第 4 章 浮上制御と制振制御の確立 37
5.4 数値計算
ここで,Q˜は拡大系の評価関数の重み行列,P˜は次式のリカッチ方程式の解である.
P˜ =
⎡
⎣ I F1T 0 I
⎤
⎦
⎡
⎣ Pf 0
0 W
⎤
⎦
⎡
⎣ I 0 F1 I
⎤
⎦=
⎡
⎣ P11 P12 P12T P22
⎤
⎦,
P11 = Pf +F1TW F1, P12 =F1TW, P22=W
(5.44)
式(5.44)より,式(5.41)が最適制御入力を与える状態フィードバック則であることが確認
できる.Wは正則行列として任意に指定することができ,式(5.37)よりゲインWは外乱 やモデル化誤差に対する積分補償の度合いを調整するもので,最適サーボ系の制振性に影 響を与えることなく,独立に設計することができる.また,実際に式(5.43)のリカッチ方 程式を解く必要はなく,ゲインはF1,F2はF0から一意に決定されるものである.
-30 -20 -10 0
Gain (dB)
10-2 100 102 104
-90 -45 0 45 90
Phase (deg)
Frequency (Hz)
Optimal Servo 2DOF Servo
Fig. 5.7 Bode diagram of closed loop transfer function.
-40 -30 -20 -10 0
Gain (dB)
10-2 100 102 104
-90 -45 0 45 90
Phase (deg)
Frequency (Hz)
Optimal Servo 2DOF Servo
Fig. 5.8 Bode diagram of sensitivity function.
速度を変化させた場合のシミュレーション結果である.どの結果においても,固有振動周 期はTy = 0.4[sec]であることから,加速区間と減速区間は周期Tyの整数倍の0.8[sec]で あることが確認できる.また,加速終了時と減速終了時に浮上物体の位置と速度がゼロに 収束しており,その後の自由振動が発生していないことが確認できる.図5.10の結果に おいては,等速区間がなく(Ta = 0),最大速度も修正(Vm = 187.5[mm/s])されている ことが確認できる.
また,固有振動数周期の整数倍以外で目標速度を生成した場合の影響を数値シミュレー ションで確認する.図5.12と5.13は,固有振動周期をそれぞれTy = 0.3[sec],Ty = 0.5[sec]
と仮定して目標速度軌道を生成し,固有振動周期Ty = 0.4[sec]の式(5.23)に入力した搬 送結果である.結果から,固有振動数周期の整数倍以外で目標速度の加減速時間を設定す ると,搬送中や停止後に浮上物体が振動することが確認できる.
次に2自由度積分型最適サーボ系の有効性を数値シミュレーションで検証する.式(5.37) の2自由度積分型最適サーボ系を適用して,図5.6の制御系をMATLAB/Simulinkで構成 する.図5.14~5.16は固有振動周期をそれぞれTy = 0.3[sec],Ty = 0.4[sec],Ty = 0.5[sec]
で目標速度軌道を生成して制御系に入力した数値シミュレーション結果である.結果か ら,図5.15の搬送結果が,最も浮上物体の振動励起が小さく,2自由度積分型最適サーボ 系においても,固有振動数周期の整数倍で加減速時間を設定することが有効であることが 確認できる.また,2自由度積分型最適サーボ系を適用した場合は,固有振動数周期の整 数倍以外の入力でも浮上物体の振動を抑制することができ,モデル化誤差やパラメータ変 動によって固有振動数が変化した場合にも対応できると考える.
また,2自由度積分型最適サーボ系の外乱抑制の効果を確認するため,搬送中に浮上物 体に外乱を入力する数値シミュレーションを行う.図5.17,5.18に1.5[sec]から搬送を開
始し,2.5[sec]後に0.05[N]の一定外力を搬送方向側に入力した場合の各制御系の数値計算
の結果を示す.図5.17は制振制御を適用していない場合および式(5.32)の最適サーボ系 を適用した場合,図5.18は式(5.37)でF1 = 0とした従来の積分型最適サーボ系を適用し た場合および式(5.37)の2自由度積分型最適サーボ系を適用した場合の搬送結果を示す.
図5.17より,制振制御を適用していない場合は搬送によって発生した揺れは速やかに収 束しているが,外乱が加えられると振動的であることが確認できる.最適サーボ系は外乱 に対しての振動抑制の効果は確認できるが,外乱に対して追従誤差が残ることが確認で きる.図5.18より,従来の積分型最適サーボ系は外乱に対しての追従性は良好であるが,
振動抑制の効果が劣化することが確認できる.2自由度積分型最適サーボ系は,振動抑制 の効果を劣化させることなく,若干の追従性誤差は確認できるが,ほぼ追従性が確保でき ていると判断できる.