第 3 章 プロジェクトの内容
3.2 協力対象事業の基本設計
3.2.1 設計方針
(1) 基本方針
本事業計画の設計に係る基本方針は、現地調査に係る対処方針、同調査時の中国側との協議結果、
帰国報告会における基本設計方針等を踏まえ、以下のとおり設定する。
¾ 本事業は、西安市が実施する総合的な廃棄物管理計画全体のうち、既存システムの改善が急 務となっている中継輸送システムの効率化、最終処分場における埋立管理作業の適正化、及 び最終処分場ならびに中継輸送基地における簡易環境モニタリングの実施を対象とする。
¾ 対象廃棄物は、都市生活廃棄物(日本の一般廃棄物に相当)とする。
¾ 対象地域は、西安市の都市生活廃棄物を管理する市政管理委員会の管轄下にある市街区なら びにその周辺地域、市東部に位置する江村溝最終処分場、及び三民村の中継輸送基地建設予 定地とする。
¾ 本事業は、無償資金協力による機材供与案件であり、中継輸送基地用機材、環境モニタリン グ機材及び最終処分場用機材により構成される。また、それぞれの機材は現状、将来計画、
実施体制の整備状況を勘案して、機材仕様及び数量を厳選する。
¾ 中継輸送基地機材の設置される中継輸送基地は、市西部の三民村に位置する既存の屎尿収集 車駐車場に建設されるので、新たな土地収用、住民移転等は基本的に発生しない。また建設 に当たっての諸手続きは全て中国側責任にて実施される。
¾ 中継輸送基地機材設置にあたって、機材の計画・設計・製造・調達及び据付/試運転監理は 日本側、受入施設(中継輸送基地建屋及び周辺施設・アクセス道路等)の設計・建設・据付 は中国側という所掌分担に従い、機材性能の確実な確保のために、日中双方の情報交換体制 を十分に整える。
¾ 機材の生産国は日本製又は中国製を原則とし、それぞれの仕様、性能、実績、調達事情及び 維持管理サポート体制等を比較検討し、最も適切と思われる生産国を選定する。
¾ 現地調査における自然条件調査ならびに社会条件調査等により更なる改善の必要性がある と認められた事項については、本事業の枠組みの中で実施できる対策と別途計画が必要な対 策を整理した上で、ソフトコンポーネント等の活用を検討する。
¾ 本事業は一括実施とし、期分けは行わない。また各機材の用途と調達工程を勘案し、必要で あればロット分けを実施する。
(2) 自然条件に対する方針
1) 西安市の自然概況
中国のほぼ中心に位置する陝西省の省都西安市は、中国内陸部の関中平原の中部に位置し、西を 南北に渭河が流れ、南には秦嶺山脈を頂く。西安市気象局の2001年の月平均気温及び降水量の推移
は図3.2-1に示すとおりである。2001年の月平均気温は、1月が最低で1.1℃、7月が最高で29.1℃、
年間の平均気温は15.1℃である。大陸性気候で、相対湿度の年平均は63.6%であり、年間を通じて 乾燥している。平均風速は0.9m/秒、最多風向は北東で、年間降水量は405.9mm/年と少ない。降水 量が、比較的多くなるのは6〜10月であり、50〜100mm/月程度となる。
図 3.2‑1 西安市気象局の月平均気温と降水量(2001 年)
2) 自然条件に対する方針
2001年の月平均気温最低値は0℃を上回ってはいるが、年によっては氷点下になることが予想さ れる。このため、要請機材は寒冷地仕様とする。また本事業の実施期間が限られていることから、
据付工事を伴う中継輸送基地用機材の設置時期を気候の穏やかな時期に調整するだけの余裕がない。
したがって、冬期においても据付工事が円滑に実施できるように、中継輸送基地の建設及び据付を 担当する中国側に対して必要な情報を提供する。
年間を通じて気候は乾燥しており、降水量は多くないが、一時的な激しい降雨により浸出水量が 増加する。このため、要請機材の流量測定装置はこれらのピークに対応した仕様とする。
最終処分場の埋立現場では、夏季に相当の悪臭や30℃を超える連続的な熱気が発生することを考 慮して、最終処分場用機材は、空調付き密閉式のキャブ(運転席)を基本とする。
0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0 120.0 mm
0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0 ℃
降水量(mm) 13.6 5.3 0.0 42.5 10.1 50.2 96.6 28.2 74.4 64.0 2.4 18.6 気温(℃) 1.1 5.0 12.1 14.6 22.2 26.3 29.1 25.4 20.0 15.0 7.9 2.9
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
月
出典:西安市気象局
3-8 (3) 社会経済条件に対する方針
1) 西安市の社会経済概況
中国のほぼ中心に位置する西安市は、かつて長安と呼ばれ、紀元前11世紀から10世紀初頭まで の約2000年間に渡って、13王朝の都が置かれた古都である。城壁内の中心に位置する鐘楼、大雁 塔、陝西省で最も大規模なイスラム寺院である大清真寺の他、郊外には秦始皇陵や世界遺産である 秦兵馬俑等、歴史的建造物が数多く存在する。
西安市の総面積は約9,983 km2で、8区5県を管轄する。総人口約695万人であり、陝西省内の約 2割を占める。そのうち市区内人口は約400万人、人口の大部分は漢族が占めるが、回族、モンゴ ル族、満州族も居住している。
中国中西部の経済発展に大きな役割を担う西安市は、近年の西部大開発により経済発展が一層進 展し、経済的な観点からも注目される都市へと変貌した。中国西部地域において最大の近代工業、
科学技術研究、高等教育、交通、通信、商業貿易および金融の拠点であり、その総合的科学技術力 は全国3位である。産業分類別の構成比は、表3.2-1に示すとおりであり、第1次産業が37%、第2
次産業が28%、第3次産業が35%を占めている。図3.2-2から、近年第1次産業は減少し、第3次
産業が増加していることが伺える。
表 3.2‑1 西安市における産業分類別就業者数 業 種 就業人数
(万人) 割 合 産業概要
第1次産業 145.09 37% 小麦・トウモロコシ・米等主要穀物、綿(綿花及び綿実油)、タバ
コの葉、漢方薬の原材料、胡椒、山椒、石榴、桃、柿等
第2次産業 108.96 28% 発電、変電、航空、紡績、精密機器、工業ミシン機械、電
子など製品の生産基地
第3次産業 135.25 35% 卸売り、小売、各種飲食業の店舗数は11万店を超え、市
場は505軒にまで成長
合 計 389.30 100%
出典:「西安統計年鑑2002」中国統計出版社(2002年8月)
「西安経済情報交流サービスセンター」ホームページhttp://www.xiango.com/kigyo_jokyo.html
100 120 140 160
1997 1998 1999 2000 2001 (年)
(万人)
第1次産業 第2次産業 第3次産業
出典:「西安統計年鑑2002」中国統計出版社(2002年8月)
図 3.2‑2 西安市における産業分類別就業者数の推移(過去 5 年間)
2) 人口及びごみ発生量の現状と将来予測
本事業の対象である西安市6区の総人口は、1997年から2001年の5年間において表3.2-3に示す とおり推移している。1997年から2000年までは、伸び率が0.1%未満であり、ほぼ変化なく推移し ていたが、2000年から2001年にかけて1年間で約2.2%増加し、309万人弱となっている。この急 激な伸び率の変化は西部大開発の拠点として近年西安市が急速な拡大傾向にあることを示してい る。このため、西安市では、当面人口は定常的に増加するものとし、その年間伸び率を 2.2%と仮 定して将来予測を行い、廃棄物管理計画策定に反映させる計画である。
表 3.2‑2 西安市(6 区)人口推移(1997 年 2001 年)
各区人口(人)
年度 新城区 碑林区 蓮湖区 未央区 雁塔区 灞橋区
総人口 (人)
前年比 人口伸 び率
(%) 1997 468,817 609,417 573,928 379,293 556,925 430,415 3,018,795 -1998 469,049 609,719 574,212 379,480 557,201 430,628 3,020,289 0.05 1999 469,210 609,928 574,408 379,611 557,393 430,776 3,021,326 0.03 2000 469,544 610,362 574,816 379,742 557,789 431,082 3,023,335 0.07 2001 471,760 634,707 575,020 385,731 588,102 433,623 3,088,943 2.17 出典:西安市市政管理委員会(西安市統計年鑑)
一方、発生ごみ量は、2000年の実績値は3,075(㌧/日)であり、6市の総人口の約302万人に対 しては、一人一日あたりのごみ発生原単位は 1.02kg/人・日となる1)。この発生原単位は年間伸び率 は将来的には減量化施策により逓減していくものとし、各年の人口予測値に乗じて将来のごみ発生
量は表3.2-3に示すとおりと想定する。
表 3.2‑3 ごみの発生原単位及び発生量の推定
年度 人口*1(万人) 発生量原単位 (kg/人/日)
発生原単位 伸び率(%)
発生ごみ量
(㌧/日) 摘要
2000 302 1.02 3,075
2001 309 1.04 2.0 3,214
2002 316 1.06 2.0 3,350
2003 323 1.08 2.0 3,488
2004 330 1.10 1.5 3,630
2005 337 1.12 1.5 3,774
2006 344 1.14 1.5 3,922
2007 352 1.15 1.0 4,048
2008 360 1.16 1.0 4,176
2009 368 1.17 1.0 4,306
2010 376 1.18 0.5 4,437
出典:西安市廃棄物管理改善計画予備調査報告書(表3.2.1)と本基本設計調査時のデータにより作成 *1:人口の前年度比伸び率は2.2%で固定とした。
1) 西安市では各区のごみ収集サービスを受けている住民数を正確には把握していないため、ここでの原単位 はあくまで、既知の処分量と人口データよりごみの将来予測を実施する上での目安として算出したものであ る。なお、発展途上国の平均的な値0.5〜0.6(kg/人/日)や日本の発生量原単位の全国平均1.1(kg/人/日)と 比べても大きい値となっているのは、事業系ごみが含まれていることと非ガス化区域から発生する炉さが含 まれているためと推測される。
3-10 3) 西安市における有価物回収の現状と方針
現在、西安市では、表 3.2-4 に示す方法により、ペットボトル、プラスチック類、紙・段ボール 類、ガラスびん、金属類、ゴム類等の有価物が回収されている。
表 3.2‑4 西安市における有価物回収の方法
回収方法 回収人 活動の場 通常使用道具
市内で活動するスカベン ジャー
路上のごみ置き場、ごみ収集 ステーション等
スコップ、クリッパー、バスケット、
袋、手押し車等 市内美化衛生に携わる
職員(ごみ収集ステーション 管理者、道路清掃員)
住宅地、路上のごみ収集ステーシ ョン、市内圧縮中継施設等
バスケット、袋、手押し車等 排出源での有
価物回収
有価物回収人(個人) 住宅地、事務所、
レストラン、ホテル等
バスケット、袋、手押し車等 最終処分場で
の有価物回収
処 分 場 近 く に 住 む 農 民、他省から移住して きたスカベンジャー
江村溝最終処分場 鉄製フック、クリッパー、
バスケット、袋等 不法投棄場で
の有価物回収
不法投棄場近くに住む 住民、スカベンジャー
市内に点在する不法投棄場 鉄製フック、クリッパー、
バスケット、袋等 参考:現地調査結果
現在の有価物収集システムは、市場が存在し、民間ベースで十分成立しているため、法制度等に よる強制的な行政関与の必要は当面ない。また、市内での有価物回収活動は最終処分場へのごみ輸 送量の低減に寄与している。したがって、本計画では、既存の有価物回収システムの利点を維持し つつ中継輸送システムを構築する。
一方、江村溝最終処分場のスカベンジャーたちは有価物回収による安定した収入を歓迎しながら も、作業環境面での不安を抱えている。他方、固形廃棄物管理処は「西安市ごみ埋立場 廃品回収 業管理の暫定規定」を策定したものの、依然スカベンジング行為の管理に苦慮している。このため 最終処分場用機材の供与に伴う埋立作業の適正化と併せて、スカベンジング行為をグループ制・時 間制にするなど、埋立作業とスカベンジング行為の共存を図る。
4) 廃棄物管理施設の周辺住民の現状と方針
社会条件調査の結果によれば、三民村中継輸送基地建設予定地の周辺住民は、施設建設に賛成し ながらも、立地や環境対策等、社会環境問題に対する不安を感じている。このため、計画の進捗に 応じて、施設の建設や運営等の事業計画に関する住民説明会等を適宜実施し、住民への情報提供、
住民意見の集約及び計画へのフィードバックを行うことにより、事業の透明性確保及び住民同意の 取得を図る。
江村溝最終処分場の周辺住民については、ごみ輸送車のアクセス道路に近い江村以外の地区(肖 家寨、高家溝、溝泉村、任家坡及び唐家寨等)に対して、これまで積極的な情報公開が図られなか ったことから、本事業の推進に併せて住民との対話会を新たに設けるなど、事業の更なる透明性確 保に努める。
また、三民村及び江村のアクセス道路沿道において、ごみ輸送車両の走行に係る交通問題が懸念 されていることから、運転車両の運行時間帯に対する配慮や、運転者に対する安全指導の徹底、さ らには安全運転重点地域の指定といった車両の走行に伴う環境影響の低減や交通安全の確保を図る。