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先行研究との比較

推定量とDPI推定量は,分布の非対称性の影響をほとんど受けていないことが分かる.

LSCV推定量の性能は不安定であるためにサンプルサイズnが小さいときはDPI推定量を用いるべきであ る.サンプルサイズnが十分に大きいとき,LSCV推定量とDPI推定量の性能の優位性は分布の形状の影響 を受けているので,どちらの推定量を採用するかは,分析者が2つの推定量を用いたKDEを構築したうえで 両者の結果を比較して判断すべきである.

5 Di Marzio 型局所多項式回帰 [Tsuruta and Sagae (2017d)]

5章では,Di Marzio et al. (2009)が与えたDi Marzio型LPRについて議論する.また,Tsuruta and Sagae (2017d)が明らかにしたDi Marzio型LPRの理論的性質やVMカーネルとWCカーネルを適用した 場合の理論的性質について述べる.

5.1 Di Marzio 型局所多項式回帰の定義とその理論的性質

ランダムな2変数標本(Y1,Θ1), . . . ,(Yn,Θn)について目的変数YiRと説明変数ΘiT= [−π, π)との 関係を推定する問題を考える.ただし,Yiは次の仮定を満たすとする.

Yi=m(Θi) +v(Θi)1/2εi, i= 1, . . . , n, (5.1) ここで,回帰関数mは周期性m(θ) =m(θ+ 2π)を持つ.(5.1)についてその他の仮定に関しては(1.23)と 同様であるとする.m(θ)の推定量は周期性を持つことが望ましいだろう.しかし,1.3節で定義した標準的な

LPRは,(1.22)や(1.23)を見ても分かるように,有限標本の下では周期性を持たない.

説明変数が角度変数Θi であるときは,周期性を持つ新しいノンパラメトリック回帰が必要となる.Di Marzio et al.(2009)は,周期性を満たすノンパラメトリック回帰としてsine型局所多項式回帰(S-LPR: sine local polynomial regression)を提案した.彼らは,θ= sin1(sin(θ))と考えればθ≃sin(θ)で近似できるこ とから,sine級数型のテイラー展開:

m(Θi) =m(θ) +

p j=1

m(j)(θ) sin(Θi−θ)j (5.2)

が成り立つと主張した.円周上の非負カーネルとsine級数型の多項式β0+∑p

j=1βsin(· −θ)p を用いて,

S-LPR ˆm(θ;p, κ)は,次の重み付二乗誤差:

n i=1

{Yi−β0−β1sin(Θi−θ)− · · · −βpsin(Θi−θ)p}2Kκi−θ) (5.3)

を最小にする( ˆβ0ˆ1, . . . ,βˆp)T の切片βˆ0で与えられる.したがって,m(x;ˆ p, κ)は ˆ

m(θ;p, κ) :=eT1(SθTWθSθ)1SθTWθY (5.4) となる.ただし,e1は第1要素は1でそれ以外は0となるような(p+ 1)×1ベクトル,Y = (Y1, . . . , Yn) は目的変数ベクトル:

Sθ:=



1 sin(Θ1−θ) · · · sinp1−θ) ... ... . .. ... 1 sin(Θn−θ) · · · sinpn−θ)



(p+ 1)デザイン行列,Wθ:= diag{Kκ1−θ), . . . , Kκn−θ)}n×n重み付き対角行列を表す.

S-LPRに定義2.1で与えたDi Marzio型カーネルを適用したものを本稿ではDi Marzio型LPR ˆm(x;p, κ) と呼ぶことにする.

例えば,p= 0のとき,(5.4)からm(θ; 0, κ)ˆ は ˆ

m(θ; 0, κ) =

i

Kκi−θ)Yi

/ ∑

i

Kκi−θ) (5.5)

となる.また,p= 1のとき,(5.4)からm(θ; 1, κ)ˆ は次式に等しい.

ˆ

m(θ; 1, κ) :=n1

i

{sˆ2(θ;κ)−ˆs1(θ;κ) sin(Θi−θ)}Kκi−θ)Yi

ˆ

s2(θ;κ)ˆs0(θ;κ)−ˆs1(θ;κ)2 , (5.6) ただし,sˆl(θ;κ) :=n1

isin(Θi−θ)lKκsin(Θi−θ)である.(5.5)と(5.6)からm(θ; 0, κ)ˆ とm(θ; 1, κ)ˆ は周期性を持つことが示される.同様に考えれば,p≥2のときもDi Marzio型LPRは周期性の性質を持つ ことは容易に分かる.

高次のDi Marzio型LPRの理論的性質を導出することは難しいので,5章ではp= 1のときの理論的性質

のみを議論することにする.

Θn :={Θ1, . . . ,Θn}とおく.また,条件付バイアスをBiasY[ ˆm(θ;κ)|Θn] =: EY[ ˆm(θ;κ)|Θn]−m(θ)と し,条件付分散をVarY[ ˆm(θ;κ)|Θn]とする.

Di Marzio et al. (2009)は次の定理として条件付バイアスと条件付分散を与えた.

定理5.1. 次の4つの仮定:

i) limn→∞n1R(Kκ) = 0.

ii) limn→∞γj(κ) = 1.

iii) 周辺密度f(θ)は連続微分可能である.ただし,任意のθについてf(θ)>0である.

iv) 導関数m′′(θ)と条件付分散v(θ)はそれぞれ連続である.

を満たすならば,そのとき,条件付バイアスは

BiasY[ ˆm(θ; 1, κ)|Θn]≃η2(Kκ)m′′(θ)

2! (5.7)

となり,条件付分散は

VarY[ ˆm(θ; 1, κ)|Θn]≃R(Kκ) v(θ)

nf(θ) (5.8)

となる.

2章で議論したのと同様な理由でη2(Kκ)とR(Kκ)に関してκとカーネルKを分離するのは難しいので,

一般的な条件付MSEの収束レートを求めるのは困難である.

定理5.1と中心局限定理からm(θ; 1, κ)ˆ の漸近正規性が成り立つことを示す.

定理5.2. 定理5.1のすべての仮定が成り立つと仮定する.そのとき,n→ ∞ならば,

n/R(Kκ)[ ˆm(θ; 1, κ)−EY[ ˆm(θ; 1, κ)|Θn]]−→d N(0, v(θ)/f(θ)), (5.9)

が成り立つ.

定理5.2の証明の詳細に関してはAppendix Kを参照すること.

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