前章までに明らかとなった中野区の商店街の現状と課題を踏まえ、今後の中野区の商店 街の活性化の方策を考える上で参考になると思われる商店街の取り組みを整理し、検証す る。先進的商店街を紹介した著書や論文等(参考 表 4-1)に基づき、実地踏査を行った上 で、都市部で特長的な取り組みを行っており、
かつ前章で分析した中野区の 5 つの商店街に 歴史、空間的構造、用途地域、人口構成、商店 街の性格等が比較的近いと思われる商店街を 抽出した。したがって、広く全国の商店街を対 象としているが、結果として都内の商店街を多 く抽出している。各商店街の特長的な取り組み を紹介するととともに、各商店街に共通する点 を導き出し、中野区の商店街振興のヒントを探 りたい。
本章で取り上げる先進的商店街は表4-2 のとおりである。前章で分析した中野区の 5 つ の商店街別に分類している。分類すべき要素が数多くあるため、最も把握しやすい立地(乗 降客数の多い駅前もしくは市区の中心地、駅前、門前町、駅から離れており幹線通り裏手)、
販売店(専門店、生活雑貨店)、顧客層(若者も多い、主婦・高齢者が中心)によって分類 し、広域性や街路の幅員や態様等は参考に留めた(したがって、同じ類型内であっても広 域性や街頭の態様等が異なる商店街がある)。
表4-2 先進的商店街の分類
類型1 類型2 類型3 類型4 類型5
中野区におけ
る類似商店街中野ブロードウェイ 中野サンモール 野方 薬師あいロード 川島 立地 乗降客数の多い駅前もし
くは市の中心地
乗降客数の多い駅前もし
くは市の中心地 駅前・駅周辺 門前町 駅から距離有、幹線通り 裏手
販売品 専門店が多い 生活雑貨品が多い 生活雑貨品が多い 生活雑貨品が多い 生活雑貨品が多い 顧客層 主婦・中高年・若者 主婦・高齢者・若者 主婦・高齢者 主婦・高齢者 主婦・高齢者
高松丸亀町(高松市) 青森市新町(青森市) 武蔵小山(品川区) 秩父みやのかわ(秩父市) 東和銀座(足立区)
麻布十番(港区) クレアモール(川越市) 戸越銀座(品川区) 大須(名古屋市) 谷中銀座(台東区)
元町(横浜市) オリオン通り(宇都宮市) 中延(品川区) 松陰神社通り(世田谷区) 鳩の街通り(墨田区)
巣鴨地蔵通り(豊島区) 洪福寺松原(横浜市) 砂町銀座(江東区)
烏山駅前(世田谷区) 早稲田大学周辺(新宿区)
桜新町(世田谷区) ユニオン通り(宇都宮市)
ハッピーロード大山(板橋区)
神楽坂通り(新宿区)
自由が丘(目黒区)
先進的商店街
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第4章
4−1 類型1の商店街
中野区ブロードウェイ商店街に比較的類似していると思われる 3 つの商店街の概況と取 り組みを検証し、特徴的な点を抽出する。
① 高松丸亀商店街
商店街振興組合名称 高松丸亀町商店街振興組合 商店街振興組合事務所所在地 香川県高松市丸亀町13番地2 法人化年等 1963年、組織形態は持ち株会社
組合員数 111名
商店街振興組合専従職員 16名
主な外的要因 郊外部に大型ショッピングセンターが開設 商店街のタイプ(広域性) 広域型
商店街のタイプ(立地性) 中心市街地、住宅地背景型 近隣の商店街の有無 有
店舗数 157店
業種構成(多い順) 物販が主でサービス業、飲食店が順に続く ブランドショップ有
核施設 壱番館東館・西館、丸亀ドーム(オープンスペース)
空き店舗 少ない
街路の幅員・延長 幅員11m、延長約500m アーケードの有無 有
空間的特徴 ベンチ、緑化、街路に出店、商店街内にマンション建設、
駐車場が多い、全自動地下駐輪場がある 主たる顧客層 若年層から50代くらいまで幅広い
特徴的な取り組み まちづくり会社による施設の運営管理(エリアマネジメ ント方式の導入)
広場や壱番館、駐車場にトイレがあるほか、個店におい ても「トイレをお使いください」の表示が出ているとこ ろがある
丸亀町出光カードまいどプラス(ICカード。商店街、給 油のいずれでもポイント付与)、地域通貨「KAME」が ある
特徴的な点は次のとおりである。なお、問題としては、高松丸亀商店街が発展に伴い、
近接する南側の商店街(常盤町商店街、田町商店街)の来街者数と売上数が減少している ことが挙げられる。
・商店街全体を一つのショッピングセンターと見立て、商店街の一体管理を実現してい る
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写真 4-1 全自動地下駐輪場の入口
(受渡し口)
写真 4-2 歩行者と自転車利用者の
分離。ベンチの設置や緑化も行われ ている
・理事長111のリーダーシップが強く、かつ商店街振興組合の組織力が強い
・まちづくり全般としては、コンパクトシティの形成を意識している
・補助金に依存しない事業運営を行っている
・組織力の強さを背景として再開発事業を行っており(再開発事業の着工に16年要して いる)、商店街をA〜Gの街区に区分し、順次整備を進めている。最大の特徴は、土地の 所有と利用を明確に分離した点である(参考 図4-1)112
図4-1 高松丸亀町商店街A街区再開発スキーム
一部テナントとして出店
西館 住宅 東館
(保留床) (定期借
地権付分 譲)
(権利床)
一括して賃貸
共同出資で設立
マネジメントを委託 地代を分配
95%出資 (行政5%出資)
地権者 連携
まちなか再生ポータルサイトのホームページより作成 高松丸亀町壱番街
高松丸亀町壱番街株式会社
高松丸亀町まちづくり株式会社
高松丸亀町商店街振興組合 取得
・まちづくり会社(商店街振興組合の子会社である第 三セクター)が駐車場の運営113をしており、その経営 状況は良好(駐車場収入で事業費の多くを賄ってい る)である
・駐車場内にトイレが設置されている、託児ルームが 設置された駐車場もある
・自転車利用者が多く、収容力のある全自動地下駐輪 場がある(写真4-1)
・街路の幅員が広いことから、安全性確保のため、歩 行者と自転車の区分けをしているところがある
(A街区)。点字ブロックも有(写真4-2)
・400戸のマンションを商店街内に建設している
(写真4-3)。これは、住民増=商店街の顧客増の考
えに基づき、まちづくりとして進めているものである
・花ポットの設置など緑化を推進している
111 他の仕事を持たず専任である。
112 経済産業省はこの方式を中心市街地活性化のモデルとして支援している。
113 市営駐車場もある。
157
第4章
写真 4-3 商店街内に建設されてい る大型マンション
・丸亀町出光カードまいどプラス(ICカード。商店街、給油のいずれでもポイント付与)、
地域通貨「KAME」がある
・物販が多く、全体の約7割を占める。「グッチ」な どのブランドショップもある
・ブランドショップ、チェーン店、地元店が混在して おり、幅広い世代を顧客として獲得している
・広域性が高い
・地元店でもオーダーメードシューズなどの専門店も 散見される
・20時前には多くが閉店している(喫茶店でも遅いと ころで21時まで営業)
・イベントが年中行われている
・商店街のホームページは操作性やデザイン性が高い
② 麻布十番商店街
商店街振興組合名称 麻布十番商店街振興組合 商店街振興組合事務所所在地 港区麻布十番二丁目3番10号 法人化年等 1963年
組合員数 約250名 商店街振興組合専従職員 2名 商店街のタイプ(広域性) 広域型
商店街のタイプ(立地性) 中心市街地、住宅地背景型 近隣の商店街の有無 有
店舗数 278店
業種構成(多い順) 物販が主でサービス業、飲食店が順に続く ブランドショップ有
核施設 無
空き店舗 少ない
街路の幅員・延長 幅員広い、延長約1,000m アーケードの有無 無
空間的特徴 カラー舗装した歩道、ベンチ、緑化、駐車場、中層ビル ディングが多い、坂がある
主たる顧客層 主婦、青年層、高齢者
特徴的な取り組み 麻布十番納涼まつりをはじめとしたイベント実施が盛 ん。若者の任意団体である青年会の提言等が活発 特徴的な点は次のとおりである。
・公共地下駐車場(350台収容)を有しているが、時間貸しは「空車」があり稼働率が高
158 くない
・麻布十番納涼まつりは30万人近い集客を得ている
・高級専門店と地域の生活雑貨店が共存している
・喫茶店が多い
・低価格の店、婦人衣料品店が少ない
・若者の任意団体である青年会は独立しており、提言やイベントの運営に積極的である
③ 元町商店街
商店街振興組合名称 協同組合元町SS(ショッピングストリート)会 商店街振興組合事務所所在地 横浜市中区元町一丁目14番
法人化年等 1950年 組合員数 約210名 商店街振興組合専従職員 5名
主な外的要因 みなとみらいの再開発など 商店街のタイプ(広域性) 広域型
商店街のタイプ(立地性) 駅前、住宅地背景型 近隣の商店街の有無 有
店舗数 247店
業種構成(多い順) 物販が主で、飲食店、サービス店が続く。ブランドショ ップ有。絵画店もある
核施設 無
空き店舗 無(テナントの順番待ちがある)
街路の幅員・延長 14m(うち歩道8m)、延長約600m アーケードの有無 無
空間的特徴 ベンチ、道路内コインパーク、石畳、電線を路地側に集 めている
主たる顧客層 若年層から60代まで 女性が多い 写真4-4 麻布の商店街でもみられる100円
ショップ
写真4-5 商店街の一角に設置されているベンチ