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本付録では、具体的事例を取り上げ、以下の項目に区分した上で検討を行っている。 

  項      目  内      容  (a)  具体的事例  論点となる具体的事例  (b)  会計上の論点  会計上の検討事項 

(c)  実務上の論点  実務上の検討事項(業界慣行、実行可能性、権利 義務関係、税務上の取扱いなど) 

(d)  会計処理の考え方  実現主義の下での収益認識要件をより厳格に解 釈した場合の考え方、会計基準等の適用関係の整 理、会計処理の判断のポイント 

(e)  IAS18に照らした考察  IAS18を適用した場合の考え方   

「(d) 会計処理の考え方」については、我が国の実現主義の下での収益認識要件 をより厳格に解釈した場合の考え方を示したものであり、実務での具体的な適用に 際しては、適切な事実認定の下で適用することが求められる。したがって、「(a) 具 体的事例」で記載した前提や事実認定が異なる場合には、同様の会計処理になると は限らないことに留意する必要がある。 

また、「(e) IAS18に照らした考察」は、「(a) 具体的事例」を前提にIAS18を適用 した場合の現時点における当協会の考え方を示したものであり、IASBの解釈ではな いことに留意する必要がある。 

なお、本付録は、IAS18付録を基礎に作成しているため、あらゆる取引に関して取 り上げているものではない。ただし、本付録で取り上げた取引とその本質が同様の 取引については、本付録に記載の考え方を参考にすることができる。 

   

1.収益の表示方法(総額表示と純額表示) 

 

【ケース1:商社(同様の取引を含む。 )の収益の表示方法】 

(a) 具体的事例 

商社は、国内外の企業間取引の中で、情報提供、事務代行、決済代行及び信用補 完などの様々な機能を発揮しているが、契約上、取引の当事者として行われる取引 と代理人として行われる取引がある。これらは、商社の意思のみによって決定され るわけではなく、取引当事者間にどのような役割が不足しているかによって異なる のが通常である。 

商社においては、この果たした役割を総量で表すため、取引の当事者としての取 引だけではなく、代理人としての取引についても総額で収益を表示している場合が 少なくない。 

 

(参考) 

連結財務諸表を米国会計基準で作成している商社では、連結財務諸表における収益の額の表示につ

いてはFASB EITF問題第99‑19号に基づいて行った上で、「取扱高」が非財務情報として開示されてい る。 

 

(b) 会計上の論点 

・  契約上、代理人として行われる取引について、取引金額を総額で収益として表 示することは認められるか。 

・  収益を総額で表示すべきか純額で表示すべきかの判断に際し、契約上、取引の 当事者となっているか、代理人となっているかのみをその根拠とすることは適当 か。 

 

(c) 実務上の論点 

・  収益を総額で表示すべきか純額で表示すべきかの判断に際し、契約上、取引の 当事者となっているか、代理人となっているかの形式だけで判断することは適当 でないと考えると、実質判断が難しい場合も少なくない。また、取引パターンが 多い場合には事務処理も煩雑になることが予想される。 

 

(d) 会計処理の考え方 

我が国では、収益の表示方法については、契約上、取引の当事者として行われる 取引は総額で、代理人として行われる取引は純額で表示されていることが多いと考 えられる。これに対して、商社では、業界慣行として、契約上、取引の当事者とし て行われる取引だけでなく、代理人として行われる取引についても収益を総額で表 示している場合がある。 

しかし、我が国の会計基準では明示されていないものの、契約上、取引の当事者 ではなく、代理人として行われる取引については、収益を総額で表示するのではな く、手数料のみを収益として表示することが適切と考えられる。 

また、契約上、取引の当事者として行われる取引についても、ソフトウェア取引 実務対応報告の考え方を参考にすることが考えられる。同報告の考え方を参考にす れば、契約上、取引の当事者となる取引であっても、通常負うべき様々なリスクを 実質的に負担していないと考えられる取引については手数料相当額のみを収益と して表示することになると考えられる。 

 

(e) IAS18に照らした考察 

IAS18では、「代理の関係にある場合、経済的便益の総流入は、本人当事者のため に回収した金額で企業の持分の増加をもたらさない金額を含んでいる。本人当事者 のために回収した金額は収益ではない。その代わり、この場合には、手数料の額が 収益となる。」(第8項)とされており、同付録では、「企業が本人として行為を行 っているのか、代理人として行為を行っているのかの判断は、事実と状況により異 なり、判断が必要となる。」(付録第21項)とした上で、当該判断に際しての判断指

針を提供している(判断指針は本文に詳述)。 

したがって、IAS18に照らして考えた場合には、契約上、代理人となる取引金額の みならず、契約上、取引の当事者となる場合であっても、事実と状況を見極めた上 で、財貨の移転又は役務の提供に関する重要なリスクと経済価値にさらされておら ず、実質的に代理人として行われた取引であると判断されるときには、手数料部分 のみを収益として表示することになる。 

   

【ケース2:百貨店・総合スーパー等のテナント売上及びいわゆる消化仕入(業種にか かわらず同様の取引を含む。 )の表示方法】 

(a) 具体的事例 

百貨店や総合スーパー等では、その店舗内に多数のテナントを誘致し、不動産賃 貸借契約に準じて一定の固定額又はテナント売上の一定割合等を賃料等として収 受している場合がある。このような取引について、賃料相当額のみを収益として表 示している場合が多いと考えられる。 

また、百貨店や総合スーパー等には、テナントと商品売買契約を締結し、商品が 顧客へ販売されると同時にテナントから商品を仕入れる、いわゆる消化仕入と呼ば れる取引形態がある。このような取引形態の中には、百貨店や総合スーパー等がテ ナントで販売される商品の売買契約の当事者となっているものの、テナントのマー チャンダイジング(MD)業務を主体的に担っているとは判断し難いときや重要な在 庫リスクを実質的に負担していないときがある。このような取引について、商品販 売高を総額で収益として表示している場合が少なくないと考えられる。 

 

(b) 会計上の論点 

・  いわゆる消化仕入について、契約上、商品の売買契約の当事者であれば、通常 負うべき様々なリスクを負担しているか否かにかかわらず、収益を総額で表示す ることは適当か。 

 

(c) 実務上の論点 

・  収益を総額、純額のいずれで表示すべきかの判断に際し、商品の売買契約の当 事者となっているか否かだけで行うことは適当でないとした場合には、実質判断 が難しい場合も少なくなく、また、取引パターンが多い場合には事務処理が煩雑 になることが予想される。 

 

(d) 会計処理の考え方 

我が国の会計基準では明示されていないものの、不動産の賃貸借契約に準じた契 約内容であって、一定の固定額又はテナント売上の一定割合等を賃料等として収受 している場合には、収益をテナント売上高の総額で表示するのではなく、テナント

から収受する賃料相当額のみを純額で表示することになると考えられる。 

また、いわゆる消化仕入について、現行実務においては、テナントで販売される 商品の売買契約の当事者となるときには、商品販売高を総額で収益として表示して いる場合が少なくないと考えられる。しかし、契約上、商品の売買契約の当事者と なる場合であっても、店舗内の一定の場所における賃貸業に類似していることが多 いと考えられる。ソフトウェア取引実務対応報告の考え方を参考にすれば、百貨店 や総合スーパー等のレジスターを利用していたり、外形的諸条件(看板、包装紙及 び制服など)が百貨店や総合スーパー等の営業と認め得る場合であっても、百貨店 や総合スーパー等がテナントのMD業務を主体的に担っていなかったり、重要な在庫 リスクを負担していない等のときには、通常負うべき様々なリスクを実質的に負担 していることにはならないと考えられるため、手数料部分のみを収益として表示す ることが適切と考えられる。 

 

(e) IAS18に照らした考察 

IAS18第8項では、「代理の関係にある場合、経済的便益の総流入は、本人当事者 のために回収した金額で企業の持分の増加をもたらさない金額を含んでいる。本人 当事者のために回収した金額は収益ではない。その代わり、この場合には、手数料 の額が収益となる。」とされており、付録第21項では、「企業が本人として行為を行 っているのか、代理人として行為を行っているのかの判断は、事実と状況により異 なり、判断が必要となる。」とした上で、当該判断に際しての判断指針を提供して いる(判断指針は本文に詳述)。 

不動産の賃貸借契約に準じた契約内容であって、一定の固定額又はテナント売上 の一定割合等を賃料等として収受している場合には、当該判断指針における企業が 代理人として行為を行っていることを示す特徴を踏まえると、テナントから収受す る賃料相当額のみを純額で収益として表示することになると考えられる。 

また、いわゆる消化仕入についても、注文を執行する責任を実質的に負っている とは判断し難く、個々の商品ごとの価格設定に裁量権を有している場合は少ないと 考えられることに加え、在庫リスクを負担している場合もまれであることを踏まえ ると、当該判断指針に照らせば、本人として行為を行っている場合の特徴を十分に 満たしている場合は少なく、手数料部分のみを収益として表示することになるとき が多いと考えられる。 

   

【ケース3:リベートの会計処理(販売費及び一般管理費処理の適否) 】  (a) 具体的事例 

我が国の商取引において、メーカーや卸売業を営む企業等が、期間、量及び金額 など様々な契約条件(算定根拠)により顧客に対してリベートを支払うことがある。 

このような取引において、リベートを売上高から控除している場合と販売費及び

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