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各種β-Gal を使ったガラクトオリゴ糖溶液の調製 および 4P-X 含量の測定

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第三章 各種β-Gal を使ったガラクトオリゴ糖溶液の調製

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に添加すると、50 %以降の分解速度は酵母β-Gal が最も早く開始され、約 24 時間でほぼ100 %に到達する(図37)。これは Km値(最大反応速度の1/2 を 与えるときの基質濃度)の違いや生成物阻害を受けにくい酵素の性質によるも ので、酵母β-Gal はラクトースの濃度が低くても効率的に分解できることを意 味している。

本章では、起源の異なる3種類のβ-Gal(B. circulans、A. oryzae,K. lactis)

を用いてGOSを調製し、前章で確立した4P-Xの定性・定量分析法により、GOS 中の4P-X含量を測定することで安全性の評価を行った。なお、酵母(K. lactis)

由来のβ-Gal に関しては、通常の条件では転移活性が低く殆どオリゴ糖を作ら ないことから、意図的に高転移となる条件を設定し評価した。

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第二節 実験方法

1. 材料

酵母(K. lactis)由来のβ-Galとして合同酒精㈱のGODO-YNL2、カビ(A. oryzae)

由来のβ-Galとして合同酒精㈱のGODO-FALを用いた。

2. 酵素反応条件

特に断りのない限り、ガラクトオリゴ糖溶液を調製するための酵素の反応条 件は以下の通りとした。反応終了後、沸騰水浴中で 5 分間加熱し、遠心上清を

0.45 µmフィルターでろ過したものを分析用のサンプルとした。

基質:50 %ラクトース

反応条件:50℃, 70 rpm, 24 hr 酵素添加量:0.05~1.0 v/v%

緩衝液:

①細菌由来β-Gal:50 mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.5)

②酵母由来β-Gal:200 mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.5)

③カビ由来β-Gal:50 mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.5)

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第三節 結果と考察

1.酵母β-Galによるガラクトオリゴ糖生成条件の検討

先述の通り、酵母(K. lactis)由来のβガラクトシダーゼは乳糖分解活性が高 いのが特徴である。このため、細菌(B. circulans)やカビ(A. oryzae)のβ-Gal と比べると、オリゴ糖の生成能は低い。しかし、金属イオンの影響を強く受け、

環境中のカリウムイオン濃度が高くなると乳糖分解活性が上昇し、ナトリウム イオン濃度が高くなると転移活性が上昇することが知られている。各種金属イ オンを添加し、転移効率が向上する酵素の反応条件を検討した。検討の結果、

塩化ナトリウムが最も効果的であった(図38)。また、転移効率は濃度依存的に

上昇し、200 mMで転移効率は最大に到達した(図39)。以上の結果から、酵母

β-Galの転移反応には200 mMの塩化ナトリウムを添加することとした。

K. lactisのβ-Galは活性中心のアミノ酸残基の周辺にナトリウム・カリウム

イオン結合サイトがある 13。この結合サイトにカリウムが結合すると加水分解 反応が促進され、ナトリウムが結合すると転移反応が促進されると言われてい る。この違いはナトリウムとカリウムの分子量の違いによるもので、分子量が 大きいカリウムが結合すると、活性中心に分子量の大きなラクトースよりも分 子量の小さい水分子が侵入しやすくなり、加水分解反応が促進される。一方、

分子量の小さいナトリウムが結合すると、活性中心に分子量が大きいラクトー スが入りやすくなり、転移反応が促進されると考えている。酵素反応時のラク トース濃度を可能な限り上げて、反応溶液中からカリウムを完全に除いてナト リウムを添加することで、K. lactisのβ-Galでもオリゴ糖を効率的に生成でき ることが分かった。

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2.各種β-Galで調製したガラクトオリゴ糖溶液の糖組成

各種β-Gal(細菌、酵母、カビ)を用いてガラクトオリゴ糖溶液を調製した。

細菌はB.circulans由来のビオラクタFN5(天野エンザイム社)、酵母はK. lactis 由来のGODO-YNL2(合同酒精㈱)、カビはA. oryzae由来のGODO-FAL(合 同酒精㈱)を使用した。10 mLの55 %ラクトース溶液に至適pHとなるように 各種緩衝液を加え、24時間穏やかに振とうした。調製した溶液の糖組成は図40 の通りとなった。3糖以上のGOSは、細菌>酵母>カビの順で高くなった。ま た、4P-Xが含まれている4糖は、細菌>カビ>酵母の順で高くなった。調製し た各種GOSを前章で確立した4P-Xの定量分析系に供した。今回データには示 していないが、酵母のβ-Gal同様に、カビについてもGOS生成に最適な条件を 検討した(pHや温度、各種金属イオンの影響など)。しかし、カビのβ-Galは 酵母に比べると非常に安定性が高く、どのような条件下においても図40以上の 値は得られなかった。酵母のβ-Galは、条件さえ整えばカビよりも3 糖以上の GOSを生成することが分かったが、他のβ-Galに比べると、5糖以上の長鎖を 殆ど作らず、殆どが3糖であることが分かった。

3.ゲルろ過カラムクロマトによる分子量分画

前章と同様に、図40で調製したGOSをゲルろ過カラムで4糖画分を分取し た。溶液2 mLをカラムにアプライし、約3 mL毎にフラクションを回収した。

糖の検出はジニトロサリチル酸法を用いた。得られたクロマトグラムを図41に 示した。HPLC分析の結果から酵母由来はフラクション57、カビ由来はフラク ション58が4糖画分であることが確認された(図42)。得られた4糖画分(酵 母由来:約4.0 mg、カビ由来:訳3.6 mg)を凍結乾燥し、以降の分析に用いた。

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4.各種GOSに含まれる4P-X量の比較

調製した酵母由来の凍結乾燥品1.0 mgをイオンクロマト分析に供した。結果 を図43に示した。文献情報から最も面積の大きい15.58付近のピークは分岐4 糖(Galβ1-6Galβ1-6Galβ1-4Glc)であることが推察された。4P-X の標品は

19.34分付近に検出され(B)、4P-Xの純品をサンプルに混ぜた共打ちの結果(C)

から19.28付近のピークが4P-Xであることが分かった。全糖中の4糖の存在比

(3.0 %)と、4糖中の4P-Xの存在比(4.7 %)から、全糖中の4P-Xの存在比

は0.14 %と算出された。前章の結果から、細菌β-Gal由来GOSに比べると、

4P-X含量は1/10程度であることが分かった(細菌β-Gal由来GOS:1.17%、

酵母β-Gal由来GOS:0.14%)。

過去文献のイオンクロマトの分析チャート(図31)との比較から、イオンク ロマト分析においてカラムの劣化により分離能が低下している可能性が考えら れたため、サーモフィッシャー・サイエンティフィック社にイオンクロマト分 析を依頼した。分析装置および分析条件は同様とした。分析結果を図44に示し た。図35 および図43 と比べると分析ピークはシャープであった。また、過去 の文献のチャート(図31)と細菌B. circulans(C)はほぼ同様のパターンであ った。以上のことから、図44では正常なイオンクロマトの分析チャートが得ら れたと考える。推測される4P-Xの位置を黒矢印で示した(酵母K. lactis由来:

26.909分、カビA. oryzae由来:26.775分、細菌B. circulans由来:27.083分)。 酵母(A)やカビ(B)由来では、生成される GOS が分岐 4 糖(Galβ1-6Gal β1-6Galβ1-6Glc)がメインであるのに対し、細菌(C)由来ではメインが直鎖 4糖(Galβ1-4Galβ1-4Galβ1-4Glc)ではあるが、それ以外の糖も多く生成さ れていることが分かる。文献情報によると、細菌由来は約14種類以上の構造異

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性体が含まれているとのことであった。また、冒頭の図2に示した4P-Xの次に アレルギー性の高い4糖(Galβ1-4Galβ1-4Galβ1-3Glc)は33分付近のピー クに含まれていることが文献から推察されたが、酵母やカビではピークが検出 されてないことから、作られにくいことが示唆された。

4糖および全糖中に含まれる4P-X含量を図45に示した。4糖中の4P-X量は、

細菌(8.79%)>酵母(6.43%)>カビ(2.39%)の順となった。一方、全糖中の 4P-X 量は、細菌(0.92%)>酵母(0.19%)>カビ(0.12%)の順となった。また、各種GOS 1 mLに含まれる4P-X量は表4に示した通りとなり、酵母やカビ由来は細菌の

10~20 %程度であることが分かった。以上の結果から、酵母やカビのβ-Galで

調製したGOS は細菌のβ-Gal由来よりも図 2 のアレルギー性4 糖が少なく、

安全性が高いことが示唆された。

本研究において、これまで非常に困難であったアレルギー性の4糖の定性・

定量分析が、迅速かつ簡便に測定できるようになった。今後は確立した分析法 を用いて、別のβ-Gal(Streptococcus thermophilusやSporobolomyces

singularisなど)の評価を行いたい。また、ラクトース分解乳などのGOS以外

の乳製品の安全性を評価するために、確立した方法を利用したい。

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A)至適pH(37℃)、B)pH安定性(37℃、3分)

C)至適温度(pH 6.5)、D)温度安定性(pH 6.5、30分)

図36 酵母(K. lactis)由来のβ-Galの酵素学的性質14

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※試料は牛乳、pH無調整、10℃、酵素添加量は、酵母0.08 (w/v)%、細菌0.2 %、カビ0.2 %

図37 起源の異なるβ-Galの乳糖分解曲線14

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A)

B)

A) 25 mM, B) 100 mM

図38 酵母β-Gal 金属イオンの影響

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※オリゴ糖収率(%):G3以上/全糖×100

図39 酵母β-Gal NaCl濃度の影響

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図40 各種β-Galで調製したガラクトオリゴ糖溶液の糖組成

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A) B)

※カラム:Bio-Rad社バイオゲルP-2(22mm×100cm)

※糖の検出:ジニトロサリチル酸(DNS)法

図41 ゲルろ過カラムクロマトグラム(A: K. lactis, B: A. oryzae)

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A-1) B-1)

A-2) B-2)

A-1) K. lactis_GOS ゲルろ過前, A-2) ゲルろ過後K. lactis_G4(Fraction 57) B-1) A. oryzae_GOS ゲルろ過前, B-2) ゲルろ過後A. oryzae_G4(Fraction58)

※分離カラム:CARBOSep CHO-620CA(Transgenomic社)

図42 ゲルろ過前後のHPLC分析(K. lactis, A. oryzae)

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A)

B)

A) K. lactis βGal_G4、B) G4 + 4P-X

図43 イオンクロマト分析(K. lactis)

Lactose(内標)

分岐4

(Galβ1-6Galβ1-6Galβ1-6Glc)

4P-X Lactose(内標)

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A) K. lactis_G4, B) A. oryzae_G4, C) B. circulans_G4、黒矢印:4P-X

図44 イオンクロマト分析

A)

B)

C)

分岐4

(Galβ1-6Galβ1-6Galβ1-6Glc)

分岐4

(Galβ1-6Galβ1-6Galβ1-6Glc)

直鎖4

(Galβ1-4Galβ1-4Galβ1-4Glc)

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図45 4糖および全糖中に含まれる4P-Xの割合

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表4 各種GOS 1 mLに含まれる4P-X量の比較

GOS 1mLあたりの 4P-X量(mg)

細菌(B. circulans)

9.7

酵母(K. lactis)

1.7

カビ(A. oryzae)

1.2

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要約

本研究は、ガラクトオリゴ糖(GOS)の生成や乳中のラクトースを分解する際に使用さ れている各種微生物由来のβガラクトシダーゼの安全性を評価することを目的として いる。中でも、GOS中のアレルギーを誘発する可能性のある4 糖(4P-X)に注目し、そ の合成から開始して最終的には迅速かつ簡便な定量分析系を確立し、安全性評価系 の構築を目指した。

1.有機合成反応と酵素反応を組み合わせることで、4糖(4P-X)の合成を計画した。ま ず、グルコースを出発原料に有機合成反応により図 24 のルートでラクトース保護体

(化合物7)を合成した。次に、B. circulans由来のβガラクトシダーゼの酵素反応で(ア

クセプターをガラクトース、ドナーをラクトース)ガラクトビオースを合成し、図 25 のルー トでガラクトビオース保護体(化合物 13)を合成した。最後に、ラクトース部分とガラクト ビオース部分同士のカップリング反応により、4P-X を合成した(図 26)。1H-NMR と

13C-NMRのスペクトラムから目的とする4P-Xであることが確認された。

2.B. circulansのβガラクトシダーゼで調製したガラクトオリゴ糖溶液を用いて4P-Xの 分析条件を検討した。まず、ガラクトオリゴ糖溶液をゲル濾過(Bio-gel P-2(バイオラッ ド社)、22 mm×100 cm)で 4 糖画分を回収後、ピレンブタン酸ヒドラジドで標識して HPLC分析に供した。その結果、B. circulansが作るメインの直鎖4糖(Galβ1-4Galβ

1-4Galβ1-4Glc)と4P-Xが同じ位置に検出されるため、本方法では正確な定量はでき

ないことが分かった。そこで、4 糖をイオンクロマト分析装置(Dionex ICS-5000)に供し たところ、メインピークとは異なる位置に検出された。この方法であれば分析が可能で あることが示唆された。本方法を用いることで、従来は非常に複雑であった 4P-X の分

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