広尾整形外科 山岸 千鶴
【はじめに】
立位や歩行において,足底は唯一の支持 基底面であり,足底感覚情報は姿勢保持や 歩行に大きな影響を及ぼすと考える.先行 研究において,歩行時の母趾球荷重に着目 した検討に比べ,小趾球荷重に着目した検 討の報告は乏しく,未だ不明確な点が多い.
そこで今回,歩行において小趾球を含む第 5 列誘導を行う入谷式足底板第 5 列誘導テー プを用い, 歩行時 MSt 期における足圧中心 移動速度と足底接地範囲,及び小趾球足底 感覚に与える影響について検討した.
【対象】
整形外科疾患のない健常成人 2 名に対し, 立方骨触診による第 5 列誘導評価を実施し, 第 5 列内がえし誘導者 1 名,第 5 列外がえし 誘導者 1 名を抽出をした.
【方法】
1.足底感覚の測定
踵部・小趾球の 2 箇所に対して静的二点 識別覚評価(2 Points Distance, 以下 2PD) を行った.
2.足圧重心動揺の測定,歩行条件の規定 MSt 期における足圧中心移動速度,足底接 地範囲の測定には重心動揺計を用いた.歩 行条件は①自然歩行,②第 5 列外がえし誘 導テープ貼付歩行,③第 5 列内がえし誘導 テープ貼付歩行の 3 条件とした.各歩行と もに左右 8 施行の測定における測定値を平 均し,分析データとした.
3.データ記録手順
まず,左右踵部・小趾球部に対し 2PD を行 った.十分な休息をとった後,課題歩行に対 し,左右 8 施行の MSt 期における足圧中心移 動速度,足底接地範囲の測定を行った.その 後,再度,2PD を行った.これらの手順を 3 条 件に対して施行した.
【結果】
各対象者における適切な第 5 列誘導テー プ貼付歩行では,MSt 期の歩行スピードに増 加傾向がみられた.しかし,2PD においては, 各歩行による変化は認められたが,規則性 のあるデータには至らなかった.
【考察・展望】
第5列は足根中足関節を基盤とし,距骨下 関節と同様に三平面運動を行うため,内が えし及び外がえし運動を行うことが特徴で ある.歩行において第5列は立脚中期での重 心側方動揺に関与しており,第5列外がえし 誘導は立脚中期での外方から内方への転換 を早め,内がえし誘導はその逆の作用とな る.本研究では,第5列の適切な誘導方向に 対しテープを貼付することで,誘導方向に 関わらずMSt期における歩行スピードの増 加傾向を示した.適切な第5列誘導は足根中 足関節における不良肢位の減少となり,MSt 期の円滑な経過につながったと推察する.
次に足底感覚における2PDは各歩行によ り変化を示したが,規則性のあるデータに は至らなかった.本研究は歩行課題による 無意識下感覚入力であったため,対象者が 適切な刺激と認知するには至らず,効果的 な感覚入力につながらなかったと推察する.
その為,歩行課題と2PDの間に規則性がみ られなかったものと考える.今後,運動を用 いた感覚刺激と各種動作との関係性をより 明確にするため研鑽していきたい.
降段時に膝過伸展を呈する症例への アプローチ
笠原整形外科 山登 祐太
【はじめに】
今回、降段時に膝過伸展がみられる全身関 節弛緩性を有した症例に対して股関節の安 定性を向上させ knee-in 動作や過伸展位で の荷重を行わないようアプローチを行うこ とで疼痛軽減がみられたため、ここに報告 する。
【症例紹介】
女子中学生 陸上部短距離
主訴:急いで階段降りる時に膝が伸びきっ てしまい膝に痛みが出る。
【理学療法評価】
・両膝蓋靭帯・膝蓋下脂肪体部に圧痛あり
・全身関節弛緩性(General Joint Laxity)
の評価:東大式法-4/7点で陽性
・前方引き出しテスト、外反ストレステス ト陽性
・降段時膝過伸展位で着地、もしくは膝屈 曲位で着地した場合knee-in動作となる。
・両側股関節外転・股関節外旋筋力低下・
・内側広筋萎縮
・前捻角(Craigテスト):両側20°
・股関節可動域:内旋両側60°、外旋30°
【治療アプローチ】
・股関節外転・外旋EX
・フロントランジ
・階段昇降の動作指導
【考察・結果】
この症例は前捻角が大きく、荷重時に大 腿骨内旋位そして下腿は相対的な外旋位と
なりknee-in 動作をとる。このとき膝関節
は外反・外旋位となりMCL・ACL は伸張 ストレスを受け、その動作の繰り返しや全 身関節弛緩性の影響により膝関節は不安定 性を増していく。
降 段 時 に 膝 屈 曲 位 で 接 地 し た 場 合 は
knee-in動作となるが、MCL・ACLが伸張
され不安定性があるため着地時に膝過伸展 してしまうのではないかと考えた。
そのため、膝関節不安定性の原因となっ ている荷重時の knee-in 動作を改善するた めに股関節外転・外旋エクササイズを行い 股関節を安定させることで knee-in 動作改 善を図っていった。また、フロントランジ
でknee-in しないよう動作練習を行ったり、
降段時に膝屈曲位で荷重するよう動作指導 を行った。1ヶ月間のアプローチで過伸展 となる頻度は低下し、疼痛はVAS=(10→3) と軽減した。
【おわりに】
今回、膝関節の安定性向上のため股関節に 対するアプローチを行ったが、今後は膝・
足部などへのアプローチも検討していきた いと考えている。
舌運動が及ぼす影響の示唆
河北リハビリテーション病院 吉田 雅俊
【はじめに・目的】
摂食・嚥下をする際に必要となってくる 器管の一つとして、舌が存在する。舌の機 能は受容器や運動器としての働きがあるが、
今回は運動器としての機能に着目し、理学 療法に活かせるのではないかと考えテーマ として選んだ。また、舌の動きが身体に及 ぼす影響を考え、臨床場面や予防医療など の場面で活用出来るのではないかと考えた。
【方法】
舌を歯と口唇の間(口腔前庭)に位置さ せ、舌を大きく回すように右左20回ずつ動 作を実施。
【評価・測定方法】
上記動作を1日3回食後に実施。実施期 間は2週間とし、動作の実施前後で正面、
側面像を比較。測定は①左右下顎角から顎 先端までの距離(下顎骨に沿った距離)、② 左右下顎角から顎先端までの距離の中点を 床面に対し垂直に降ろし結んだ距離の2項 目を動作の実施前後で測定。
【対象】
健常成人、30代、男性。
【結果】
実施前後で比較し、①は変化がなかった。
②では動作実施後、1cm減少した。
【考察】
舌の機能と言えば、食物を口に取り込み、
咀嚼、嚥下の際に働く運動器としての機能 や、味覚を感じる受容器の機能がある。
本研究では舌を動かすことにより、外舌 筋(オトガイ舌筋、舌骨舌筋、茎突舌筋、
口蓋舌筋)や舌骨上筋群の収縮を随意的に 促したことにより、顎周辺の測定距離が変 化するのではないかと考え、結果から③に て測定数値の変化が認められた。これは舌 の動きにより外舌筋、舌骨上筋群が収縮し、
測定距離が減少したと考える。また舌の動 きは舌骨を介し、舌骨下筋群にも影響する のではないかと考える。舌骨下筋群には肩 甲舌骨筋、胸骨舌骨筋など体幹部に起始部 を持つ筋が存在する。石月は舌骨周囲の柔 軟性や舌骨のアライメントの改善を図ると、
呼吸が深くなる例や上肢・下肢のアライメ ントまで変容する例があると述べている。
また、Thomas・W・Myers が提唱してい る筋・筋膜経線ではディープ・フロント・
ラインと呼ばれる連結があり、体幹部と連 結していることを述べている。
以上の事から舌の動きが身体に与える影 響はあるのではないかと考える。舌の運動 方向により、身体を誘導することも可能で はないかと考える。
また、臨床現場で治療介入をする前やク ライアントに自主トレーニングとして行っ てもらうことにより、治療介入が行いやす くなる可能性もあるのではないかと考えて いる。
【今後の展望】
今回の結果をもとに舌の運動による身体 誘導などを考え、研究し研鑽していきたい と思う。