︶
米 澤 実 江 子
承前
︵ 佛教 大学 法然 仏教 学研 究セ ンタ ー紀 要 第一
・二
・三
・ 四・ 五︶ キー
ワー ド 明恵
・ 摧邪 輪
・訓 読文
・註 記
︻報 告範 囲︼ 三 三丁 表九 行目 より 四一 丁裏 三行 ま でを 挙げ 試 稿 とし た︒
︻凡 例︼ 一︑ 底本 は︑ 佛教 大学 附属 図書 館蔵 寛 永年 間版
︵準 貴重 書 G極 楽 寺/ ︶ と し︑ 始め に書 き下 し該 当箇 所を 翻刻 し︑ 次に 書 き下 しと その 註記
︵通 し番 号︶ を挙 げた
︒ 一︑ 翻刻 にあ たっ ては
︑底 本の 字体 を残 した
︒書 き下 しに 際し て︑ 通 行の 字体 に改 めた
︒
一︑ 翻刻 部︑
︻
︼の 内︑ 丁数 とオ
︵ウ
︶を 示す 場合 は︑ 底本 の丁 数 とそ の表
︵裏
︶を 指し
︑漢 数字 と上
︵下
︶を 示す 場合 は 鎌倉 旧 仏教 翻 刻部 の頁 とそ の上
︵下
︶を 指す
︒ 一︑
︿
﹀は 原割 り注
︒ 一︑ 訓読 文に おい て︑ 返点
・送 り仮 名は
︑原 則底 本に 従っ たが
︑送 り 仮名 は適 宜補 った
︒ 一︑ 訓読 文に おい て︑ 典籍 引用 部は 改行 して 二文 字下 げた
︒ま た引 用 末の ~ 云々
︵云 云︶ は
︑
~︑ と云 々︵ 云云
︶︒ と した
︒ 一︑ 訓読 文に おい て︑ 明恵 の設 問と その 答え
・他 は︑ 適宜 改行 した
︒ 一︑ 註記 にお ける 引用 出典 の略 称は 以下 の通 りで ある
︒ 昭 法全 ︵ 昭 和新 修法 然上 人全 集
︶ 浄 全
︵ 浄土 宗全 書
︶ 大 正蔵 ︵ 大 正新 脩大 蔵経 ︶ 望 仏
︵ 望月 佛教 大辞 典 増訂 版︶ 中 仏
︵中 村元 著 広説 佛教 語大 辞典 ︶ 明恵 撰 摧邪 輪 巻中 訓・ 註 試稿
︵六
︶︵ 米澤 実江 子︶
九九
織 田仏 ︵ 織田 得能 著 織田 佛教 大辞 典
︶ 大 漢和 ︵ 諸橋 轍次 著 大漢 和辞 典
︶ 日 国
︵ 日本 国語 大辞 典 第二 版︶ 漢 和大 辞典 ︵ 藤堂 明保 編 学研 漢和 大辞 典
︶
︹付 記︺ 当研 究班 研究 課題 の底 本と して
︑佛 教大 学附 属図 書館 所蔵 本を 使用 させ て頂 きま した
︒佛 教大 学附 属図 書館 のご 厚情 に感 謝申 し上 げま す︒
︽翻 刻︾
︻三 三丁 表九 行︼
︻三 五四 頁上
︼ 問曰
︒依ニ 壱善 導ノ 意ニ 一
︑以テ 壱十 三定 觀ヲ 一爲ス 定善ト 一
︒是 即チ 可シ 飲為ス 壱杙 門ト 一
︒以テ 稱ハ
名ノ 行ヲ 一攝ス 散善ノ 中ニ 一
︒何ソ 云フ 飲爲ト 壱杙 -門ノ 行ト 一乎ヤ
︒︻ 三三 丁ウ
︼欝
︒如シ 壱前ニ 會 -釋ス
ルカ
一
︒下 輩ノ 臨 -終︑ 不ス 飲可ラ 飲發ス 壱根 本定 心ヲ 一
︒唯 假テ 称名ノ 功ヲ 一得 壱滅 罪徃 生ヲ 一
︒以テ 飲此ヲ 攝ス 散ル
-善ニ 一也
︒
︽訓 問 ︾ ひて 曰は く︒ 善導 の意 によ るに
︑十 三定 観を 以て 定善 とす()1
︒是 れ 即ち 禅門 とす べし
︒称 名の 行を 以て は散 善の 中に 摂す
︒何 ぞ 禅門 の 行と す と云 ふや
︒ 答ふ
︒前 に会 釈す るが ごと し︒ 下輩 の臨 終︑ 根本 定心 を発 すべ から ず︒ 唯だ 称名 の功 のみ を仮 りて 滅罪 往生 を得
︒こ れを 以て 散善 に摂 する なり
︒
註 ( ) 善導 観 経疏 ︑ 大 正蔵 三 七︑ 二七 七頁 下︒
︽翻 刻︾ 此ノ 人ハ 兼テ 聞ク 壱大 乘十 二部 經ノ 首題ノ 名字ヲモ 一
︒如シ 鰯觀 經ノ 下品 上生存 ニ 茨カ
︒善 導於テハ 此ニ 一不ス 飲設ケ 壱專 修ノ 要行ヲ 一
︒當ニ
シ飲知
︒止メテ 餘行ヲ 一稱 -名ヲ 爲スル 飲先ト 者ハ
︑約乄 壱一 期久 習ノ 人ニ 一
︑暫
乄
示ス 壱如 -法 念佛ノ 行 -儀ヲ 一也
︒設ヒ 雖トモ 飲不ト 飲發セ 壱三 昧ヲ 一
︑無 間相 續シテ 必ス 爲メ 逸扎 溢カ
成壱 -就セ 念心ヲ 一也
︒
︽訓 こ ︾ の人 は︑ 兼ね て大 乗十 二部 経の 首題 の名 字を も聞 く︒ 観 経 の 下品 上生 に説 くが ごと し()2
︒善 導︑ ここ にお いて は︑ 專修 の要 行を 設け ず︒ 当に 知る べし
︒余 行を 止め て称 名を 先と する は︑ 一期 久習 の人 に 約し て︑ 惣じ て 如法 念仏 の行 儀 を示 すな り︒ 設ひ 三昧 を発 せず と 雖も
︑無 間相 続し て︑ 必ず 念心 を成 就せ しめ んが 為な り︒ 註
( ) 観 無量 寿経 ︑ 大 正蔵 十 二︑ 三四 五頁 下︒
︽翻 刻︾ 如シ 鰯觀農
踵 ノ
第ノ
三ニ 示シ 地テ
觀ノ 方法ヲ 一云カ 茨
︒即チ 向莠達 テ 一ニ
面ヲ 向テ 西方ニ 一正ク 坐シ 跏趺シ 一テラ
同セヨ 壱 前ノ 法ニ 一
︒服 住ニメ
飲心ヲ 已テ
︑徐 徐ト 轉乄乄
︻三 五四 頁下
︼心ヲ 一想ヘ 壱彼ノ 寳地 雜色 分明ナル 一ヲ
︒初ニ
佛教 大学 法然 仏教 学研 究セ ンタ ー紀 要 第六 号
一〇
〇
想ニハ
︑不レ 飲得 溢乱 -想ス
ルヿ
多ヲ
境ヲ 一
︒即チ 難ラム 飲得 飲定ヲ
︒唯 觀セヨ 壱方 寸一 尺等ヲ 一
︒或ハ 一日 二 日三 日︑ 或ハ 四五 六七 日︑ 或ハ 一月 一年 二三 年等
︑無ク 飲問コ 壱ト
日夜ヲ 一
︑行 住坐卯
ニ
︻三 四丁 オ︼ 身口 意業 常ニ 與ト 定一 合セ
︒ヨ
唯萬 事倶ニ 捨テ 由ヽヨシ
如ナ 壱ラ
失 -音(ママ 聾)
音(ママ 癡)
人ノ 一者ハ
︑此ノ 定必ス 即チ 易カラ 飲ム
得︒ 若シ 不ス 飲ハ
如ナラ 飲是ノ
︑三 業隨テ 飲縁ニ 轉乄 定想 逐テ 波ヲ 一飛
︒縱ヒ 盡スト 壱モ
千年ノ 壽ヲ 一
︑法 -眼 未タ
シ壱曽テ 開ケ 一︿ 云云
﹀︒ 示スヿ 壱別 -定ノ 方法ヲ 一如シ 飲此ノ
︒
︽訓 ︾ 観経 の疏 の 第三 に 地観 の 方法 を示 して 云ふ がご とし
︒ 即ち 静処 に向 ひて
︑面 を西 方に 向け て︑ 正し く坐 し跏 趺し て︑ 一もは ら前 の法 に同 ぜよ
︒既 に心 を住とど め已 りて
︑徐 徐と して 心を 転じ て︑ 彼の 宝地 雑色 分明 なる を想 へ︒ 初め に想 ふに は︑ 多境 を乱 想す る こと を得 ざれ
︒即 ち定 を得 難か らん
︒唯 だ方 寸一 尺等 を観 ぜよ
︒ 或い は一 日二 日三 日︑ 或い は四 五六 七日
︑或 いは 一月 一年
︑二 三 年等
︑日 夜を 問ふ こと 無く
︑行 住坐 臥に
︑身 口意 業︑ 常に 定と 合 せよ
︒唯 だ万 事倶 に捨 てて
︑由 し︑ 失音(ママ
・)
聾音(ママ
・)
癡人 のご とく な らば
︑こ の定
︑必 ず即 ち得 易か らん
︒も し︑ 是く のご とく なら ず んば
︑三 業︑ 縁に 随ひ て転 じて
︑定 想︑ 波を 逐おひ て飛 ぶ︒ 縦ひ 千年 の寿 を尽 すと も︑ 法眼
︑未 だ曽 て開 けじ()3
︑と
︿云 云﹀
︒ 別定 の方 法を 示す こと かく のご とし
︒ 註
( ) 善導 観 経疏 ︑ 大 正蔵 三 七︑ 二六 六頁 中︒
︽翻 刻︾ 稱名ハ 是レ 念佛 三昧暫 ノ
方便 也︒ 准乄 修 -定ノ 方法ニ 一示ス 称名ノ 軌儀ヲ 一
︒其ノ 本意ハ
︑專ラ 在リ 逸 于扎
ルニ
溢堅 壱 -住セ 心念ヲ 一
︒設埋 ヒ
トモ
逸不ト 飲迄ハ 溢發ルニ 壱三 昧ヲ 一
︑必ス 望ム 一
︵マ マ︶
專注 一境ノ 心ヲ 一也
︒凡ソ 不ス 飲限ラ 壱善 導ニ 一
︑諸ノ 示ス
ニハ
壱杙 門ノ 軌則ヲ 一
︑必扎 ス 溢ム
︵マ マ︶
止メ 壱餘 縁ヲ 一住セ 芋一 境ニ 茨
︒
︽訓 称 ︾ 名は
︑是 れ 念仏 三昧 の惣 方便 な り︒ 修定 の方 法に 准じ て︑ 称 名の 軌儀 を示 す︒ 其の 本意 は︑ 專もは ら心 念を 堅住 せし むる に在 り︒ 設ひ 三昧 を発 する に迄 ばず と雖 も︑ 必ず 専注 一境 の心 を望 むな り︒ 凡そ 善導 に限 らず
︑も ろも ろの 禅門 の軌 則を 示す には
︑必 ず余 縁を 止め
︑一 境に 住せ しむ
︒
︽翻 刻︾ 如シ 鰯天 台止 觀ノ 第四ニ 釋スト 壱乄
修杙 五ノ
縁ヲ 一
︑解ス 壱ル
第四ノ 息諸 縁務ヲ 一中ニ 云カ 茨
︒縁 務ニ 有四
︑ 一生 活︑ 二人 事︑ 三妓 能︑ 四者 學問
︿乃 至﹀ 四學 問ト 者ハ
︑讀 壱誦頴 シ 論ヲ 一
︑ 問答 勝茶
スル
等是 也︒ 領 -持記 -憶乄 心勞ツカレ 志シ 倦ム
︒言 -論 徃 -複乄 水濁リ 珠昏シ
︒何ノ 暇アテ
カ
更ニ 得ム 溢︻ 三四 丁ウ
︼修ス
ルヿ
壱ヲ
止觀ヲ 一耶ヤ
︒此ノ 事尚シ 捨ツ
︒况ヤ 前ノ 三務ヲ
︿ヤ
云云
﹀︒
︽訓 天 ︾ 台 止観 の 第四 に︑ 修 禅の 五縁 を釈 す とし て︑ 第四 の 息 諸縁 務 を解 する 中に 云ふ がご とし
︒ 縁務 に四 有り
︒一 は生 活・ 二は 人事
・三 は技 能・ 四は 学問
︒︿ 乃 至﹀ 四の 学問 とは
︑経 論を 読誦 し︑ 問答 勝負 する 等︑ 是れ なり
︒ 領持 記憶 して
︑心 労つか れ︑ 志し 倦む
︒言 論往 復し て水 濁り
︑珠 昏し
︒ 明恵 撰 摧邪 輪 巻中 訓・ 註 試稿
︵六
︶︵ 米澤 実江 子︶
一〇 一
何の 暇あ りて か︑ 更に 止観 を修 する こと を得 んや
︒こ の事 尚し 捨 つ︒ 況や 前の 三務 をや()4
︑と
︿云 云﹀
︒ 註
( ) 智顗 摩 訶止 観 第 四
︑ 大正 蔵 四六
︑四 二頁 下~ 四三 頁上
︒
︽翻 刻︾ 如一
︵マ マ︶
求那 跋摩ノ 遺文ニ 云カ 一
︒放 -捨シテ 餘ノ 聞思ヲ 一
︑依 -止ス 林樹 間ニ
︒是 夜︑ 專ラ 精 -進乄
︑正 觀常ニ 不飲 忘︑ 境界 恒ニ 在リ 飲前ニ
︒猶シ 如シ 飲對カ 壱明 鏡ニ 一
︒如ク 彼ノ 一我 亦然
︒由テ 飲是ニ 心寂莠
ナリ
︿云 云﹀
︒如ク 飲此ノ 非ス 飲一ニ
︒示スニ 修杙 ハ
軌ノ
則ヲ 一
︑扎 鰯ム
止メ 壱餘 縁ヲ 一攝セ 芋心ヲ 於一 境ニ 茨
︒聞 思學 問等 亦在リ 所 -捨ノ 中ニ 一
︒善 導ノ 解釋
︑以 准乄 飲此ニ 可レ 飲知
︒
︽訓 求 ︾ 那跋 摩の 遺 文 に云 ふが ごと し︒ 余の 聞思 を放 捨し て林 樹間 に依 止す
︒是 の夜
︑專 ら精 進し て︑ 正 観常 に忘 れず
︑境 界恒 に前 に在 り︒ 猶し 明鏡 に対 する がご とし
︒ かの ごと く︑ 我れ もま たし かり
︒是 れに より て︑ 心寂 静な り()5
︑と
︿云 云﹀
︒ かく のご とく 一に 非ず
︒ 修禅 の軌 則 を示 すに は︑ 余縁 を止 め︑ 心を 一境 に摂 せし む︒ 聞思 学問 等も また 所捨 の中 に在 り︒ 善導 の解 釈︑ 以て これ に准 じて 知る べし
︒
註 ( ) 梁 皎編 高 僧伝 ︑ 大 正蔵 五
〇︑ 三四 一頁 下︒
︽翻 刻︾ 若シ 如ク
ナラ
善ハ
導ノ 解釋ノ 一
︑以テ 口称 三昧ヲ 一爲セム 飲行ト 之人ハ
︑必ス 以テ 壱堅 固寂莠 心ノヲ
一可シ 飲爲ス 飲本ト
︒其莠 ノ 心ノ 法ハ
︑先ツ 須ク
シ溢離ル 壱不 善境 界ヲ 一
︒次ニ 可シ 飲止ム 壱生 活乃 至學 文等ノ 縁務ヲ 一
︒ 若シ 止壱 息シ 縁務ヲ 一得テ 一心 不乱ヲ 一口 称ト 與心 念一 和合シ
ヌレ
︑ハ
徃 -生浄 土ノ 行︑ 得ウ 壱决 定ヿヲ 一
︒ 以テ 壱此ノ 一心 念佛ヲ 一善 導爲ス 决定 往生ノ 業ト 一
︒
︽訓 も ︾ し︑ 善導 の解 釈の ごと くな らば
︑ 口称 三昧 を以 て行 とせ んの 人 は︑ 必ず 堅固 寂静 の心 を以 て本 とす べし
︒そ の 静心 の法 は
︑先 づ 須ら く 不善 境界 を 離る べし
︒次 に 生活 乃 至 学文 等 の縁 務 を止 むべ し︒ もし
︑縁 務を 止息 し一 心不 乱を 得て
︑口 称と 心念 と和 合し ぬれ ば︑ 往生 浄土 の行
︑决 定す るこ とを 得︒ この 一 心念 仏 を以 て︑ 善導
︑ 决 定往 生の 業 とす
︒
︽翻 刻︾ 若シ 如ナラ 壱善 導ノ 解釋ノ 一︻ 三五 五頁 上︼ 者ハ
︑徃 生速 疾ノ 行︑ 良ニ 称︻ 三五 丁オ
︼名ノ 一行
︑爲ス 溢可シ 壱ト
足ヌ 一
︒例セ 如ハキ
鰯彼ノ 證真ノ 之念 ヲ 名テ 陀羅 尼門ト 一
︑即 惣芋 -持ス
ルカ
無量ノ 功 德ヲ 茨也
︒此 亦如シ 是ノ
︒雖モ 飲未
スト
證セ 真ヲ
︑称 名ノ 位ニ
︑必ス 或ハ 有リ 浄觀
︑或ハ 有リ 浄念
︒依カ
佛教 大学 法然 仏教 学研 究セ ンタ ー紀 要 第六 号
一〇 二