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制御系の設計

ドキュメント内 松野, 崇 (ページ 34-40)

本節で示す制御手法はFig.3.4に示す4つのステップで構成される.Step1ではスラスター を片方駆動し,宇宙機に並進と回転の運動量を与える.Step1 は最終ステップである Step4 と対となっており,ここで得た回転運動はStep4において目標姿勢で停止される.Step1に

続くStep2では2基のスラスターを駆動し,宇宙機の並進速度を調整する.2基のスラスタ

ー推力が発生するトルクが釣り合うので,ここでは回転運動に影響を与えない.Step2での 速度の調整は, Step4の後の並進速度が不変マニフォールドに沿う,すなわち,式(3.5)を満 たすようにする.さらに Step3 ではスラスター2 基を駆動して宇宙機の位置の調整を行う.

並進速度の変動を相殺する対となるスラスター駆動のパターンにより,Step4後に宇宙機の Fig.3.3 Strategy for position and attitude control using an invariant manifold

Initial state Target state

Invariant manifold

X Y

߶

33

位置が不変マニフォールドの条件である式(3.4)を満たすように調整する. Step2とStep3の マニューバの結果,Step4後は不変マニフォールドである直線上を宇宙機が目標姿勢でドリ フトしている状態となる.

これらの 4 つのステップの切り替えタイミングにはステップごとの宇宙機の姿勢・位置 を用いる.これにより,本節で示す制御系では宇宙機の質量や慣性モーメントのモデル化 誤差に対してロバストとなる.

なお,議論を簡単にするべく,以降ではStep1を開始する際の初期姿勢角速度θ(0) = 0を 仮定する.

(a) Step1Step4:回転の開始と停止 Step1では2基のうちのいずれか1基のスラスター

を駆動し,機体に並進と回転の運動量を与える.続く,Step2とStep3は回転運動に影響を 及ぼさないため,Step1で発生した回転運動はStep4において静止される.よって,ここで

はStep4についても述べる.姿勢角がΔΘ変動する間スラスター1基を駆動し続けるとして,

以下のようにStep1とStep4の入力を設定する.ここで,ΔΘは制御系の設計パラメータと なる.

Fig.3.4 Four step control to the invariant manifold Step1: Starting rotation and

translation by a thruster ON

Step2: Translational velocity control by both thrusters ON

Step3: Position control by both thrusters ON Step4: Stopping the rotation at an invariant manifold

+

34 Step1:

( ) ( ) ( )

1 1

2

for 0 0

0

f f

f é ù q q t q

é ù=ê ú £ £ + DQ

ê úë û ë û (3.7)

Step4:

( )

1

2 2

0 for 2 2

f n t n

f f p q p

é ù é ù= - DQ £ £

ê ú ê ú

ë û ë û (3.8)

なお,議論を簡単にするため,式(3.7)と(3.8)ではStep1でスラスター1を駆動し,Step4でス ラスター2を駆動することを仮定した.この順序は逆であっても構わない.

Step1の式(3.7)とStep4の式(3.8)において,宇宙機に加わる回転運動量の絶対値は等しい.

これは2基のスラスターが発生する回転トルクが釣り合うことから明らかである.よって,

Step4終了後には必ず姿勢角速度は0となる.この制御アルゴリズムは,宇宙機の姿勢角に

応じてスラスターのONとOFFを判定するだけであるから,慣性モーメントのパラメータ を必要としない.

(b) Step2:並進速度の調整 Step2ではスラスター2基を同時に駆動することで,宇宙機の

回転運動に影響を与えずに並進速度を調整する.これにより,Step4後の宇宙機の並進速度 を不変マニフォールドである直線に沿った方向とする.当然,このマニューバにより宇宙 機の位置も変動するが,これは続くStep3において調整される.

まず,Step4後の並進速度を求める.Step4ではStep1と同じ時間だけスラスターを駆動し,

その際の姿勢角の変動もStep1と同じである.Step1 とStep4の違いはスラスター推力の違 いだけであるから,Step4 の並進速さ(スカラー量)の増分はStep1 の並進速さの増分に2 基のスラスター推力の比率f2/f1を乗じたものとなる.これに宇宙機の姿勢に応じた回転行 列を乗じれば,Step1の並進速度増分からStep4の並進速度増分を得ることができる.初期 並進速度をX0Y0,Step1終了後の並進速度をX1Y1,Step2を開始してからの時間を t(2)

Step2中でt(2)までに生じた並進速度増分をΔX2(t(2)),ΔY2(t(2))とおけば,X1Y1によりStep4 後の並進速度X4Y4は以下のように表される.

( )

( )

( )

( )

( )

2 0 2

4 2 1 1

41 2

1 0

4 1 1 2

X X t

X f X X

f Y

Y q æ Y é ùö Y éDY t ù

é ù= D çé ù-ê ú÷+é ù ê+ ú

ê ú çê ú ÷ ê ú ê ú

ë û èë û ë ûø ë û êëD úû A

 

  

    (3.9)

ここで,Step1においてスラスター1を駆動することを仮定した.Step1とStep4におけるス ラスター駆動の順序が逆となる場合は,式(3.9)中のf1f2を入れ替えればよい.また, A() は回転行列であり,Δθ41はStep1開始時のスラスター1の推力ベクトルとStep4開始時のス

35

ラスター2の推力ベクトルがなす角度である.Δθ41=(2πn-ΔΘ+α2)-(θ02)であるから,A(Δθ41) は以下のように表される.

( ) { ( ) ( ) } { ( ) ( ) }

( ) ( )

{ } { ( ) ( ) }

( ) ( )

( ) ( )

2 0 1 2 0 1

41

2 0 1 2 0 1

0 1 0 1

0 1 0 1

cos 2 sin 2

sin 2 cos 2

cos 2 sin 2

sin 2 cos 2

n n

n n

p a q a p a q a

q p a q a p a q a

q a q a

q a q a

é - DQ + - + - - DQ + - + ù

D = ê ú

- DQ + - + - DQ + - +

ê ú

ë û

é + DQ + + DQ + ù

= êë- + DQ + + DQ + úû A

(3.10)

一般的な開ループ制御であれば Step4 後の並進速度は数値積分や近似計算により求める ことが多い.これに代わり,本項の制御系では,Step2開始時点で既知であるStep1後の並 進速度・姿勢角の変化,および,Step2中の並進速度の変動からStep4後の並進速度を求め る.これにより,宇宙機の質量や慣性モーメントのパラメータを用いずにStep4後の並進速 度の導出することができる.

Step4 後に宇宙機が不変マニフォールドに沿う並進速度となるべく,Step2ではX4,Y4

不変マニフォールド上の速度の条件式(3.5)を満たすようなΔX2(t(2)),ΔY2(t(2))を得る.このた めには,以下の関数VDが0となる入力を加える.

( ) ( )

(

4 4

)

2

1 cos sin

D 2

V = Y f -X f (3.11)

VDの時間微分は,

( ) ( )

( ) ( ( ) ( ) )

( ) ( ) ( ) { ( ( ) ) ( ( ) ) }

( ( ) ) ( ( ) )

( )

4 4 4 4

4 4

1 1 2 1

1 1 2 1

cos sin cos sin

cos sin

cos sin sin

sin cos cos

VD Y X Y X

Y X

f t f t

m

f t f t

f f f f

f f

f q a q a

f q a q a

= -

-- é

= ë - + +

-- - + + - ùû

    

 

(3.12)

であるから,これが負となる姿勢角においてスラスター2基を駆動すればVDは0へ漸近す る.式(3.12)は宇宙機の質量を含むが,式(3.12)は単純に正・負を判定するのみであるから,

質量の値が正確である必要はない.また,Step2において宇宙機は回転しており,姿勢角は 常に変動しているのでVDの時間微分が負となるタイミングは必ず存在する.VDが 0 とな った時点でスラスターをOFFとし,Step2は終了となる.

以上の制御系をまとめれば,Step2における入力は以下のようになる.

36 Step2:

1 1

2 2

for D 0, D 0

f f

V V

f f

é ù é ù

=ê ú £ ¹

ê úë û ë û  (3.13)

なお,不変マニフォールド上ではX4< 0も満たされなければならない.3.2節では事前にXを 負とする操作を仮定したが,Step1 から Step4 を通してXが正となるマニューバは避けなけ ればならない.よって,式(3.12)の入力のタイミングに対し,X 方向の並進力が負となる条 件を加えることが望ましい.

(c) Step3:位置の調整 Step3では宇宙機の位置の調整を行う.回転運動に影響を与えず,

かつ,Step2 で調整した並進速度増分にも影響を与えないようなマニューバにより,Step4

完了後の宇宙機の位置を不変マニフォールド上に一致させる.

前述のようにスラスター2基を同時に駆動すれば回転運動に影響を与えない.そこで,ス ラスターを 2 基同時に駆動するパターンを組み合わせ,このパターンにおける並進速度の 増分を 0 とすることを考える.このパターンの組み合わせにより,回転運動と並進速度に 影響を与えず,宇宙機の位置のみを調整することができる.

このようなパターンの組み合わせで最も簡単なものは,1回目マニューバとしてある姿勢 角増分の間スラスターを2基駆動し,2回目のマニューバとして宇宙機が180°反転した後に 再び同じ姿勢角増分の間スラスターを 2 基同時に駆動するものである.同じ時間,同じ姿 勢角増分の間,同じ推力を宇宙機に加えるので,その方向を除いて1 回目と 2 回目のマニ ューバで宇宙機に加わる運動量は同じである.よって,1回目と2回目で宇宙機の姿勢角が

180°異なれば,これら2回のマニューバによる並進速度の変動は0となる.1回目のマニュ

ーバにおける初期姿勢をθ30とおき,スラスター2基を駆動し続ける姿勢角変動量をΔΘTと おけば,このような2回のマニューバは以下の式(3.14)と(3.15)で表される.

1回目のマニューバ:

( )

1 1

30 30

2 2

for T

f f

f é ùf q q t q

é ù=ê ú £ £ + DQ

ê úë û ë û (3.14)

2回目のマニューバ:

( )

1 1

30 30

2 2

for 2 2 T

f f

N t N

f é ùf q p p q q p p

é ù=ê ú + + £ £ + + + DQ

ê úë û ë û (3.15)

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ここで,Nは任意の整数である.Nθ30,および,ΔΘTがStep3におけるマニューバのパラ メータとなり,これらを変更することで宇宙機の位置変動を調整できる.

続いて,位置調整のために,Step4 後の宇宙機の位置を求める.Step2 の並進速度変動の 場合と同様に,Step1,Step2後の位置と並進速度,およびStep3の初期位置(1回目のマニ ューバを開始する際の位置)を用いてStep4後の位置を表す.Step4ではStep1と同じ時間,

同じ姿勢角増分の間だけスラスターを駆動し,スラスター推力の値だけが異なる.ゆえに,

Step1の初期速度による位置のドリフトを除けば,Step4における宇宙機の移動距離はStep1

における移動距離に 2 基のスラスター推力の比率f2/f1を乗じたものとなる.したがって,

Step4 における位置変動を求めるためには,初期速度のドリフトによる位置変動を除いて

Step1 の移動距離をf2/f1 倍し,さらに宇宙機の姿勢に応じた回転行列を乗じる.これに,

Step3初期からStep4完了までのドリフトによる位置変動,および,Step3中の2回のマニュ

ーバにより得る位置変動を加える.Step1完了後の位置を X1Y1,Step2完了後の並進速度 と位置を各X2,Y2,X2,Y2,Step3 における位置変動を ΔX3,ΔY3(ただし,X2,Y2による ドリフトを除く)とおけば,Step4後の宇宙機の位置X4Y4は以下のようになる.

( )

0 3

4 2 1 0 2 2

41 1 24

0 3

4 1 1 0 2 2

X X

X f X X X X

Y Y

Y f q æ Y é ù t éY ùö t éY ù éD ù Y é ù= D çé ù-ê ú- ê ú÷+ ê ú+ê ú+é ù

ê ú çê ú ÷ D ê ú

ë û A èë û ë û ë  ûø ë  û ë û ë û

  (3.16)

ここで,τ1はStep1におけるスラスター駆動時間であり,Step3開始の時点(1回目のマニュ

ーバ開始の時点)で既知である.τ24はStep2完了後からStep4完了までの時間である.Step1 完了後の角速度をθ1,Step2完了直後の姿勢角をθ2として,τ24は以下のように表される.

2

24 1

1

2pn q

t t

q DQ

-=  + (3.17)

Step3 開始時点において,式(3.16)のΔX3,ΔY3を除く項は全て既知である.ΔX3,ΔY3は,

1 回目のマニューバによる位置変動量と 2 回目のマニューバ開始までのドリフト(X2Y2

によるドリフト分は除く)量の和に2回目のマニューバによる位置変動を加算することで,

以下の式(3.18)のように表される.なお,式(3.18)の導出においては,時間積分を姿勢角に関 する積分に置換している.Step3の間は角速度がθ1で一定であるから,dt d= q q1が成り立 つ.

ドキュメント内 松野, 崇 (ページ 34-40)