保育園児、特に 0 ~ 1 歳児は明確なアレルギーの既 往がなくてもまだ摂取していない食品について保育所で は摂取しないように医師から指示が出ることがあります。
保育所における新規の発症を未然に防ぐためにも、保育 所で“初めて食べる”ことを避けるとよいでしょう。
また、新規発症の危険性の高い食物を献立から避け、
栄養摂取量に大きく影響しないならば、鶏卵、牛乳など の主要原因食物をできるだけ献立に利用しない取り組み が勧められます。
食物アレルギー対応の考え方は、学校給食(P56 参照)
と同じで安全性の高い給食提供が求められます。そのた めには、完全除去による除去食(P54 参照)が推奨され ます。
ただし完全除去を行う場合には、栄養面の配慮を可能
な限り行うことも求められます。また、“加熱卵はよい”“つ なぎ程度はよい”などという個々の患児の除去の程度に 応じた個別対応をする場合には、誤食事故が起きやすい ので、安全面の確保に最大限配慮しなければなりません。
保育所で“初めて食べる”ことを避ける
安全を最優先にした除去食が基本
保育所において、給食の提供は保育の中でも非常に大 きなウエートを占めています。そのため、各所では給食 や食育に力をいれており、自所の調理室で調理して給食 を提供していることが少なくありません。
保育所での対応決定までの流れは学校の場合(P58 参 照)とほとんど同じですが、医師の診断に基づいた対応 が必須です。生活管理指導表を利用しないと、除去食品 の指示書は細かく除去レベルや食品群を分類して書かせ るものが多いのですが、これらはアレルゲン性の面から は根拠に乏しいものが少なくありません。書きづらいだ
保育所におけるアレルギー対応
けでなく、保護者や保育士に誤った概念を植えつける危 惧もあります。そうした意味でも除去の根拠を併記しな がら原因アレルゲンを単純化して示す「保育所における アレルギー疾患生活管理指導表」は集団におけるアレル ゲン除去食について必要十分な情報をわかりやすく示し ています。
記入の仕方は基本的には 「学校生活管理指導表」(P57 参照)と同じですが、対象が乳幼児であるための各項目に ついてのいくつかの相違点について説明します。
保育所におけるアレルギー疾患生活管理指導表
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❶ ❷ ❸ ❹ ❺ ❻
❶ 原因食物・除去根拠
保育所には乳児が在籍する場合があるため、未摂取の食品の除去が必 要だと医師に判断されることがあり、その場合には「④未摂取」が選択 されます。①~③は学校生活管理指導表と同様な考え方が必要です。
❷ 緊急時に備えた処方薬
保育所におけるエピペン ® 管理は、園児が一人で自己注射することは 実際上困難であるため、保育所職員による介助が必要です。保育所では 事前にエピペン ® の管理方法や、誤食時の対応を保護者とよく打ち合わ せておく必要があります。平成 23 年には厚生労働省より「自己注射が 可能な「エピペン ®」(アドレナリン自己注射薬)を処方されている入所 児童への対応について(依頼)」が発せられており、保育所でのエピペン
® 対応が全国で進んできています。
❸ 給食・離乳食
保育所は幼稚園や学校と異なり、食物アレルギー対応も手厚く行われ てきた歴史があり、その対応の主体が代替食であることも少なくありま せん。しかし前記したように、対応の基本は安全を最優先にした除去食 対応であり、環境が整った調理場において代替食を進めるべきと考えます。
管理指導表では「保護者と相談し決定」にチェックが付くことが多い ですが、これは保育所が面談で保護者と相談しながら、医師の指示にな いことも対応を進めるべきであることを意図するものではありません。
医師の診断のうえで原因抗原が確定した園児に対して、保育所における
基本的な食物アレルギー対応の方針を当てはめ実施するものと理解する 必要があります。
実際には、完全除去だけでなく、様々な段階の除去を行っている保育 所が多く、より細かな食品除去の指示書記載を求められるのが現状です。
保育所の給食は保育の中でも栄養面からだけでなく食育の観点からも重 要であり、きちんとした代替食が提供されていることが多いのは望まし いことです。
❹ アレルギー用調製粉乳
乳児では粉乳が主たるエネルギー・栄養源であるので、牛乳アレルギー であった場合には具体的なアレルギー用ミルク名を挙げて記載します。
離乳完了後にも主要なカルシウム源として保育所でも飲用し料理中にも 使用することが望ましいです。
❺ 食物・食材を扱う活動
乳児および幼児早期は何でも口に入れる傾向があるため、給食以外の 活動の中でも注意が必要です。例えば小麦粉やゼラチンの粘土、豆まき 用のピーナッツ、卵を割らせる経験など様々なことが行われるので、「保 護者と相談し決定」を選びます。
❻ 除去食品で摂取不可能なもの
ここに挙げられている食品はアレルゲンタンパク質の含有量が少ない か、発酵などによりアレルゲン性が幾分低下しているために、該当食品 に対するアレルギーがあってもよほど重症でなければ多くの場合に摂取 可能なものが列記されています。本来は除去する必要がありませんので、
摂取不可能な場合にだけ主治医がチェックするようになっています。
記載事項のポイント
[ 病型・治療 ]
[ 保育所での生活上の注意点 ]
第 5 章 学校・保育所などにおける食物アレルギー対応
1. 必要最小限の除去を通して 望ましい食習慣を確立する
“偏食をなくすこと”“よく噛んで食べること”“規則正し い食事を楽しくいただくこと”は食物アレルギー児にとっ ても大切です。乳幼児期は味覚や食習慣が形成される大 切な時期です。必要最小限の除去の中で、新鮮な旬の野 菜や、丁寧にだしをとった薄味の煮物、よく噛んで食べる 肉料理などを食べさせましょう。こうした手作りの料理は アレルゲンを含まないことが多く、除去食対応もしやすく なります。
2. おやつの提供
おやつはアレルゲンとなりやすい鶏卵・牛乳・小麦を含 むものが多いため、誤食事故が起きやすいものです。特 に、行事に伴うおやつは担任以外の先生が配ることもあ り、注意が必要です。本人のお誕生日など特別な行事の ときには、クラス全員が同じおやつや行事食を食べられ るように、配慮したいものです。
3. 除去の解除
初めて食べる食材や、除去していた食品の解除を進め る場合は、家庭で繰り返し食べて安全性が確認されてか ら給食に導入することが原則です。しかし、解除が進む 過程では、本人が食べたがらないこともしばしばありま す。その理由として、①味に慣れない(嫌い)、②過去の 症状に対する気持ちのトラウマ、③本当は軽いアレルギー 症状(のどの違和感、軽い腹痛や吐き気)を感じている、
などが考えられます。本人の気持ちと保護者の意向をく み取って、しばらく給食では除去したり、食べ方や調理法 を工夫します。
4. 誤食や誤飲
誤食事故の原因は、調理場の中ばかりではありません。
隣の子が牛乳をこぼした、ほかの子のものを食べた、食 べ物で汚れた手で触った、目をこすった、机や床の食べこ ぼしなど、多くの注意が必要です。しかし原因食物に接 触してしまうことは、管理対象が年端のいかない子ども であるので、完全には予防しきれないのが事実でしょう。
一般的に、原因食物の接触では、接触部位の皮膚・粘膜 症状が出現するものの、アナフィラキシー症状が誘発さ れることは極めて重篤なごく一部の患児に限られます。
食器やトレーの区別、給食時の座席の配置や、入園当 初に保護者に教室の様子を見てもらって、不可避の接触 事故には保護者に理解を求めると良いでしょう。もちろ ん、誤食はこの限りではありません。
5. 母親への助言や援助
広範囲にわたる除去指導や、誤った考え方に基づく除 去指導を受け、必要最小限が実現できていない保護者や
「食べさせるのが怖い」と思って、離乳食や除去食の解除 をなかなか進められない保護者がいます。保育所や学校 では、こうした保護者に対して正しい食物アレルギーの 考え方や、園児・児童生徒らが給食で食べている様子を 伝えていきましょう。
また、病院の受診の有無を確認し、長期間受診していない ようであれば、受診を促すようにしましょう。こうした保護者 のためにも、生活管理指導表を医師の指示に基づいて運用し、
定期的に提出してもらうことが大事なのです。