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1 はじめに

この章では、市区町村長が地域雇用創出についてどのような考えを持ち、どう取り組んで いるのかを整理していく。市区町村長に対する質問は基本的には都道府県知事調査とそろえ ている。すなわち、

①雇用創出政策をどのように位置づけているのか、

②戦略的産業としてどのような産業を考えているのか、

③地域雇用創出のためにどのような取組を行っているのか、

④地域雇用創出における国、都道府県、市区町村の役割はなにか、

といった項目である25

2 市区町村における雇用創出政策の位置づけ

市区町村長はさまざまな地域振興策の中で雇用創出をどのように位置づけているのであ ろうか。「地域の雇用創出を最優先課題に位置づけて取り組んでいる」等から択一回答しても らった。

回答結果を見ると、「地域の雇用創出を複数の課題のなかの1つとして取り組んでいる」

が 40.8%で最も多く、以下、「地域の雇用創出を比較的優先度の高い課題として取り組んで

いる」が 35.1%、「地域の雇用創出を最優先課題に位置づけて取り組んでいる」が 17.1%等

という順であった。

都道府県知事調査では選択されなかった「地域の雇用創出はそれほど優先度が高い課題で はない」と「その他」という回答もわずかではあるが含まれている。しかし、半数以上の市 区町村長が雇用創出を自治体の政策の中でも高い優先度で取り組んでいる。

第4-1図 雇用創出政策の位置づけ(N=661)

25 なお、市区町村長調査と市区町村担当者調査の集計では、市区町村別集計も行っている。紙幅の都合上、すべ ての問について市区町村別集計結果を記載するのではなく、統計的検定で有意であったところを中心に取り上 げるようにする。

最優先課 題, 17.4

比較的優先度 が高い課題,

35.1 複数の課題の

中の1つ, 40.8 それほど優先度

は高くない, 4.5

その他, 0.9 不明・無回答, 1.2

市区町村別の回答結果を見ると、市で雇用創出の政策的優先度が高いとする回答が多い(第 4-2図)

第4-2図 市区町村別雇用創出政策の位置づけ

3 雇用創出のために重視する方法

市区町村長は雇用創出のためにどのような方法を重視しているのであろうか。内発的雇用 創出と外発的雇用創出のいずれを重視しているのか、たずねた(第4-3図)。

回答結果を見ると、「地域内の既存企業の活性化や地域内での創業による雇用創出と他の 地域から企業を誘致することによる雇用創出を同じく重視する」という回答が57.9%と最も 多く、「どちらかといえば地域内の既存企業の活性化や地域内での企業による雇用創出を重視

する」が 15.1%、「どちらかといえば他の地域から企業を誘致することによる雇用創出を重

視する」が11.3%%であった。

都道府県知事調査では該当者がなかった「地域内の既存企業の活性化や地域内での起業に よる雇用創出を重視する」(8.0%)、「他の地域から企業を誘致することによる雇用創出を重視 する」(4.8%)といった回答が含まれている点が特徴的である。

第4-3図 雇用創出のために重視する方法(N=661) 22.1%

14.3%

12.5%

37.7%

0.0%

34.3%

33.9%

36.4%

71.4%

45.0%

46.4%

3.9%

28.6%

5.0%

3.6%

0.0%

0.0%

1.4%

3.6%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

市(308) 区(7) 町(280) 村(56)

最優先課題 比較的優先度の高い課題

複数の課題の中の1つ それほど優先度は高くない

その他

既存企業の活性 化、域内での企業,

8.0

どちらかといえば 域内企業の活性

化, 15.1 域内の既存企業

の活性化と他地域 からの企業誘致,

57.9 どちらかといえば

他地域からの企業 誘致重視, 11.3 他地域からの企業

誘致を重視, 4.8

その他, 1.5

不明・無回答, 1.2

-36-

市区町村別に集計すると、市では内発的雇用創出と外発的雇用創出の両方を重視するとい う回答が多いのに対して、町村では内発的雇用創出と外発的雇用創出いずれか一方を重視す るというところが相対的に多い。

第4-4図 市区町村別雇用創出のために重視する方法

さらに、雇用創出に取り組むにあたり、どのような業種での雇用創出を目指すのか、戦略 的な業種としてどのような業種と想定しているのか、回答してもらった(第4-5図)。

第4-5図 どの業種での雇用創出を目指すのか(複数回答、N=661) 6.1%

50.0%

9.0%

8.9%

10.6%

33.3%

17.2%

28.6%

70.6%

16.7%

50.2%

41.1%

7.4%

16.1%

12.5%

4.5%

5.7%

3.6%

0.6%

0.0%

1.8%

5.4%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

市(310) 区(6) 町(279) 村(56)

地域内の既存企業の活性化、企業による雇用創出 どちらかといえば地域内の既存企業活性化、起業を重視 地域内の活性化と他の地域から企業誘致を同じく重視 どちらかといえば企業誘致を重視

他地域からの企業誘致を重視 その他

32.8

5.1 50.1

1.2 21.5

7.6

13.3 12.9 0.6

14.7 10.1 5.7

34.6

0.6 0

10 20 30 40 50 60

農林水産業 建設業 製造業 電気ガ熱供給水道 情報通信業 運輸業 卸売・小売業 飲食店・宿泊業 金融・保険業 医療・福祉 他サービ 業種はわらない 不明・無回答

(%)

回答結果を見ると、「製造業」での雇用創出を目指すというところが 50.1%で最も多く、

以下、「農林水産業」が 32.8%、「情報通信業」の 21.5%などとなっている。しかし、「業種 はこだわらない」という回答も34.6%あった。

市区町村でも製造業を雇用創出の戦略産業と位置づけている点は都道府県知事調査結果 と同じ傾向である。しかし、農林水産業を戦略産業の1つに位置づけている市区町村長が全 体の1/3ある点が特徴的である。また、「業種にはこだわらない」という回答も1/3に達して おり、市区町村長の中には雇用創出の戦略産業が明確になっていない場合が少なくない26。 このうち、製造業での雇用創出をめざすという自治体では、具体的にどのような業種を考 えているのか、具体的に記述してもらった。記述結果を見ると、「農水産物加工」を含め「食 料品関連」が比較的多い。これは、農林水産業を戦略的産業としてあげている市区町村が多 いことと関連すると考えられる。地域の中心的産業が農林水産業である場合、それだけでは 雇用創出につながりにくい。しかし、農林水産業で生産された農水産物を加工することによ って雇用創出に結びつけることができる。さらに、「自動車関連」、「電子部品関連」を挙げる 市町村が多かった。なお、製造業での雇用創出を目指すことは考えているものの、製造業の 中のどういった業種かについては「具体的な業種のイメージはない」という自治体も含まれ ていた。

市区町村別では、町村では農林水産業、市では製造業、サービス業が相対的に多い(第4-

6図)

第4-6図 市区町村別雇用創出を目指す産業(複数回答)

26 ただし、業種にこだわっていられないほど地域の雇用情勢が悪化しているという回答も含まれていると考えら れるので、戦略的業種が明確にされていないからといって一概に批判は出来ない。

0.0%

20.0%

40.0%

60.0%

80.0%

100.0%

農林水産業 建設業 製造業 電気・ガス・熱供給・水道業 情報通信業 運輸業 卸売・小売業 飲食店・宿泊業 金融・保険業 医療、福祉 その他サービス業 その他 特定の業種にはこだわらない

市 区 町 村

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4 雇用創出の取り組み

では、地域雇用創出のために自治体ではどのような取り組みを行っているのであろうか。

「マニフェストや公約の中に地域の雇用創出を掲げた」など13項目から該当する項目を複数 回答してもらった(第4-7図)。

第4-7図 雇用創出の取り組み(複数回答、N=661)

回答結果を見ると、「総合計画などに雇用創出のための取り組みを掲げた」が 54.8%で最 も多く、以下、「企業誘致のためにトップセールスを行った」が36.2%、「マニフェストや公 約の中に地域の雇用創出を掲げた」が 21.6%、「雇用創出のための新たな対策を行った」が 21.2%などとなっている。

前回調査では地域雇用創出のために行った取り組みが「特にない」という地域が多かった が、今回の調査では何も実施していない市区町村は1割ほどにとどまっており、地域におけ る雇用創出への取り組みが進んでいるように思われる。

5 地域雇用創出に取り組む上での国、都道府県、市区町村の役割

では、地域雇用創出に取り組むに当たり、国、都道府県、市区町村がどのような体制で取 り組むのがよいと考えているのであろうか。主体となって取り組むのはどこがよいと考える のか、択一回答してもらった(第4-8図)。

21.6 54.8

21.2 18.6 12.3

3.2

9.1 13.6 36.2

14.5 10.9 11 11.6 0.6 0

10 20 30 40 50 60

ェス公約 総合計画 雇用創出の新たな対策 雇用創出策強化 雇用問題担当部門を新設 雇用問題担当を増員 雇用創出の研究会等設置 都道府県協議 企業誘致のール 他の自治体で取り組み調査 他の自治体協力 特にない 不明・無回答

(%)

第4-8図 地域雇用創出における国、都道府県、市区町村の役割(N=661)

回答結果を見ると、「国が中心となり、都道府県、市区町村と協力して地域雇用に取り組 むのが望ましい」という回答が 27.5%で最も多く、以下、「市区町村が中心となり、国、都 道府県と協力して地域雇用創出に取り組むのが望ましい」という回答が 23.1%、「都道府県 が中心となり、国と協力して地域雇用創出に取り組むのが望ましい」が 17.9%、「都道府県 が中心となり、市区町村と協力して地域雇用創出に取り組むのが望ましい」が14.4%などと なっている。

雇用創出に取り組む上で中心になるのがふさわしい主体として、「国」「都道府県」「市区 町村」がそれぞれ3割ずつであり、意見が分かれている。

市町村で, 1.2

市区町村主体で 都道府県と協力,

7 市区町村主体で 国、都道府県と協

力, 23.1

都道府県, 1.4 都道府県中心、市

町村と協力, 14.4 都道府県中心で

国、市町村と協力, 2.4

都道府県中心 で国と協力,

17.9 国, 0.6

国が中心、都道府 県と協力, 2

国が中心、都 道府県、市町 村と協力, 27.5

その他, 1.1 不明・無回答, 1.5

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