第 2 章 理論的背景
2.5 先行研究と本研究との差異
先行研究と本研究との差異について、競合的状況における企業の研究開発投 資の意思決定の観点から述べる。複数の企業が存在する競合的状況では、後発 企業効果という観点から必ずしも企業は投資を他社に先駆けて行うことが有利 であるとは限らない。2.1節で述べたように後発企業として活動する利点とし ては4つが挙げられ、ゲーム理論とリアルオプション分析を用いた先行研究で は、このうちフリーライドの効果と需要の変動として技術や市場の不確実性を 分析した先行研究がある。しかし、利潤を内生的に求めるモデルでは研究開発 投資は複数期(先行研究では2期または3期)のうち、1期目でのみ意思決定 が可能であり、2期目以降では意思決定はできない。また1期目には企業は利 潤を得られないモデルである。つまり研究開発投資の期間は利潤が生じないモ
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デルとなっている。これは利潤を内生的に求める場合に、研究開発の意思決定 と需要の変動を分けて考えることで、計算を簡潔にしているものと推察できる が、このモデルはスタートアップのような既存事業がなく、新規事業のみを検 討する場合は当てはまるが、1.1.1節で説明した市場を既に複占/寡占している 企業の研究開発投資としては必ずしも実企業の活動を反映できていない点に分 析の余地がある。また、利潤を外生的に与えるモデルでは研究開発投資を1期 に行うこともモデルに組み込んでいる研究例がある。つまり、研究開発投資の 期間にも利潤が生じる点を加味し分析がされている点が異なる。しかし、この モデルでは後発企業効果のうち需要の変動のみ考慮しており、その他の後発企 業の利点(フリーライドの効果など)を組み入れた研究例は管見の限り見当た らない。必ずしもリアルオプション分析が後発企業効果と密接に議論をされて いないからではないかと考えられる。
本研究では以上の点から、研究開発投資の期間にも利潤が生じる点を加味し た利潤を外生的に与えるモデルを採用し、後発企業効果のうち、フリーライド の効果を考慮し、後発企業効果が生じうる市場環境/経営環境の条件を明らかに することで、実社会で想定しうる企業の投資の意思決定に有益な新たな提言を 行うものであり、この点において学術的/実務的な意義があると考えている。先 行研究との差異を図10に示した。
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図10.本研究の位置づけ
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