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夫妻■□

「可

Iable4コミュニケーション・パターン3群についての

重判別分祈結果

96

して,共感親和群では妻と同程度に重視していることで

ある。これらのことから,夫が「新しい」結婚・夫婦関 係のあり方を志向していることが,夫婦間の共感的で親 和的なコミュニケーション関係をもたらすきわめて重要 な要因であることが示唆された。

そこで,この点をさらに詳しくみるため,夫・妻のどの ような結婚観がコミュニケーション・パターンに決定的な 影響を与えているかを検討した。分析は,コミュニケー ション3群を従属変数に夫・妻それぞれの結婚観3次元得 点を独立変数として同時に投入する重判別分析を行った (Table4)。標準化したときの正準判別関数の係数をみる と,夫のく相思相愛>とく夫の妻への理解・支持〉が高い正

の係数を示し(Wilks,A=0.82,X2(12)=54.46,<、001),

3群の判別に夫のこれら2次元の結婚観が大きく寄与し ていることが明らかにされた。各群のグループ重心の関

数を見ると,第1判別関数は共感親和群を他の2群から 区別する軸であると考えられることから,夫がく相思相 愛〉とく夫の妻への理解・支持〉を重視し,妻がく妻の献 身・夫の甲斐'性〉を重視している夫婦に共感親和群が多 いといえる。一方,第2判別関数は,平均中立群を他の 2群から区別する軸であると考えられ,夫がく相思相愛〉

を重視するがく夫の妻への理解・支持〉は重視しない夫 婦に平均中立群が多く,反対に,〈夫の妻への理解・支 持〉は重視するが,〈相思相愛〉を重視しない夫婦に威 圧回避群が多い傾向が見出された。もっとも分類結果を みると,的中率は51.8%と,あまり高くない。すなわ ち,共感親和群については62.4%,威圧回避群について は57.1%と比較的高いが,平均中立群については36.7%

にすぎず,この群の低さが全体での的中率の低さをもた らしていることがわかる。平均中立群を他の2群から区 別する第2判別関数を用いた判別には問題が残されてお り,再度モデルの検討を行う必要があることを認めざる をえない。しかしながら,夫のく相思相愛〉とく夫の妻 への理解・支持〉が,共感親和群を他の2群から判別す

0.6

正準判別関数係数(標準化)

判 別 関 数 1 判 別 関 数 2

0.4

0.2

‑0.2

‑0.4

‑0.6

Figure5コミュニケーション・パターン識別の<妻の献 身・夫の甲斐性>得点

親和群と威圧回避群との間に有意差が見られ(F12, 』)

=4.09,,<、05),共感親和群の妻は威圧回避群の妻に比

べてく相思相愛〉が高いいく.05)ことが明らかにされ た。次に,群別に'性の単純主効果を検定したところ,平 均中立群及び威圧回避群において有意差が見出され(F

(1,,95)=5.79, <、05;R,,,52)=6.36,'<、05),両群とも

妻のほうが夫より高いことが示された。〈夫の妻への理 解・支持〉についても,群と性との交互作用帆5.5,7)

=5.03,,<,01)が見られた。夫.妻別に群の単純主効果 の検定を行ったところ,夫については,共感親和群と平 均中立群・威圧回避群との間に有意差が見られ(F112.

273)=14.82, <、001),共感親和群は平均中立群.威圧 回避群に比べてく夫の妻への理解・支持〉が高い(共に,

<、001)ことが明らかにされた。妻では群の主効果は 見られず,3群の間に差が見出されなかった。次に,群 別に性の単純主効果を検定したところ,〈相思相愛〉と 同様,平均中立群及び威圧回避群において有意差が見出 さ れ ( E 1 , . , 9 5 ) = 8 . 6 3 ,〈 、 0 1 ; F 1 , . , 5 2 ) = 9 . 3 9 ,〈 、 0 1 ) , 両 群とも妻のほうが夫より高いことがわかった。(R(5,5,7)

=3.91, <、05)が見出された。〈妻の献身.夫の甲斐性〉

については,群と性の主効果が見出され(F15・扇")

=14.62,'<、001;R5,517)=34.36,p<、001),群の主効果 については,平均中立群・威圧回避群は共感親和群に比 べて高い(順に, <、01, <、001)こと,また,性の主 効果については夫のほうが高いことが明らかにされた。

ここで特記したいのは,「新しい結婚観」であると考 えられるく夫の妻への理解・支持〉とく相思相愛〉の2 次元において共感親和群の夫が平均中立群・威圧回避群 の夫に比べて得点が顕著に高いこと,また,これら2次 元において平均中立群・威圧回避群では夫婦間の得点差 が見出され,夫はこれら2次元を重視していないのに対

発 達 心 理 学 研 究 第 1 5 巻 第 1 号

グ ル ー プ 重 心

808193950520 ●●●●●●

一−1

注.()内は評定者を示す。

相思相愛(夫)

相思相愛(妻)

夫の妻への理解・支持(夫)

夫の妻への理解・支持(妻)

妻の献身・夫の甲斐性(夫)

妻の献身・夫の甲斐性(妻)

581051624414 ●●●●●● 259514

●●●一一

、08

−.25

.21 共 感 親 和 群

平均中立群 威圧回避群

﹄一

夫妻■□

中年期夫婦のコミュニケーション・パターン 9

る変数であるという分析結果は,夫の「新しい結婚観」

が夫婦のコミュニケーション・パターンを決める重要な 変数であることを示している点で注目に値する。

考 察

本稿は,昨今,広く夫婦間のコミュニケーション不全 の問題が取り上げられるようになってきている現象に注

目し,中年期夫婦を対象に夫婦問コミュニケーションの 様態と問題の背景を結婚・夫婦をとりまく社会的環境の 変化との関連で検討した。以下では主な結果を概観し,

結果の解釈を行いたい。

第1に,夫婦間のコミュニケーション態度の評定値を もとにクラスター分析によって対象夫婦を典型的なコ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン ・ パ タ ー ン を も つ 群 に 分 類 し た と こ

ろ,双方がポジティブな態度でコミュニケーションをし

ているく共感親和型コミュニケーション・パターン群>,

ポジティブ・ネガティブな態度ともに顕著に見られない

く平均中立型コミュニケーション・パターン群>,双方が ネガティブな態度でコミュニケーションをしているく威 圧回避型コミユニケーシヨン・パターン群〉の3クラス ターが抽出された。3群の比率は,多い順に共感親和群 (36.5%),平均中立群(35.7%),威圧回避群(27.8%)

の順であるが,比率の差は僅小であった。日本では,

1960年代の後半に恋愛結婚が見合い結婚を超えて,現 在では90%近くを恋愛結婚が占めている。調査対象者 である中年期夫婦の大半も,この人と一緒に居て楽し い,話して楽しいと思ったからこそ互いに選び合って結 婚したものと考えられる。いかに年月を経たとはいえ,

その夫婦の間でく威圧回避群〉に分類された夫婦の比率 が30%近くに達していた事実は印象的である。前述の ように日本では,1980年代以降,人間的交流に乏しい 夫婦関係の貧困・荒廃が評論的・経験的に指摘されてい るが,こうした指摘の妥当性を裏付ける結果といえよ

う。

第2に,共感親和群及び威圧回避群の夫婦では妻は夫 に比べて夫婦関係満足度が低く,離婚思念度が高いこと が明らかにされた。特に威圧回避群は,他の2群に比べ て夫・妻ともに夫婦関係満足度が低く,夫婦関係満足度 における夫婦間のギャップが顕著に大きかった。昨今,

中高年層の離婚率が上昇し,夫の定年退職を機に妻が離 婚を切り出す 定年離婚',が話題になっているが,この 群は,こうした定年離婚の予備軍的存在といえよう。一 方,平均中立群では夫婦関係満足度・離婚思念度とも夫 と妻との間に有意差は見出されず,夫婦の間の意識・感 情のギャップは見られなかった。この結果を見る限り,

平均中立群では夫婦関係の安定'性が高いといえる。ひと ころ(1970年代), 亭主元気で留守がいい',というコ マーシャル・コピーが流行ったことがある。このコピー

には,夫が健康でしっかり生活費を稼いできてくれさえ したら,たとえ夫婦の間で情緒的交流がなくても構わな い,いや,むしろその方が気楽でいいという含意があっ た。このコピーが当時話題になり,現在に至るまで人々 の口にのぼるのは,′性別分業のもとで夫婦の親密性が不 足・欠如している様を自'朝的に 肯定する,,妻たちの思 いをみごとに代弁しているためであろう。夫婦の問でポ ジティブな精神的・情緒的交流がなくなったら夫婦でい る意味はなくなったと考え,離婚に至る米国に比べて日 本の離婚率が低い理由はこの辺りにあると推察される。

しかし,平均中立群夫婦が,長い将来に渡って夫婦関係 の安定性を維持できるとは限らない。現に,夫の定年退 職で 留守' だった夫が家にいるようになったのを契機 に,それまで比較的安定した結婚生活を過ごしていた妻 が心身の不調に悩まされるようになる「主人在宅ストレ ス症候群」が報告されている(黒川,1993)。戦後の急 激な人口動態変化は私たちに80余年の人生をもたらし ただけでなく,夫婦が二人だけで過ごす期間の長期化も もたらした。叩もなく不可もなく的なコミュニケーショ

ンをしている平均中立群の夫婦が将来に抱える課題は決

して小さくないように思われる。

また,看過できないのは,共感親和群においても夫婦 関係満足度及び離婚思念度に夫婦間ギャップが見られた ことである。共感親和的なコミュニケーションをしてい る夫婦において,なぜ妻側で夫婦関係への評価が低いの であろうか。この点を考える上で,「感情労働」という 概念が参考になる。Hockshild(1979)は感情をマネージ

している「負担者」の行為を「感 情労働」と名づけ,女 性がより多く感情労働をする理由として資源交換説(一 般的に女性が社会で金銭,力,権威,地位等に自力で接 近することが難しいために,自分の感情から作り出した 資源を男性に贈り物として提供し,見返りに自分に不足 している物質的資源を獲得するとする説)を提起してい る。日本の夫婦では情緒的関係に偏りがあり,夫婦問で 相手に対する情緒的関与・行動は妻の方がより多く行っ ていることから(平山,1999;平山,2002;稲葉,2001;

施,2001),共感的で親和的なコミュニケーション関係 を形成・維持するために妻の方が「感情労働」をより多 く行っている可能性が示唆される。すなわち,この群で は,夫婦のコミュニケーションが共感的・親和的に行わ れるように心がける,相手の気持ちを汲んだり考えを推 し量りながら円満・円滑に会話が進行するように気を配 る,気を遣うなどの行動を妻側がより多く行い,そのこ とが妻側の負担になっているのかもしれない。今後は,

面接調査などを通して,円満で調和的なコミュニケー

ション関係が夫側,妻側どちらのどのような資源投与に

よって維持されているかなどについて検討する必要があ

るといえよう。

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