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共同利用研究

ドキュメント内 東北大学遺伝生態研究センター年報 1997 (ページ 33-44)

ワークショップ  ・

【遺伝生態情報の可能性】

近年, /I‑:命科学と情報科学の学際化およびインターネット・データベースの進歩は目覚ましいもの があるo また, ′il:命の本質は遺伝+という情報の広がりであり,牛物学に情報概念は必須である。本

遺伝生態研究センターは, 「生態系における椎の′1滴の遺伝的基礎」を明らかにすることを目標にして 清動している。近年の情報科学と生命科学の進歩を遺伝′1‑:態に積極的に取り入れ,さらに本センター が目指してきた野外生物からではなくては探りあてられか、真理の探求を, 「遺伝牛態情報」という新

領域を開拓することを目指した。そこで,こうした目標に沿うものとして,生物多様性のカタログ化 遺伝情報伝達のダイナミズム,ゲノムサイエンスという3つの柱を立て,以卜のような内容の具体化

と整坤を試みた。

1) /1二物多様性のカタログ化と遺伝牛態情報

生物は種分化や稚内変異などにより生物多様性を生み出すことによって,環境に適応してきた。近 午,情報ネットワークは牛物の分類・系統保存体制の整備などに活用されるとともに,地圏などにお

ける/I:̲物多様性の研究においてもカタログ化またはデータ‑ベース化する動向i)あるo また,最近の インターネットとWWW(WorldWideWeb)の便利な情報提供・利用の普及によって,分散している /1勃データ‑ベースをインターネット等を利用して統合化する方向が指向されている。ここでは,追

伝資源の保全と/f・:物多様件研究への寄与という側面から遺伝生態情報という新領域を考えた。

2)遺伝情報伝達のダイナミズム

/I:̲物多様性を/1三みだす原動力である適応進化には選択的変異,遺伝的組換え,転移因子などが深く 関与する。ここでは,組換え′ぉよび転移別封二よる遺伝7‑再編成と遺伝子伝播などの遺伝情報伝達の

ダイナミズムという側面から遺伝/I‑:態情報を考えた。

3)ゲノムサイエンスと遺伝生態情報

最近,中小のゲノムサイズを持つ実験モデル生物( Mycoplasmagem'tallum, IIaemt'Pjlilus l'nj7u'‑,nzae,

Synech()cystis, SlK・(・har()myces, Metanococcus)を対象としたゲノム全シークエンス解析がバクテリ

アやラン藻などの原核牛物から其核/7三物(酵母)まで次々に発表され,今後も各種の1二物のゲノムシー クエンスが次々に明らかにされて行くことは間違いない。ゲノムシークエンス解析の目的は,大量の

未知遺伝子の機能解析,遺伝+相互のコミュニケーション,ゲノムの設計原坤の解明などであるが, いずれも/i‑:物の環境適応・進化の分子論的理解に重要であると同時に,今後,生物学のアプローチを

一一 29 ‑

チを一一一変させてしまう可能性がある。ここでは, (1)実験モデル生物の全シークエンスから何が分かる

のか, (2性物多様性を視野に入れた環境徴牛物や植物の分了ぺ三物学の研究にどのように関わってくる

のか, (3)遺伝牛態の研究との接点は何か,などについて考えた。

上述のどの課題つとってみても,人変人きな課題である。今lnJEi,それら全体を「遺伝′1:‑態情報」

の領域と見なし,どこに「遺伝′1三態情報」出発点や叶能性があるかを考えた。

MA F Fジーンバンクにおける徴/1物遺伝資源の探索・収集,多様性解析及びカタ旦ZILE

加来 久敏(農水省・農業生物資源研)

農林水産省の微生物遺伝資源事業の一一・環としてスタートしたMAFFジーンバンク徴Jf三物部門のにお

ける:微生物遺伝資源の探索・収集・保存,特性評佃,データベース化,カタログ化の棚犬紹介し, 具体的にイネ「1葉枯病繭の多様性解析などを例にあげて品種推挽性などの種以卜のレベルにおける多 様性解析の意味を紹介した。さらに,微生物のカタログ化 データベース化は,農業だけでなく地球 環境をはじめとする環境問題解決のための未知の遺伝資源としての意義があることを指摘した。

実験モデル植物シロイヌナズナのストックセンターとデータづ二旦廷 後藤 伸治(宮城教育大)

シロイヌナズナが植物分+Jl:̲物学のモデル植物として登場してから約10年が経った。まず,シロイ ヌナズナ研究の醐犬が同際連絡組織のProgress Report Year 5に基づいて紹介された。次に,米l乱 英国,ドイツ,日本にあるシロイヌナズナのストックセンターによる椎丁やDNAなどの供給活動の 紹介があった。特に,仙台シロイヌナズナ種子保存センターは,小さいながら世界‑向かって日本の 研究者の心意気を発信しているものとして日負してよいであろうo最後に,シロイヌナズナに関する データベースAtI)BとAIMSの概要及びシロイヌナズナ研究情報インターネットの触兄の糸口介があっ

た。

醍旦塑竺物情報資準の統合化        宮崎 習(同立遺伝研・ ′1三命情報研究センタ ) 生物学がinuiu(),inで'iれだけでなく新たにinLq'licoという新しい手段を取り入れ,拝l際協)Jによっ て1二物情報学(Boiinformatics)として大いに発展しつつある。しかし,データベ‑ス管理システム (I)BMS)の現/l=.の製品は,生物関連データに必ずしも向いていか、。そこで,獅折二物データの蓄 積と公開の事例をDBMSまで言及しながら紹介した後,インターネットによる椎々のデータベースの 統合的利用のイJ‑効性と問敵∴・:を明らかにした。さらに,知識獲得刊の研究支援ツールとして期待され ている「データ解析を含めたデータベース(情報ベース)」の構築について,分類支援ツ‑ルなどの例

を卜げながら議論を行った。

土壌細菌群集の多様性の解析による遺伝′1三態カタログ化     三井 久幸(束北人・遺fl:‑研) 水田および草地‑f二項細菌群集のエココレクションをコロニー形成曲線に基づいて構築し, 16SrRNA 遺伝子の塩基配列に基づいた系統分甥解析を行った。その結果,このようなエココレクション構築の

一一一 30 ‑‑

有効性, 」二壌細菌群集の水山・草地における相違,土壌細菌群集の年次変動などが明らかとなった。

さらに,十二壌ミクロl司粒の徴牛物群集の解析にも,コロニー形成曲線に基づいたエココレクションの

構築は有効であった。今後, 「培養困難」な細菌の集団を視野に入れて,分裂増殖を伶llこし容易に増殖

を開始しか、 quiescentstateの分了一論的基礎の解明も,環境徴/l・:物カタログ作りの埋諭的な裏付けと して調べてゆく必要がある。

バイオマ の細菌群集のカタログ化一勺三命と地球のIli進化の解読へ向けて

平石 明(豊橋技科人・エコロジ十1二学系)

最初に原始徴′r・:物は超好熱性菌だったという最近の発見の紹介に始まり,温泉および活性汚泥のバ イオマットの細菌群集のカタログ化の話へと続いた。微牛物進化の視点から原始共生系としての温泉 バイオマット特性を活件汚泥のバイオマットと比較し,人類と地球生態系との調和的共存の道標とす

る意義が議論された。また, 16SrRNAの解析結果に基づくとほとんどの分離菌株が未知の,しかも

属レベルで異なる細菌種になるという結果は,微生物生態学の分野ではごく普通のことになってきた。

しかし,単なる系統関係の羅列に留まらず,実態をとらえるためのバイオマーカーとしてキノンの 解析に取り組み,キノンの型が徴′1・:物の進化と一致していることを明らかにした。最後に,バイオマー カーも含めた微生物のカタログ化について言及した。

転移[*仔による耐性遺伝子群と分解系遺伝子群の拡散±環境適応   津田 雅孝(岡山大・埋) 細菌に特有の形質の中で,椎を越えたレベルで形質が容易に水平伝達されるとともに,環境変化に 迅速に適応して新たな形質を′ト:みだす例として,抗′I二物質に対する耐性とJ二項細菌の難分解性化合物

の分解能がある。ここでは,トランスポゾンなどの細菌の可動遺伝閃f群について概説した後に,抗

′書三物質耐性遺伝子の拡散・適応進化の研究の現状についてまず紹介したo次に, Pseud()monas属細菌 のベンゼン・トルエン・キシレン・フェノールなどの難分解性化合物の分解に関わる遺伝+群の分解 遺伝7‑,分解経路の特徴について説明した。さらに,これらの遺伝了が可動遺伝LjtJ了・と組み合わされ て,分解トランスポゾンを形成していることおよびその進化について,実例をしげて議論した。.

水俣と世界の接一七一水塾虹堕週毎了旦み̲ら̲i̲tる遺伝情報の拡散    遠藤 銀朗(刺ヒ学院大)

大規模な水銀汚染を起こした水俣湾から単離した好気性グラム陽性細菌であるBacillus属細菌の水 銀耐性オペロンの構造を比較検討したところ,多形性が観察された,また,ボストン湾から単離され た耐性遺伝子とよく似ていた。今のところ知られている水銀耐性オペロンの構造にも,その細菌の生 息環境に応じた多様性が見られた。これらの事実から,水銀相生遺伝子の起源や水平伝達について議 論を行った。また,無機水銀のメチル化などに関わる嫌気環境における水銀代謝遺伝イ・解明の軒要件

を指摘した。

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共生微生物のDNA再編成と遺伝子伝播      献軍 究(東北人・遺生研)

̲̲1二壌生態系に根粒形成遺伝子の水平伝達に関して,最近の研究による状拙証拠を示た。さらに,激 しいゲノム再編成を受けた根粒菌が土壌中に′E息しており,それらが共/I‑:遺伝子水平伝達の供与一体に なる可能性を考えた。この吋能性を検証するために,ゲノム再編成を受けた根粒菌から他の椎の根粒 形成能を破壊した菌に根粒形成遺伝イ宣伝逢させる実験を行ったところ,これを支持する結果が得ら

れわo

敬/1物のゲノムプロジェクトとその意義         小笠原 LBJ.毅(奈良先端科抜大学院大)

今までの細菌の遺伝+研究は, H的の性質の変異株やタンパク質をまず単離し,それぞれの遺伝子 機能の解析を積み重ねるものであった。しかし,これからはまず全ゲノムの塩基配列を決定し,そこ に書き込まれている生命活動の全プログラムを解読するという,新しい視点からの細菌遺伝学が始まっ

ている。今まで,ゲノム解析がほぼ終/している6種類の細菌のゲノム構造を,細胞として/lミきて行

くための基本遺伝+,それぞれの細菌にLhl有な遺伝f‑という,普遍性と多様件からみる新しい/LI物学 の展望について議論した。

ラン藻全ゲノムの構造解析      田畑 哲之(かずさDNA研)

かずさDNA研究所で実際に決定したラン藻のゲノム解析のデータを基に,全塩基配列の分析から 分かったことの例が報害された。まず,光合成反応の全反応を杓う遺伝+が浮き彫りになり,それら は植物の核やプラスチドの遺伝子と相同性を示すものが多く,ラン藻が細胞内jf;・年によって兵核細胞

に取り込まれた後に,遺伝子交換が起こったことを強く支持していたo また,センサー・レギュレー ターからなる環境応答系, ABC transpoter系,挿入配列などが多数発見された。今後さらに多数の

ゲノムの全構造が明らかになり,ある生物のゲノム全体を他の牲物のものと比較するようなより高次

の発想に基づく/ti物学が/tIまれる叶能性を指摘した.

土壌の腐生性細菌から見たゲノ̲生壁旦逝竺態研究の接点

宮卜 清貴(農水省・農業環境技術研)

代表的なⅠ二壌の腐生性細菌であり,かつ抗年物質生産歯であるStreptomyces属放線菌の種分化,ア

ガラーゼ・キチナ‑ゼなどの異化酵素の多様性,地理的多型,ゲノム構造などについて多数の実例を 含めて概説し,土壌徴生物学の基本命題,分子/t物学仁の課題などを明らかにした。また,細菌の多 様なタロロカテコール分解遺伝了・群の伝達機構や発現制御について調べ,宿主菌の持っている遺伝子 との協調関係が重要であることを明らかにした。最後に,微生物1三態学とゲノム解析と関係に言及し

た。

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ドキュメント内 東北大学遺伝生態研究センター年報 1997 (ページ 33-44)

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