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3.2 垂直尺度化のためのデータ収集デザイン

3.2.1 単一年度の尺度化

主な単一年度向けのデータ収集デザインとしては,隣接する学年のテストに共通した項目を 配置する「共通項目デザイン」,1つの学年をランダムに2グループに分け,受験者の学年にあ った項目と受験者の1つ下の学年の項目をランダムに実施する「等価グループデザイン」,すべ ての学年で共通した項目を一部に用意した「尺度化テストデザイン」,順序効果を考慮した「均 衡型単一グループデザイン (counterbalanced single-group design)」などがある。

「共通項目デザイン (common item design) 」 (図3.1) は一番実施が容易なデータ収集デザイ ンである。垂直尺度化の文脈では共通項目不等価グループデザイン (common item nonequivalent

groups design) などとも呼ばれる。このデザインを用いるならば,隣接した学年の項目の選定に

は注意しなくてはならない。小学5年生と6年生の共通項目を用意する際は,未学習の範囲の項 目が出題されないように小学 5 年生の範囲から項目を選択するべきである。このデザインはテ スト項目の配置によって項目反応が影響される可能性が高いというデメリットを持つ。たとえ ば一般的なテストでは最初は易しい問題からはじまり,後半の方に難しい問題が配置されるが,

テスト後半ともなると児童・生徒の疲労も蓄積されてくるため,前半か後半かといったテストの 配置の問題は項目反応や正答率に大きく影響する。そして共通項目はたいていの場合,隣接した 学年の上の学年にとっては易しい項目であるため前半に配置され,下の学年では難しい項目の ため後半に配置される可能性が高い。そのため,学年によって共通項目の項目反応が異なってく る可能性に注意しなくてはならない。

「等価グループデザイン (equivalent group design) 」 (図3.2) は1つの学年の生徒らを2つの グループにランダムに振り分ける必要がある。しかもグループによって実施されるテストの項 目が違う上に,片方のグループでは自分よりも 1 つ下の学年の内容のテストが実施されること となる。そのため生徒間でのテストを受けた際の実感やテスト結果のフィードバックに不平等 が生じる可能性があるため,学校カリキュラムに沿った垂直尺度化としてはあまり適切なデザ インではない。

3.1 共通項目デザインの図

3.2 等価グループデザインの図

「尺度化テストデザイン (scaling test design) 」 (図3.3) は全学年で共通の項目を用意しなく てはならないため,これらのデータ収集デザインのなかで一番実施のためのハードルが高い。た とえば全学年共通の項目 (scaling test item) の作問に関してのノウハウの蓄積が十分でない場合,

尺度化テスト項目の作成は困難になると予想される。しかし,ほかの2つのデザインとは違い,

全学年で一貫した内容の項目があるため,全学年を通した児童・生徒の能力を領域内ではっきり と記すことができるというメリットを持つ。

3.3 尺度化テストデザインの図

「均衡型単一グループデザイン (counterbalanced single-group design)」 (図3.4) では,学年を ランダムに2グループに分けたうえで,片方のグループは学年レベルにあった問題を前半に回 答し,下の学年レベルの問題を後半に回答する。もう一方のグループはその逆で,下の学年レ ベルの問題を前半に,学年レベルにあった問題を後半に回答する。このデザインは受験者の学 習や疲労による得点への影響を考慮して実施するために用いられる。テストに含まれる共通項 目が特定の部分に偏っている場合などにこのテストデザインは有効である。

3.4均衡型単一グループデザイン