近い位置に あると遠い位置にある物体へ注意を配る際の認知負荷が視対象が遠くにある場合に比べて高 いと考えられる.曲がり角条件について対象の奥行き位置による効果は見られなかったこと

についても,曲がり角条件では目標刺激が近い位置に出現するため,Near条件よりもFar 条件の方が遠くの物体へ注意を向ける際の認知的負荷が少ないといった特性が作用しなかっ たことが原因である考えられる.また,対象の奥行き位置によって周辺物体への注意を向け る際の認知的な負荷が異なる特性は,認知課題成績への自信と認知課題の成績(正答率)が 一致していないことについても影響を与えている可能性がある.認知課題の正答率としては 有意な差はないにも関わらず,Near条件ではFar条件に比べて有意に自信が低下している のは,周辺物体への検出に対する負荷がNear条件の方が高く,目標刺激検出課題により多 くの注意資源を使用する必要があるため,課題を難しいと判断したことが認知課題成績の自 信にも影響を与えたと考えられる.

本実験において,目標刺激検出時の距離は,認知課題の有無により大きく変化し,さらに 認知課題の有無による条件内で視対象の奥行位置に応じて変化し,認知課題がある場合は ない場合に比べて検出が遅れ,その中でも視対象が近いとより検出が遅れる.このことか ら対象の奥行き位置による効果よりも認知課題の有無による効果のほうが大きいことが示 唆された.そこで,対象の奥行き位置による効果と認知課題の有無による効果の効果量を 計算した結果,奥行き位置による効果量はG.eta2 =.031,認知課題の有無による効果量は

G.eta2 =.357であった.このように,認知課題の有無による効果が対象の奥行き位置の効

果に比べ大きいことから,本実験で用いた認知課題の認知負荷は視対象の奥行き位置から目 標刺激の検出のために周囲に注意を向ける際の認知負荷に比べて大きすぎた可能性が考えら れる.そのため,目標刺激検出を行う際の視対象から周辺物体へ注意を切り替えることより も,認知課題により多くの注意資源を使用したのではないかと考えられる.今回用いた認知 課題は,「歩きスマホ」時の操作と比べても読み,音読,記憶と要求される負荷が大きいこと が想定されるため,今後の課題として,認知課題をより単純で負担の少ないものを使用した 際や「歩きスマホ」時にさらに近づけた課題にした際の注意特性についても検討すべきであ ると考える.

また,アンケート結果において,事後アンケートでは事前アンケートに比べ,「歩きスマ ホ」時の周辺認識についてのメタ認知の評価が低下しており,被験者は,実験後には実験前

に比べて,歩きスマホ時は周辺認識が出来ていないという認識をしたことが明らかとなっ た.このことから,VRで「歩きスマホ」の再現をすることでメタ認知を正しく変化させる ことができ,それによって歩きスマホの防止につながると考えられる.また,VR体験によ るメタ認知の変化は歩きスマホだけでなく,実際に行うには危険性がある体験や,既存の運 転シミュレータと組み合わせてより高い没入感を生み出すことによってさらに危険性を認識 させることができると可能性があるため,防災や事故防止などといった分野への応用が考え られる.

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まとめ

本研究では,VR技術を用いて動的な視覚刺激の提示を行い,注視する対象の奥行き位置 や認知負荷の有無を操作することで,「歩きスマホ」の時の周辺の動的物体の検出の特性につ いて検討した.その結果,注意を向ける物体の認知負荷に応じて周辺物体への注意は影響を 受け,注意を向ける対象の奥行き位置に関わらず,認知負荷が高いと周辺物体への注意が阻 害されることを明らかにした.また,たとえ視野角が同じでも注意を向ける対象の奥行き位 置に応じて周辺物体への注意に影響が生じ,近い距離に視対象がある場合は周辺物体への注 意が阻害されることを明らかにした.このことから,観察者から近距離かつ文字を読み,画 面上での操作を行うなど認知的な負荷の高い「歩きスマホ」はより危険であることが確認さ れた.また,事前と事後に行ったアンケートの結果,実験後では被験者の歩きスマホ時の周 辺認識におけるメタ認知が低下した.つまり,実験後では実験前よりも「歩きスマホ」時に 周辺の認識ができていないと認識したことが明らかとなった.これにより,VRで「歩きス マホ」の体験をすることでメタ認知を正しく変化させ,「歩きスマホ」の予防につながる可能 性が示唆された.

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