第 3 章 写真撮影シミュレータの構築
2) 光源強度の推定
光源強度は、先述の光源位置情報と、自作の受光装置 ( 以下 Opticube と呼ぶ ) による 光環境情報の組み合わせによって算出した。Opticube は図 3.3 に示すように下面以外の 5 面にそれぞれ一つずつ受光器が取り付けられたボックス状のデバイスであり、それぞれ の 受光器は受け取った光強度を電圧へと変換する。以下に openGL の光源強度情報へと 変換 する手順を示す。
図 3.3.自作の受光装置 ”Opticube” と5つの受光器
・mV ⇔ Lx 特性曲線の算出
まずボックス各表面上の照度 Lx と、受光器が生み出す電圧 mV の関係性を算出した。
図 3.4 左のように照度計を計測面に設置した状態で照明条件を切り替えながら、計測され る電圧を記録した。図 3.4 右は表面照度 Lx と各受光器の電圧 mV の関係性のグラフである。
図 3.4.各表面Lxと受光器の電圧の関係性の算出
・Lx ⇔ GL_Light 特性曲線の算出
次に仮想空間と現実のカメラ特性を一致させるため、複数の照度環境化でグレースケー ルターゲットを撮影し、同反射特性を持つ仮想グレースケールターゲットとの色情報誤 差を最少とする仮想光源値 GL_light=R=G=B を求めた。照度の計測はターゲット上で行 い、仮想光源も仮想ターゲット上に存在するものとして得られた関係性のグラフを図 3.5 に示す。なおこのとき現実のグレースケールターゲットの撮影には Logicool HD Webcam C615 を用いた。
図 3.5.各照明状況におけるターゲットの撮影と、
仮想空間内でターゲットの色再現が可能な仮想光源値の算出
図 3.6.2100lx 環境下での現実と仮想グレースケールターゲット 左:現実のターゲット 右:仮想ターゲット
色誤差を示す。
通常の照明環境である 2100lx では全体の色平均誤差は 6.27% となっており、図 3.6 でも 見られるように違和感のない色再現が行われている。しかしながら照明器具を対象に極端 に近づけた場合など、7200lx や 4000lx といった非常に照度の高い状況下では誤差がそ れぞれ 18.10%、11.36% となっており誤差が増加する結果となっている。58lx ~ 7200lx までの誤差を平均すると 6.57% という結果となった。
・mV ⇔ GL_Light 特性曲線の算出
図 3.4、図 3.5 のグラフを統合し、Opticube 各受光器から受け取られる mV 値と、面上 の 仮想光源値 GL_Light との関係性を算出した ( 図 3.7)。ここで得られる各面の仮想光源 値を GL_Lighti(i=1~5) とし、Opticube 位置で得られた光強度の実測値として使用する。
図 3.7.Opticube 各面から取得される mV と 面上の仮想光源値の関係性の算出
表 3.1.各照明状況下での現実と仮想グレースケールターゲットの色誤差
・光源強度 IA、ID の推定
最後に Opticube をスタジオ内固定位置 PO に設置し、光源との位置関係及び PO で取 得された光強度の実測値から、空間上の一点 PL に存在する点光源の強度を推定した。推 定は間接光成分 IA と直接光成分 ID に分けて行われ、IA は openGL の環境光へ、ID は拡散、
鏡面光へと適用した。図 3.8 左は、光源と Opticube の位置関係を図示したものである。
図 3.8.左:点光源と Opticube の位置関係図 右:光源位置の光強度 ID用いた面上の光強度
間接光成分 IA には Opticube 各面の中で直接光の影響を最も受けない面、すなわち PO から PL へのベクトル VOL と Opticube 各面の法線ベクトル Ni(i=1~5) のなす角θ i が最 大となる面の仮想光源値を採用した。
直接光成分 ID は、直接光が影響する範囲内 ( θ i < 90°) において、光源位置の強度値 ID を変数とした最小二乗法によって求めた。Opticube 面上の直接光強度は、ID を用いて 図 8 右のように表される。また面上の直接光強度の実測値は、GL_Lighti と間接光成分 IA との差であることから、誤差 J は以下の式で表される。
この二乗和の微分により ID は、
k_c は減衰定数、k_l は一次減衰率、k_q は二次減衰率であり、k_c、k_l、k_q は適宜パラ メー タとして入力する。
3.2.2. 仮想被写体のインポート
仮想空間内の被写体は、3 次元ディジタイザを用いて現実の物体から取得された形状 デー タや、MAYA などの 3DCG モデリングソフトウェアにより制作したものを用い、自シス テム内にインポートした。この時、被写体表面の光反射特性は openGL で表現可能な範 囲とし、鏡のような全反射物体や液体等の屈折光物体は対象外とした。
3.2.3. カメラの仮想再現 1) 位置、撮影方向
位置と撮影方向はカメラに付属した L 字の 3 つのマーカ位置情報から再現を行った ( 図 3.9)。マーカ位置の検出は 3-1-1. と同じ方法を用い、それぞれの位置情報から「視点位置」
「視線方向」「頭上方向」の 3 つのベクトルを算出し、仮想空間内カメラの視点、視線方向、
頭上方向へと適用した。
図 3.9.カメラデバイスの L 字マーカー