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「価値提案」としての提供物の構成要素

ドキュメント内 修 士 論 文 (ページ 89-96)

第七章 「価値提案」をする主体の視点から「価値共創」の再 検討(実用性)

第三節 「価値提案」としての提供物の構成要素

先述したように、Lovelock et.al.(2007)はサービシィーズ・コンセプトを「コア・

サービシィーズ」と「補完的サービシィーズ」の組み合わせたものと定義づけたが、

他の研究者の抽象的定義と比べたら、Lovelock et.al.(2007)はより具象的意味をサー ビス・コンセプトに与えた。ここでは、先行研究を踏まえて「価値提案」としての提 供物の構成要素に検討したい。

Shostack(1977)

彼は製品やサービスの構成要素を生物体の構成と化学反応と同じように喩え、「分 子モデル」を用いてその要素とその結合による生じた変化について説明した。特に、

その要素の結合によって、化学反応のように製品全体やサービシィーズ全体が、全く 別のものに転換してしまう可能性があると強調した。

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図表17 Shostackによる航空運送サービシィーズの分子モデル

図表18 Shostack(1977)分子モデル

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この「分子モデル」によれば、エビデンスの観点から、サービスを有形要素と無形 要素と区分することができる。航空輸送サービスでは、機体や機内食が有形要素であ るのに対して、便の頻度、搭乗前から到着までのサービシィーズが無形である。最後 に、マーケティングのポジショニングの図からわかるように、サービシィーズ業では、

無形要素が有形要素より多いため、サービス特性や品質を知る手がかりとなる有形要 素を消費者に数多く提供しなければならないと主張した。

近藤(1999)

近藤によれば、いかなるサービシィーズでもサービスの核となる加工機能だけが提 供されることは少ないのだという。彼は、サービスをパッケージと比喩したうえで、

サービス商品を四つの要素に分けている:

① コア・サービシィーズ

② サブ・サービシィーズ

③ コンティンジェント・サービシィーズ

④ 潜在的サービス要素

「一般的に一つのサービス商品は、一つのコア・サービスと複数のサブ・サービス、

およびあらかじめ商品構成としてはデザインできないコンティンジェント・サービ スと潜在的サービス要素を含んでいる。」(P120)

詳しく説明すると、コア・サービシィーズは、商品の中核となる機能を受け持って いるため、該当商品のサービシィーズ・コンセプトを実現する活動であるとした。そ して、副次的サービシィーズとしてのサブ・サービシィーズは理論上ではコア・サー ビシィーズよりは重要性が少ないが、消費者にとってはサービシィーズ商品の特徴を 見つける大事な根拠となるという点を強調した。経営戦略上のヒントについては、コ ア・サービシィーズを最低許容基準としてしっかり守りつつ、代償作用のサブ・サー ビシィーズの質を集中的に改善することに工夫すべきとした。さらに、コンティンジ ェント・サービシィーズは、定常業務以外の仕事でかつ状況適応的サービシィーズで あるとし、サービシィーズを行う主体による臨機応変が必要になってくるとした。ま た、日常的業務の流れを乱す状況が一旦発生すると、消費者からどのような要求が出

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されるかが予測しにくいため、消費者的志向の姿勢と組織運営のバランスおよびサー ビシィーズ担当者によるその場の方策が企業に問われると再度強調した。最後に潜在 的サービシィーズについては、企業側の計画外のサービシィーズ効用と定義づけ、消 費者自身がいわば勝手に見出だしたサービシィーズの効用であるとした。潜在的サー ビシィーズ要素は、サービス組織はそれを事前に全てを予想・把握・計画することは 不可能である。しかしながら、潜在的サービシィーズは消費者自身の都合に満たすの は事実であるため、企業側はそれをできるだけ把握できて特別の消費者の対象に対応 を与えろう。

酒井(2006)

酒井(2006)は、サービシィーズ・マーケティング戦略の視点から、サービシィーズ の提供側が競争環境へ対応するためには、差別化と市場創造で実現できるポジショニ ングの明確化が必要になると述べた。差別化要因には、基本的サービシィーズ、ブラ ンド、価格、付随的サービシィーズがあるという。その中の基本的サービシィーズと は、そのサービシィーズにはなくてはならない、核心となる当然の要素を指す。酒井 によれば、サービシィーズは基本的サービシィーズでの差別化が難しいため、付随的 サービシィーズによって他社との差別化をアピールする。しかし、サービシィーズは 基本的サービシィーズにおいても、付随的サービシィーズにおいても他者に模倣され やすい特徴があることも指摘した。また酒井は、サービシィーズ業のマーケティング・

ミックスについても言及している。サービシィーズ業のマーケティング・ミックスに は、Product,Process,Place(Encounter), Promotion,Price がある。この Product は、

人材、物、情報、物的環境から構成されている。最後に、酒井(2006)は、サービシ ィーズの Product を構成する 4 つの要素にはコア要素と支援要素があると主張してい る。それらの要素がそれぞれコア要素と支援要素のどちらに当てはまるのかについて は、提供されるサービシィーズによって異なるのだという。例えば、教育の場合は、

主としてサービシィーズ提供を担っているのは教師であるため、人材がコアの要素に なる。輸送サービシィーズの場合は、輸送手段が輸送のスピードと安全性を決めるた め、該当輸送道具がコアの要素になると思われる。

93 Lovelock,et.al(2007)

Lovelock, et.al.により、サービスは大きく 3 つの要素に分けている:

① 「コア・サービシィーズ」

② 「補完的サービシィーズ」

③ 「サービシィーズの提供プロセス」

ここで論じている「サービス提供プロセス」は、「コア・サービシィーズ」と「補 完的サービシィーズ」の提供プロセスを意味する。

Grönroos(2007)

彼の『北欧型サービス志向のマネジメント』という著作では、サービスは以下の 3 つ に分けられる。

① 「コア・サービシィーズ」

② 「イネーブリング促進サービシィーズ(enablingfacilitating services) ないし 製品」

③ 「向上サービシィーズ(enhancing services) ないし製品」

その中の「イネーブリング促進サービス」は、顧客がその「コア・サービシィーズ」

を利用できるようにするために付加されたサービスであるのに対して、「向上サービ シィーズ」は、該当するサービシィーズの価値を高めるために、また、競合他社のサ ービスと区別するために用いられるものとされる。例えば、航空サービシィーズを利 用する場合を考えて説明したい。この場合は、顧客をある空間から他の空間にスピー ド早く安全に移動させるサービシィーズが「コア・サービシィーズ」であり、「コア・

サービシィーズ」を達成できるために雇用されたパイロットやスチュワードや航空券 販売員などがその「イネーブリング促進サービス」となり、飛行機内の美味しい食事 と清潔なトイレが「向上サービシィーズ」となる。さらに、Grönroos(2007) は、マネ ジメントの視点から、「イネーブリング促進サービス」と「向上サービシィーズ」を 区別することに着目した。「イネーブリング促進サービス」は義務的なものであり、

「イネーブリング促進サービス」が存在しなければそのサービス・パッケージが崩れ てしまう。そして、その「向上サービシィーズ」は自社のサービシィーズのブランド づけや戦略策として採用される。「向上サービシィーズ」がたとえ構築されていない

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としても、その「コア・サービシィーズ」を利用できることに悪影響を及ぼすことは ないのである。しかし、その全体のサービシィーズ・パッケージの魅力は薄れ、競争 力は失われる可能性は高いという。

最後に Grönroos(2007) は、上記のサービスの要素に加え、「サービシィーズ・コン セプト」と顧客とのイントラクションと関連付けながら、「拡張されたサービシィー ズ・オファー」(augmented servicer offering) という概念を提示した。

図表 19 拡張されたサービシィーズ・オファー

出所:Gronroos (1987),p.81

筆者のまとめ

以上は、今までに行われてきた提供物の構成要素についての先行研究である。全体 的にみると研究者は、提供物には、有形要素と無形要素があることを認めている。ど ちらが重要であるか否かという側面から分析すれば、サービシィーズ業の場合は、一 つの「コア・サービシィーズ」と幾つの「補完的サービシィーズ」が存在すると主張 している。そして、「コア・サービシィーズ」がサービシィーズの核でその活動が行わ

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れる価値である。また、差別化する困難性が存在するため、その副次的に位置付けて いる「補完的サービシィーズ」に力を入れて戦略を打ち出すべきであると多くの研究 者が唱えている。ここで、注意したいのは、近藤(1999)によって提唱されたコンテ ィンジェント・サービシィーズと潜在的サービス要素である。他の研究者の論説では 検討されてこなかったコンティンジェント・サービシィーズと潜在的サービシィーズ 要素という見解が初めて明示された研究であり、独自性のある研究成果として今後の 研究者に多大な影響を及ぼすと思われる。特にサービス業の場合では、顧客の目的構 造がさらに複雑になってきたため、企業側がサービシィーズ・コンセプトやサービシ ィーズ・システムを設計する際に、消費者の要求や期待への予測も含め、サービス・

プロセスの中での柔軟性を意識しつつ、サービシィーズ活動を行っていくべきであろ う。

最後にサービシィーズ・コンセプトとサービシィーズの構成要素における、今後の 研究方向と研究課題をここで提示したい。楠木(2010)は、従来の「コア・サービシ ィーズ」と「補完サービシィーズ」が、コンセプト不全を加速させる恐れがあると述 べている。そこで、仮にコンセプト不全が発生した場合、顧客側が取りうる行動の種 類を理論的な根拠を示しながら明らかにしていく必要がある。また、製品・サービシ ィーズのコンセプトを充実・改善するために必要となる理論上の努力についても明ら かにすべきである。さらに、戦略上では、実務における製品・サービシィーズのコン セプトの利用方法と自社の業種に合った適切なサービシィーズ・プロセスを導き出し 方も明らかにすべきである。これらについてより一歩的に議論が進むべきだと考える。

ドキュメント内 修 士 論 文 (ページ 89-96)