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停止時刻に関して可測な確率変数

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4.3 模倣可能な確率変数

4.3.2 停止時刻に関して可測な確率変数

あるm∈Nに対してBm-可測であるような確率変数は明らかに模倣可能である.47一方,

どのようなmに対してもBm-可測とならないようなB-可測関数(無限精度関数と呼ぼう) でも,場合によっては実際的な計算の上で扱うことが可能である.次の例を見よ.

46無限個の変数を持つ関数を汎関数という.ここではW(x)が 無限個の値di(x),i=1,2, . . .の関数と見な せる,ということ.

47もちろん,mが天文学的に巨大だと現実のコンピュータでは扱うことができなくなる.ここでいう模倣 可能性は,あるチューリング機械で計算できる,という意味である.

10 (到達時刻) ルベーグ確率空間上で定義された確率変数

σ(x) := inf{n≥1|d1(x)+d2(x)+· · ·+dn(x)=5}, x∈T1,

は硬貨を投げ続けて,表の出た回数が5となる最初の時刻である(ただし,inf∅=∞と解 釈する). 明らかに σは非有界な無限精度関数である.しかし,表が出た回数が5になっ た時点でその後のdi(x)の値は不要だから直ちに計算を終えてσ(x)を算出することができ る.すなわち,確率1でσ(x)の計算は有限時間で終わる.

例10を含むような,モンテカルロ法で実際に扱い得る無限精度関数の一般的なクラス を考えよう.

定義20 関数τ:T1 →N∪ {∞}は

{τ≤m} := {x∈T1(x)m} ∈ Bm, ∀m∈N.

を満たすとき,{Bm}m-停止時刻(cf. [2])という.{Bm}m-停止時刻τに対して,Bの部分σ -加法族Bτ

Bτ := {A∈ B |A∩ {τ≤ m} ∈ Bm, ∀m∈N}

で定義する.Bτ-可測関数を以下簡単のためτ-可測な関数という.また,Lp(T1,Bτ,P)を単 にLp(Bτ)と書く.

補題13 関数 f :T1 →R∪ {±∞}がτ-可測な関数であるための必要十分条件は

f (x) = f bxcτ(x), x∈T1, (114) となることである.

証明. 必要性:もし f がτ-可測ならば,各m∈N,t∈Rに対して,{τ≤mかつ ft} ∈ Bm

である.このことからτ(x)mならば f (x) = f (bxcm)が分かる.従って f (x) =

X m=1

f (x)1()=m}(x)+ f (x)1()=∞}(x)

= X m=1

f (bxcm) 1()=m}(x)+ f (bxc) 1()=∞}(x)

= X m=1

f bxcτ(x)

1()=m}(x)+ f bxcτ(x)

1()=∞}(x)

= f bxcτ(x)

X

m=1

1()=m}(x)+ f bxcτ(x)

1()=∞}(x) = f bxcτ(x)

.

十分性:もし f が(114)を満たせば,各m∈N,t∈Rに対して {ft} ∩ {τ≤m} = {f b•cτ()

t} ∩ {τ≤ m} = {f (b•cm)≤ t} ∩ {τ≤m} ∈ Bm

だから,f はτ-可側である.

例10の確率変数σは{Bm}m-停止時刻であり,もちろん,σはσ-可測である.

定理21 τを確率1で有限な{Bm}m-停止時刻とするとき,任意のτ-可測な f はモンテカ ルロ法で扱うことができる.48

証明. 硬貨投げの確率過程 {di(x)}i=1d1(x),d2(x), . . . の順で供給されるとする.f

{Bm}m-停止時刻τに関して可測のとき,次のようなアルゴリズムを考える:

1. m=1とする.

2. t := Pm

i=12−idi(x) (= bxcm)とする.

3. もしτ(t)mならば,f (t)を出力し,終了する.

4. もしτ(t) >mならばm :=m+1として2. に戻る.

τが確率1で有限なので上のアルゴリズムは必ず有限時間内に終了し,そのときの出力は

f (x)である.

さて,モンテカルロ法ではランダム源をT1-値一様分布に従うi.i.d.確率変数列{Zl}l∈Nと して議論することが多い.その文脈で停止時間に関する可測性は次のような仮定として述 べることができる.

仮定1 W を計算するためには確率1で,有限個のZ1, . . . ,ZLしか必要でない,と仮定す る.ここで,Zl たちの個数Lは確率変数であるが,各l ∈Nに対して,Z1, . . . ,Zl が与え られたとき,次のZl+1Wを計算するために必要かどうかが,Zl0, l0l+1,に関して何 の知識がなくても,判断できなければならない.

仮定1が成り立たなければ,W を計算するためにZl たちを永遠に生成し続ける事態が生 じるから,この仮定は,確率変数をモンテカルロ法で扱うためには不可欠であることが分 かる.

実際には実数計算が有限精度,たとえば2K,で行われることを考慮に入れて,{Zl}l∈N

の代わりにDK-値一様分布に従うi.i.d. {Zl(K)}l∈Nを(T1,B,P)上で Zn(K) :=

XK i=1

2id(n1)K+i, n∈N, (115) すなわち

Z1(K) = 1

2d1+ 1

22d2+· · ·+ 1 2KdK Z2(K) = 1

2dK+1+ 1

22dK+2+· · ·+ 1 2Kd2K Z3(K) = 1

2d2K+1+ 1

22d2K+2+· · ·+ 1 2Kd3K ...

48詳しくは,硬貨投げの確率過程を入力とし f を計算するチューリング機械が存在する,ということ.

のように実現する.そして,W が仮定1を満たすとき

τ(x) := inf{lK|W(x)Z1(K)(x), . . . ,Zl(K)(x)から計算される} とおけば,τは{Bm}m-停止時刻であり,Wはτ-可測となる.49

11 Wが常に一定の個数のZl たちから計算される場合,すなわちLが定数の場合は,

W は有限精度であり明らかに仮定1を満たす.

次の例のように,停止時刻τは実際の数値計算においては,多くの場合,あからさまに 意識する必要がない.

12 (フォン・ノイマンの棄却法 [16]) [0,1)-値一様分布に従う独立な確率変数列{Zl}l=1 が与えられたとき,[a,b]上で有界可測なある確率密度関数p(x)の分布に従う確率変数W を生成したいとせよ.M> 0を pの上界の一つとする.(ξ, η)を[a,b]×[0,M]で一様に分 布する確率変数とするとき,

Pr(ξ ∈[x,x+dx)|p(ξ)≥ η) = p(x)dx, a.e.-x, であることに注意する.そこで,次のようなアルゴリズムを考える.

1. l :=1とする.

2. (ξ, η) :=((ba)Z2l1+a,MZ2l)とする.

3. もしp(ξ)≥ ηならば,W := ξとして,これを出力する.

4. もしp(ξ)< ηならばl := l+1として2. に戻る.

このアルゴリズムで得られる確率変数W の分布は望みのものになっている.このときW は仮定1を満たしている.

13 (例10の言い換え) {Yn}n=1Yn := 

 0, if Zn ∈[0,1/2)

1, if Zn ∈[1/2,1) n=1,2, . . . , とする.{Yn}n=1は硬貨投げの確率過程である.このとき

W := inf{n≥1|Y1+Y2+· · ·+Yn= 5}

とすればW は仮定1を満たす.W は硬貨を投げ続けて,表の出た回数が5となる最初の 時刻である.

49従って定理21の逆も成り立つ.

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