大学全体での自殺予防について、
A大学・B 大学・C 大学・D 大学では自殺予防に特化し た取り組みは授業以外ではされてなかったが、
E大学では〈物理的な対策〉や〈自殺に関す る調査・研究〉がされていることが示された。他の大学と異なり、
E大学には〈自殺に関す る専門家がいる〉ため、専門家の指導に基づいた的確な対策に取り組みやすい環境がある と言える。
E大学は〈自殺の波ごとに対策を強化〉しているので、過去に学生の自殺が大学 の問題になったため、大学全体での自殺予防の取り組みがされるようになり、現在も続け られていると考えられる。
E大学では〈教職員への研究結果に基づいた注意喚起〉がされて いるが、他の大学では研究に基づいた取り組みを実施しているとの語りは見られなかった。
このことは、カウンセラー・相談員が所属している大学全体が自殺予防に対してどのよう
な問題意識を持っているかによる差ではないかと推測される。A 大学・B 大学・C 大学・D 大学ではカウンセラー・相談員個人として日々学生の対応をする中で自殺予防の必要性を 感じていても、大学全体としては同じような認識がないため全学での取り組みはされてい ないことも多く、学生相談室内で危機対応のマニュアルを作成して対応にあたるといった 組織内での取り組みにとどまっていることが考えられる。一方、
E大学では大学全体に自殺 予防の必要性が認識されているため、カウンセラー・相談員個人も意識をしながら対応に あたっていたり、自殺に関する研究の結果に基づいて対策を講じているのではないかと考 えられる。しかし、大学全体で取り組みがされていても、〈学生相談や学生支援に対して教 員の温度差がある〉ことから、大学の規模を考慮するとガイドラインで示されているよう な全学的な取り組みを行っていくことは難しいことが考えられる。
第2項 学内の医療機関の役割による違い
5校全ての大学に学内の医療機関が設置されていたが、 《学生相談と医療機関で役割分担 をしたり、情報を共有しながら学生に対応する》ことがあるように、自殺に関する対応で は精神科医がいるかによってカウンセラー・相談員の対応には大きな差が出てくると考え られる。
A大学と
D大学では学内に精神科医がいないため、 〈学外の医者と連携を取る〉形 でしか精神科との連携が取れないが、
B大学、
C大学、
E大学では学内の精神科医と連携を 取ることが出来る。学内の精神科医との連携がすぐに取れる
B大学、C 大学、E 大学のほ うが、緊急時の対応がしやすいことが考えられる。
B大学は精神科医が来室するのは週に1 度であるが、
C大学、
E大学は学内の医療機関に精神科医がいるため、緊急時においてより 連携が取りやすい。精神科医と連携を取っておくことで《学生と
Coの関係が壊れないよう な保護者へのアプローチを考える》もできるため、つながりが切れてしまうリスクを避け ることができる。
C大学、
E大学では学生相談のカウンセラー・相談員と学内の精神科医が 同じ学生を担当しながら見ることもあり、日常的に連携を取りながら学生の対応にあたる ことができる。基本的にはどの大学においても医療機関と連携しながらリスクが高い学生 の対応をしているが、学内に精神科医がいるかどうかによって、学生相談のカウンセラー・
相談員が出来る対応の幅が変わってくることが考えられる。学内に精神科医がいない大学 の場合はあらかじめ外部の医療機関とのつながりを作っておかなければ、緊急時に上手く 対応が出来なくなってしまうため、学内の医療機関がリスクのある学生にどのような対応 が取れるのかと合わせて学生相談が担う役割を考えていく必要がある。
第3項 カウンセラー・相談員の対応
来談した学生の対応の〈学生の死にたい気持ちを丁寧に聞く〉、〈自傷行為の背景・気持
ちのアセスメント〉 、〈どれくらい具体的に死ぬことを考えているか〉といった点について
は、ほとんど全員のカウンセラー・相談員の語りの中に見られた。これらは死にたい気持
ちを抱えているなど自殺のリスクが高い学生の対応における重要な点であると考えられる
が、そのような学生の対応に限ったことではなくて、学生相談でのカウンセラー・相談員
に共通している基本的な姿勢であるとも考えられるだろう。
ドキュメント内
修士論文
(ページ 33-36)