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低分子医薬の将来像-低分子から中分子への広がり-

これまでの調査・分析を踏まえて、低分子医薬の将来像を考えてみる。抗体医薬品を 中心とするバイオ医薬品の研究開発が世界的に盛んであるが、抗体医薬品は、標的分子 の対象となる抗原も潤沢とは言えず、新規標的分子の発見の難易度も高まっている。 一方、低分子医薬品については、バイオ医薬品より製造・流通コストが低く、経口剤と しての使用上の利便性が高いことから、医療現場において使用される機会も多く、低分 子医薬品が果たす役割は今後とも大きいことが考えられる。将来的に低分子医薬のニー ズがあることは確かだが、タンパク質間相互作用などの次世代の注目される標的分子群 に対して、現状のままでは対応力が乏しいことから、将来に向けて課題を解決していく ことが必要である。

このような標的分子に対する課題を、低分子医薬を主体としてきた創薬化学分野の対 象となるモダリティの将来像とともに考えることとした(図 39)。現在、低分子医薬 品は受容体や酵素などの古典的な標的分子に主として対応し、抗体医薬品やタンパク製 剤などの高分子医薬品は、細胞外のタンパク質間相互作用の標的分子に主として対応し ている。一方、ペプチド医薬品、核酸医薬品、天然物医薬品の3種のモダリティは、分 子量の視点で低分子と高分子の中間に位置しているが、各々独立しており、標的分子の 対応も様々である。創薬化学分野が研究対象とする低分子医薬で活用する化合物ライブ ラリーは、細胞内に豊富に存在するタンパク質間相互作用の標的分子には十分に適応で きていない(図39上)。

そこで、既存のペプチド医薬品、核酸医薬品、天然物医薬品の3種をまとめて、低分 子医薬品同様に化学合成が可能な中分子医薬品として、細胞内タンパク質間相互作用の 標的分子を主として対応できるモダリティとする。そして、「ペプチド・非ペプチド・

核酸」に構造分類し、さらに、ペプチドや非ペプチドは、大環状構造や非環状構造等に 構造分類し、核酸はアンチセンス、RNAi、アプタマー等に機能分類することで、タン パク質間相互作用を含む様々な標的分子に対応できるようにモダリティの選択肢を明 確に設定する。そして、企業の創薬化学研究者は、低分子医薬で培ったノウハウを活用 しながら、研究対象範囲を低分子医薬だけでなく、中分子医薬まで積極的に広げていく 状況が考えられる(図39下)。一方、抗体医薬でも抗体自体を構造変換することで、

高分子から中分子へと分子量を低減化する試みもなされている。中分子医薬の研究開 発が活性化することで、中分子領域において低分子医薬と高分子医薬が融合しながら、

相乗効果による新たな価値の医薬品が生まれることも期待できる。

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39 創薬化学分野で対象となるモダリティ: 低分子から中分子へ

出所: 医薬産業政策研究所にて作成

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以上より低分子医薬の将来像として、これまでに培った低分子医薬のノウハウと IT 技術を活用しながら、新たな医薬品モダリティとして、低分子医薬から中分子医薬が派 生していくことが考えられる。中分子医薬の派生にともない、企業の創薬化学研究者は、

低分子医薬で培ったノウハウを活用しながら、研究対象範囲を低分子医薬だけでなく、

中分子医薬まで積極的に広げることが求められ、中分子医薬のための新たな技術習得も 必要となるであろう。そして、国内製薬企業が、中分子医薬の技術プラットフォームを 有する企業や大学・研究機関と連携することで、細胞内タンパク質間相互作用を標的分 子とする中分子医薬の研究開発を活発に展開し、継続的に中分子医薬品が創出される時 代が到来することを期待したい(図40)。

40 低分子医薬から派生する中分子医薬

出所: 医薬産業政策研究所にて作成

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