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第 4 章 アルミナ担持ニッケル触媒上での水中硝酸イオン還元反応の反応経路

4.2. 実験

4.2.1. 触媒調製

4.2.1.1. 5 wt.% Ni/Al2O3の調製

5 wt.% Ni/Al2O3は,3.2.1.1と同じ方法で調製した.

4.2.1.2. 6.5 wt.% Sn0.5Pd/Al2O3の調製 [7]

Al2O3 2.0 g に 0.11 mol L–1 PdCl2水溶液(富士フィルム和光純薬株式会社)7.68 mLをIncipient wetness法で担持し,100 ºCで一晩乾燥後,250 ºC(昇温速度: 10 ºC min–1)で3 h焼成した.得られたPd/Al2O3に0.17 mol L–1 SnCl2水溶液(富士フィル ム和光純薬株式会社)3.28 mLをIncipient wetness法でさらに担持し,100 ºCで一晩 乾燥後,250 ºC(昇温速度: 10 ºC min–1)で3 h焼成した.この固体をNaBH4(関東化 学株式会社)で還元した.固体に含まれるSnとPdの物質量を合計した値の10倍量 のNaBH4をMilli-Q水30 mLに溶解し,そこにその固体0.2 gを投入して30 min攪 拌し還元した.その後,吸引濾過と Milli-Q水での洗浄を 5回程度行なった.得られ た触媒を6.5 wt.% Sn0.5Pd/Al2O3と表記する.

4.2.2. 水中NO3還元反応

水中NO3還元反応は,Table 4-1に示した標準反応条件で,2.2.4の反応条件(iii)と同じ実験 方法で行なった.

Table 4-1 Standard reaction condition of a catalytic reduction of NO3 in this study.

NO3 aq. 20 mL (2400 ppm = 38.76 mmol L–1)

Milli-Q water 100 mL

Total volume of reaction solution 120 mL

Concentration of NO3 ([NO3]0) 400 ppm (= 6.46 mmol L–1)

Catalyst weight 0.2 g

Reaction temperature 40 ºC

H2 flow rate (P(H2)) 30 mL min–1 (1.0 atm)

4.2.3. 水中NO2還元反応

NO2水溶液を反応基質として用いた以外は,4.2.2と同様の反応条件で行なった.

71

4.3. 結果と考察

4.3.1. 水中NO3還元反応に対する5 wt.% Ni/Al2O3と6.5 wt.% Sn0.5Pd/Al2O3の触媒特性の違い Figure 4-1に5 wt.% Ni/Al2O3と6.5 wt.% Sn0.5Pd/Al2O3を触媒とする水中NO3還元反応の経 時変化を示した.5 wt.% Ni/Al2O3では,反応開始から24 h経過したところでNO3転化率は100%

に 達 した (Figure 4-1(a)) . 溶 液 中 の 生 成 物 と して NH4+の み が 生 成 した. 一 方 ,6.5 wt.%

Sn0.5Pd/Al2O3 は 24 h 後においても NO3転化率は約 80%であった(Figure 4-1(b)).また,6.5 wt.% Sn0.5Pd/Al2O3での生成物はNO2とNH4+であり,5 wt.% Ni/Al2O3とは大きく異なった.

Figure 4-1 Time courses of (●) conversion of NO3 and selectivities to (▲) NO2 and (■) NH4+

for catalytic reduction of NO3 with H2 in water over (a) 5 wt.% Ni/Al2O3 and (b) 6.5 wt.%

Sn0.5Pd/Al2O3. Reaction conditions: catalyst weight, 0.2 g; [NO3]0 = 400 ppm; volume of reaction solution, 120 mL; H2 flow rate, 30 mL min–1; P(H2) = 1.0 atm; reaction temperature, 40 ºC.

0 3 6 9 12 15 18 21 24 0

20 40 60 80 100

Reaction time / h

Conversion and selectivity / %

0 3 6 9 12 15 18 21 24 Reaction time / h

0 20 40 60 80 100

Conversion and selectivity / %

(a) (b)

72 4.3.2. 水中NO2還元反応

4.3.1で述べたように,5 wt.% Ni/Al2O3では,既報の担持Pdバイメタル触媒による水中NO3

還元反応[1–5]で中間生成物とされてきた NO2が全く生成しない.そこで,このことをより詳細に

調べるために,5 wt.% Ni/Al2O3と6.5 wt.% Sn0.5Pd/Al2O3を触媒とする水中NO2還元反応を行 ない,触媒特性を比較した(Figure 4-2).5 wt.% Ni/Al2O3では,反応開始直後にNO2転化率が 急上昇し,約30%の転化率を示したが,その後はNO2転化率は一定であり,生成物も一切生成 しなかった.一方,6.5 wt.% Sn0.5Pd/Al2O3では,NO2転化反応が約6 hまで進行し,このときの転

化率は90%以上を示した.また,NH4+の生成も確認できた.担持Pdバイメタル触媒(CuPd触媒)

による水中 NO3還元反応において,反応に伴って生成するOHがNO2と触媒上に競争吸着し,

OHの吸着力の方が NO2よりも強いために,NO2より先に反応が進まず,NO2が高選択的に生 成することが知られている.Figure 4-2(b)において,NO2転化率が100%に達しないのは,NO2の 還元反応の進行とともにOH濃度が上昇し,触媒上へのNO2の吸着が阻害されたためだと考え られる.

Figure 4-2 Time courses of (▲) conversion of NO2 and (■) selectivities to NH4+ for reaction of NO2 with H2 in water over (a) 5 wt.% Ni/Al2O3 and (b) 6.5 wt.% Sn0.5Pd/Al2O3. Reaction conditions: catalyst weight, 0.2 g; [NO2]0 = 400 ppm; volume of reaction solution, 120 mL; H2 flow rate, 30 mL min–1; P(H2) = 1.0 atm; reaction temperature, 40 ºC.

0 3 6 9 12 15 18 21 24 Reaction time / h

0 20 40 60 80 100

Conversion and selectivity / %

0 3 6 9 12 15 18 21 24 Reaction time / h

0 20 40 60 80 100

Conversion and selectivity / %

(a) (b)

73

続いて,NO3と NO2の混合水溶液を反応溶液として 5 wt.% Ni/Al2O3を触媒とする反応を行 なった(Figure 4-3).なお,全反応物(NO2 + NO3)のモル濃度をFigure 4-2(a)の実験のNO2濃 度と同じにするために,NO2とNO3の濃度はそれぞれ3.23 mmol L–1とし,両者を合わせた濃度

(6.46 mmol L–1)がFigure 4-2の実験と同じようになるようにした.驚くことに,NO2とNO3の混合 水溶液ではNO3還元反応が全く進行しなかった.一方,NO2転化率は反応開始直後に約50%

まで上昇したが,その後は一定であった.この結果は,NO2が活性サイト(および Al2O3上)に強 く吸着し,その結果,NO3の吸着が完全に阻害されたためだと考えられる.Figure 4-3に示した吸 着に由来する NO2転化率が,Figure 4-2 (a)のそれよりも高いのは,Figure 4-3 の実験で用いた NO2濃度がFigure 4-2 (a)の実験の半分しかないためである.これらの結果は,担持Pdバイメタ ル触媒とは異なり,Ni/Al2O3 上では中間体として NO2を経由することなく,NO3は直接,吸着 NOx種もしくは吸着 N 種へと還元されて反応が進行すると考えられる.NO2を経由しないことか ら,反応の第一ステップは吸着HがNO3を還元し,OHが脱離して吸着NOx種が生成する反応 だと考えている.

Figure 4-3 Time courses of (●) conversion of NO3 and (▲) NO2 for reaction of NO3 + NO2

with H2 in water over 5 wt.% Ni/Al2O3. Reaction conditions: catalyst weight, 0.2 g; reactant, [NO3]0

= 200 ppm (3.23 mmol L–1) + [NO2]0 = 200 ppm (3.23 mmol L–1); volume of reaction solution, 120 mL; H2 flow rate, 30 mL min–1; P(H2) = 1.0 atm; reaction temperature, 40 ºC.

0 3 6 9 12 15 18 21 24 Reaction time / h

0 20 40 60 80 100

Conversion / %

74

4.3.3. 第二金属を添加したNi/Al2O3での水中NO3還元反応

Ni/Al2O3では,NO2が存在すると反応が進行しないことをさらに確かめるために,Pd系触媒で

第二金属成分として添加されるCu, In, SnをNi/Al2O3に添加した(モル比Cu, In, Sn/Ni=1)触媒 を用いて水中NO3還元反応を行なった.Pd系触媒で第二金属はNO3からNO2への反応を促 進するとされている[5, 6].

Figure 4-4にCu, In, SnをNi/Al2O3に添加した触媒による水中NO3還元反応の反応結果を 示した.Ni/Al2O3は高い NO3転化率を示し,生成物は NH4+のみであった.しかしながら,第二 金属を添加した触媒はいずれも活性は低く,Sn-Ni/Al2O3に関しては反応24 h経過しても反応は 一切進行しなかった.

以上の結果より,NO3から NO2への反応を促進する第二金属成分の添加により,Ni/Al2O3の 触媒活性は低下したことから,NO2の生成により,NO3還元反応が阻害されたと推察した.

Figure 4-4 Conversion and selectivities for catalytic reduction of NO3 with H2 in water over Ni/Al2O3, Cu-Ni/Al2O3, In-Ni/Al2O3, and Sn-Ni/Al2O3. Reaction conditions: reaction time, 24 h;

catalyst weight, 0.2 g; [NO3]0 = 400 ppm; volume of reaction solution, 120 mL; H2 flow rate, 30 mL min–1; P(H2) = 1.0 atm; reaction temperature, 40 ºC.

0 20 40 60 80 100

C o n v e rs io n a n d s e le c ti v it ie s / %

Ni/Al2O3 Cu-Ni/Al2O3 In-Ni/Al2O3 Sn-Ni/Al2O3

: NO3conversion, : NO2selectivity, : NH4+selectivity

No reaction

75 4.3.4. Ni/Al2O3上での水中NO3還元反応の反応経路

これまでの結果から,Ni/Al2O3における水中NO3還元反応の反応経路をScheme 4-2のように 推定した.担持Pdバイメタル触媒では,NO2を経由して反応が進行し,NO3からNO2への段階 が律速段階である(Scheme 4-2(a))[1–4].一方,Ni/Al2O3上では,NO2からの反応は全く進行し ないことから,NO2を経由しない反応経路で反応が進行していると推測した(Figure 4-2(b)).

担持Pd バイメタル触媒では,Cu, Sn, Inなどの卑金属が NO3から NO2への還元を促進し,

H2O が脱離する反応が起こる(Scheme 4-1(b))[4, 8].しかしながら,Ni/Al2O3 上では NO3から NO2への還元でH2Oが脱離するよりも,Niサイト上の吸着HによってNO3が還元され,OHが 脱離する反応が優先的に起こるため,NO2は生成せず,吸着NOx種が生成すると考えられる.

Scheme 4-2 Reaction pathways for catalytic reduction of NO3 with H2 in water over (a) Pd-bimetallic catalyst and (b) supported Ni catalyst.

NO

3

NO

2

[NO

n

]

ad

N

2

O, N

2

NH

4+

NO

3

[NO

n

]

ad

N

2

O, N

2

NH

4+

(a) Pd-bimetallic catalyst

(b) Supported Ni catalyst

(n= 0 or 1)

(n= 0 ~ 2)

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