原位置試験

掘 削 に 伴 い 坑 道 周 辺 に 発 生 す る 割 れ 目 の 分 布 を 調 べ る こ と を 目 的 と し て ， 坑 道 掘 削 直 後 に BTV 観 察 を 実 施 し た ． 今 回 BT V 観 察 を 実 施 し た ボ ー リ ン グ 孔 は ， 図 4.3 に 示 す ， 試 験 坑 道 3 の 中 央 付 近 か ら 掘 削 さ れ た 9 孔 で あ る ． 調 査 で は ，B IP -V シ ス テ ム と 呼 ば れ る ， 孔 壁 360 度 の 定 方 位 連 続 展 開 画 像 を フ ル カ ラ ー で デ ジ タ ル 記 録 し ， 地 質 情 報 を 取 得 す る 一 連 の ハ ー ド ウ ェ ア お よ び ソ フ ト ウ ェ ア か ら 構 成 さ れ る シ ス テ ム を 採 用 し た ．幅 0.1 mm 以 下 の 割 れ 目 を 解 析 可 能 な 精 度 を 有 す る 高 解 像 度 の CCD カ メ ラ を 内 蔵 し た プ ロ ー ブ を ボ ー リ ン グ 孔 に 挿 入 し ，得 ら れ た 孔 壁 展 開 画 像 か ら ， ボ ー リ ン グ 孔 内 で 検 出 さ れ た 割 れ 目 分 布 の 情 報 を 得 た ．

ま た ， ボ ー リ ン グ コ ア の 観 察 も 併 せ て 行 っ た ． ボ ー リ ン グ コ ア の 表 面 に 観 察 さ

N

東立坑 西立坑

換気立坑

試験坑道2 試験坑道3 試験坑道4 原位置試験 実施箇所 岩石コアの観察孔 (SAB-1)

3.2 m 4.0 m SL

吹付コンクリート 200 mm

鋼製支保工

67

れ る 割 れ 目 の 産 状 は ， せ ん 断 割 れ 目 ， 引 張 割 れ 目 ， ハ イ ブ リ ッ ド 割 れ 目 ， 人 工 的 に 造 成 さ れ た 割 れ 目 （ コ ア デ ィ ス キ ン グ 等 ） の 4 種 類 に 大 別 さ れ る 6 ) - 1 0 )． せ ん 断 割 れ 目 は ， 割 れ 目 面 に せ ん 断 破 壊 の 証 拠 と な る ス リ ッ ケ ン ラ イ ン や ス リ ッ ケ ン ス テ ッ プ が 確 認 で き る ． ま た ， 引 張 割 れ 目 の 表 面 は ， 引 張 破 壊 の 証 拠 と な り 得 る 割 れ 目 面 の 羽 毛 状 構 造 を 確 認 す る こ と が で き る ． ハ イ ブ リ ッ ド 割 れ 目 は ， せ ん 断 破 壊 お よ び 引 張 破 壊 の 証 拠 と な る も の が 混 合 し た 割 れ 目 で あ る ^{1 0 )}．さ ら に ，Ku land er et a l.^{1 1 )}の ク ラ イ テ リ ア に 基 づ き ， 羽 毛 状 構 造 の 破 断 開 始 点 が コ ア 表 面 内 に 存 在 す る 割 れ 目 は ， コ ア デ ィ ス キ ン グ 等 の ボ ー リ ン グ 掘 削 や 採 取 後 の コ ア 取 扱 い の 際 に 誘 発 さ れ た 人 工 割 れ 目 で あ る と 判 断 し た ．

(a )

(b )

図 4.3 BTV 調 査 の レ イ ア ウ ト ．(a)は 平 面 図 ，(b )は 断 面 図 を 示 す ． 点 線 部 で 示 す 試 験 坑 道 2 お よ び 4 は ，BTV 調 査 時 点 で は 未 施 工 で あ っ た こ と を 示 す ．

試験坑道2

試験坑道3

N

0 5 (m)

試験坑道4

H3-1

H3-1 0.4 m

0 5 (m)

D4-1 D2-1

試験坑道3

試験坑道4 試験坑道2

68 4.2.2.2 透 水 試 験

坑 道 掘 削 に 伴 う 坑 道 周 辺 岩 盤 の 損 傷 に よ る 透 水 性 の 変 化 を 検 討 す る た め に ， 試 験 坑 道 3 の 周 辺 で 透 水 試 験 を 実 施 し た ． 透 水 試 験 孔 お よ び 試 験 区 間 の レ イ ア ウ ト を 図 4. 4 に 示 す ． 本 論 文 で は ， 坑 道 壁 面 か ら 下 向 き 15 度 の 傾 斜 で 掘 削 し た H2 -1 孔 お よ び ， 試 験 坑 道 3 の 壁 面 か ら 0 .4 m の 距 離 に ， 坑 道 軸 に 沿 っ て 水 平 方 向 に 掘 削 し た H3 -1 孔 に お い て 実 施 し た 透 水 試 験 に つ い て 報 告 す る ． 各 孔 の 掘 削 径 は 98mm で あ り ， 掘 削 長 は H2 -1 孔 が 10 .6 m，H3 -1 孔 が 9.2 m で あ る ． 透 水 試 験 は ， 試 験 坑 道 3 の 掘 削 後 2 年 間 ， す な わ ち 掘 削 直 後 の 2013 年 9 月 と ， 掘 削 後 の 201 4 年 1 月 ，9 月 ，2015 年 7月 に 計 4 回 実 施 し ， 透 水 性 の 時 間 変 化 を 検 討 す る た め の デ ー タ を 取 得 し た ． 各 孔 で は ， 図 4 .5 に 示 す よ う に ，H2 -1 孔 で は 5 区 間 ，H3 -1 孔 で は 4 区 間 を 区 間 長 0. 3 m の パ ッ カ ー で 区 切 る こ と で ，透 水 試 験 区 間 を 設 け た ． H2 -1 孔 の Se c tion -1~ 4 で は ， 坑 道 壁 面 か ら 離 れ た 場 所 の 透 水 性 の 把 握 を 目 的 と し て お り ，H2 -1孔 の Sec tion -5 お よ び H3 -1孔 の 4 区 間 で は ，坑 道 掘 削 に 伴 う 坑 道 周 辺 岩 盤 の 透 水 性 の 変 化 を 検 討 す る こ と を 目 的 と し て ， 壁 面 岩 盤 か ら 約 0.4 m ま で の 区 間 に ， 試 験 区 間 を 集 中 さ せ た ．

透 水 試 験 方 法 と し て ， 定 流 量 注 水 試 験 を 採 用 し た ． こ の 試 験 で は ， 注 水 ポ ン プ に よ り 一 定 流 量 で 注 水 を 行 い ， 区 間 圧 力 が 1 時 間 以 上 一 定 と な っ た と こ ろ を 定 常 状 態 と し た ． 試 験 区 間 の 圧 力 お よ び 注 入 流 量 の 経 時 変 化 を ，H 2 -1 孔 の S ec tion -5 を 例 と し て 図 4 .5 に 示 す ． 図 4 .5 よ り ， 注 水 に よ る 区 間 圧 力 の 増 大 が み ら れ ， 定 常 状 態 に 至 っ た と き の 区 間 圧 力 は ， こ の 例 で は 約 0 .049 MP a で あ っ た ．

H2 -1 孔 の Sec tion -1~ 4 の よ う に 壁 面 か ら あ る 程 度 離 れ た ， 透 水 性 が 低 い と 想 定 さ れ る 試 験 区 間 で は ， 定 流 量 注 水 で は 定 常 状 態 に 至 る ま で 時 間 を 要 す る た め ， 定 圧 注 水 試 験 に 切 り 替 え た ． 定 圧 注 水 試 験 で は ， 注 水 圧 力 を 間 隙 水 圧 よ り も 0.1～ 0.5MP a 程 度 高 く 設 定 し た ．

そ れ ぞ れ の 方 法 に お い て ， 透 水 係 数 は ，H vorsle vの 定 常 式 ^{1 2 )}よ り 算 出 し た ．

 

 



= 

D L P

g L

K Q

2

2 ln ρ

π

(4. 1)式 中 の K は 透 水 係 数 （m/s），Q は 注 水 流 量 （m³/s），L は 試 験 区 間 長 （m），D は 試 験 孔 直 径 （m），ρw は 水 の 密 度 （m³/s），g は 重 力 加 速 度 （m/s²），P は 注 水 圧

（MP a） を 表 す ．

69 (a )

(b )

図 4. 4 透 水 試 験 の レ イ ア ウ ト お よ び ， 図 4 .16 で 示 す 割 れ 目 観 察 断 面 の 位 置 ．(a ) は 平 面 図 を ，(b)は 断 面 図 を 示 す ．図 中 赤 色 の 直 線 お よ び 丸 印 は 調 査 用 の ボ ー リ ン グ 孔 を ， 青 色 の 長 方 形 は 設 置 し た パ ッ カ ー の 位 置 を 示 す ．

試験坑道3 H2-1

Packer H3-1

0.4 m

0 5 (m)

試験坑道2

70

図 4.5 H2 -1 孔 sec tion -5 に お け る 圧 力 と 流 量 の 経 時 変 化