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皆さんこんにちは。この授業は保健統計・公衆衛生学ですが、今回に限り、疫学を取り上げます。疫 学の基本のキは、健康や疾病に関連する事象の正確な観察と記述で「時間」「場所」「人」は疫学の3 要素と呼ばれます。これらが何を意味するかは科目・疫学Ⅰの時間に詳しくお話ししています。しか し今年の新型コロナウイルスのように、新たな疾病が流行する中では、全ての看護職に疫学の基礎知 識が求められます。そこで今回は保健統計指標に関連する疫学の考え方を紹介します。

A.疫学の基本

1.疫学に特有な考え方と指標 1)疾病の現状;有病

前回の授業で人の生死を表わす分数(出生率、死亡率)を学びました。疾 病の存在をあらわす言葉は「有病」です。有病とはある一時点において疾病 を有していること、有病率とはその割合です。疾病を要する人の数

を分子、対象者数を分母として、計算します。

有病率= (ある 1 時点において疾病を有する人の数)/ 人口(対象者数)

2)疾病の新規発生;罹患

罹患とは、ある集団において、一定の期間における疾病の新たな発生、罹患率とは発生率のこ とです。

罹患の把握としてまず考えられるのは、ある集団をある一定期間(1年、3年、5年など)観察 し、新発生(累積)の患者数を捉えることです。この値を累積罹患率といいます。

累積罹患率= (一定の観察期間内に新発生した患者数)/人口

3)分数に時間を組み込む;人年

累積罹患率は観察の開始時に人口(人数)を把握し、観察期間中の新発生数(人数)を把握すれ ば計算できます。しかし長い観察期間が必要な生活習慣病の罹患をこの方法で観察・計算しよう とすると、必ず途中で抜ける人が出てきます。転居・死亡・移住など理由は様々ですが、最初 100 人いたとしても途中で 20 人がいなくなり、5 年後には 80 人しか残っていない、などの問題が起こ ります。特に人口移動が激しい都市部で問題となりました。観察開始時の人数を分母にする計算 が意味を持たなくなります。どうしたらいいでしょうか。

そこで途中で抜ける人がいることを前提として「一人を 0.5 年でも観察できたら、その事実か ら罹患を計算できるよう工夫する」として「観察人年 person-year」という考え方が生まれまし た。分母を「そこにいる人の数を足し合わせた総人数(〇〇人)」から、「そこにいる一人一人を 実際に観察できた時間を足し合わせた総時間数(△△時間、◇◇年)」へと、つまり分母の単位を 人数から時間数(年数)へと切り替えてしまう、という大胆な発想です。

疫学ではふつう観察時間の単位として年を用います。実際の計算では「A さんは 0.5 年観察でき https://youtu.be/yxiRyIXzk54

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たので1人×0.5 年=0.5 人年」「B さんは 2 年観察できたので 1 人×2 年=2 人年」「C さんは3 年間最後まで観察できたので1人×3年=3人年」などとなります。一人一人について人年を計 算するのは手間がかかります。しかし A さんや B さんのように途中で抜ける人がいても、データ が無駄になりません。以上が観察人年(人年)の考え方です。分母を観察人年にして計算したの が、以下に示す罹患率です。

罹患率=(観察期間内に新発生した患者数) / (観察人年)

100人を1年間観察すれば 100 人年となります。観察期間中に死亡、転出などが発生すれば、

その人はその時点までが観察期間となります。

2.疫学に特有な発想法

前期の統計学、第 5 回目の授業「クロス集計表と行パーセント」を思い出してください。皆さん の先輩に対して行った横断的なアンケート調査、そこから得たマイ標本での集計を取り上げていま す。二つの変数を選んで関連性を意識することをお話しし、2x2 表を作りました。表を作る時に「要 因(原因)らしい変数」を行に「結果らしい変数」を列にすることを学びました。覚えていますか。

疫学では、この要因と結果の関連を徹底的に意識し「要因から結果を考える」「結果から要因を考 える」と二通りのパターンで「様々な要因が結果(疾病発生)とどの程度関連するか」を調べる研究 計画を立てます。疫学で歴史的に有名な喫煙と肺がん(結果)を例に二つの違いを説明します。喫煙 が肺がんの原因になることは、19 世紀末までは知られていませんでした。1930 年代になって、肺が んの急激な増加がみられるようなったことから、大量に消費されていたたばことの関連が疑われる ようになり、以来、二つの方向から、多くの研究がなされています。

1)要因(時間的に前に存在)から研究する。

「喫煙していると、結果として、肺がんになる」

2)結果(時間的に後に存在)から研究する。

「肺がん患者は、時間を遡ると、原因として喫煙歴がある」

1)のタイプの研究がコホート研究です。

コホート研究は仮説的原因・要因曝露に従って 2 群を設定した後、追跡する研究方法です。“健 康な人々、病気にかかっていない p 人々”を対象として、“何らかの要因(原因)に曝露されてい る集団”と“曝露されていない集団”を設定し、時間の経過とともに追跡し、疾病や死亡の発生を 観察します。

2)のタイプの研究が症例対照研究です。

症例群(疾病にかかっている人々)と対照群(疾病にかかっていない人々)を比較します。

症例対照研究は、研究対象とする疾病に罹患した患者集団(症例群)と、その疾病に罹患したこ とのない人の集団(対照群)を選び、疾病の仮説的原因への曝露(要因曝露)の有無を、過去の記 録や記憶から明らかにし、その割合を比較する研究方法です。

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B.疫学の発想を手で考える

1.有病、罹患、観察人年

今回の授業の前半には、有病、罹患、人年という疫学指標の考え方が出て来 ました。この三つを 100 人の村のワークシートで考えます。

1)有病

まず有病、有病とはある一時点で疾病を有していることで

した。ここに 100 人いて、たとえば 10 人が疾病を有していたら、有病率は 10/100 です。

2)罹患

次は罹患、罹患とはある集団での一定期間における疾病の新発生です。たとえば5年間の罹患 を知りたいとき、期間の始まりでも終わり(5年後)でも分母である人口が変化しなければ、累積 罹患率= (一定の観察期間内に新発生した患者数)/人口 で計算できます。

3)観察人年

では分母の人口が一定ではなく、途中で抜ける人がいたら、どうでしょうか。期間の始まりに は 100 人いても、2年目、3年目、4年目と抜ける人が出てくると、期間の終わり、5年目には人 口はかなり減ってしまいます。そこで分数に時間を組み込む、分母の単位を人数から時間数(年 数)へと切り替えてしまう「観察人年(人年)」の発想が出てきました。

2.時間を組み込んだ研究法 1)要因から考えるコホート研究

コホート研究では仮説的原因・要因曝露で 2 群を設定した後、追跡します。出発点は要因の有 無(喫煙あり/なし)による 2 群です。皆さんのように若くて元気な若者なら、喫煙あり群、喫 煙なし群ともに、肺がんの人はいないでしょう。しかし 10 年後 20 年後まで観察したらどうなる でしょうか。喫煙が肺がんの要因であるなら、喫煙あり群の方に肺がんがより多く発生し、両群 の間に累積罹患率の差が明らかになるでしょう。これがコホート研究です。

2)結果から考える症例対照研究

症例対照研究の出発点は、症例群(肺がんの症例、患者)です。しかし症例群だけ調べても原因 究明はできません。比較が必要です。比較のために対照群(肺がんではない人々)を設定します。

たとえばこちらの 100 人は全て肺がんの症例です。そして比較する対照群には肺がんはありませ ん。ではこの2群の差はなぜ生まれたのでしょうか。過去の生活習慣、喫煙が要因ではないか、と 仮説を立てます。仮説を検討するために、両群の過去の喫煙歴を調べます。症例群と対照群で、喫 煙者と非喫煙者の割合は、どう異なるでしょうか。差が大きいほど、喫煙が肺がんの要因である 可能性が高くなります。このように考えるのが症例対照研究です。

https://youtu.be/WWGnHHI8WW8

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