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であるか」という条件から、この問題について考える。

まず、JNもCLも習慣性の出来事、あるいは自然現象を表すとき、自動詞(中国語 では動詞の基本形で、可能の形態素が入らない)で表現するのが一般的である。

以下の例を見てみよう。

(4)日:雪が消えた。 (5)日:日が暮れた。

中:雪化了。 中:天黑了。

次に、「1回性の出来事」である。CLは「1回性で出来事」を表現するとき、頻繁に 可能/不可能という捉え方をする。

1回性の出来事には、動作主が想定される場合と、動作主が想定しにくい場合の 2つ がある。

まずは、動作主が想定される例を見てみよう。

(6)このカバンに荷物が入らない。

(図2) JNの視点

(図3) CLの視点

1回性の出来事を表現するとき、JNは図2のように、動作主が対象(荷物)に力を 加えて変化を生じさせ、「入らない」という結果になった場合でも、動作主を考慮せず、

「荷物が入らない」という結果状態のみを強調し、自動詞で表す。

一方、CLは必ず動作主を想定する。(6)の「荷物が入らない」場面では、動作主の 動作に視点を置き、一生懸命荷物を入れようとしたが無理であったための結果と捉えて、

可能形および否定形で表すのが一般的である(中国語は自他同形)。

しかし、すべての場合において動作主が想定できるわけではなく、想定しにくい(あ るいは動作主が存在しない)場合もある。次に、動作主が想定しにくい、かつ1回性の 出来事の例を見てみよう。

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(7)これ以上、人口が増えない。

(7)では、動作主が誰であるかを明確にしにくいので、CLは特に動作主を想定し ない。しかし、「人口が増えない」は習慣的なことではなく、1回性の出来事であり、必 ずある原因または条件(少子化、高齢化の進行など)によって「人口が増えない」とい う結果になるのである。このとき、CLは「ある原因が増加を不可能とする」と捉え、

可能の形態素を挿入しようとする。

注目すべき点は、肯定表現より否定表現の方が「可能形の形態素」を挿入しやすい、

ということである。以下の例を見てみよう。

(8)隣の人が「鍵ならありますよ。ここに落ちていました。これですか」と鍵を見 せました。

「ええ、そうです。」(ガチャガチャと鍵を鍵穴に入れる)

「ああ、1)あけた。

2)あいた。

3)あけられた。」 小林(1996:48)

(8)の出来事は1回性であり、動作主がいても肯定表現であるので、CLにとって も可能の形態素が入りにくい。では、否定表現の例を見てみよう。

(9)日:(ガチャガチャと鍵を鍵穴に入れる)

「あれっ!?あかない!!」

中:(咔チヤ嚓咔チヤ嚓 的匙 插入れ孔)

「咦!?打不开!!」

(9)の日本語の文を中国語に翻訳すると、「V不C」のように可能の形態素が入る。

このように、肯定表現より否定表現の方が、可能の形態素が入りやすいということが 分かる。

以上の議論から、出来事が実現するかしないかが焦点化されている場合、CLは可能 の形態素を挿入する傾向があるのに対して、JNは、動作主が想定されない限りは可能 の形態素を挿入しない、ということが分かる。これは日本語と中国語において可能表現 を扱う際の大きな違いである。すなわち、CLは、習慣性の出来事を表現するときは、

JNと同じく、動作主も原因も考慮することなく、動詞の基本形を使用する。一方、1 回性の出来事を表現するときは、JNが変化後の結果状態に視点をおいて自動詞で表現 するのに対して、CLは、動作主を想定できるか否かにかかわらず、可能/不可能とい う観点から捉え、可能の形態素を挿入する傾向にある。

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このことを表にまとめると、以下のようになる。

(表11) 自動詞の基本形を使う条件の比較

条件 日 中

出来事が習慣性である ○ ○

出来事が 1回性である

動作主あり ○ ☓

動作主なし ○ ☓

(○=自動詞の基本形を使う、×=可能の形態素を挿入する)

(可能の形態素の入りやすさ:肯定<否定)

8.無意志自動詞の習得

まず、日本語教師が可能表現を教える際は、無意志自動詞の可能表現にも重点を置く べきである。また、日本語と中国語の可能表現の異同も教えるべきである。そうするこ とにより、CLは、無意志自動詞の可能表現をより良く理解し、より効果的に習得でき るであろう。

次に、アンケート調査とインタビュー調査の結果から、JNが発する日本語も、CL に影響を及ぼすことが示された。教科書の内容を把握するだけでは獲得できない自然な 日本語の言い回しに接触することも学習に役立つと思われる。自然な日本語を授業に取 り入れる一案として、日本語のニュースやビデオなどをCLに見せる、ロールプレイや 交際会話の時間を設けるなどして、CLの無意志自動詞の運用能力を育て、少しずつ母 語の影響による誤用を除いていくべきである。

さらに、教科書には「無意志自動詞の基本形で出来事の実現の可否を表すことができ る」および「無意志自動詞は可能形にできない」という2つの文法に関する説明を導入 すべきである。また、第7章で述べた日本語と中国語における可能表現の使用場面の違 いを教科書に含むと、CLはより良く学習できると考える。

9.おわりに

本稿はアンケート調査とインタビュー調査を行うことにより、CLは可能の意味を表 す際には無意志自動詞の基本形を使わないことを明らかにした。

そして、日本語教育現場においては、CLが無意志自動詞の基本形を使わない理由を 重要視しておらず、これは、多くの教材において関連する説明が少ないことからも明ら かである。

また、日本語と中国語の可能表現の違いについてみてみると、当該文で述べている出 来事が実現するか否かが焦点化されている場合、CLは可能の形態素を挿入する傾向が あるのに対し、JNは動作主が想定されない限りは可能の形態素を挿入しないことを、

「習慣性であるか」あるいは「1回性であるか」という条件から論じた。

最後に、CLの無意志自動詞の不適切な使用を改善するための日本語の教え方を、日

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本語教師および教科書の2つの観点から提案した。

本稿では、アンケートに動作主が想定しにくい状況、および1回性でない状況などを 想定した設問を用意したが、さらに設問の種類や数を増やし、分析を深めていくことを 今後の課題としたい。

参考文献

張威(1998)『結果可能表現の研究-日本語・中国語対照研究の立場から-』くろしお出版 張麟声(2001)『日本語教育のための誤用分析-中国語話者の母語干渉20例-』スリーエー

ネットワーク

青木ひろみ(1997)「《可能》における自動詞の形態的分類と特徴」『神田外語大学大学院紀 要言語学研究』3,pp.11-26.神田外語大学

于康(2006)「日本語と中国語」『講座・日本語教育学』6,pp.141-155.

楠本徹也(2009)「無標可能表現に関する一考察」『東京外国語大学論集』79,pp.65-85.東 京外国語大学

小林典子(1996)「相対自動詞による結果・状態の表現-日本語学習者の習得状況-」『文藝 言語研究・言語篇』29,pp.41-55.筑波大学

都築順子(2001)「『可能の意味を含む自動詞』に関する一考察」『2001年度日本語教育学会 春季大会予稿集』pp.85-90.日本語教育学会

呂雷寧(2007)「可能という観点から見た日本語の無意志自動詞」『言語と文化』8,pp.187-200.

名古屋大学

(埼玉大学大学院人文社会科学研究科博士前期課程)

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断り表現に関する日韓対照研究の動向

河 正一・徐 明煥

【キーワード】

ポライトネス、インポライトネス、利益の対立と衝突、フェイス侵害行為、異文化理解、

意味公式、ストラテジー、負荷の度合い

【要旨】

本稿では、断り表現に関する日韓対照研究の動向を概観し、調査方法及び調査内容に ついて研究方法の妥当性や問題点の検証などを試みた。断り表現のアプローチには、断 り表現に用いられる言語形式の相違点に焦点を当てた言語形式的アプローチ、断り表現 における社会的・文化的背景との関係に焦点を当てた社会言語学的アプローチ、そして 第二言語習得における学習者の中間言語語用論に焦点を当てた言語教育学的アプローチ が見られた。

しかし、従来の研究では、断り表現を相手に対するフェイス侵害行為への補償行為と して捉えていたため、ポライトな言語ストラテジーとしての断り表現に偏っている。断 り表現の本質は、互いの利益の対立と衝突に動機づけられたフェイス侵害行為として現 れるインポライトネスであり、今後インポライトネスの観点を取り入れた研究が必要不 可欠であろう。

1.はじめに

科学の進歩は、世界のグローバル化に拍車をかけ、人々の異文化間交流の機会をより 一層、増加させるに違いない。しかし、そこには当然ながら互いの異なる言語トラブル や異文化摩擦の危険性が潜んでいる。円滑かつ効果的なコミュニケーションの遂行は、

互いの異文化に対する理解が求められるが、異文化理解への糸口のカギとなるのが言語 文化における社会言語学的観点からの研究であろう。

こうした時代の変化と要求に伴って、2000年代に入ってから異文化理解に対する言語 教育が注目を浴びるようになり、日韓対照研究では、多岐にわたった社会言語学観点か らの研究が行われるようになってきた。

そこで、本稿では、様々な社会言語学的観点からの研究のうち、断り表現を中心に日 韓対照研究の研究動向を概観し、検討を行うことを目的とする。

以下、2節は、断り表現に関する日韓対照研究のアプローチを概観する。3節では、調 査方法と調査内容に分けて詳細に分類し、研究方法の妥当性や問題点などについて、論 じていく。

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