• 検索結果がありません。

1.適用範囲

本試験は、試験試料(最終製品又は原材料)の抽出液による、刺激性を評価する ものである。ここでは、皮膚刺激性試験、皮内反応試験及び眼刺激試験の標準的な 方法を記載した。刺激性試験の項目は、当該医療機器の臨床適用部位に応じて選択 する。なお、ISO 10993-10には、口腔粘膜刺激試験や膣粘膜刺激試験などの記載も あることから、これらを利用してもよい。また試験試料の臨床適用方法あるいは性 状により、動物への投与物質は必ずしも抽出液でなく、最終製品など、より適切な リスク評価ができるものを用いるべきである。近年、医療機器の抽出物の皮膚刺激 性評価のためのin vitro皮膚刺激性試験の有用性が実証されたことから、本ガイダ

ンスにもin vitro皮膚刺激性試験法の概要を記載した。

なお、引用規格などに挙げた試験基準で既に実施された試験結果がある場合に は、本試験を改めて実施する必要はない。

.

2.引用規格

2.1 ISO 10993-10:2010, Biological evaluation of medical devices - Part10: Tests for irritation and skin sensitization

2.2 ASTM Standard F 719-81(2012): Standard Practice for Testing Biomaterials in Rabbits for Primary Skin Irritation

2.3 ASTM Standard F 749-13: Standard Practice for Evaluating Material Extracts by Intracutaneous Injection in the Rabbit

2.4 USP General Chapters: <88> Biological Reactivity Tests,In vivo - Intracutaneous Test

3.皮膚刺激性試験

3.1in vitro皮膚刺激性試験(再構築ヒト表皮試験法)(6.1項参照)

3.1.1目的

本試験は試験試料(最終製品又は原材料)から抽出した抽出液(以下「試験 液」とする。)中に、皮膚刺激性を有する物質が存在するかどうかを確認する in vitro試験である。

3.1.2試験の要約

試験試料から生理食塩液及び植物油を用いて抽出した試験液を、正常ヒト由 来表皮角化細胞からなる再構築ヒト表皮モデル(以下「RhEモデル」とす る。)に添加して、細胞生存率を指標として、炎症カスケードの起因現象であ る細胞の損傷を測定することで、刺激性の有無を判定する。

3.1.3試験液の調製 3.1.3.1抽出溶媒

抽出には、生理食塩液(日局又は同等品)、植物油(綿実油又はゴマ油、

日局又は同等品)を用いる。

3.1.3.2抽出溶媒と試験試料量の比

原則として、付録1の規定に従うものとする。

3.1.3. 3抽出条件

原則として、付録2の規定に従うものとする。

3.1.3.4 操作方法

抽出後、直ちに室温(25℃以下にならないよう)に冷却する。次いで、容 器の内容液を別の乾燥した滅菌容器に集め、 付録3に従い、25℃前後で保存 し、これを試験液として24 時間以内に試験を実施する。滅菌品に関しては一 連の操作を無菌的に行うこと。

3.1.3.5対照液の調製

陰性対照液はPhosphate Buffered Saline (PBS)とする。陽性対照液は生理食

塩液で1%に調製したラウリル硫酸ナトリウム(SDS)とする。溶媒対照液は

抽出溶媒単独(試験試料を加えない)で、試験液調製と同条件で操作を行っ たものとする。陽性対照材料としてはY-4が推奨される。Y-4の抽出条件は

37℃若しくは50℃で72±2時間抽出とする(6.4項参照)。

3.1.4試験法

3.1.4.1三次元RhEモデル

適切に評価されたRhEモデルを使用する。1試料ごとに3ウェル使用する

(6.3項参照)。

3.1.4.2試験操作

RhEモデルを使用した試験法の概要を下記に示すが、各段階の操作の詳細 は、使用するRhEモデルの手順書に従って行うこと。

1) RhEモデルは適切な培養条件下で、37℃の5%炭酸ガス培養器内にいれ

て、静置して前培養する。

2) 試験液、対照液、溶媒対照液をそれぞれRhEモデルに添加する。

3) 37℃の5%炭酸ガス培養器内に静置して、一晩培養する。

4) PBSを用いて洗浄する。

5) MTT溶液をウェルに添加し、37℃の5%炭酸ガス培養器内で約3時間浸

漬させる。

6) RhEモデルを適切な量のイソプロパノールに室温で約2時間若しくは一

晩(容器の周りをシールする)浸漬して、ブルーホルマザンを抽出する。

7) イソプロパノール抽出溶液を96ウェルプレートへ移して適切なODを 測定し(例:図1, 6.5項参照)、生存率(%)を算出する(6.6項参照)。

図1 96ウェルプレートへの配置例 3.1.4.3試験成立条件

下記3条件を全て満たした場合に試験成立とみなす。

1)陰性対照の平均 OD測定値の範囲は、使用する各RhEモデルの手順書に 記載されている範囲に従う。

2)陰性対照液の生存率 に対する陽性対照液平均生存率の範囲は、生存率が

< 40%である。

3) 全ての対照液及び全ての試験液において、 生存率の標準偏差(N=3) SD が ≤ 20%である。

3.1.4.4評価

陰性対照液に対する生存率が≤ 50% の場合を刺激性、陰性対照に対する生 存率が> 50%の場合を 非刺激性と判定する。

3.1.5試験報告書

試験報告書には、少なくとも以下の事項を記載する。

1) 試験実施機関及び試験責任者 2) 試験実施期間

3) 試験試料を特定する要素

(例:医療機器の名称、製造販売業者名、製造番号、原材料名など)

4) 対照液を特定する要素

(例:対照液名、入手先、製造番号など)

5) 試験試料の試験への適用方法(滅菌した場合は、その方法を含む)

(例:採取重量又は面積、細切の方法、滅菌方法など)

6) 試験液の調製方法

(例:抽出方法など)

7) 使用したRhEモデル

8) 試験方法

9) 試験結果

10) 結果の評価と考察 11) 参考文献

3.2in vivo皮膚一次刺激性試験

3.2.1目的

本試験は試験液中に、皮膚刺激性を有する物質が存在するかどうかを確認

するin vivo試験である。

3.2.2試験の要約

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

A ブランク ブランク ブランク ブランク ブランク ブランク B 陰性対照1 陽性対照1-1

媒対照1-1

媒対照2-1 試験液1-1 試験液2-1 C 陰性対照1 陽性対照1-1

媒対照1-1

媒対照2-1 試験液1-1 試験液2-1 D 陰性対照2 陽性対照1-2

媒対照1-2

媒対照2-2 試験液1-2 試験液2-2 E 陰性対照2 陽性対照1-2

媒対照1-2

媒対照2-2 試験液1-2 試験液2-2 F 陰性対照3 陽性対照1-3

媒対照1-3

媒対照2-3 試験液1-3 試験液2-3 G 陰性対照3 陽性対照1-3

媒対照1-3

媒対照2-3 試験液1-3 試験液2-3 H

試験試料から生理食塩液及び植物油を用いて抽出した試験液を、1 溶媒当 たりウサギ3匹を用い、背部の無傷皮膚区画に塗布し、刺激性を観察する

(6.2項参照)。なお、3匹の動物を用いた試験の反応が疑わしい場合は、さ らに3 匹を追加して試験を実施する。

3.2.3試験液の調製

3.1.3項に従う。ただし、対照液の調製については、抽出溶媒単独(試験試料を

加えない)で、試験液調製と同条件で操作を行ったものを対照液とする。

3.2.4試験法 3.2.4.1 試験動物

健康で体重が2 kg以上のウサギ計6匹(1群3匹、2溶媒)を使用する。週 齢及び性は特に規定しないが、試験の評価が可能な皮膚を有する動物を用い る(6.7項参照)。使用前1 週間以上、馴化する。

投与前までに背部の毛を刈り(又は剃り)、投与及び皮膚観察が容易な状 態にする(6.8項参照)。

3.2.4.2投与液量

試験液及び対照液の投与液量は、原則として1投与区画当たり0.5 mLとす る。

3.2.4.3投与経路及び投与期間

塗布による投与を1 回行う。

3.2.4.4投与部位

背部を上下、左右計4区画に分け試験液及び対照液をそれぞれ2区画に投 与する(例:図2参照)。投与液量は1区画につき0.5 mLとし、これを 1枚 の不織布(リント布)など(2.5 cm角)にしみ込ませてテープで貼りつける。

その上をポリエチレンフィルムなどで覆い、固定する。

頭側

試験液投与部位 対照液投与部位

対照液投与部位 試験液投与部位

尾側

図2 皮膚一次刺激性試験(例)ウサギ背部図

表1 皮膚(皮内)反応の評点付けシステム (ISO 10993-10, 6 In Vivoirritation tests)

紅斑及び痂皮の形成 評点

紅斑なし 0

非常に軽度な紅斑(認識下限レベル) 1

軽度な紅斑 2

中程度の紅斑 3

高度な紅斑(ビート赤)、紅斑の評点付けを妨げる痂皮の形成 4

[最高点4点]

浮腫の形成

浮腫なし 0

非常に軽度な浮腫(認識下限レベル) 1

軽度な浮腫(膨隆により縁が明確に識別可能なレベル) 2

中程度の浮腫(約1 mmの膨隆) 3

高度な浮腫(1 mm以上の膨隆とばく露範囲を超えた広がり) 4

[最高点4点]

[紅斑・痂皮及び浮腫の合計点数の最高点8点]

投与部位に見られた他の有害作用も記録及び報告すること。

3.2.4.5 観察

投与直前に皮膚の状態を観察する。投与後24 時間目に不織布を除去し、丁 寧に塗布面を拭き取る(6.9項参照)。不織布除去1±0.1時間後、24±2時間 後、48±2時間後及び72±2時間後に皮膚の状態を観察し、表1に従って観 察・記録する。不織布除去72時間後に持続性の病変が認められた場合、病変 が可逆性か非可逆性かを評価するために、必要に応じて14日を超えない範囲 で観察期間を延長する。

体重は、投与日及び観察終了日に測定し、記録する。

3.2.4.6 評価

観察結果より刺激性を評価する。例えば、個々の動物において試験液及び 対照液ごとに、24±2、48±2及び72±2時間の2投与部位の評点スコアを合 計し、各合計を6(3時点x 2試験液又は対照液投与部位)で除して、個別の 平均一次刺激点数を求める。各試験液群及び対照液群の平均一次刺激点数を 求めるため、各群3匹の動物の点数を合計し、3で除す。試験液群の平均一次 刺激点数から対照液群の平均一次刺激点数を差し引いて一次刺激指数(PII) を 求める。一次刺激指数を表2に規定する一次刺激指数カテゴリと比較し、適 切な反応カテゴリを報告書に記載する。

表2 一次刺激指数カテゴリ

3.2.5試験報告書

試験報告書には、少なくとも以下の事項を記載する。

1) 試験実施機関及び試験責任者 2) 試験実施期間

3) 試験試料を特定する要素

(例:医療機器の名称、製造販売業者名、製造番号、原材料名など)

4) 対照液を特定する要素

(例:対照液名、入手先、製造番号など)

5) 試験液の調製方法

6) 試験動物の種と系統、数、週齢、性別、個別体重

7) 試験方法

8) 試験結果(6.10参照)

表:個々の動物の皮膚反応結果(評点スコア)

9) 結果の評価と考察 10) 参考文献

4.皮内反応試験 4.1目的

本試験は試験液を皮内投与し、刺激性の有無を確認するためのin vivo試験 である。

4.2試験の要約

試験試料から生理食塩液及び植物油を用いて抽出した試験液を、3 匹のウ サギの背部に皮内投与し、投与部位を投与後72±2時間まで観察して、刺激 性の有無を評価する(6.2項参照)。なお、3匹の動物を用いた試験の反応が 疑わしい場合は、さらに3 匹を追加して試験を実施する。

4.3試験液の調製

3.1.3項に従う。ただし、対照液の調製については、抽出溶媒単独(試験試

料を加えない)で、試験液調製と同条件で操作を行ったものを対照液とす る。

4.4試験法 4.4.1 試験動物

平均点数 反応カテゴリ

0〜0.4 無視できる程度

0.5〜1.9 多少

2.0〜4.9 中程度

5.0〜8.0 激しい

関連したドキュメント