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付属書 B. 選定される個々の緊急防護措置の特徴

ICRP Publication 109

50 付属書 B. 選定される個々の緊急防護措置の特徴

減衰させ,大気浮遊プルームからの被ばくを低減することができる。木材または金属で建造さ れた建物は,通常,外部放射線に対する防護シェルターとして使用する上で適さないし,十分 に密閉できない建物は,いかなる被ばくを防止する上でも効果的でない。

 (B5) 屋内退避は,2日程度より長い期間は推奨されない(IAEA, 1994, 1996, 2006)。屋内 退避は容易に実行できるが,ほとんどの場合,長期にわたって実行することはできない。さら に,屋内退避は避難の準備として用いることができる。潜在的リスクがある地域の住民に対し ては,避難の準備が整うまで 屋内に入り ,新たな指示のためにラジオを聞くように指示す ることができる。しかし,極めて過酷な原子炉事故の場合,施設近くにおける標準的な家屋で の屋内退避は,確定的健康影響を防止する上で十分ではない可能性がある。屋内退避は長期的 な防護措置ではない。したがって,屋内退避が実施されているすべての場所では迅速にモニタ リングを実施し,高汚染地域を特定し,リスクの高い地域から避難させなければならない。

B.3 避  難

 (B6) 避難とは,緊急時被ばく状況における短期の放射線被ばくを回避または低減するた め,ある地域から早急に人々を一時的に立ち退かせることを意味する。放射性物質の重大な放 出が発生する前に予防的措置として避難することができれば,放射線被ばくを回避する観点か ら最も効果的である。一般に,避難は1週間以上の期間については推奨されない(IAEA, 1994, 1996, 2006)。

B.4 個人の除染と医療介入

 (B7) 個人の除染とは,慎重に考慮された物理的,化学的,あるいは生物学的プロセスに よって,個人から汚染を完全にまたは部分的に除去することである。

 (B8) 緊急の個人の除染は,皮膚の汚染からの外部放射線による被ばくまたはそのような 汚染からの不注意な経口摂取による被ばくを低減するため,助言される可能性がある。この措 置は,緊急時作業者を防護するために特に有効であろう。避難が進言されている地域の外側で は個人の除染が必要になることはないと思われる。

B.5 農業に関する予防的対策

 (B9) 食物に関連した防護措置は,経口摂取による線量を低減または防止することができ,

次のものが含まれる。被災地域で現地栽培された食物の消費の禁止;現地の食物や飲料水の供 給に対する防護,例えば,開放井戸への覆いの設置や動物と動物飼料の屋内への退避;および

B.6 参考文献 51

現地栽培された食物や飼料の長期間のサンプリングと管理。ミルクの管理は非常に重要である。

なぜならば,放射性ヨウ素などの重要な放射性核種が濃縮されるだけでなく,多くの国で子ど もたちの飲食物の重要な部分を占めるからである。

 (B10) 適切な場合には,緊急時計画で食物消費の制限の必要性について検討すべきである。

制限が必要な場合,住民に対して汚染された可能性のある牧草地に放牧された牛や山羊のミル クを飲まないよう指示すべきである。さらに,放出の間に戸外にあったかもしれないため汚染 されている可能性がある生鮮野菜,果物または他の食物を食べないよう指示すべきである。飲 料水は,集水された雨水から直接供給されるので,通常は初期対応中の主要な関心事ではない。

しかし,集水域への流出によって汚染物質が次第に蓄積される場合は,対応中は供給飲料水に ついて定期的に監視すべきである。食物と飲料水の制限は,これが実行された場合,サンプリ ングによって食物やミルクが設定レベルを超えて汚染されていないことが判定されるまで継続 すべきである。

B.6 参考文献

IAEA, 1994. Inter vention Criteria in a Nuclear or Radiation Emergency. Safety Series No. 109.

International Atomic Energy Agency, Vienna.

IAEA, 1996. International Basic Safety Standards for Protection Against Ionizing Radiation and for the Safety of Radiation Sources. Safety Series No. 115. International Atomic Energy Agency, Vienna.

IAEA, 2006. Arrangements for Preparedness for a Nuclear or Radiological Emergency. IAEA Safety Standards Series No. GS-G-2.1. International Atomic Energy Agency, Vienna.