ハイレベル専門家準備グループは以下の勧告を示した。
FMCT
交 渉 を、1995
年 の報 告 書(CD/1299)の内 容 及 びマンデートを基 礎
に置 き、ジュネーブ軍 縮 会 議 において遅 滞 なく開 始 すべき。
いかなる措 置 がFMCT
交 渉 の開 始 を促 進 し、さらに信 頼 を高 めるかにつ いて更 なる検 討 が必 要
将 来 の交 渉 担 当 者 は、GGE 及 びハイレベル専 門 家 準 備 グループの作 業 、及 び必 要 に応 じて議 論 の内 容 も考 慮 すべき。 (a)
いかに様 々な検 証 に対 するアプローチが実 際 に機 能 するか検 討 する こと、そして、(b)
条 約 の様 々な潜 在 的 要 素 (検 証 及 び組 織 )の利 用 に付 随 するリソース上 の含 意 を評 価 することについて、ジュネーブ軍 縮 会 議 で 行 われるものも含 め、更 なる専 門 家 による作 業 がなされるべき 54。
当 該 準 備 グループの作 業 をジュネーブ軍 縮 会 議 に伝 達 する際 、国 連 事 務 総 長 は当 該 準 備 グループの報 告 書 を完 全 に検 討 することをジュネーブ 軍 縮 会 議 に要 請 すべき。
全 ての国 は、当 該 準 備 グループの報 告 書 が2015
年 のGGE
の報 告 書(A/70/81)と関 連 して読 まれるべきことについて十 分 な配 慮 を払 うべき。
当 該 報 告 書 が、例 えば国 連 やジュネーブ軍 縮 会 議 のウェブサイトに掲 載 されるなど、市 民 社 会 を含 めた広 範 な国 際 社 会 の人 々にとって入 手 可 能 となるようにすべき。
将 来 の交 渉 担 当 者 は、平 和 と安 全 に対 する平 等 な貢 献 を確 保 するため に、技 術 、科 学 並 びに政 治 の分 野 からの女 性 の参 加 を奨 励 し、ジェン ダーの視 点 やバランスに配 慮 すべき。【今後の予定等】
今回のハイレベル専門家準備グループで取りまとめられた報告書 55は、対案として、
条約発効に係る段階的アプローチ(「枠組み条約」を先行的に発効させ、その後に、
特定の時間枠組みを含む、二ないし複数の議定書を交渉するというアプローチ)を新
54 ただし、これらの点が条約交渉開始の前提条件とみなされない、という認識が共有されていることも示された。
55 本稿は紙幅の都合上、ハイレベル専門家準備グループ報告書の内容の全てを網羅できないため、原文をご参 照いただきたい。
たに提示した。なお、当該報告書は、今後ジュネーブ軍縮会議で検討されることに なっており、さらに、2018年の第
73
回国連総会に提出される予定である。その関係で、国連総会第一委員会(軍縮・国連安全保障問題)において、FMCT 交渉の早期開始 に向け、いかなる内容の決議(専門家委員会における新たな検討作業の開始等を含 む、FMCTの条約交渉に向けた今後の取り組みの在り方や方針等)が採択されるかが 注目される。加えて、今回の報告書の勧告で示された、検証のアプローチ及びそのリ ソース上の含意の評価・検討を行うことは、核軍縮検証のための国際パートナーシップ
(IPNDV)や核軍縮検証に関する国連 GGE
といった国際的な取り組みとも関連する点 であり、相乗効果を生み出すだけでなく、2020年のNPT
運用検討会議への貢献も期 待される。【報告:政策調査室 中西 宏晃】
1-6
日 英 原 子 力 協 力 協 定 の改 正 交 渉 が開 始 される日本国外務省は、日英両国が日英原子力協力協定の改正交渉を開始することで 一致した旨を発表した 56。この発表では、英国が
EURATOM
を離脱するに伴い、同 国における保障措置の適用に変更が生じることから、日英原子力協力協定にこの変 更を反映させるため、両国政府は同協定を改正する交渉を開始することに合意したこ と、今後の交渉日程は外交ルートを通じて調整していく予定であることが表明されてい る。英 国 で は 従 来 、 同 国 内 の 民 生 用 原 子 力 施 設 に お け る 保 障 措 置 の 実 施 は
EURATOM
が担当しており、その旨は日英原子力協力協定、および日EURATOM
原子力協力協定の本文にも規定されている。これは、日本から英国に移転された核物 質の平和利用を担保するために重要な規定である。
2017
年3
月29
日、英国はEU
からの離脱を通告し、現在、離脱の条件等について 協議を行っている。EURATOMはEU
とは別個の条約によって設立された機関ではあ るが、運用上の組織がEU
と同一であることから、EUからの離脱とEURATOM
からの 離脱は不可分のものと解釈されている57。これを受けて、英国が
EU
及びEURATOM
から離脱する2019
年3
月29
日以降、英国内の保障措置は
EURATOM
から英国内の機関によって実施されることとなって おり、現在、英国はその準備を進めている58。従って、EURATOMが英国内の保障措 置の実施主体であると規定している原子力協力協定は、その規定を改定する必要が
56 日英原子力協定の改正交渉の開始(外務省):https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press4_006564.html.
57 英国、EURATOMから脱退(ISCNニューズレター No.0241 April, 2017):
https://www.jaea.go.jp/04/iscn/nnp_news/attached/0241.pdf#page=6.
58 英国 国内保障措置制度の構築の動向(ISCNニューズレター No.0255 June, 2018):
https://www.jaea.go.jp/04/iscn/nnp_news/attached/0255.pdf#page=26.
ある。英国政府は、豪州、カナダ、米国、及び日本との間の原子力協力協定がこの改 定に該当するとしており、そのための交渉を行っている旨を発表している 59。このうち、
英米原子力協力協定については
2018
年5
月4
日、両国が署名し、発効に向けた手 続きが進められている 60。今回、外務省から発表された日英原子力協力協定の改定について、英国内の保障 措置実施機関の移行に合わせて円滑に進展することが期待される。
【報告:政策調査室 玉井 広史】
1-7
ブラジル・アルゼンチン核 物 質 計 量 管 理 機 関(ABACC)の 2017
年 度 版 報 告 書 の概 要【概要】
2018
年9
月にブラジル・アルゼンチン核物質計量管理機関(ABACC)
の2017
年度 版報告書61が公表された。本稿はABACC
の2017
年度版報告書の概要について紹 介する。【ABACCの設立経緯とミッション(History and Mission)】
ABACC
は1991
年7
月8
日 にアルゼンチン・ブラジル原 子 力 平 和 利 用 協 定 に基 づき設 立 され、同 協 定 は両 国 の議 会 の承 認 を受 けて1991
年12
月12
日 に発 効 した。 ABACC
のミッションはアルゼンチン及 びブラジルの原 子 力 施 設 における 全 ての核 物 質 が平 和 目 的 に利 用 されていることを検 認 することで、ABACC
は両 国 に対 し、共 通 核 物 質 計 量 管 理 制 度(SCCC)と呼 ばれる二
国 間 の保 障 措 置 体 制 を整 備 し、両 国 における全 ての核 物 質 に対 し適 用 される検 認 基 準 及 び手 続 きを確 立 し、核 物 質 が不 転 用 されていないこと の検 認 を行 っている。 ABACC
の組 織 は、委 員 会 とその下 に設 置 される執 行 機 関 で構 成 されて いる。委 員 会 は最 高 意 思 決 定 機 関 で、4 名 (アルゼンチン、ブラジル各2
名 )の委 員 が所 属 している。事 務 局 は執 行 機 関 であり、12
名 (アルゼンチ ン、ブラジル各6
名 )で構 成 されている。計 画 ・評 価 、実 施 部 、計 量 、技 術
59 "Nuclear Cooperation Agreement"(Euratom Exit Factsheet, Department for Business, Energy & Industrial Strategy):
https://assets.publishing.service.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/717194/euratom-exit-factsheet-nuclear-cooperation-agreement.pdf.
60 米英原子力協力協定について(ISCNニューズレター No.0257 August, 2018):
https://www.jaea.go.jp/04/iscn/nnp_news/attached/0257.pdf#page=4.
61 https://www.abacc.org.br/en/wp-content/uploads/sites/2/2018/08/Annual-Report.pdf
支 援 、管 理 ・財 政 及 び対 外 関 係 の
6
つの部 局 を有 し、実 施 部 の下 で査 察 が行 われている。 2017
年 は、両 国 より派 遣 された100
名 (アルゼンチン:52 名 、ブラジル:48
名 )の査 察 官 が従 事 しており、アルゼンチンの査 察 官 はブラジルの原 子 力 施 設 を、ブラジルの査 察 官 はアルゼンチンの原 子 力 施 設 をそれぞれ 担 当 している。【検認活動
(Verification Activities)
】 2017
年 において両 国 の原 子 力 施 設 において99
回 の査 察 が実 施 され た。また、全 査 察 の人 ・日 は1209
人 ・日 となった。ABACC の査 察 下 に置 かれている両 国 の原 子 力 施 設 数 は下 の表 のとおりである。施設の種類 アルゼンチン ブラジル 計
転換及び燃料製造施設
9 2 11
ウラン濃縮施設
2 3 5
原子炉
5 3 8
研究炉/臨界・未臨界ユ ニット
7 8 15
その他(研究開発施設、
貯蔵施設
28 10 38
計
51 26 77
( 出 典 :
https://www.abacc.org.br/en/wp-content/uploads/sites/2/2018/08/Annual-Report.pdf)
計 量 及 び封 じ込 め監 視 システムの設 置 およびこれらのシステム維 持 のた めに、20 の技 術 ミッションが実 施 された。また、ABACC が有 する監 視 シス テムの段 階 的 な取 り替 えのために合 計14
の次 世 代 監 視 システム(NGSS) が導 入 された。 IAEA
による協 力 の下 、アングラ2
号 機 (ブラジル)及 びアトーチャ2
号 機(アルゼンチン)における監 視 システムの健 全 性 に係 る電 気 信 号 を
ABACC
本 部 に伝 送 するシステムの運 用 が開 始 された。本 システムの利 用 により、核 物 質 の在 庫 に係 る再 検 認 を回 避 しつつ、迅 速 に監 視 システムの 故 障 を認 識 し、是 正 することができる。 ABACC
は1990
年 代 初 期 に作 られた核 物 質 計 量 データベースの更 新 を 継 続 しており、原 子 力 施 設 における(核 物 質 の)在 庫 管 理 を改 善 するため の新 たなプログラムが開 発 されている。
コルドバ(アルゼンチン)の二 酸 化 ウラン転 換 施 設 において、SCCC の管 理 下 に置 かれている転 換 及 び燃 料 製 造 施 設 はIAEA
との協 力 のもとで短 期 通 告 ランダム査 察(SNRI)の対 象 となっており、査 察 回 数 を少 なくしつつ
大 量 の核 物 質 を検 認 することを可 能 とした。。
エンバルセ原 子 力 発 電 所 (アルゼンチン)における非 立 会 型 監 視 システム(UMS)
を用 いた乾 式 貯 蔵 庫 への使 用 済 燃 料 の移 送 の検 認 は、成 功 裏 に 実 施 された。【
IAEA
(国際原子力機関)との協力(Cooperation Activities with IAEA)
】
アルゼンチン、ブラジル、ABACC 及 びIAEA
は4
者 間 のIAEA
保 障 措 置 適 用 に係 る協 定 を1991
年 に締 結 した。本 協 定 においてABACC
は検 認 におけるIAEA
保 障 措 置 との重 複 を最 小 化 するためにIAEA
と協 力 を 進 めている。
昨 年 度 は5
回 の技 術 協 力 会 合 を開 催 した。これらの会 合 は、アルゼンチ ン、ブラジル、ABACC
及 びIAEA
の協 力 による効 率 的 な検 認 を確 保 する ために不 可 欠 である。
検 認 の効 率 性 の向 上 に貢 献 する新 たな技 術 の評 価 が重 要 で、例 えば、貯 蔵 施 設 における核 物 質 の封 印 のための
2D
レーザーシステム、新 燃 料 の計 量 のための高 速 中 性 子 同 時 計 数 法(FNCL)
のプロトタイプ試 験 、燃 料 プール内 にある使 用 済 燃 料 の封 印 に係 る超 音 波 を用 いた封 印(ultrasonic seals)の実 験 が実 施 された。
2017
年3
月31
日 にブエノスアイレスにて連 絡 小 委 員 会 が、同 年9
月25
日 にウィーンにて連 絡 委 員 会 がそれぞれ開 催 され、原 子 力 施 設 及 び核 物 質 に対 する検 認 活 動 の向 上 などが議 論 された。【技術協力