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全体の相談内容の傾向

(1) 各相談類型の合計数が全体に占める割合

ここでは,本無料法律相談にはどのような内容の相談がどの程度の割合で 寄せられているのかを分析するため,本無料法律相談に寄せられた相談を2 3の相談類型に分類し,分類した相談の数を相談類型ごとにカウントした上 で,これらが全体に占める割合を算出した。

相談件数は相談者1名又は1組につき1件とカウントしているが,1件の 相談を複数の相談類型に分類する場合がある(最大3類型)。したがって,

各相談類型の数を合計した数は,相談件数を超過する。以下には,

総相談件数

各相談類型の合計数(ただし,〔㉓震災関連以外〕の数及び欠損値を 除いたもの)

をそれぞれ母数として算出した,各相談類型の数が全体に占める割合を示す。

本無料法律相談に寄せられた相談の全体においては,建物賃貸借 に関する相談が最も多く,これに次いで工作物責任・相隣関係,

住宅ローン等及び公的支援・行政認定等に関する相談が多く寄せ られている。これら4類型の相談が突出して多い。これらのほか には不動産所有権,商事・会社関係及び遺言・相続に関する相談 が多い。

相談内容の推移をみると,建物賃貸借,工作物責任・相隣関係,

住宅ローン等及び公的支援・行政認定等に関する相談が常に多く の割合を占めているが,建物賃貸借及び工作物責任・相隣関係に 分類した相談の割合は減少傾向にある。これに対し,不動産所有 権及び商事・会社関係に関する相談は,初期は割合が小さいが,

その後に割合を増して多くの割合を占めるに至っている。

相談件数のピークはいずれの相談類型でも2016年5月だが,

その後の件数の減少率は,工作物責任・相隣関係及び建物賃貸借 に関する相談において著しく,不動産所有権及び公的支援・行政 認定等に関する相談では緩やかであり,住宅ローン等及び商事・

会社関係に関する相談では極めて緩やかである。

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ア 総相談件数ベースの分析(

n = 12,284

総相談件数を母数として各相談類型が全体に占める割合を算出し,これ をグラフ化したものが,次の図表である。熊本地震に関連する相談のみに ついて示すべく,〔㉓震災関連以外〕の割合は図表に記載していない。

イ 相談類型の合計数ベースの分析(

n = 11,311

各相談類型の合計数(ただし,〔㉓震災関連以外〕の数及び欠損値を除い たもの)を母数として,各相談類型が全体に占める割合を算出し,これを グラフ化したものが,次の図表である。

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総相談件数ベースの分析,各相談類型の合計数ベースの分析,いずれの分 析においても,〔⑤不動産賃貸借(借家)〕に関する相談が最も多くの割合を 占めている。次いで,〔⑥工作物責任・相隣関係〕,〔⑨住宅・車等のローン〕

及び〔⑫公的支援・行政認定等〕に関する相談が多く寄せられており,これ ら4つの相談類型の相談が突出して多い。これらに,〔①不動産所有権〕,〔⑳ 商事・会社関係〕及び〔⑯遺言・相続〕に関する相談が続く。

全体に占める割合が大きい順に10の相談類型を抽出して,上位から順に 並べたものが,次の図表である。

〔⑤不動産賃貸借(借家)〕及び〔⑥工作物責任・相隣関係〕に関する相 談が特に多いということは,後記(2)において概観するこれらの相談類型に分 類した相談の内容にも照らしてみると,熊本地震により毀損されながらも滅 失まではせずに残っている建物が多いという被災地の実態を反映したもの と考えられる。この点は,例えば津波により多くの建物が滅失した被災地と は異なる,熊本地震の特徴ということができる。

38 (2) 各相談類型に分類した相談の内容の概要

ここでは,本無料法律相談に寄せられた法律相談のうち,全体に占める割 合が大きい前記10の相談類型のうち〔⑫公的支援・行政認定等〕を除いた 9の相談類型について,それぞれによくみられる相談内容を,全体に占める 割合が大きい順(次のアからサの順)に概観する。〔⑫公的支援・行政認定 等〕については,その内容が多岐にわたるため,別に項を設けて概観する(後 記(4))。なお,相談類型の内部において小類型への分類があるものについて のみ,母数(

n

)を付記している。

ア ⑤ 不動産賃貸借(借家)

イ ⑥ 工作物責任・相隣関係 ウ ⑨ 住宅・車等のローン エ ① 不動産所有権

オ ⑳ 商事・会社関係 カ ⑯ 遺言・相続

キ ⑩ その他の借入金返済 ク ⑪ 保険

ケ ⑮ 離婚・親族 コ ⑬ 税金

サ ⑱ 労働問題

ア ⑤ 不動産賃貸借(借家)

賃貸借契約の目的物である建物について,

建物が全壊した場合の賃料や敷金,立退料の取扱い

建物の一部が毀損した場合における,賃借人が居住できない期間の 賃料の取扱い(支払義務の有無や減額の可否),修理義務の所在,

及び,修理義務の不履行と賃料支払義務との関係(例えば,借家の 一部が毀損したが,居住できない期間も賃料を支払うのか,借家の 修理は誰が行うのか,また,賃貸人が修理をしないがそれでも賃料 を支払うのか)

賃貸人と賃借人との間で建物の毀損状況の認識に齟齬があり,賃借 人は居住可能と考えているが賃貸人から取り壊すとして明渡しを 求められている場合や,逆に賃貸人として取り壊すために賃借人に 明渡しを求めたい場合の対応や手続

といった問題に関する相談が多くみられる。賃貸人・賃借人のいずれから も相談が寄せられているが,割合としては賃借人からの相談が多い。

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毀損されながらも滅失せずに残っている建物が多く,かつ,建物の毀損 被害の程度や内容が千差万別であるために,賃貸借契約の当事者が抱える 多種多様な問題が相談として寄せられたものと考えられる。

イ ⑥ 工作物責任・相隣関係 (

n = 1,916

〔妨害の排除・予防〕に分類した相談には,

隣家が毀損され相談者の居住建物に倒れかかっている場合の対応

隣家が毀損されてその塀や石垣が相談者の敷地内に侵入している 場合の,その撤去に関する対応

逆に,

相談者の居住建物が隣家に倒れかかっている場合の対応

相談者の居住建物が毀損されてその塀や石垣が隣家の敷地内に侵 入している場合の,その撤去に関する対応

といった妨害の排除や予防に関する相談が,いずれも多くみられる。

〔損害賠償〕に分類した相談には,

居住する建物の屋根瓦の落下や塀の倒壊等を原因として隣家の建 物の壁や自動車,車庫,物置又は設備(室外機等)を毀損した場合 の損害賠償に関する相談

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逆に,

隣家の屋根瓦が落下し,又は塀が倒壊するなどして居住する建物の 壁や自動車,車庫,物置又は設備(室外機等)が毀損された場合の 損害賠償に関する相談

また,

集合住宅において上階に漏水が生じ,これにより被害を受けた場合 の損害賠償に関する相談

逆に,

集合住宅において漏水により下階に被害を与えた場合の損害賠償 に関する相談

がいずれも多くみられる。

〔その他〕に分類した相談には,

隣地との間にある共有又は所有者不明の擁壁や塀が熊本地震によ り毀損された場合の取扱いや修理費用の負担者に関する相談

隣家の解体工事や修理工事に関する相談,自宅の修理等に伴う隣地 への立入りや通行に関する相談

が多くみられる。〔その他〕に分類した相談のうち46パーセントが隣地 との間にある共有又は所有者不明の擁壁や塀に関する相談である。

毀損されながらも滅失せずに残っている建物が多く,かつ,建物の毀損 被害の程度や内容が千差万別であることから,各人が置かれた状況も多種 多様であり,そのために,以上のように様々な相談が寄せられたものと考 えられる。

また,〔損害賠償〕に関する相談が約5割を占めていることから,現に 被害が生じた段階で相談に及んだケースが妨害の排除や予防に関して相 談するケースよりも多いことが確認された。

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熊本県弁護士会が運営する震災ADRについて

1 ADR(Alternative Dispute Resolution)とは,訴訟手続によらずに民事 上の紛争の解決をしようとする紛争の当事者のため,公正な第三者が関与 して,その解決を図る手続(裁判外紛争解決手続)である。

全国の多くの弁護士会も,常設する紛争解決センターにおいてADR

(以下「弁護士会ADR」という。)を運営している。弁護士会ADRは,

民事上の法的紛争に関し,弁護士が和解のあっせん人となって,公正中立 の立場で当事者双方の言い分を十分に聞き,争いがある点等を整理した上 で,場合によっては当事者双方に有益と思われるあっせん案を提示するな どして,当事者間での自主的な解決すなわち和解による円満かつ早期の解 決を援助,促進する手続である。

弁護士会ADRは,当事者間に話合いの余地があって,当事者双方が弁 護士という法律の専門家から事情に応じた法的助言を得ることで互いに 歩み寄る可能性があるような事案に有効であるが,この有効性は,災害に 関連する法的紛争についても妥当する。例えば,本無料法律相談に相談が 多く寄せられた〔⑤不動産賃貸借(借家)〕や〔⑥工作物責任・相隣関係〕

に関する紛争は,いわば身近なトラブルである上,当事者双方が被災して いる場合が多いであろうことも踏まえると,話合いによる円満かつ早期の 解決が適切であるケースが多く,したがって弁護士会ADRが有効に機能 するものと考えられる。

2 熊本県弁護士会は,熊本地震に関連して生じた法的紛争について,これ を話合いにより円満かつ早期に解決することを援助,促進するため,通常 の弁護士会ADRの特別手続に当たる震災ADRを2016年5月26 日に立ち上げた8

熊本県弁護士会が通常の弁護士会ADRとは別に震災ADRを立ち上 げた趣旨は,熊本地震に関連して生じた法的紛争について,通常(平時)

の弁護士会ADRよりも利用者の経済的負担及び手続的負担を軽減する ことにある。

経済的負担に関しては,まず申立手数料につき,通常の弁護士会ADR では申立人が10,000円(消費税別)を負担するところ,震災ADR ではこれが一律に無料とされている。また,ADRにより紛争が解決した

8 詳細は,熊本県弁護士会「熊本地震相談【震災ADR】」< http://www.kumaben.or.jp/

Soudan/jishin/adr/ > 参照。

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