第 4 章 作業成績推定手法の有効性検討実験
4.1 実験の目的
4.2.4 作業成績の調整
様々な作業成績に対して正しく推定できる回帰モデルを導出するためには,全力で 作業に取り組んでいる状態の作業成績から,ほとんど作業に集中していない状態の作 業成績まで,あらゆる作業成績における生理指標データを学習させる必要がある.そ の理由として,例えば作業成績が一定であった被験者のデータを学習させて回帰モデ ルを導出した場合,得られた回帰モデルはその一定の作業成績のみに有効なモデルで あり,様々な作業成績に対する学習はできておらず,そのため他の作業成績時に対し ては正しく推定できない.よって本実験では,作業中に解答ペースを調整させ,様々な 作業成績とそのときの生理指標を計測する必要がある.解答ペースの調整方法として,
実験者側で解答数に制限を加えることで解答ペースを遅くする,あるいは1問当たり の制限時間を設定して解答ペースを速める方法などが考えられるが,この場合,作業 自体の負荷だけでなく,時間的制約から受けるストレス(タイムプレッシャー)による 負荷が大きく働き,作業成績と生理指標の関係を正しく検討できない.しかし,自由 なペースで解答を続けた場合,限られた作業時間の中で解答ペースが大きく変化する とは考えにくい.そこで,図4.6のように,伝票分類タスクの解答画面左側に解答ペー スのインジケータとしてカラーバーを表示した.
被験者には,このカラーバーの青色の割合が大きいほどゆっくり解き,反対に赤色 の割合が大きいほど速く解くよう解答ペースを調整し,特に全てが赤色の状態では全 力で解くよう教示した.カラーバーは,作業開始と同時に変化し始め,全て青色の状 態から赤色のバーが下から徐々に伸びていき,最終的に全て赤色になるか,あるいは 全て赤色の状態から青色のバーが上から徐々に伸び,最終的に全て青色になるか,の いずれかである.つまり,解答ペースの調整は,ゆっくり解いている状態から徐々に全 力で解いている状態まで解答ペースを速めていくか,全力で解いている状態から徐々 にゆっくり解いている状態まで解答ペースを遅くしていくかのいずれかである.なお,
終 取り消し
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1~10日
11~20日
21~31日 百貨店・小売
飲食・喫茶 運送・郵便
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図 4.6: カラーバーを表示した解答画面
カラーバーは課題実施中,一定の速度で伸び,30分間の課題終了とほぼ同時に伸びき るよう設定した.具体的には,本実験で課題提示に使用した縦に1024ドット表示する ディスプレイにおいて,1.75秒に1ドット伸びるように設定した.つまり,課題開始か ら29分52秒後でバーは伸びきる.カラーバーの横にはバーを8等分する目盛りを置 き,赤色と青色の割合がおよそどの程度か分かるようにした.以後,徐々に解答ペー スを速めていく課題をペースアップ課題,遅くしていく方をペースダウン課題と呼ぶ.
なお,実験の際,被験者には,解答ペースの調整は大まかにできていれば十分である 事を伝えた上で,ペースに注意を払いすぎないよう教示し,ペース調整による負担感 を軽減させた.
ペース調整の際,最も遅い解答ペースの教示が十分に伝わらず,解答ペースを遅く すべき状態でも,解答ペースが全力の解答ペースからあまり変化しない可能性が考え られる.この解決方法として,最も遅い解答ペースでの1問当たりの解答時間を教示す る方法が考えられるが,被験者がその解答時間を強く意識してしまい,時間のカウン ティングによる精神負荷が働く可能性が考えられる.そこで,最も遅い解答ペースの 参考として,音によって解答タイミングを強制的に調整するスローペース課題を用意 し,最も遅い解答ペースを体験させることで,最も遅い解答時間を教示した.スロー
ペース課題は,伝票分類タスクを基にしており,基本的な解答手順は同じであるが,ボ タン押下時に2種類の音のどちらか1つが鳴る.前の解答からの解答間隔が規定時間 を超過していれば高い音が鳴り,規定時間より早く解答した場合は低い音が鳴る.低 い音が鳴った場合は,待機して次の問題へ進まず,規定時間に達した際に鳴る高い音 を聞いた後,次の問題へ進む.具体的な規定時間を被験者に感じさせないよう,規定 時間は15±4.5秒の範囲で解答の度にランダムに変化させた.
4.2.5 被験者の体調統制
実験実施日における各被験者の眠気や体調などの内的要因は,生理指標に影響を与 えるため,本実験の計測データにも影響を与えると考えられる.また,強い眠気を感 じている場合,被験者が課題を十分に遂行できず,実験が成立しないことも考えられ る.そこで本実験では,練習を目的とした1日目と,計測を目的とした2日目の2日 間に分け,2日目前日の生活について被験者に教示を与えることで,睡眠不足や生活リ ズムの乱れによる計測データへの影響を軽減させた.具体的には,1日目のスケジュー ルが終了した後,被験者には,2日目の前日からは飲酒を控え,規則正しい生活を心掛 け,十分な睡眠を取って実験2日目に臨むよう教示した.その上で,被験者には活動量 計測器と2日目前日から2日目当日までの生活に関するアンケート用紙を渡し,2日目 の前日の朝から2日目の実験当日まで,活動量計測器を身に付けて生活するよう教示 した.なお,活動量計測器の装着は,生活に関する教示を強く意識させることのみを 目的としているため,実際は活動量計測器を模したダミー装置を渡し,全ての実験ス ケジュールが終了した後,活動量計測器がダミー装置であったことを被験者に伝えた.
アンケートの内容を表4.1に示す.
表 4.1: アンケート項目
項目 回答方法
視力矯正の有無 (有・無)から選択
(矯正)視力 自由記述
心臓の疾病歴 (有・無)から選択
目の疾病歴 (有・無)から選択
普段と比較した前日の夕食の量 多い・やや多い・同程度・やや少ない・少ない
前日の飲酒 (有・無)から選択
前日の就寝時間 自由記述
当日の起床時間 自由記述
当日の朝食 (有・無)から選択
当日の昼食 (有・無)から選択
当日から実験まででのカフェイン摂取 (有・無)から選択 体調に関する問題 (有・無)から選択
具体的な症状 だるい・眠い・風邪気味・頭痛・肩こり・腰痛
・その他
服用中の薬 自由記述